敷地や家の中に野生動物が入り込んだ際、市役所に相談することは可能です。ただし、自治体が私有地に入って直接駆除や捕獲を行ってくれるとは限りません。
市役所がどこまで対応するかは、自治体や対象となる動物によって大きく分かれます。相談受付や動物の判別、許可手続きの案内に留まる地域もあれば、条件を満たす場合に委託業者が捕獲作業を行う地域もあります。「市役所に相談できること」と「無料で駆除してもらえること」は同じではないため、お住まいの自治体と専門業者の対応範囲を正しく把握しておく必要があります。
自治体の支援範囲と制度の確認項目
自治体の制度によって対応範囲は大きく異なります。どこまでが行政の支援に含まれ、どこからが所有者自身や専門業者による対応となるのかを事前に確認しておくことが大切です。
| 項目 | 制度で確認したい内容 | 対応の傾向と留意点 |
|---|---|---|
| 相談・助言 | 被害相談の窓口、動物の判別、関係窓口や許可申請の案内 | 相談できる内容と、私有地の現地調査や追い出し作業まで支援するかを自治体の制度案内で確認します。 |
| 捕獲支援 | 捕獲許可の申請受付、箱わなの貸出、自治体による委託捕獲の有無 | 助言のみの自治体、箱わなを貸し出す自治体、条件付きで委託業者が捕獲を行う自治体など地域差があります。 |
| 建物工事 | 侵入口の封鎖、屋根裏や床下の清掃・消毒、ダニ等の防除 | 自治体の捕獲支援に含まれているか確認が必要です。含まれない場合は所有者自身や専門業者での対応となります。 |
| 費用負担 | 駆除費用や捕獲器設置費用の補助金制度、公費負担の有無 | 一般家庭向けの補助金や公費負担の有無、対象条件は地域によって異なります。一律で無料施工されるわけではありません。 |
自治体による対応の違い(3つの事例)
実際の支援内容は自治体ごとに定められています。以下に3つの自治体の事例を紹介します(いずれも2026年9月21日時点の公式案内による確認)。
- 横浜市(確認日:2026年9月21日)
住宅内へのアライグマやハクビシンの侵入について、委託業者による捕獲作業を実施しています。ただし、利用は1人につき年度内2週間に限られ、予算上限があるほか、庭の農作物被害など屋外の被害は対象外となります(参考:横浜市「野生動物による被害について」(新しいタブで開きます))。
- 板橋区(確認日:2026年9月21日)
アライグマやハクビシンによる家屋や庭などの被害に対して、委託業者による捕獲器の設置から回収・処分までを区の費用負担で実施しています。一方で、捕獲器に仕掛ける餌の用意や毎日の見回り確認など、住民側の協力が条件となっています(参考:板橋区「アライグマ・ハクビシンの被害対策」(新しいタブで開きます))。
- 仙台市(確認日:2026年9月21日)
ハクビシン被害について、侵入防止などの対策助言や、捕獲許可を担当する区役所・総合支所の窓口案内を行っています。あわせて、民間の専門業者への相談や複数社からの相見積もり、有害生物防除の専門事業者団体である宮城県ペストコントロール協会の案内などを掲載しています(参考:仙台市「ハクビシンによる被害について」(新しいタブで開きます)、仙台市「ハクビシンの駆除等に関するFAQ」(新しいタブで開きます))。なお、これは公式案内における対応例であり、同市に直接捕獲制度が存在しないと断定するものではありません。
自治体によって対応は異なりますが、所有者自身で管理を検討する必要がある場合でも、「必ず所有者本人が捕獲作業まで行わなければならない」とは限りません。ただし、制度案内があっても当日の受付余力や予算残額、捕獲器の空き状況などによって利用可否は異なるため、事前の窓口確認が欠かせません。
なお、相談内容によって担当窓口が分かれる場合があります。自治体の公式案内で次の項目に対応する部署を確認してください。
- 野生鳥獣の相談・捕獲許可手続き:環境保全課や農林課など
- 公道などでの動物の死骸処理:清掃担当課や環境事業所など
- 犬や猫などのペット関連:保健所や動物愛護センターなど
- シロアリやハチなどの害虫:衛生関連課など(相談や支援の範囲は自治体ごとに確認します)
市役所へ最初に伝える情報
市役所に電話や窓口で相談する際は、状況を整理して伝えることで適切な担当窓口へスムーズにつないでもらえます。
事前に以下の情報を確認しておきましょう。
- 発生場所(敷地内の庭、屋根裏、床下、公道など)
- 動物の特徴(大きさ、毛色、顔つき、鳴き声、フンの形状など)
- 侵入箇所(通風口の隙間、屋根の合わせ目など)
- 被害の内容(足音などの騒音、異臭、糞尿による汚損、農作物の食害など)
- 危険性の有無(人やペットへ危害が及ぶおそれがあるか)
- 状態(生きている個体か、死骸か)
家の中や敷地内で動物を見かけた場合でも、噛まれたり感染症にかかったりする危険性があります。無理に接近したり素手で捕獲しようとしたりせず、安全な距離を保ってください。
捕獲前に許可を確認する理由
野生鳥獣は法律によって保護されており、原則として無許可での捕獲は禁止されています。生活環境や農林水産業への被害を防ぐ目的でも同じです。法令上の例外や別制度による防除に当たる場合を除き、鳥獣保護管理法に基づく捕獲許可が必要です(参考:環境省「捕獲許可制度の概要」(新しいタブで開きます))。
ただし、すべての動物が同じ手続きになるわけではありません。例えばアライグマなどの特定外来生物には、外来生物法に基づく防除の枠組みが適用されます。この場合は鳥獣保護管理法の許可とは異なり、専用の届出や手続きが定められていることがあります(参考:横浜市「野生鳥獣の捕獲等の許可について」(新しいタブで開きます))。
また、捕獲許可に関する権限は都道府県から市区町村へ移譲されている場合があり、対象動物や捕獲方法、申請手続きの流れには地域差があります。自治体から箱わなの貸出を受けられる場合でも、器具を借りれば誰でも自由に捕獲できるわけではありません。誰が、どの制度や条件(対象動物や設置期間、毎日の見回り義務、捕獲後の回収・処分方法など)の下で行うのかを確認する必要があります。許可を受けずに捕獲器具を仕掛けると法律違反となるおそれがあるため、必ず事前にお住まいの自治体窓口へ手続きを確認してください。
専門業者へ進む場面
自治体の支援範囲に含まれない作業や、建物自体の処置が必要な場合は、民間の専門業者への相談を検討します。
具体的には、以下のような作業が必要となる場面です。
- 屋根裏や床下などに入り込んだ動物の生息調査
- 建物からの動物の追い出し
- 再発を防ぐための侵入口封鎖工事(金網やパンチングメタルの設置など)
- 建物内に残された糞尿の清掃・消毒
- 付着したダニや衛生害虫の防除
侵入口の封鎖工事や糞尿の清掃・消毒、ダニ等の防除といった建物・衛生面の処置は、自治体の捕獲支援に含まれているかを確認する必要があります。支援に含まれない作業については、所有者自身が専門業者に見積もりを依頼して進めることになります。
業者に依頼する際は、作業内容(追い出しや捕獲、侵入口の封鎖、清掃・消毒、ダニ等の防除など)に応じて、必要な資格や法的な許可、施工実績を備えているかを個別に確認することが大切です。実績と法的な許可はそれぞれ別の基準で確認し、自治体窓口で業者を紹介された場合であっても、市が施工品質や料金を保証しているわけではない点に留意してください。
費用の目安や作業ごとの相場を把握した上で依頼を検討したい場合は、害獣駆除の費用相場も参考にしてください。また、普段から人が出入りしない建物は害獣の侵入リスクが高まるため、空き家などの定期的な点検手順をあらかじめ確認しておくことも役立ちます。
電話前チェックリスト
お住まいの市役所に問い合わせる前に、確認・質問したい項目を整理しておくと対応がスムーズです。
- 自治体名と担当窓口(公式ウェブサイトで「鳥獣被害」「野生動物」などのキーワードで検索し、担当部署を確認する)
- 相談したい動物の種類(特定できているか、大きさや毛色などの特徴のみ分かる状態か)
- 捕獲支援制度の有無(委託業者による捕獲や箱わなの貸出があるか、対象動物や利用条件、毎日の見回り義務などのルール)
- 捕獲許可申請の要否と手続き(鳥獣保護管理法の許可や外来生物法の防除届出など、個人で手続きする場合に必要な書類や条件)
- 費用の公費負担や補助金制度の有無(自治体の費用負担や一般家庭向けの補助制度が存在するか、対象条件は何か)
- 専門業者や事業者団体の紹介の有無(地域の駆除業者やペストコントロール協会などの案内があるか)
市役所の窓口で地域の専門業者や事業者団体を紹介された場合でも、実際の施工品質や料金が保証されるわけではありません。見積もり金額や作業範囲(追い出し後の侵入口封鎖、清掃・消毒、ダニ等の防除まで含まれているか)は、依頼者自身が業者と十分に確認した上で契約を結ぶ必要があります。
なお、自治体によっては空き家の管理や改修に関連する支援制度を設けている場合がありますが、害獣駆除そのものが補助対象に含まれるとは限りません。利用できる支援制度があるかどうかは、個別の補助要綱や窓口で確認してください。まずはご自身の地域の担当窓口へ、現在の制度と対応手順を問い合わせてみてください。
