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相続したマンション売却する前に|管理資料と費用の確認表

相続マンションは室内と査定額だけでなく、名義・担保、管理費等、規約・使用条件、建物の修繕計画を一緒に確認します。相続登記や残債、滞納、長期修繕計画、総会決議、駐車場、賃貸中の条件を最新資料と照合し、同じ資料を査定会社へ渡します。

まだしないこと

売主・共有者の意思、滞納や賃貸条件が不明なまま契約を決めない

まずすべきこと
  1. 区分建物・敷地権・登記名義・担保を確認する
  2. 管理費等の月額・滞納額を同じ基準日で管理会社へ聞く
  3. 最新の管理規約・長期修繕計画・総会資料を集める

このページで決めること名義とマンション固有の管理情報を一枚にし、査定へ進めるか、売却条件を決める前に何を確認するかを決められます。

相続人がマンション売却前に登記・管理費・修繕計画・室内状態を確認する様子
公開日 2026年8月31日最終更新日 2026年9月14日法令・制度確認日 2026年8月31日執筆・編集 住まいのよりみち編集部読了目安 14

相続したマンションを売却するときは、室内の間取りや傷み具合を見るだけで不動産会社に査定を依頼してはいけません。まずは相続登記を行って、売主となる相続人の名義を確定させます。それと並行して、管理会社や管理組合から「管理費・修繕積立金の状況」「管理規約」「長期修繕計画書」「総会議事録」などの建物管理資料を取り寄せることが先決です。

一戸建ての売却と異なり、マンションは建物全体を他の区分所有者と共有しています。そのため、専有部分(室内)の条件だけでなく、共用部分の維持修繕計画や管理組合の財務基盤が、購入希望者の判断や金融機関の住宅ローン審査に直結します。

この記事では、名義の確定から管理情報の収集、専有部と共用部の責任区分、査定方式の比較、手取り額の試算までを順を追って解説します。そして、売却前の確認事項を整理できる実務確認表をまとめました。

1. 相続登記と遺産分割による売却名義の確定

亡くなった被相続人の名義のままでは、マンションの売買契約を結んでも買主へ所有権移転登記を行えません。不動産登記法上、所有権移転登記は登記名義人(売主本人)から買主へ行う必要があります。被相続人の名義から買主へ直接名義を移すことは認められていません。そのため、売買代金を決済する期日までに相続登記を完了させておくことが、通常の取引における大前提となります。

2024年4月1日より、相続登記の申請が法律で義務付けられました。不動産を取得した相続人は、相続の開始および所有権の取得を知った日から3年以内に申請を行わなければなりません。正当な理由のない不申請には、10万円以下の過料が科される可能性があります。制度の詳細は法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(新しいタブで開きます)で公開されています。

相続登記を完了させる手順は次の通りです。

  • 遺言書の有無を確認します。有効な遺言書(公正証書遺言、法務局の遺言書保管制度を利用したもの、自筆証書遺言の検認済のもの等)によって取得者が単独で指定されている場合は、遺産分割協議を行わずに相続登記手続きを進められます。遺言書がない場合は、相続人全員による遺産分割協議が必要です。
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類、および全相続人の現在戸籍を取り寄せて法定相続人を確定します。
  • 遺産分割協議を行う場合は、相続人全員で協議を行います。そのマンションを誰が単独で取得するか(または売却してお金を分ける「換価分割」のために代表して取得するか)を決めて遺産分割協議書を作成し、実印を押します。複数の相続人が共有名義のまま売却を進めると、売り出し価格や売買条件を巡って意見が対立した際に取引が進まなくなるリスクがあります。相続人間で売却方針に合意が形成できていない場合は、売却活動をいったん停止し、遺産分割協議による名義の一本化を最優先に進めてください。
  • 被相続人が組んでいた住宅ローンの残債を確認します。団体信用生命保険(団信)が適用されて完済となる場合は、金融機関から抵当権抹消書類を取り寄せます。団信が適用されないローン残債が残る場合は、売却代金による一括返済と抵当権抹消の段取りを司法書士と金融機関に確認します。
  • 物件を管轄する法務局へ、相続登記(所有権移転登記)を申請します。

相続登記が完了する前であっても、不動産会社への事前査定相談や媒介契約の締結を進めること自体は実務上可能です。ただし、決済・引渡しまでに登記が完了していなければ取引を実行できません。なお、登記識別情報通知(従来の権利証)を紛失している場合でも、司法書士による本人確認情報の作成などの代替手続きが法律上認められています。権利証の有無よりも、遺産分割協議が整っていない段階で売却契約を急ぐことこそが大きなトラブル原因となります。そのため、相続人間の合意形成を慎重に進めてください。

2. 管理組合・管理会社への死亡通知と新連絡先の届出

マンションの所有者が亡くなったときは、速やかに管理会社または管理組合の理事長へ通知し、連絡先変更の手続きを行います。

国土交通省「マンション標準管理規約」(新しいタブで開きます)のモデル条文では、区分所有者の資格を取得した人や氏名・住所を変更した人は、遅滞なくその旨を管理組合に届け出なければならないと定められています。各マンションの管理規約でも、同様の届出義務が置かれていることが一般的です。

この連絡を怠ると、次のような不都合が生じます。

  • 管理費や修繕積立金の請求書や、引き落とし不能通知が届かず、滞納に気付けなくなります。
  • 定期総会や臨時総会の招集通知、議決権行使書が届かず、大規模修繕や規約改定の決議に参加できなくなります。
  • 共用部の給排水管清掃、消防設備点検、窓サッシ改修工事などの連絡を受け取れず、点検拒否とみなされたり住民トラブルに発展したりする恐れがあります。
  • 室内で漏水事故や火災などの緊急事態が発生した際に、管理室からの緊急連絡が取れなくなります。

管理会社へ連絡する際は、「被相続人が亡くなったこと」「現在の相続連絡先(代表者の氏名・住所・電話番号・メールアドレス)」「今後売却を予定していること」を伝えます。あわせて、売却に必要な管理資料の発行手順や発行費用を確認しておきます。

3. 口座凍結に伴う管理費等の引き落とし停止と滞納債務の承継

被相続人が亡くなって金融機関にその事実が伝わると、被相続人名義の銀行口座は凍結されます。その結果、毎月自動引き落としされていた管理費・修繕積立金・駐車場使用料などの支払いが止まり、無自覚のまま滞納状態に陥るケースがあります。

マンションの管理費等の滞納については、債務(支払い義務)の発生時期や権利関係を正確に整理しておく必要があります。相続による権利義務の承継と相続放棄の扱いはe-Gov法令検索「民法」(新しいタブで開きます)、滞納管理費等を特定承継人へ請求できる範囲はe-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(新しいタブで開きます)で確認できます。

  • 死亡前に発生した滞納債務の承継:被相続人が生前に滞納していた管理費・修繕積立金は、被相続人の金銭債務として相続の対象になります。誰にどの範囲で請求されるかは、相続関係と債務の性質を確認して整理します。
  • 死亡後に発生する管理費等の支払い責任:相続開始から遺産分割が確定するまでに新たに発生する管理費等については、共同相続の状態と管理規約を踏まえて負担関係を確認します。物件を取得する相続人が決まった後の負担や、それまでに他の相続人が立て替えた分の精算方法も、遺産分割協議書などで明確にしておきます。
  • 相続放棄を検討する場合の注意点:相続放棄を視野に入れている場合、被相続人の預金から滞納管理費等を支払ってしまうと、遺産を相続することを認めた(法定単純承認)とみなされ、相続放棄が認められなくなるリスクがあります。
  • 管理費等と駐車場契約等の区別:区分所有関係に基づいて一律に発生する管理費・修繕積立金と、管理組合や第三者との個別契約に基づく駐車場・駐輪場などの使用料債務は、法律上の性質が異なります。駐車場などの使用契約は、解約や承継の手続きが規約や個別契約書ごとに定められているため、それぞれ分けて確認しておきます。
  • 買主(特定承継人)への請求権と売買契約上の清算合意:区分所有法第7条および第8条の規定により、管理組合は滞納がある住戸を新たに購入した買主(特定承継人)に対しても、前所有者が滞納していた管理費等(共益費等の債権)を請求できます。実際の売買契約では「引渡日までに売主が滞納管理費等を全額清算する」といった特約を取り決めることが通例です。ただし、これは売主と買主の間における内部的な合意であり、管理組合に対する法律上の請求権や責任とは別個の法律関係となります。

なお、滞納額が多額にのぼり、売却代金や手持ち資金を合わせても決済日までに全額清算できない場合は、通常の仲介による売却を進めることができません。管理組合から先取特権を行使されたり、競売を申し立てられたりする恐れがあります。債務整理や任意売却への移行を検討すべき重大な見極めポイント(停止線)となるため、不動産会社や弁護士などの専門家と早急に対応を協議してください。

4. 修繕積立金の総額と将来の値上げ・一時金徴収計画

修繕積立金に関しては、まず「売却時にこれまで積み立てたお金は返還されない」という大原則を押さえておく必要があります。国土交通省「マンション標準管理規約」(新しいタブで開きます)第60条第7項等に基づき、区分所有者が納入した修繕積立金は、専有部分を他人に譲渡しても返還請求できません。各マンションの管理規約でも同様に返還請求の禁止が定められており、過去の積立金は管理組合全体の共有財産として、将来の修繕のために留保されます。その前提を踏まえ、売却にあたっては自分の部屋の納入状況だけでなく、マンション一棟全体の修繕積立金残高と財務状況を確認します。

不動産の売買取引では、宅地建物取引業法に基づく買主への重要事項説明(35条書面)に向け、管理会社や管理組合から「重要事項調査報告書」を取り寄せます。これは不動産会社が管理状況を調査・確認するための資料であり、不動産会社(宅地建物取引業者)が交付・説明する法定の重要事項説明書そのものとは区別されます。開示項目や管理状況の基準としては、国土交通省「取引時におけるマンション管理に関する情報開示 参考資料」(新しいタブで開きます)国土交通省「マンションの管理状況チェックシート」(新しいタブで開きます)が参考になります。

具体的に確認すべき財務項目は、主に次の事項です。

  • マンション全体の修繕積立金総額:管理組合全体の積立残高が、長期修繕計画に定められた予定積立額を満たしているか確認します。
  • マンション全体の滞納総額:全戸の中で管理費や修繕積立金を長期間滞納している住戸の合計額を把握します。滞納比率が高いマンションは、将来の資金不足に直面しやすくなります。
  • 修繕積立金の値上げ予定や一時金徴収の決議:直近の総会で積立金の値上げが可決されていないか、あるいは次回の大規模修繕工事に合わせて一時金の徴収が計画されていないかを調べます。なお、国土交通省の標準管理規約改定(2025年10月改正等)が公表されていても、各マンションの総会決議等を経て規約が改定されなければ、個別のマンションに自動適用されるわけではありません。

管理組合の積立金状況や将来の値上げ・一時金徴収予定は、購入後の毎月の維持費に直接影響するため、買主の購入判断や借入可能額の重要な検討材料となります。ただし、実際の成約価格や住宅ローンの融資可否は、立地や築年数、専有面積、リノベーション需要など複数の要素が合わさって決まります。積立金の状況だけで売却や融資の可否を一律に断定するのではなく、客観的な数値を把握したうえで不動産会社と販売戦略を練ることが重要です。

5. 管理規約と使用細則:ペット・リフォーム・賃貸条件の制限事項

マンションには建物ごとに個別の管理規約と使用細則が存在します。分譲当時の規約から総会決議によって改定されている事例も多いため、被相続人の部屋に残されている古い書類だけで判断せず、管理会社から最新の規約一式を取り寄せて確認します。

売却活動に影響を与える主な制限項目は次の通りです。

  • ペット飼育の制限:ペットを飼えるかどうか、飼育できる種類(犬・猫等)、頭数制限、体長制限、敷地内での抱擁義務(抱きかかえる決まり)など。ペット飼育を希望する買主への条件提示に影響します。
  • 専有部分のリフォーム規定:床材をフローリングに張り替える際の所定の遮音等級、工事開始の何日前までに管理組合へ申請が必要か、下階や隣接住戸の承諾書が必要かどうか。購入後にリフォームを考えている検討者への重要情報となります。
  • 専有部分の用途制限と賃貸中(オーナーチェンジ)の条件:住居専用規定の有無、民泊の禁止規定の有無を確認します。また、被相続人が第三者に部屋を賃貸していた物件を売却する場合、空室での引渡しを当然の前提とすることはできません。賃貸借契約書の内容、家賃の受領状況、敷金の返還債務の引き継ぎ、買主への貸主地位の承継手続きを確認します。入居者が暮らしているため室内の内覧には入居者の事前同意が必要となる点も踏まえ、オーナーチェンジ物件としての売却条件を整理します。なお、借地借家法上、正当事由や退去合意がない限り、入居者を一方的に退去させることはできません。明渡し交渉が難航している場合は、空室引渡しを条件とした売却活動をいったん停止し、賃借人付きのオーナーチェンジ売却へ切り替えるか、退去が完了するまで売却契約を見合わせる判断が必要です。
  • 駐車場・駐輪場・トランクルーム等の専用使用権:専有部分を売却した際、親が使っていた駐車区画の専用使用権が買主にそのまま引き継がれるのか、それとも売却時に一度管理組合に返還されて再抽選や空き待ち(ウェイティング)に回るのかは、規約や使用細則によって分かれます。「駐車場付き」と誤解させて販売トラブルにならないよう、そのマンションにおける承継可否のルールを事前に確認します。

6. 長期修繕計画書と総会議事録:修繕履歴と管理課題の精査

建物の維持管理状態を客観的に確認する書類が、「長期修繕計画書」と「総会議事録」です。これらは不動産会社が管理状況を精査する際の中核資料となります。

確認すべき具体的な内容は次の通りです。

  • 長期修繕計画の期間と見直しの時期:国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン」(新しいタブで開きます)では、計画期間として「30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回以上含まれる期間」が示され、定期的な見直しも推奨されています。これは法律で一律に義務付けられたものではありませんが、対象マンションの計画期間や見直しの有無を確認する基準となります。
  • 過去の大規模修繕工事履歴:外壁塗装、屋上防水、バルコニー床防水、共用給排水管の更新・更生工事が、適切な周期で実施されてきたかを確認します。
  • 直近1〜3期分の定期総会・臨時総会の議事録:議事録には、収支決算報告や役員の改選だけでなく、住民間で問題になっているトラブル(騒音、ゴミ出し、違法駐車)、共用設備の不具合(エレベーターの故障、給排水管の漏水事故)、管理費値上げの協議経過などが具体的に記載されています。

買主側の仲介会社は、契約前にこれらの資料を精査し、買主に重要事項として説明します。売主側も事前に議事録に目を通しておくことで、買主側から指摘される可能性のある懸念点を先回りして把握できます。

7. 専有・共用の境界と室内設備の不具合確認

マンションの修繕責任は、区分所有者が単独で所有する「専有部分」と、全員で共有する「共用部分」に分かれます。ただし、どこまでが専有でどこからが共用か、費用負担をどう分担するかは、各マンションの管理規約や建物の配管構造によって異なるため、一律に決めつけず確認が必要です。

国土交通省「マンション標準管理規約」(新しいタブで開きます)のモデル区分を参考にしつつ、以下の点を確認します。

  • 専有部分と配管の修繕責任:住戸内部の内装仕上げ(壁紙、フローリング、畳)、建具、設備機器(給湯器、換気扇、キッチン、ユニットバス、便器等)は専有部分に属します。給排水管については、専有部分内を通る枝管であっても、床スラブ下の配管構造や管理規約の定めによって共用部分として扱われる事例や、管理組合による一括更新工事の対象とされる事例があります。「枝管だからすべて売主負担」「共用部だから常に積立金で修繕」と一律に判断せず、配管構造と管理規約を確認します。
  • 共用部分の維持管理:建物の躯体(柱、梁、外壁、床スラブ)、屋上、共用廊下、エントランス、階段、エレベーター、共用給排水本管(縦管)などは共用部分です。原則として管理組合の責任において維持修繕が行われますが、修繕費用の財源が修繕積立金から充当されるか一般の管理費から賄われるかは、規約や総会決議によります。
  • 専用使用部分の日常管理と費用負担:バルコニー、専用庭、サッシ・窓ガラス、玄関扉(錠および内部塗装面を除く部分)などは、専用使用権が認められた共用部分です。勝手に製品を交換することはできず管理組合の承認等が必要となります。また、日常の維持管理や軽微な補修(バルコニーの清掃や窓ガラスの補修等)については、規約で使用者の負担と定められている場合があるため、負担区分を規約で確認します。

室内設備を確認する際は、給湯器の燃焼動作、水栓からの水漏れ、排水の詰まり、建具の建て付け、雨漏りや結露の跡を点検します。故障がある場合は、不動産取引の「付帯設備表」および「物件状況等報告書」に隠さず明記します。売買契約において「現況有姿(故障のまま引き渡し、売主の修補義務を免責とする)」という特約を結ぶのか、それとも売却前に修理するのかを、不動産会社と相談して取り決めておきます。

8. 鍵・取扱説明書・残置物の整理と現地内覧への備え

買主への引き渡しを円滑に進めるため、室内の備品と残置物を整理します。

  • 鍵類の照合:オートロック連動キー、住戸玄関キー、宅配ボックス解錠用具、トランクルームの鍵を揃えます。複製キー(合鍵)だけでなく、メーカー刻印のある純正キーなどが何本揃っているかを確認します。純正キーの紛失や不足がある場合は、防犯上の観点から、引き渡し時のシリンダー(鍵穴)交換について買主と事前の調整が必要になることがあります。
  • 設備の取扱説明書・保証書・図面の収集:給湯器リモコン、浴室乾燥機、インターホン、ビルトインコンロ、ディスポーザーなどの取扱説明書や、分譲時の設計図書・パンフレットを1か所にまとめます。これらが揃っていると、購入検討者に対して維持管理が行き届いていた印象を与えられます。
  • 室内の残置物(家財道具)の整理と内覧準備:空室の状態で一般の買主に向けて仲介で売却する場合、原則として家具・家電・生活用品を撤去した状態に整えると、内覧時の確認がスムーズになります。賃貸中(オーナーチェンジ)で売却する場合は、入居者の事前同意を得て内覧を調整するか、内覧を行わずに取引条件を設定することになります。遺品整理や不用品撤去が必要な場合は見積もりを取り、決済日までの作業スケジュールを確保します。

9. 「仲介」と「買取」の比較:同一管理資料に基づく査定検証

売却方法には、不動産会社が買主を探す「仲介」と、不動産会社自身が直接買い取る「買取」があります。正確な査定額を算出してもらうため、揃えた登記事項証明書、管理規約、重要事項調査報告書、長期修繕計画書などの資料を提示し、両方の査定を同じ条件で取得して比較します。

表:比較項目、仲介による売却、不動産会社による直接買取
比較項目仲介による売却不動産会社による直接買取
売却価格市場相場に近い水準を目指せるが、成約価格は需要や交渉次第不動産会社の再販売コスト等が見込まれるため、市場相場より低くなる傾向がある
売却期間買主探索から成約・決済までの期間は市場環境や個別条件によって異なる買主探索が不要なため、条件合意後の契約・現金化までの期間を短縮しやすい
内覧対応一般の購入検討者に対する現地案内が複数回行われる場合がある査定・現況確認を行う不動産会社や関係者による確認が中心となる
契約不適合責任個人間売買では引渡後の修補責任等の有無や期間を特約で取り決める買主が宅建業者の場合は特約で免責とする合意が交わされることが多いが、個別契約による
残置物処分原則として引渡日までに売主側で撤去を完了させる条件が一般的不用品の残置や処分代行を売買条件に含めて相談できる場合がある
仲介手数料媒介契約に基づく仲介手数料が発生する(法定上限額あり)自社直接買取のため仲介手数料は発生しない

仲介と買取のどちらを選ぶかは、現金化の期限と、室内の修繕や残置物撤去にかけられる手間を基準に判断します。例えば、相続税の申告・納税期限は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(国税庁「相続税の申告と納税」(新しいタブで開きます))。遺産分割協議が円滑に整い、納税資金の準備や売却活動に時間を確保できる場合は、市場相場での成約を目指せる「仲介」が適しています。一方、納税期限が迫っている場合や、室内の片付け・修繕の手間を抑えて速やかに現金化したい場合は、「買取」の査定条件を併せて比較検討してください。

10. 売却諸経費・税金・ローン残債を差し引く手取り額の試算

マンションの売却代金がすべて手元に残るわけではありません。売却代金から諸費用、税金、そして残債がある場合は住宅ローンの完済額を差し引いて、実際の手取り額(正味受取額)を事前に試算します。なお、住宅ローンの完済額は売買代金の精算項目ですが、税務上の「譲渡費用」とは別枠の支出となります。

売却時に発生する主な支出項目は次の通りです。

  • 仲介手数料:仲介で売却した場合に発生します。売買価格に応じた上限や低廉な空家等の特例は、国土交通省「不動産取引に関するお知らせ・仲介手数料」(新しいタブで開きます)で確認できます。媒介契約を結ぶ前に、適用する計算方法と税込額を書面で確認してください。
  • 住宅ローン完済額(該当する場合):被相続人の住宅ローン残債が残っている場合、売却代金から完済するための元金・利息・手数料です。手取り計算上の控除項目ですが、税金の計算上は譲渡費用に含まれません。
  • 相続登記費用:登録免許税および司法書士へ依頼する場合の報酬です。税率は登記原因などで異なるため、法務局「登録免許税の計算」(新しいタブで開きます)と固定資産評価証明書を照らして確認します。
  • 抵当権抹消登記費用:住宅ローン等の担保権が残っている場合の登録免許税および司法書士報酬です。課税対象となる不動産の個数も含め、同じ法務局資料で確認します。
  • 管理会社への調査報告書発行手数料:管理規約写しや重要事項調査報告書の発行費用(管理会社所定)です。
  • 滞納管理費等の清算金:過去の未払金がある場合、売却決済日までに清算する費用です。
  • 印紙税:売買契約書に貼付する国税(売買金額に応じた印紙税額)です。
  • 残置物撤去・遺品整理費用:部屋の広さや荷物量に応じた費用です。

売却によって利益(譲渡所得)が生じた場合は、所得税と住民税が課税されます。譲渡所得の計算式は次の通りです。

譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)

相続によって取得した不動産を売却する場合、被相続人の取得時期および取得費を引き継ぎます。取得費は、被相続人がそのマンションを購入した代金や購入手数料等の合計額から、所有期間に応じた減価償却費相当額を差し引いて計算します。減価償却費の計算は建物部分に対してのみ適用され、土地(敷地権)部分には適用されません。

購入当時の売買契約書や領収書が手元にない場合でも、直ちに概算取得費に限定されるわけではありません。預金通帳の出金記録、住宅ローンの金消契約書、分譲当時のパンフレット等の客観的な周辺資料を収集し、実額を合理的に立証・確認できる余地があります。周辺資料を精査しても実際の購入額がどうしても不明な場合には、売却価格の5%を概算取得費として選択できます。

また、相続した不動産の売却では以下の税務特例の適用可否を検討します。

11. 実務確認表:査定前の管理資料と費用チェック項目

相続したマンションの売却準備を一覧で確認できる実務確認表です。不動産会社へ査定を申し込む前に、各項目の確認先と書類を揃えてください。

表:確認項目、確認先・取得先、主な確認内容、売却・査定への影響
確認項目確認先・取得先主な確認内容売却・査定への影響
相続登記・名義管轄法務局登記名義人、抵当権の有無、敷地権表示登記完了が決済・引渡しの前提
管理組合窓口管理会社・管理組合所有者変更届の提出、新連絡先の登録督促状や総会通知の不着防止
自室の管理費等管理会社・通帳記録口座凍結に伴う滞納の有無、月額費用売買契約上の清算合意や引渡し条件の整理
修繕積立金の返還マンション管理規約積立金の返還請求権がないことの確認売却時に積立金は返還されない
全体の積立状況重要事項調査報告書管理組合全体の積立総額、全体の滞納額買主の資金計画や融資判断の参考材料
一時金・値上げ総会議事録・修繕計画近い将来の値上げ決議や一時金徴収予定買主の月々の負担増による価格交渉要素
規約制限管理規約・使用細則ペット飼育、リフォーム遮音基準、民泊禁止購入ターゲット層の限定や条件提示
賃貸借の条件賃貸借契約書・通帳賃料、預託敷金、貸主地位承継、内覧可否オーナーチェンジ売却の条件整理
駐車場等の権利管理規約・使用細則駐車場の承継可否、再抽選や返還の規程専有部分売却に伴う承継可否の事前提示
専有・共用区分管理規約・現地確認給排水枝管や室内の故障、窓や扉の区分売主が負担すべき修繕範囲と契約不適合責任
鍵・室内残置物現地室内純正キー等の本数、取扱説明書、不用品の量内覧時の印象、引渡し時の撤去費用
査定方式の比較不動産会社仲介査定価格と直接買取査定価格の比較納税期限や現金化の緊急度に応じた選択
手取り費用の試算不動産会社・税理士仲介手数料、各種登記費用、ローン完済額、譲渡所得税手元に残る正味資金の確定

参照資料

国土交通省「取引時におけるマンション管理に関する情報開示 参考資料」参照日 2026年8月31日国土交通省「マンションの管理状況チェックシート」参照日 2026年8月31日国土交通省「マンション標準管理規約」参照日 2026年8月31日法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」参照日 2026年8月31日