不動産を売却するときに結ぶ媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。不動産会社の担当者から「専任のほうが熱心に動いてくれますよ」「一般媒介なら複数の会社を競わせられますよ」と勧められても、営業トークだけで選んではいけません。
選ぶときの基準は、同時に依頼できる不動産会社の数、自分で見つけた買い手と直接契約できるか、レインズへの登録義務、営業活動の報告頻度の四点です。国土交通省の標準媒介契約約款(新しいタブで開きます)と契約書案を一つずつ見比べて選びます。
3種類の媒介契約の基本条件を比較する
3つの契約形態における法律上および標準約款上の違いは次の通りです。
| 比較項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
|---|---|---|---|
| 同時に依頼できる会社数 | 複数社(並行依頼が可能) | 1社のみ | 1社のみ |
| 自分で見つけた買い手との契約(自己発見取引) | 可能(成約時の通知義務あり) | 可能(通常要した業務実費の請求条項あり) | 不可(直接契約すると媒介契約違反となり違約金が発生) |
| レインズ(指定流通機構)への登録義務 | 法的義務なし(特約で登録可能) | 契約成立の翌日から7日以内(休業日除く) | 契約成立の翌日から5日以内(休業日除く) |
| 売主への業務処理状況報告 | 定期報告の法的義務なし(特約で設定可能。申込み報告は義務) | 2週間に1回以上(申込み報告は義務) | 1週間に1回以上(申込み報告は義務) |
| 契約の有効期間 | 法定上限なし(標準約款では3か月以内) | 最長3か月(法律上の上限・超える期間は3か月に短縮) | 最長3か月(法律上の上限・超える期間は3か月に短縮) |
| 契約の更新方法 | 当事者の合意により更新(標準約款では自動更新不可) | 売主の申出により更新(法定の自動更新禁止・書面または電磁的方法) | 売主の申出により更新(法定の自動更新禁止・書面または電磁的方法) |
出典:国土交通省「標準媒介契約約款」(新しいタブで開きます)、国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」(新しいタブで開きます)
複数社への依頼可否と明示型・非明示型の違い
専任媒介契約と専属専任媒介契約では、同時に売却活動を依頼できる不動産会社は一社だけです。重ねて依頼した場合の費用や違約金は、国土交通省の標準媒介契約約款(新しいタブで開きます)と実際の契約条項を照合してください。
一方、一般媒介契約では複数の不動産会社へ同時に売却を依頼できます。一般媒介には「明示型」と「非明示型」の2区分があります。
- 明示型:契約時に、他にどの不動産会社へ媒介を依頼しているか(または今後依頼するか)を各社へ通知する形式です。
- 非明示型:他の依頼先を通知する義務を負わない形式です。
国土交通省の標準媒介契約約款では、取引の透明性を確保するために明示型を標準として定めています。明示型の契約を結んだ場合、通知していない別の会社を通じて売買を成立させると、通知義務違反として探索に要した実費(約定報酬額が上限)を請求される取り決めが含まれます。また、いずれかの会社で成約した際や自ら買い手を見つけて成約した際は、依頼中の他社へ遅滞なく通知しなければなりません。通知を怠ったために他社が販売活動を継続して費用が発生した場合も実費請求の対象となります。
自分で買い手を見つけた場合のルールと違約金
親族や知人、ご近所の方などから直接「買いたい」と声をかけられたときに、不動産会社を通さずに売買契約を結ぶことを「自己発見取引」と呼びます。この自己発見取引ができるかどうかは、選んだ契約形態によって大きく異なります。
一般媒介契約では、自己発見取引は原則として自由に行えます。売主が自分で買い手を見つけて直接契約を結んでも、依頼している不動産会社に違約金を支払う必要はありません。ただし、売主にも守るべき義務があります。売買契約が成立したときは、依頼している各社へ遅れずに通知しなければなりません。この通知を怠り、不動産会社が成約を知らないまま販売活動を続けて費用がかかった場合は、その実費を請求される規定があります。なお、すでに不動産会社から紹介されて知った相手と直接取引をする場合は、自己発見取引とは別の条項によって制限されます。また、売買契約書の作成や重要事項説明だけを不動産会社へ個別に依頼する場合は、別途手数料の取り決めが必要になります。
専任媒介契約でも、自分で買い手を見つけて契約することは認められています。ただし、国土交通省「標準媒介契約約款」(新しいタブで開きます)では、不動産会社がそれまでの売却活動にかかった費用(通常必要となる広告宣伝費や現地への案内費などの実費)を請求できる規定が置かれています。請求される金額の上限は、売買が成立したときに受け取るはずだった約定報酬額(法律上の上限額とは異なり、契約であらかじめ定めた金額)の範囲内と決められています。
専属専任媒介契約では、自己発見取引が契約で禁止されています。売主が自分で買い手を見つけた場合であっても、契約期間中に不動産会社を通さずに直接契約を結ぶことは約款違反になります。直接契約を結んだからといって、売買契約そのものが無効になるわけではありません。しかし、媒介契約違反にあたるため、約定報酬額に相当する金額(消費税および地方消費税相当額を除く)を違約金として請求されます。
レインズへの登録期限と休業日の数え方
指定流通機構(通称:レインズ)は、国土交通大臣の指定を受けた不動産流通機構が運営している全国ネットワークシステムです。ここに物件情報が登録されると、全国の不動産会社へリアルタイムで共有され、他社に相談している購入希望者にも広く紹介されるようになります。
専任媒介と専属専任媒介では、宅地建物取引業法によってレインズへの登録が義務付けられています。期限は国土交通省の標準媒介契約約款(新しいタブで開きます)で確認できます。
- 専属専任媒介契約:契約が成立した翌日から5日以内
- 専任媒介契約:契約が成立した翌日から7日以内
- 一般媒介契約:法律上の登録義務はありませんが、売主の希望によって特約を設ければ登録できます。
登録期限は、不動産会社の休業日を算入しないという標準媒介契約約款(新しいタブで開きます)の定義に沿って数えます。定休日や長期休業を挟む場合は、契約日だけで自己計算せず、登録予定日を会社へ書面で確認してください。
登録が完了すると、レインズから「登録証明書」が発行されます。宅地建物取引業法により、不動産会社はこの登録証明書を遅れずに売主へ渡さなければなりません。
営業活動の報告頻度と確認手段
販売活動と購入検討者の反応を売主に知らせる「業務処理状況の報告」も、契約形態によってルールが分かれています。頻度は国土交通省の標準媒介契約約款(新しいタブで開きます)を基準に確認します。
- 専属専任媒介契約:1週間に1回以上の定期報告が義務付けられています。
- 専任媒介契約:2週間に1回以上の定期報告が義務付けられています。
- 一般媒介契約:法律上の定期報告義務はありませんが、標準媒介契約約款の特約をつければ定期報告を取り決めることができます。
なお、定期的な状況報告とは別に、購入の申込み(買付申込み)があった場合の報告義務もあります。宅地建物取引業法に基づき、不動産会社は契約の種類にかかわらず、申込みが入ったときは遅れずにその内容を売主へ報告しなければなりません。これは一般媒介であっても免除されない義務です。
定期報告は、書面を渡すか、電子メールや売主専用の管理画面といった電磁的方法で行われます。ただし、「今週も問い合わせはありませんでした」といった一行だけの報告では、実際にどんな活動をしているのかが分かりません。どのポータルサイトに物件を載せたのか、Web広告が何回見られたか、チラシを何枚配ったか、内覧の希望や見送りの理由はどうだったかなど、具体的な数字や内容を教えてもらうようにしてください。また、専任媒介や一般媒介であっても、特約を結んで「1週間に1回報告する」といった法律の基準を上回る約束を交わすことも可能です。
契約期間と更新のルール|法定規制と標準約款の違い
専任媒介契約と専属専任媒介契約の有効期間は、宅地建物取引業法第34条の2によって「最長3か月」と決められています。もし契約書に「6か月」と書いて署名や押印をしたとしても、法律の決まりによって自動的に3か月へ短縮されます。
専任媒介や専属専任媒介で特に気をつけたいのは、契約の自動更新が法律で禁止されている点です。「期間が終わるときに売主から解約の申し出がなければ、同じ条件で更新する」といった特約を入れても、法律違反となり効力を持ちません。契約を続けたい場合は、期間が終わるタイミングで、売主の側から「更新したい」という申し出を書面や電子メールなどの電磁的方法で行う必要があります。
一方、一般媒介契約には、法律で定められた期間の上限がありません。ただし、国土交通省の標準媒介契約約款(新しいタブで開きます)は、有効期間を三か月以内とし、売主からの申し出で更新する形を示しています。これは約款上の基準であり、専任媒介・専属専任媒介の法定上限とは根拠が異なります。実際に使う約款や特約の期間・更新条件を確認してください。
囲い込みを防ぐレインズステータス管理機能
不動産会社が売主と買主の双方から仲介手数料を得るために、他社から購入希望者を紹介されても意図的に断る行為を「囲い込み」と呼びます。ほかの不動産会社から「物件を見学したいお客様がいる」と連絡があっても、「いま商談中です」と嘘をついて断ってしまう手口です。囲い込みをされると、早く良い条件で売れるせっかくのチャンスを逃してしまいます。
こうした囲い込みを防ぐために、指定流通機構(レインズ)には、売主自身が物件の登録状況を直接確かめられる「ステータス管理機能」が用意されています。
出典:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(2026年4月1日以後)」(新しいタブで開きます)、国土交通省「レインズのステータス管理機能・売主向けリーフレット」(新しいタブで開きます)
確認する手順は次の通りです。
- レインズへの登録が終わったあとに、不動産会社から渡される「登録証明書」を受け取ります。
- 証明書に書かれている、売主専用の「確認用ID」と「パスワード」を確認します。
- 指定流通機構の売主専用確認画面にアクセスしてログインします。
- 取引の状況が「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のどれになっているかを確かめます。
売主向けリーフレットに示されている取引状況の選択肢は上記の3区分です。「書面による購入申込みあり」や「売主都合で一時紹介停止中」は、売主自身が依頼した場合や正式な買付が入った場合には適法かつ正常な状態です。しかし、売主が把握していない申込みや紹介停止の指示がない状況で「公開中」以外に変更されている場合は、他社からの問い合わせを遮断している疑いがあります。ステータスの表示だけで直ちに不正と断定せず、まずは担当者へ停止や申込みの理由、日時、再開予定を確認してください。なお、一般媒介契約でレインズに登録していない物件は、外部システムから状況を確認できないため、各ポータルサイトへの掲載状況を売主自身が定期的に検索して巡回する必要があります。
途中解約・契約解除・費用請求の条項を読む
媒介契約を結んだあとに、担当者の対応や売却の進め方に問題がある場合の解約ルールは、約款に基づいて決められています。
不動産会社の側に義務違反がある場合(レインズへの登録を怠る、決められた期日通りに業務報告をしない、嘘の報告をするなど)は、売主は「いつまでに改善してください」と相当な期間を定めて求め、それでも改善されないときは契約を解除できます。また、信用の根底を覆すような重大な背信行為などがあったときに、催告なしですぐに解除できるかどうかは、契約で使っている約款の条項に沿って判断します。不動産会社の義務違反による正当な解除であれば、違約金を払う必要はありません。ただし、売主から特別にお願いして合意していた広告費などがある場合は、約款や事前の約束に沿ってかかった実費を精算しなければなりません。すべての費用が無条件で免除されるわけではない点には注意してください。
売主側の都合で契約期間の途中に解約する場合の費用請求は、契約の種類と条項によって異なります。国土交通省の標準媒介契約約款(新しいタブで開きます)では、専任媒介・専属専任媒介と一般媒介で実費請求の条項が同一ではありません。通知義務違反、特別に依頼した広告費、自己都合解約を混同せず、実際の契約書で請求理由と上限を確認してください。正当な解除理由がある場合も、解除方法を約款に沿って進めます。
また、契約期間中に次のような重大な約款違反をした場合は、約定報酬額にあたる金額(消費税および地方消費税相当額を除く)を違約金として請求されます。
- 専任媒介や専属専任媒介の期間中に、無断でほかの不動産会社にも重ねて売却を依頼し、売買契約を成立させた場合
- 専属専任媒介の期間中に、売主が自分で見つけた買い手と不動産会社を通さずに直接契約を結んだ場合
媒介契約終了後の直接取引についても、契約期間中の違約金とは別の条項があります。国土交通省の標準媒介契約約款(新しいタブで開きます)は、不動産会社から紹介された相手と契約終了後に直接取引した場合の報酬請求について定めています。対象期間や算定方法を要約だけで判断せず、使用した約款と契約書の該当条項を確認してください。
販売計画と担当体制を比較する基準
媒介契約の種類を決める前に、候補となる不動産会社の販売計画と体制を比較してください。
- 広告の露出先と費用負担:レインズや大手不動産ポータルサイトへの掲載だけでなく、自社サイト、指定エリアへの新聞折込チラシ、ポスティングの実施計画があるかを確認します。これらが通常の媒介報酬に含まれるのか、特別な広告を希望した場合の実費負担規定がどうなっているかを書面で確かめます。
- 査定価格の算出根拠:成約事例や周辺の競合売出物件のデータを提示し、論理的に根拠を説明できるかを見ます。専任契約を取りたいがために相場から乖離した高額査定を提示し、契約後に大幅な値下げを要求してくる事業者には注意が必要です。
- 担当者の抱える案件数と連絡速度:一人の営業担当者が抱えている物件数が多すぎると、個別の案内や報告がおろそかになる傾向があります。内覧希望への対応体制や定休日の連絡窓口が整っているかを確認します。
「専任契約にしてくれたらハウスクリーニングを無料にします」といったおまけのサービスだけで慌てて決めず、物件の情報をどのように買い手へ届けていくかという基本的な計画を重視してください。
売主の状況と物件に合わせた選択基準
どの契約形態が合っているかは、売りに出す物件の立地、買い手からの人気の高さ、売主が販売のやり取りに使える時間によって変わります。
一般媒介契約が適しているケース
- 最寄り駅から歩いて行ける人気マンションや、形の整った使いやすい土地など、広告を出せばすぐに複数の問い合わせが見込める物件を売る場合。
- 複数の不動産会社を競わせ、囲い込みをされるリスクを避けながら、幅広く購入希望者を集めたい場合。
- 各社からの問い合わせ対応や見学の日程調整、売り出し価格の変更連絡などを、売主自身が中心となって進められる時間がある場合。
- 知人や親族で「買いたい」という人が現れる可能性があり、直接取引ができる自由を残しておきたい場合(契約が成立したときは各社へ知らせる義務があります)。
専任媒介契約が適しているケース
- 郊外の一戸建て、築年数が経っている物件、旗竿地(細い通路の奥にある土地)など、売るために広告の工夫やリフォームの提案といった営業努力が必要な物件を売る場合。
- 窓口を1社にまとめて、見学の日程調整や活動報告のやり取りなどの負担を減らしたい場合。
- 2週間に1回以上の定期報告を受け取り、活動の進み具合を数字で確かめながら、価格の見直しなどを進めたい場合。
- 将来、知人や親族に直接売る可能性を完全には捨てきれない場合(それまでにかかった業務の実費を請求される条項があるため確認が必要です)。
専属専任媒介契約が適しているケース
- 個性が強く、売却の作戦づくりから買い手へのアプローチまでを、信頼できる特定の不動産会社と二人三脚で集中的に進めたい物件を売る場合。
- 知人や親族へ直接売る可能性がまったくなく、自分で買い手を見つけて契約することが禁止されていても困らない場合。
- 1週間に1回以上という小まめな定期報告を重視したい場合(ただし、報告の回数は専任媒介や一般媒介でも特約を結べば増やせるため、報告の頻度だけで決めず、自分で見つけた相手と直接契約できるかどうかを中心に判断してください)。
営業トークではなく約款と契約書の条項で選ぶ
媒介契約を結ぶときは、営業担当者の印象や口約束だけに頼らず、渡される契約書の案と標準約款の条項を必ず照らし合わせて確認してください。
相談や契約の手続きを進める前に、売主の側で次の資料を準備しておきましょう。
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 公図・地積測量図・建物図面
- 建築確認済証および検査済証
- 固定資産税・都市計画税の納税通知書(課税明細書)
- 物件の間取り図や、過去のリフォーム歴が分かる資料
不動産会社と面談するときは、次のような質問をして回答を確かめてみてください。
- 「専任媒介や専属専任媒介で契約した場合、レインズの登録証明書は何日までに、どのような方法で渡してもらえますか?」
- 「業務報告書には、ポータルサイトの閲覧数や他社からの問い合わせ件数など、具体的な反響データが載っていますか?」
- 「一般媒介契約を結ぶ場合、御社ではレインズへの登録や定期的な状況報告を特約で対応してもらえますか?」
- 「自分で買い手を見つけて契約する可能性が出てきた場合、かかった実費を精算する基準や計算の根拠は、契約書のどの条項に書かれていますか?」
自分たちの販売方法や約款の決まりを、書面を使って筋道立てて説明してくれる不動産会社を選び、納得のいく条件で売却活動をスタートさせましょう。
