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相続人に未成年者がいる不動産売却|特別代理人を確認する順番

相続人に未成年の子がいても、不動産を売れないわけではありません。ただし、親権者と子の利益がぶつかる遺産分割などでは、家庭裁判所が選ぶ特別代理人が必要です。誰が子を代理できるかを確認してから分割・登記・売却へ進みます。

まだしないこと

未成年者を協議から外さず、親権者なら必ず代理できると考えて遺産分割協議書や売買契約書へ署名しない

まずすべきこと
  1. 戸籍から相続人、未成年者、親権者を書き出す
  2. 遺言書と不動産・預貯金等の財産資料を集める
  3. 親権者も相続人かを伝え、利益相反と特別代理人の要否を確認する

このページで決めること未成年者の権利を外さず、利益相反の有無、代理人、遺産分割、相続登記、売却の順番を整理できます。

未成年の相続人がいる家で利益相反と特別代理人手続を確認する家族
公開日 2026年9月4日最終更新日 2026年9月14日法令・制度確認日 2026年9月4日執筆・編集 住まいのよりみち編集部読了目安 8

売却を急ぐあまり、特別代理人が選任される前に買主と売買契約を結んでしまうと、選任手続きや登記が期日に間に合わず、契約違反になってしまうリスクがあります。親と未成年の子が同じ被相続人の共同相続人になる場合、どちらかの取得分が増えればもう一方の取得分が減るという「利益相反(りえきそうはん)」が起こるためです。

親権者に代理権がない利益相反の状態で交わされた遺産分割協議は、原則として本人である子どもに対して効力を持ちません(代理権がないまま行った「無権代理行為」となり、子どもが成人に達したあとの追認などがなければ効力を生じません)。そのため、利益相反がある状況では家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立て、選任された特別代理人が未成年者を代理して遺産分割協議に合意する必要があります。

まずは、相続関係の確定、利益相反の判定、家庭裁判所への申立て準備という順番を守って進めることが大切です。

戸籍・遺言・登記で相続関係と不動産の権利を確定する

不動産の売却や遺産分割を検討するときは、最初に客観的な資料を集めて事実関係を確定させます。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取り寄せ、法定相続人を漏れなく特定します。
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本を取り寄せ、遺産分割協議や売買契約を行う時点での年齢を確認します。現行の成年年齢は18歳です(e-Gov法令検索「民法」第4条(新しいタブで開きます))。なお、相続税の未成年者控除で使われる年齢判定(財産を取得した時点を基準とする判定)とは区別して確認します。
  • 戸籍謄本や審判書などを通じて、現在の親権者と親権者が持つ権限を確認します。2026年4月1日施行の民法等改正後は離婚後も共同親権となるケースがあり、重要な財産の処分を「日常の行為」として片方の親権者だけで進めることはできません。
  • 有効な遺言書(自筆証書遺言や公正証書遺言など)があるかどうかを調査します。遺言書で不動産を取得する人が指定されていれば、遺産分割協議を行わずに名義変更できる場合があります。
  • 法務局で対象となる不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、被相続人の単独所有なのか共有持分なのか、抵当権などの権利が設定されていないかを確認します。

親権者と未成年者の利益相反を判定する

未成年者が法律行為を行うには、原則として法定代理人の同意が必要です。同意を得ずに行った行為は取り消すことができます。通常は親権者が法定代理人として、子どもの財産管理や契約を代行します(e-Gov法令検索「民法」第824条(新しいタブで開きます))。

しかし、親権者と子どもの利益が対立する行為については、親権者が代理することを法律が禁じています(e-Gov法令検索「民法」第826条第1項(新しいタブで開きます))。親権者が代理権を持たない状態で行った行為は、原則として子どもに対して効力を持ちません。親と子がそろって共同相続人として参加する遺産分割協議は、典型的な利益相反行為にあたります。

親権者が子どもを代理できるのは、親権者自身が相続人ではない場合など、利益相反が起こらない状況に限られます。たとえば、祖父が亡くなった際に親がすでに死亡していて孫が代襲相続し、母が共同相続人ではない場合や、親自身が先に家庭裁判所で適法に相続放棄を済ませて共同相続人から外れている場合などです。

なお、共同相続人の中に未成年者が2人以上いる場合は、未成年者同士の間でも利益が対立します(e-Gov法令検索「民法」第826条第2項(新しいタブで開きます))。親権者自身が共同相続人でなく、ほかに利益相反がない場合は、親権者が子どものうち1人を代理し、ほかの子どもそれぞれには別の特別代理人を選任する方法があります。一方、親権者自身も共同相続人である場合は、原則として子どもそれぞれに特別代理人を立てる必要があります。

特別代理人選任申立ての必要書類と準備

特別代理人の選任は、子どもを守ることを目的として家庭裁判所で行う家事審判の手続きです(裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」(新しいタブで開きます))。

申立ての基本要領は次のとおりです。

  • 申立先:未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 申立人:親権者、または利害関係人
  • 申立て費用:未成年者一人につき収入印紙800円と、裁判所からの連絡用郵便切手代です。最新の金額や券種の内訳は、裁判所「特別代理人選任」(新しいタブで開きます)と申立先裁判所の案内で確認します。
  • 申立書:特別代理人選任申立書(裁判所が定めた書式)
  • 主な添付書類:未成年者の戸籍全部事項証明書、親権者の戸籍全部事項証明書(同じ戸籍に入っている場合は1通)、特別代理人候補者の住民票または戸籍の附票、利益相反に関する資料(遺産分割協議書案、不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書など。提出方法や追加で必要な書類は申立先の裁判所で確認)

特別代理人の候補者には、未成年者の叔父・叔母・祖父母など、被相続人の相続について利害関係を持たない親族を挙げる例が多く見られます。ただし、候補者としてふさわしいかどうか(適格性)や選任の方針は、申立先裁判所の案内や個別の事情を踏まえて判断されます。

家庭裁判所が候補者の適格性を審査した結果、中立性に疑問がある場合や適当な親族が見つからない場合は、裁判所が弁護士や司法書士といった第三者の専門職を選任することがあります。専門職が選任された場合の報酬や、裁判所に前もって納める費用(予納金)が必要かどうかについては、申立先の裁判所や候補者との間で事前に確認しておく必要があります。

家庭裁判所が審査する未成年者の利益保護基準

家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てるときは、特別代理人が同意する予定の「遺産分割協議書案」を前もって添付します(裁判所「遺産分割調停」(新しいタブで開きます))。

裁判所は、出された遺産分割案が未成年者の利益を不当に害していないかを確かめます。審査の基本となる基準は、民法で定められた法定相続分(配偶者と子1人なら各2分の1、子2人なら各4分の1など)に見合う経済的な価値が、未成年者に確保されているかどうかです。

不動産を売却するために親の名義にまとめたい場合でも、子どもの取得分を単純に「ゼロ」とする遺産分割案は、原則として認められません。

不動産の売却を前提とする遺産分割には、親が不動産を単独で取得して子どもの法定相続分に見合う現金を支払う「代償分割」のほか、不動産を売却して代金を分ける「換価分割」があります。換価分割を選ぶ場合は、子どもの取得割合だけでなく、売却にかかる費用の負担方法、売却代金を振り込む口座、支払期限などを明確にした協議書案を裁判所に提出します。なお、家庭裁判所による選任審判は遺産分割案の公平性を審査するものであり、実際の売却価格が妥当かどうかや、将来代金が確実に支払われるかまでを保証するものではありません。

遺産分割から相続登記・不動産売却までの手順

特別代理人選任の申立てから売却完了までの標準的な手順は、次のとおりです。

  • 手順一:家庭裁判所に申立てを行い、審判書謄本(審判の結果が記された公的な書類の写し)を受け取ります。申立てから審判が出るまでの期間は、書類の修正(補正)や家庭裁判所による調査、問い合わせ(照会)の状況によって異なるため、申立先裁判所の案内に従って余裕を持った日程を確保しておきます。
  • 手順二:選任された特別代理人と他の相続人(親権者など)が、家庭裁判所に提出した協議案に沿って正式な遺産分割協議書を作成し、署名と実印での押印を行います(特別代理人の印鑑登録証明書を添付します)。
  • 手順三:法務局へ相続登記(所有権移転登記)を申請します。代償分割によって親の名義にするか、または遺産分割協議の内容に沿ってそれぞれの相続分に応じた共有名義として登記します。
  • 手順四:登記名義の変更が終わったあと、不動産仲介会社を通じて買主と売買契約を結び、売買代金の決済と不動産の引き渡しを行います。

特別代理人の権限がどこまで及ぶかや、いつ権限が終了するかは、家庭裁判所の審判で指定された行為や範囲によって決まります。特定の遺産分割協議のために選任された特別代理人の権限は、その協議が終わることで終了するのが一般的です。そのあとに第三者へ売却する際、改めて特別代理人が必要になるかどうかは、売買契約において親権者と子どもの間に利益相反があるかどうかや、親権者の代理権の範囲によって個別に判断されます。親子で共有しているという事情だけで、直ちにすべての第三者への売却で特別代理人が必要とされるわけではありません。

売却理由・価格妥当性の記録と売却代金の分別管理

未成年者の財産に関わる不動産を売却するときは、売却する理由や価格の妥当性を客観的に証明できるように、記録を残しておく必要があります。

家庭裁判所は遺産分割案の公平さを審査しますが、不動産市場での売却価格が妥当かどうかを保証する機関ではありません。のちのち親族間でトラブルが起きたり、子どもが成人に達したときに疑問を持たれたりするのを防ぐためにも、複数の不動産会社による査定書や周辺の相場がわかる資料、売却にかかった費用の領収書や精算書を大切に保管しておきます。

また、売却によって得られた代金のうち、未成年者の持分にあたる金額や代償金として支払われた資金は、親の私的な生活費口座や事業用口座とはっきりと分けて管理しなければなりません。

親権者には「自分のためにするときと同じ注意を払って子どもの財産を管理する義務」があり(e-Gov法令検索「民法」第827条(新しいタブで開きます))、子どもの利益のために親権を行使する必要があります。未成年者名義の銀行口座を管理用の口座として指定し、売却代金のうち子どもの取り分を直接入金して分けて管理するとともに、送金の記録や残高の推移を正確に残しておきます。子どもの財産を親が私的に使い込むことは財産管理権の濫用などにあたり、将来子どもから損害賠償を請求されたり、親権停止や親権喪失の審判を申し立てられたりする原因になる恐れがあります。

未成年者控除などの税務確認と事前準備資料

不動産を相続して売却する一連の流れでは、相続税と譲渡所得税という2つの税金について確認しておく必要があります。

  • 相続税:未成年者が財産を取得するとき、日本国内に住所があることや法定相続人であることなどの要件を満たしていれば、18歳になるまでの年数(1年未満の端数は切り上げ)1年につき10万円が差し引かれる「未成年者控除」の適用を受けられる場合があります(国税庁「No.4164 未成年者の税額控除」(新しいタブで開きます))。
  • 譲渡所得税:不動産を売却して利益(譲渡益)が出た場合は、譲渡所得税の確定申告が必要です。住まいに使っていた不動産を売ったときの「居住用財産の3,000万円特別控除」などの特例は、共有者それぞれが要件を満たしているかを個別に判定します。そのため、親に適用される特例が、持分を持つ子どもへ自動的にそのまま適用されるわけではありません。未成年者が持つ持分について、誰がどのように申告するかを税理士または税務署へ確認しておきます。

税務上の特例要件や手続き方法は、各家庭の居住状況や持分の割合によって異なります。自己判断で進めず、税理士などの専門家へ確認することが確実で安全です。

司法書士や弁護士へ相談する前に、以下の資料を手元に揃えておくと相談がスムーズに進みます。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類
  • 相続人全員の戸籍全部事項証明書および住民票
  • 不動産の登記事項証明書、固定資産税納税通知書(または固定資産評価証明書)
  • 預貯金通帳や有価証券の残高証明書など、遺産全体の概要がわかる資料
  • 特別代理人候補者の住民票と、未成年者との関係を示すメモ
  • 不動産の売却査定書(すでに不動産会社から査定を取り寄せている場合)

分割案を作成する前に利益相反の範囲と代理権を確認する

相続人に未成年者が含まれる不動産の売却では、親権者と子どもの間に利益相反がある場合、親権者が子どもの分まで単独で署名や押印をして話を進めることはできません。利益相反が生じる関係については、家庭裁判所で特別代理人を選任してもらう手続きを踏む必要があります。

遺産分割協議案の内容を固める前に、「誰と誰の間に利益相反が生じるのか」「親権者が代理できる範囲はどこまでか」「何人の特別代理人を立てる必要があるのか」を正確に把握しましょう。そのうえで、子どもの法定相続分を守った分割案を組み立てる必要があります。まずは関係資料を揃え、不動産登記と裁判所の手続きに詳しい司法書士や弁護士などの専門家へ相談することから始めてください。

参照資料

裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」参照日 2026年9月4日裁判所「遺産分割調停」未成年者がいる場合の案内参照日 2026年9月4日e-Gov法令検索「民法」参照日 2026年9月4日