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親から相続した実家が兄弟などの共有名義になっていると、売却は1人の判断では決まりません。まず、誰がどれだけの権利を持ち、話がどこまで進んでいるかを、土地と建物ごとに確かめます。最初から全員の同意や書類一式をそろえる必要はなく、分かるところから書き出せば足ります。
最初にする3つのこと(全員の同意はまだ求めない)
売却の相談は、手元の資料で物件と関係者を書き出すところから始められます。この段階では、全員の同意も、戸籍の一式もまだ要りません。分からない欄は「未確認」のまま残して構わないのです。
1. 実家を土地・建物・私道に分けて書き出す
ひとまとめに「実家」と呼んでいても、登記では土地と建物が別々に記録されています。土地は筆(ひつ。登記上の区画)ごとに分かれ、家の敷地がいくつかの筆にまたがることもあります。家の前の私道や、少し離れた駐車場が、別の筆になっている場合もあります。
書き出すときは、筆ごとの地番と地目(登記上の土地の使いみち。宅地や公衆用道路など)も控えます。借りた土地の上に家が建っているなら、土地の持ち主はほかの人です。土地と建物を同じ持ち主だと決めつけず、行を分けて書いておきます。
2. 手元の資料から関係者の候補を出す
次に、権利を持っていそうな人を書き出します。名義と持分を確かめる基本の資料は、登記事項証明書(登記の内容を証明する書類)です。そこには、各人の共有持分(それぞれが持つ所有権の割合。以下、持分)が書かれています。
| 資料 | 分かること | 探す場所 |
|---|---|---|
| 固定資産税の課税明細書 | 土地・建物の一覧 | 春に届く納税通知書の封筒、亡くなった方の書類入れ |
| 登記事項証明書 | 名義人と持分 | 法務局の窓口、またはオンラインで請求 |
| 戸籍謄本 | 相続人が誰か | 本籍地の市区町村の窓口 |
| 遺言書・遺産分割協議書 | 誰が取得すると決まったか | 自宅の保管場所、家族への聞き取り |
課税明細書の宛名は、税を納める人を示しているだけです。宛名だけで所有者や持分を決めず、登記事項証明書と見比べてください。
3. 分からない欄に担当者と期限を置く
書き出すと、名前の分からない人や、名義の分からない土地が出てきます。その欄ごとに、誰が・どこで・いつまでに確かめるかを1行で決めます。たとえば「長男が法務局で私道の証明書を取る。来週末まで」のような形です。
未確認の欄が残ったままでも、司法書士や弁護士に相談できます。むしろ、何が分からないかが見える表があると、相談が早く進みます。書き出しには、次のような確認表を使えます。
| 物件 | 地番・家屋番号 | 名義と持分 | 関係者の候補 | 未確認のこと(担当・期限) |
|---|---|---|---|---|
| 土地(家の敷地) | ||||
| 土地(私道) | ||||
| 建物 |
家全体の売却に必要な同意は?共有名義のルール
共有名義の家全体を第三者に売るには、共有者全員の合意が必要です(出典:民法。参照資料の一覧へ移ります)。持分の過半数を持つ人や代表役の人でも、1人の判断では売れません。一方で、共有物の扱いには、過半数で決められることや、1人でできることもあります。
共有物のルールは、2023年(令和5年)4月1日に施行された改正で整理されました(出典:国土交通省 ガイドブック。参照資料の一覧へ移ります)。決め方は、する行為によって次の3つに分かれます。
| 決め方 | できることの例 |
|---|---|
| 各共有者が1人でできる(保存) | 傷みを防ぐ応急の修繕 |
| 持分の価格の過半数で決める(管理・軽い変更) | 使い方の決定、形や働きを大きく変えない修繕 |
| 共有者全員の合意が要る(重い変更・処分) | 家全体の売却、建物の解体、大きな増改築 |
過半数は、人数ではなく持分の割合で数えます。2分の1の持分を持つ人がいても、その人1人だけでは過半数(半分を超える割合)に届きません。
売買契約では、原則として共有者全員が売主になります。各人が契約書に署名押印し、印鑑証明書などを出すのが基本の形です。ただし、適法な委任を受けた代理人が署名したり、電子契約を使ったりする場合もあります。
自分の共有持分だけを売ることもできますが、家全体の売却とは別の取引です。影響が大きいため、反対する共有者がいるときの節で分けて説明します。
詳しく:住んでいる共有者と、家を貸すときの決まり
詳しい説明を開く
過半数で決められる管理でも、限りがあります。共有者の1人が実家に住んでいて、その暮らしに特別の影響が出るときは、その人の承諾が要ります(出典:民法。参照資料の一覧へ移ります)。
家を人に貸すとき、過半数で決められるのは、建物なら3年以内の短い賃貸借などに限られます。更新で長く続く通常の借家契約を、過半数だけで一律に結べるわけではありません。
名義と持分はどう確かめる?遺産分割の前と後
登記事項証明書を取ったら、所有者の欄で名義人と持分を確かめます。土地と建物で、名義や持分が違うこともあります。それぞれ別々に売ったり名義を移したりはできますが、家全体として売るなら全部をそろえる必要があるのです。
亡くなった方の名義のままなら
亡くなった方の名義のままでは、買主へ名義を移す登記ができません。先に、相続登記(相続人へ名義を変える登記)を済ませる必要があります(出典:法務省 相続登記Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。
相続登記は、2024年(令和6年)4月1日から義務になりました(出典:国土交通省 ガイドブック。参照資料の一覧へ移ります)。相続で不動産を取得した人は、相続の開始と取得を知った日から3年以内に申請します。
相続人申告登記(自分が相続人だと法務局に申し出る手続き)を申し出た本人は、この義務を果たせます。ただし、名義は移らないため、これだけでは売却に進めません。
相続登記には、遺産分割で取得者を決めてから登記する方法や、法律で決まった割合のまま相続人全員の名義にする方法があります(出典:法務局 相続登記の方法。参照資料の一覧へ移ります)。方法によって要る書類が違います。相続登記の必要書類の記事で、自分の場合に当てはめてください。
遺産分割の前か、後か
遺産分割(相続人どうしで、誰が何を取るか決めること)の前は、遺産共有と呼ばれます。相続人全員が、遺産をまとめて共有している状態です。分割を終え、共有者と持分が決まった後の共有は、通常共有と呼んで区別します。
この違いで、話がまとまらないときに使う手続きが変わります。遺産共有なら家庭裁判所での遺産分割、通常共有なら地方裁判所での分割の手続きが中心です。どちらに当たるか分からないときは、登記事項証明書と遺産分割協議書を持って司法書士に見てもらうと確かです。
住所や境界も確かめる
登記上の住所が今の住所と違う共有者も、売買契約は結べます。ただし、買主へ名義を移す前に、住所の変更登記が要ります(出典:法務省 住所等変更登記Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。
住所などの変更登記は、2026年(令和8年)4月1日から義務になりました。住所が変わった日から2年以内に申請します。施行日より前に変わった住所も対象で、施行日から2年の猶予があります。
土地は、公図(土地の位置や形を示す図)や地積測量図(土地を測った結果の図)で形を確かめます。現地では、隣との境目を示す杭や印が残っているかも見ておきます。
代表者にどこまで任せられる?4つの段階で承認を分ける
共有者が遠くに住んでいると、1人が窓口役になれば話が進みやすくなります。ただし、窓口役と呼ぶだけでは、価格を変えたり契約を結んだりする権限は生まれません。前の段階で賛成したことも、次の段階の承認にはならないのです。
査定の相談は、各共有者が1人でもできます。一方で、ほかの共有者に黙って媒介契約(不動産会社に売却を頼む契約)や売却条件を決めると、対立のもとになります。価格や費用の負担で、あとから話がこじれやすいからです。
売却までの流れを4つの段階に分けると、決めることと、承認を得ておく人の目安は次のとおりです。これは編集部が勧める進め方の目安で、法律が段階ごとに書面を求めるわけではありません。
| 段階 | 決めること | 承認を得ておく人 |
|---|---|---|
| 家族会議を始める | 関係者の候補、各人の今の意向、未確認のことの担当と期限 | 集まれる人(欠けた人には記録を送る) |
| 査定を相談する | 査定を頼む物件の範囲、伝える情報、鍵と立ち入りの扱い | 頼む人(共同で頼むなら全員に知らせる) |
| 媒介を頼み、売り出す | 不動産会社、媒介契約の種類、売出価格、最低価格、費用の負担 | 共有者全員 |
| 契約と決済 | 最終の価格と条件、各人の署名と本人確認、名義の移転、入金先 | 共有者全員が個別に(代理人なら委任の範囲を確認) |
窓口役に任せてよいことと、全員で承認しておきたいことは、次のように分けておきます。
- 窓口役に任せてよいこと:不動産会社との連絡、内覧の日程の調整、査定結果や購入申込みの伝達
- 全員で承認しておきたいこと:媒介契約、売出価格の変更、購入申込みへの回答、売買契約、手付金の受け取り
- 先に全員で決めること:測量、解体、家財の撤去など、費用がかかる手配
代理人に契約を任せるときは、委任状に任せる範囲と最低価格を書きます。何でも任せる白紙の委任は、あとで争いのもとになります。
次のものは、売却条件への同意として扱わないでください。
- 電話や会話での「任せる」という返事
- 査定を頼むことへの賛成
- 返事がない、または連絡がつかない状態
たとえば、次のような場合です(想定の例)。兄弟3人で共有する実家について、全員が査定には賛成しました。ところが、売り出して3か月後に値下げの話が出ると、次男が「その価格なら売らない」と反対します。最低価格を最初に決めていなかったため、値下げの判断が止まってしまうのです。
売却条件の合意メモ
こうした行き違いを防ぐには、売り出す前に、決めたことをメモに残して全員で署名します。媒介契約の前、遅くとも売買契約の前までに取り交わしておくのが目安です。
- 売る物件(地番・家屋番号と、各人の持分)
- 売出価格と、全員の合意なしに下げない最低価格
- 引き渡すときの状態(今のままか更地か)と、境界の測量をするか
- 契約不適合責任(引き渡した後に見つかった欠陥への売主の責任)をどこまで負うか
- 窓口役の名前と任せる範囲、決めた日付、各人の署名
- 住んでいる人の退去や、家財の撤去を終える時期
- 立て替えた費用の返し方、共通の費用の負担、各人への代金の送り方
査定から引渡しまでの全体の手順は、相続した家を売却する流れの記事にまとめています。
住んでいる人・家財・立て替えた費用は、売る前に何を決める?
共有者の1人が実家に住んでいるなら、退去の時期を先に話し合います。住んでいる共有者も、家を使う権利を持つ1人です。ほかの共有者の多数決だけで、退去させられるわけではありません。
話し合うのは、決済の日までに退去と私物の撤去ができるか、引っ越しの費用を誰が持つかです。決まったことは書面に残します。空き家なら、残った家財の撤去費用を誰がどう負担するかを決めておきます。鍵を誰が持ち、内覧や引渡しの日に誰が開けるかも決めます。
固定資産税や火災保険料、修繕費、草刈りの費用などは、家を持つ間ずっとかかります。1人が立て替えてきたなら、領収書や納税の記録を集め、一覧にして全員に見せます。こうした管理の費用は、持分の割合で負担するのが原則です(出典:民法。参照資料の一覧へ移ります)。
売却代金と費用はどう分け、どの口座で受け取る?
話し合うのは、売れる価格だけではありません。費用を引いた後に、各人の手元にいくら残るかまで決めておきます。
各人の入金額と入金先は、決済の前に決める
各人への入金額と入金先を、決済の前に全員で確認します。買主から各共有者の口座へ、分ける額を直接振り込んでもらえるかは、買主・金融機関・決済を担当する人と調整します。代表者の口座に全額を入れて後で分ける方法は、標準の手順にしないほうが安全です。
誰のお金を、どんな約束で受け取り、どう分けたかの記録が乏しいと、後で説明を求められることもあります。持分と違う割合で分けたいときは、税の扱いが変わることがあります。先に税理士や司法書士に確かめてください。
費用を引いて、手取りを分ける
全員に共通する費用は、売却代金から先に差し引きます。仲介手数料、売買契約書の印紙税、測量費、解体費、家財の撤去費などです。抵当権の抹消や住所変更のための登記の費用も、ここに入ります。
仲介手数料には、売買価格に応じた上限があります(出典:国土交通省。参照資料の一覧へ移ります)。価格が800万円以下の取引には特例もあるので、税込みの見積書をもらって確かめます。一方、個人の住宅ローンの残りや、各人の税金は、共通の費用に入れません。共有者ごとに、自分の取り分から精算します。
各人に分ける額は、次の式で整理できます。これは編集部の整理で、法律が決めた式ではありません。
各人の分配額=(売却代金-未払いの共通費用-精算する立替金の合計)×全員で合意した配分割合+本人へ返す立替金
ここでいう未払いの共通費用は、売却のときにまだ誰も払っていない費用です。すでに誰かが立て替えた分は、立替金として別に数えます。
計算例の条件は、次のとおりです。
- 兄弟3人が3分の1ずつの持分を持ち、配分割合も持分どおりと合意している
- 売却代金は3,000万円
- 共通の費用は、合わせて120万円で、全員が売却代金から引くことに合意している
- 長男が、固定資産税などを30万円立て替えていて、全員が返すことに合意している
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 分ける元手:3,000万円-120万円-30万円 | 2,850万円 |
| 1人分:2,850万円×3分の1 | 950万円 |
| 長男:950万円+立て替えた30万円 | 980万円 |
| 次男・三男 | 各950万円 |
3人の合計は2,880万円で、売却代金から共通の費用を引いた額と一致します。
手付金と残りの代金を分けて受け取るなら、手付金で分けた額を、残りの分配から差し引く手順も決めます。各人の着金額と費用の内訳を書いた精算の合意書は、決済の前に全員でそろえておきます。話し合いには、次のような確認表を使えます。
| 項目 | 共通か個人か | 金額 | 払う人・受け取る人 |
|---|---|---|---|
| 仲介手数料 | 共通 | ||
| 測量・解体・家財の撤去 | 共通 | ||
| 抵当権抹消・住所変更の登記費用 | 共通 | ||
| 立て替えた固定資産税など | 共通(本人へ返す) | ||
| 住宅ローンの残り | 個人 | ||
| 売った後の税金の準備 | 個人 | ||
| 入金先の口座 | 個人 |
費用の見積もり方と手取りの計算は、不動産売却の費用と手取りの記事で確かめられます。
反対する共有者がいるときは?持分の売却と裁判所の手続き
共有者の誰かが反対していれば、家全体の売却は進められません。その前に、相手がはっきり反対なのか、まだ決められない(保留)のか、返事がないのかを分けて考えます。保留なら、判断に要る情報と期限を示して待つ余地があります。
返事がない状態は、同意とは扱えません。連絡そのものがつかないなら、次の節の手続きを検討します。話し合っても反対が続くときは、次の3つの道を比べます。
1. 共有者どうしで持分を買い取る
住み続けたい人や持ち続けたい人が、売りたい人の持分を買い取る方法です。遺産分割の前なら、代償分割(1人が家を相続し、ほかの相続人にお金を払う分け方)も選べます。
親族の外に権利が出ない一方で、買い取る側にはまとまった資金が要ります。固定資産税評価額(市区町村が決めた不動産の値段)と査定額のどちらを基準にするかで、価格の話がもつれることもあります。
2. 自分の持分だけを第三者に売る
自分の持分だけなら、ほかの共有者の承諾なしに売れます(出典:民法。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、これは家全体の売却とはまったく別の取引です。持分は「2階の部屋」や「土地の東側」のような特定の部分ではなく、家全体に対する割合だからです。
持分を買った人は、家全体を1人で使うことも、売ることもできません。住んでいる共有者を、一方的に追い出す権限もないのです。そのため、持分だけの提示額は、家全体の売却額に持分を掛けた額より低くなることがあり、事前には読めません。
さらに、買った人が残りの共有者に買取りを求めたり、裁判所に分割を求めたりすることもあります。親族との関係や、残る共有者の負担まで考えたうえで、売る前に弁護士に相談してください。
3. 裁判所の手続きで分ける
遺産分割の前なら、家庭裁判所の遺産分割の手続き(調停や審判)で分けるのが原則です(出典:裁判所 遺産分割調停。参照資料の一覧へ移ります)。遺産分割を終えた通常共有なら、地方裁判所に共有物分割(裁判所に分け方を決めてもらうこと)の訴えを起こせます(出典:民法。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、遺産共有の持分と、相続人以外の人の持分が併存するときは、共有物分割の訴えが必要になることがあります(出典:最高裁判所 判決。参照資料の一覧へ移ります)。
どちらも時間と費用がかかり、親族の対立が残りやすい手続きです。申し立てる前に、弁護士に相談して見通しを聞いておきます。
| 道 | 対象 | 必要な合意 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 家全体を売る | 土地・建物の全体 | 共有者全員 | 住んでいる人の退去の話し合いが前提 |
| 共有者どうしで買い取る | 売りたい人の持分 | 当事者どうし | 買う側の資金と、価格の基準 |
| 自分の持分だけ売る | 自分の持分 | 単独でできる | 提示額が読めず、親族に新たな負担 |
| 裁判所で分ける | 土地・建物の全体 | 裁判所の判断 | 時間と費用、対立が残りやすい |
図の説明
話し合っても反対が続くとき、遺産分割の前は遺産共有で、相続人全員が遺産をまとめて共有している状態。この場合は家庭裁判所の遺産分割の手続き(調停や審判)で分けるのが原則。遺産分割の後は通常共有で、分割を終えて共有者と持分が決まった後の共有。この場合は地方裁判所に共有物分割の訴えを起こせる。ただし、遺産共有の持分と相続人以外の人の持分が併存するときは、共有物分割の訴えが必要になることがある。どちらの手続きも時間と費用がかかり、親族の対立が残りやすい。申し立てる前は弁護士に、どちらに当たるか分からないときは司法書士に相談する。
詳しく:共有物分割で裁判所が選ぶ分け方
詳しい説明を開く
裁判所は、事案に応じて次の分け方を検討します。
- 現物分割:土地を分けて、それぞれの単独の持ち物にする
- 価格賠償:1人が全体を取得し、ほかの共有者に持分に応じたお金を払う
- 競売:上の2つができないときや、分けると価値が大きく下がるときに命じられる
この競売は形式的競売と呼ばれ、裁判所の判断を経て行われます(出典:裁判所 形式的競売。参照資料の一覧へ移ります)。共有者が自分たちの判断ですぐに申し立てられる売り方ではありません。落札代金から競売の費用を引き、残りを持分に応じて分けます。
申立ての費用もかかります。落札価格は、事案や入札の状況によって変わります。
連絡が取れない・判断能力が不安・未成年・海外在住のときは?
共有者の中に、本人が契約できない人や連絡がつかない人がいると、通常の手順では契約できません。家族が代わりに署名して済ませることもできません。状態ごとに、止まる理由と確認先は次のとおりです。
| 共有者の状態 | 止まる理由 | 確認先 |
|---|---|---|
| 所在が分からない | 同意も署名も得られない | 地方裁判所、弁護士、司法書士 |
| 判断能力に不安がある | 内容を理解できないと、契約が有効にならない | 家庭裁判所、弁護士、司法書士 |
| 未成年者がいる | 親子の利益がぶつかる場面では、親が代理できない | 家庭裁判所、司法書士 |
| 海外に住んでいる | 日本の印鑑証明書が取れない | 大使館・総領事館、司法書士 |
所在が分からない共有者がいる
探しても所在が分からない共有者がいるときは、地方裁判所に申し立てる制度があります(出典:大阪地裁 Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。2023年4月の民法改正で新しくできた制度です。申し立てでは、所在を調べても分からなかったことを示さなければなりません。
どの制度も、裁判所の決定と、時価に当たるお金の供託(法務局などに預けること)が要ります。不明の人の持分が遺産分割前の遺産に含まれるときは、相続開始から10年を過ぎていることなどの条件が加わります(出典:民法。参照資料の一覧へ移ります)。
判断能力に不安がある共有者がいる
認知症と診断されただけで、契約できないと決まるわけではありません。契約する時点で内容を理解できるか、後見の制度を使っているかで判断します。内容を理解できない状態なら、成年後見人(本人に代わって財産を管理する人)が必要になることがあります。選任は、家庭裁判所に申し立てます。
後見人がついても、本人の住まいだった家や敷地を売るには、家庭裁判所の許可が要ります(出典:裁判所 居住用不動産処分許可。参照資料の一覧へ移ります)。許可のない売買契約は無効です。
未成年の相続人がいる
親と未成年の子がともに相続人として遺産分割をするとき、親は子の代理をできません。親と子の利益がぶつかる利益相反の関係になるためです。この場合は、家庭裁判所に子のための特別代理人の選任を申し立てます(出典:裁判所 特別代理人選任。参照資料の一覧へ移ります)。
一方で、相続登記を終えたあとに、親子が同じ条件で第三者へ売る場合は、遺産分割協議とは場面が異なります。売却条件と親権者の代理権は、司法書士や家庭裁判所に確かめてください。
海外に住む共有者がいる
日本に住民登録がない人は、日本の印鑑証明書を取れません。日本国籍の人は、大使館や総領事館が出す署名証明を、登記に使えます(出典:法務省 外国居住者。参照資料の一覧へ移ります)。外国籍の人などは、現地の公証人の証明を使うことがあります。住所の証明も含め、必要な書類は司法書士に確かめます。
売主に非居住者(日本に住所がない人など)がいると、買主が代金の10.21%を源泉徴収する義務を負う場合があります(出典:国税庁 No.2879。参照資料の一覧へ移ります)。買主が個人で、自分か親族が住むために買い、売主が受け取る代金が1億円以下なら、源泉徴収は要らないとされています。
共有者が複数いるときは、この判定に使う金額が売主ごとになる事例があります(出典:国税庁 共有の取扱い。参照資料の一覧へ移ります)。共有者の一部だけが海外に住むときは、判定に使う金額を税務署に確かめてください。源泉徴収された税額は、海外に住む共有者が日本で確定申告をして精算します。
遠方や海外から委任して売るときの進め方は、遠方の実家を売却する方法の記事で整理しています。
海外に住む相続人の在留証明や署名証明の取り方は、海外在住の相続人がいる不動産売却の記事にまとめています。
詳しく:所在等不明共有者の2つの制度
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所在の分からない共有者がいるときに使える制度は、次の2つです(出典:民法。参照資料の一覧へ移ります)。
- 持分の取得:裁判所の決定で、申し立てた共有者が不明の人の持分を取得する
- 持分を譲る権限の付与:裁判所が、不明の人の持分も含めて売る権限を与える
どちらも、時価に当たる額の供託が要ります。後者は、分かっている共有者全員が、持分の全部を同じ相手へ同時に売ることが前提です。家全体を第三者に売りたいときに検討される制度といえます。
売った後の申告と、相談するときの準備
売却で利益(譲渡所得)が出るかどうかや、税額は、共有者ごとに違います。取得費や特例の使い方が、人によって変わるからです。特例を使うときは、控除後に税額が出なくても、共有者が1人ずつ確定申告をします(出典:国税庁 No.3308。参照資料の一覧へ移ります)。利益が出た場合の申告が要るかどうかも、各人で確かめてください。
共有で売るときに気をつけたい特例の点は、次のとおりです。
- 自分が住んでいた家を売るとき、要件を満たす共有者は、それぞれ最高3,000万円の控除を検討できます
- 亡くなった方が1人で住んでいた空き家を売るときの特例には、建築時期や相続後の使い方などの要件があります
- 空き家の特例は、2024年1月1日以降の売却で、取得した相続人が3人以上なら各人の上限が2,000万円です。数えるのは、家屋と敷地を取得した相続人です。
- 空き家の特例の「売却代金1億円以下」は、同じ家屋・敷地をほかの相続人が売った分も合わせて判定します。自分の持分の代金だけではありません。
空き家の特例には、市区町村が出す「被相続人居住用家屋等確認書」も要ります。この特例を使うなら、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。たとえば2025年中の相続なら、この期限は2028年12月31日です。
これとは別に、制度そのものの適用期限が2027年(令和9年)12月31日までで、両方を満たす必要があります。売る時期を決める前に、国税庁の案内か税務署で確かめてください。
税額の計算と申告の流れは、相続した家の売却にかかる税金の記事にまとめています。空き家の特例の条件は、相続した空き家の控除の記事で確かめられます。
相談先と、持っていく資料
この記事の内容は一般的な情報です。個別の事情は、内容に合う専門家に相談してください。
- 登記と名義:司法書士、法務局
- 反対する人や所在不明の人がいる、裁判所の手続き:弁護士
- 申告と特例:税理士、税務署
- 価格と売り方:不動産会社
相談には、次の資料を持っていくと話が早く進みます。未確認の欄が残っていても構いません。
- 土地・建物の登記事項証明書と、公図・地積測量図
- 戸籍謄本など、相続人が分かる資料
- 遺言書や遺産分割協議書(あれば)
- 固定資産税の課税明細書
- 立て替えた費用の領収書
- 不動産会社の査定書
- 物件と関係者の確認表、売却条件の合意メモ、費用・代金の確認表
