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親の家や相続した家を売るか考え始めると、最初に出てくるのが不動産の査定です。査定には机上査定と訪問査定があり、違いは担当者が現地を見るかどうかにあります。どちらが上ということはなく、査定のあとに何を決めたいかで選ぶと迷いません。
机上査定とは?訪問査定との違いと選び方
机上査定(簡易査定)とは、一般に、担当者が現地へ行かずにおおよその価格を出す方法です。材料は、所在地・広さ・築年数などの物件の情報と、近くの取引事例や公的な価格です。分かるのは、その地域で同じような条件の家がいくらくらいかという、相場の目安までです。
訪問査定では、担当者が現地で建物や敷地を見て、その結果を価格に反映します。机上査定は立ち会いがいらず頼みやすい一方で、家ごとの傷みや敷地の事情を価格に反映しきれないことがあります。
どちらを選ぶかは、査定のあとに何を決めたいかで考えます。次の4つの場面に当てはめてみてください。
| 査定のあとに決めたいこと・状況 | 選ぶ方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 売るか持ち続けるかを家族で話し合いたい | 机上査定 | 概算の価格を、ローン残高や固定資産税などの維持費と比べられる |
| 売り出し価格や引き渡しの時期を決めたい | 訪問査定 | 建物の傷みや道路との接し方を反映した価格で考えられる |
| 相続した古い家で、傷みや隣との境目が分からない | 訪問査定 | 傷みや境界標を現地で確かめられる(測量が要るかは土地家屋調査士に聞く) |
| 遠方にあり、すぐには家を開けられない | 机上査定から始める | まず相場をつかみ、訪問が要るときに鍵や立ち会う人を決める |
机上査定を挟まずに、最初から訪問査定を頼むこともできます。売ると決めている場合や、家の傷みが気になる場合は、はじめから訪問査定でかまいません。
査定を頼んでも、その会社に売却を任せる約束にはなりません。査定の依頼と、媒介契約(不動産会社に売却の仲介を正式に頼む契約)、買主と結ぶ売買契約は、それぞれ別の手続きです。売却の流れでは、価格査定、媒介契約、売買契約の順に進みます(出典:不動産売買の手引。参照資料の一覧へ移ります)。媒介契約を結ぶかどうかは、査定額や会社の説明を見てから決められます。
結果が出るまでの期間はどのくらい?
不動産会社の案内例では、机上査定は即日〜数日、訪問査定の査定書は数日〜1週間ほどが目安です(出典:野村不動産ソリューションズ。参照資料の一覧へ移ります)。
ただし、これらの日数は、法律で決まった期間でも、全社に共通する日数でもありません。現地確認にかかる時間や、役所での調査の有無、会社の予約の状況で変わるからです。日数をいつから数えるか(申し込んだ日か、現地を見た日か)も、会社によって違います。
申し込むときは、次の2つを担当者に聞いておくと予定を立てやすくなります。
- 現地確認にかかる時間
- 査定書を受け取るまでの日数と、いつから数えるか
机上査定で分かること、分からないこと
机上査定では、主に次の情報を使います。
- 所在地と、最寄り駅からの距離などの交通の便
- 土地と建物の広さ(マンションは部屋の広さ)
- 築年数、建物の構造、間取り
- 近くで実際に売れた事例と、売り出し中の物件の価格
- 地価公示(国が毎年公表する土地の価格)などの公的な価格
取引価格や成約の事例、都市計画や防災の情報は、国土交通省の不動産情報ライブラリでだれでも見られます(出典:不動産情報ライブラリ。参照資料の一覧へ移ります)。不動産会社も、こうしたデータを基準の1つにしています。
一方で、現地を見ないと分からないこともあります。広さや築年数は反映できても、次のような家ごとの条件は、資料と聞き取りだけでは確かめにくいからです。
- 室内の傷み(床や壁の傷、設備の故障、たばこやペットの跡)
- 日当たり、風通し、窓からの眺め
- 道路との高低差、擁壁(土が崩れないよう支える壁)の傷み
- 境界標(隣の土地との境目を示す印)があるかどうか
- 騒音や振動、近くの建築計画
そのため、机上査定の金額は「この地域でこの条件なら、このくらい」という相場の目安として使います。自動で計算するAI査定も、似たデータから価格を出す仕組みです。データの新しさや、家ごとの事情をどこまで価格に反映できるかは、サービスごとに違います。AI査定の結果だけで売り出し価格を決めず、使ったデータと、反映できていない個別の事情を確かめてください。
訪問査定では何を見る?物件の種類ごとの確認点
訪問査定では、机上で集めた事例や公的なデータを土台にします。そこへ現地で見た家ごとの条件を加え、価格を上げ下げして調整する方法です。
何を見るかは物件の種類で変わるので、主なところを次の表にまとめました。表のうち戸建ての行は、価格査定の手引きにある確認項目に沿っています(出典:既存住宅価格査定マニュアル 手引き。参照資料の一覧へ移ります)。マンション・土地・長期空き家の行は一般的な確認点の例で、実際に見る項目は会社や物件で変わります。
| 物件の種類 | 現地で主に見るところ |
|---|---|
| 戸建て(建物) | 屋根・外壁・基礎のひび割れ、雨漏りやシロアリの跡、内装と設備の傷み、修繕の記録 |
| 戸建て(敷地) | 前面道路の幅と接し方、敷地の形と高低差、境界標、建築確認済証などの書類 |
| マンション | 室内の手入れとリフォームの跡、日当たりや騒音、玄関ホールやエレベーターなど共用部分の管理 |
| 土地(更地) | 道路や隣地との高低差、擁壁の傷み、電柱、水道・下水の引き込み、枝や物のはみ出し、境界標 |
| 長く空いている家 | 室内のカビや木の腐り、雨漏り、庭木のはみ出し、残された家財の量 |
戸建ては家ごとの差が大きく、訪問査定で初めて分かることが特に多い種類です。マンションは、同じ建物に似た部屋の取引があれば、机上査定でも相場の見当はつきやすいでしょう。ただし、管理規約(マンションの使い方の決まり)による制限は、書類で確かめます。修繕積立金(将来の修繕に備えて集めるお金)の貯まり具合や値上げの予定も、管理組合への問い合わせなどで調べます。
土地では、境界をはっきりさせる測量が要るかどうかも気になるところです。これは、売る条件と手元の資料をもとに、土地家屋調査士(境界の測量の専門家)に確かめます。地中の配管や、擁壁が法律の基準に合っているかは、訪問査定では分かりません。役所や専門の機関で、別に調べることになります。
たとえば、次のような場合です(想定の例)。遠方の実家を机上査定したところ、周りの相場に近い額が出ました。ところが訪問査定で、雨漏りの跡と、庭木が隣の敷地へはみ出していることが分かります。こうなると、建物を残したまま売るか、解体して更地で売るかから考え直すことになります。
戸建ての土地と建物で見られる項目は、戸建て査定の確認項目の記事で詳しく確かめられます。
詳しく:査定額はどう計算される?
詳しい説明を開く
訪問査定の計算のしかたは、不動産流通推進センターの価格査定マニュアルにまとまっています(出典:価格査定マニュアル。参照資料の一覧へ移ります)。土地(住宅地)は、近くの取引事例と比べる「取引事例比較方式」で求めます。戸建ての建物は「原価方式」です。
原価方式では、同じ建物をいま建てたらいくらかかるかを出し、古くなった分を差し引きます。そのうえで、現地で見た個別の要素を点数にして、価格の差を調整します。
訪問査定の前に何を準備する?
訪問査定の前に、家をモデルルームのように掃除したり、家財を全部処分したりする必要はありません。担当者が見たいのは、きれいさではなく建物と敷地の本当の状態です。準備では、安全に見てもらえることを優先します。
片付けは「見てもらう場所まで歩ける」ところまで
次の場所まで、担当者が歩いて近づけるようにしておきます。
- 玄関から各部屋、廊下、バルコニーまでの通り道
- 床下や天井の点検口、分電盤(ブレーカー)、給湯器、水道メーターのまわり
- キッチン、洗面台、浴室、トイレ
- 建物の外まわり、基礎や外壁、擁壁、境界標のまわり
動かすのは、安全に動かせる荷物だけで十分です。高い所の作業や床下に入ること、壊れて危ない場所への立ち入りを、自分でする必要はありません。
開かない部屋や建て付けの悪い戸、つかない電灯があれば、訪問の前か当日の最初に伝えます。電気や水道が使えるか、止まっているかも、あわせて知らせておきましょう。
査定の前に、自分の判断だけで有料のリフォームやハウスクリーニングを頼むのは控えます。かけた費用が、そのまま売り出し価格に上乗せされるとは限らないからです。手を入れる所があるかは、訪問査定で担当者の意見を聞いてから決められます。
書類は手元にあるものだけ
書類は、まず手元にあるものだけを用意します。見つからない書類があるときは、その旨を担当者に伝え、査定に必要な追加の確認を聞いてください。
- 登記事項証明書(登記簿の内容を証明する書類。持ち主や権利の確認に使う)
- 土地や建物の図面、測量図
- 建築確認済証、検査済証(建てたときに法律に合っていたかを確かめる書類)
- リフォームや修繕の見積書、領収書
- マンションなら管理規約、修繕積立金の通知
書類ごとの取り方と使い道は、不動産査定の必要書類の記事にまとめています。
知っている不具合は先に伝える
雨漏り、シロアリの被害、建物の傾き、設備の故障は、知っていれば査定のときに担当者へ伝えます。過去の浸水、近所とのもめごと、境界の争いも同じです。売るときは、仲介する不動産会社から、告知書の作成への協力を頼まれるのが一般的です(出典:不動産売買の手引。参照資料の一覧へ移ります)。告知書は、売主が家の状態を買主に知らせるための書面(物件の状況等の報告書)です。
不利なことを隠して査定額を高く見せても、売主のためにはなりません。売買契約のあとで契約不適合責任(契約の内容と違ったときの売主の責任)を問われるおそれがあるからです。その場合、損害賠償や契約の解除を求められることもあります。
立ち会えないとき、入居者がいるとき
遠方の実家では、所有者が現地に行けないこともあります。その場合は、次の方法を不動産会社と相談します。
- 所有者の委任状を持った親族が立ち会えるか確かめる
- 鍵を預けて立ち会いなしで見てもらうなら、鍵の送り方と現地で預かる人を決める
- 鍵を返す期日も決め、メールなど記録に残る形で合意しておく
賃貸中で入居者がいる家は、所有者でも勝手に室内へ入れません。国土交通省の賃貸住宅標準契約書は、国が示す契約書のひな形です。そこでも、貸主が部屋に入るには、原則として借主の事前の承諾が要るという条項例が置かれています(出典:国土交通省 賃貸住宅標準契約書。参照資料の一覧へ移ります)。
ひな形を使うかどうかは自由なので、実際の賃貸借契約書の中身を確かめてください。そのうえで、入居者と日程を合わせます。遠方の実家を売る全体の進め方は、遠方の実家を売却する方法の記事で説明しています。
査定書を受け取ったら、金額より先に何を聞く?
査定書を受け取ったら、金額の高さだけで会社を選ばないようにします。高いか低いかだけでは、実際にその額で売れるかは分からないからです。査定額と、実際に売れる価格の違いは、査定額と売却価格の違いの記事で整理しています。
不動産会社は、媒介契約の対象となる価額について意見を述べるとき、その根拠を明らかにしなければなりません(出典:国土交通省 解釈・運用の考え方。参照資料の一覧へ移ります)。宅地建物取引業法(不動産取引の仕事のルールを定めた法律)の第34条の2第2項(新しいタブで開きます)の決まりです。査定の段階でも、根拠を聞くことに遠慮はいりません。
聞くときは「この金額は、どの事例と比べて、どこをどう調整したのか教えてください」の一言で足ります。確かめたいのは、次の5点です。
- どの取引事例・売り出し事例と比べたか(近くで実際に売れた事例か、立地や築年数がかけ離れていないか)
- 比べた事例との差を、どう調整したか(駅からの距離、築年数、道路との接し方、建物の傷み)
- どのくらいの売却期間を見込んだ価格か
- 今のまま引き渡す前提か、修繕や解体をしてからの前提か
- 役所での調査など、まだ調べていないことは何か(建てられる大きさの制限、建て替えができるかなど)
3つ目の売却期間は、提示額がどんな前提かを知る手がかりになります。不動産流通推進センターの既存住宅価格査定マニュアルは、3か月ほどで買い手が付くことを目安に価格を算出します(出典:既存住宅価格査定マニュアル 手引き。参照資料の一覧へ移ります)。全社共通の売却期間ではないため、提示額が同じ考え方で出したものか、担当者に聞いてみてください。
査定は無料?費用がかかる調査との違い
査定の費用と、別にかかる調査
売り出し価格の意見の根拠を示すために行った査定の費用は、依頼者に請求できないとされています(出典:国土交通省 解釈・運用の考え方。参照資料の一覧へ移ります)。売却の仲介を前提にした机上査定と訪問査定でも、申し込むときに費用がかかるかを確かめてください。ただし、媒介契約に伴って特別に遠隔地への出張を頼む場合は別です。会社は、請求する費用の見積りを事前に説明するべきとされています。
次の手続きは、仲介の査定とは別の仕事で、別に費用がかかることが多いものです。
- 不動産鑑定士による不動産鑑定評価書の作成
- 土地家屋調査士などによる境界確定の測量
- 建築士による建物状況調査(インスペクション)や耐震診断
建物状況調査の費用には基準がなく、依頼者が負担するのが一般的とされています(出典:建物状況調査Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。不動産会社が媒介のほかに関連の業務を有料で行うときは、媒介契約とは別に、業務内容と報酬額を書いた書面で契約する扱いです。頼む前に、範囲と見積もりを確かめてください。
なお、仲介の査定額と、不動産会社が自ら買い取るときの「買取価格」は性質が違います。早く手放したいときの考え方は、空き家の仲介と買取の違いの記事で比べています。
訪問査定・建物状況調査・不動産鑑定評価の違い
担当者が家を見に来て書類を作る点は同じでも、目的も行う人も違う手続きが3つあります。
| 項目 | 訪問査定 | 建物状況調査 | 不動産鑑定評価 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 売り出し価格や売り方を考える | 建物の傷み具合を客観的に知る | 価格を外に示す必要があるとき(調停・裁判など) |
| 行う人 | 不動産会社 | 講習を修了した建築士 | 不動産鑑定士(国家資格) |
| 見方 | 目視、資料、売主からの聞き取り | 国の基準に沿った目視や計測 | 鑑定評価の基準に沿った判定 |
| できる書類 | 価格査定書 | 建物状況調査報告書 | 不動産鑑定評価書 |
| 費用 | 仲介の査定は請求できないとされる | 有料 | 有料 |
訪問査定は、いくらで売り出すのが妥当かの提案です。建物の構造の安全を保証する検査ではありません。
建物状況調査は、建物を支える部分や、雨水が入るのを防ぐ部分の傷みを調べるものです(出典:国土交通省 既存住宅状況調査制度。参照資料の一覧へ移ります)。一方、不動産鑑定評価は、国家資格を持つ不動産鑑定士が行う価格の判定です(出典:国土交通省 不動産鑑定士。参照資料の一覧へ移ります)。相続人どうしの調停や裁判などで価格を外に示す必要があるときは、頼むかどうかを弁護士や不動産鑑定士に確かめてください。
不動産会社が価格の根拠を書面で示すときは、不動産鑑定評価書ではないと明記します(出典:国土交通省 解釈・運用の考え方。参照資料の一覧へ移ります)。ほかの目的にみだりに使わないよう、依頼者に求める扱いです。この記事の内容は一般的な情報です。媒介契約書などの中身が分からないときは、署名の前に弁護士や司法書士にご相談ください。
詳しく:建物状況調査と保険、媒介契約のときの確認
詳しい説明を開く
建物状況調査を受けても、既存住宅売買瑕疵保険(中古住宅の欠陥に備える保険)に入れると決まるわけではありません(出典:建物状況調査Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。保険の検査を兼ねられるかどうかには、別の検査基準などの条件があります。
媒介契約を結ぶときは、建物状況調査をする業者のあっせん(紹介)を希望するかどうかを確かめます。宅地建物取引業法の第34条の2第1項第4号(新しいタブで開きます)で、媒介契約の書面に書く事項とされているものです。
よくある質問
質問と回答を開く(4件)
机上査定を飛ばして、最初から訪問査定を頼める?
頼めます。売ると決めている場合や、家の傷みや境界が気になる場合は、はじめから訪問査定でもかまいません。机上査定は、売るかどうかを決める前の判断材料として使う方法です。
机上査定と訪問査定で、価格は何%くらい変わる?
価格差を一律に何%と示せる根拠は、確認できていません。土地の形や前面道路の幅、建物の傷みや修繕の記録、周りの事例の多さで、差の大きさは変わります。訪問査定で価格が上下したら、現地でどの項目をどう評価したのかを確認してください。
訪問査定のあとで断ったり、ほかの会社に頼んだりできる?
できます。査定を受けることと、媒介契約を結ぶことは別だからです。売るのを見送るときや、ほかの会社に任せるときは、電話かメールで断りの連絡を入れれば足ります。不動産会社からの連絡への対応は、一括査定のあとの電話と断り方の記事にまとめています。
査定額を上げるために、先にリフォームしたほうがいい?
自分の判断だけで、先にリフォームする必要はありません。設備を新しくしても、その費用がそのまま査定額や売れる価格に上乗せされるとは限らないためです。買主が、買ってから好みに直したいと考えることもあります。手を入れるかどうかは、訪問査定のときに担当者に相談してから決めましょう。
