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親が一人で住む実家や、片付けを進めている家に、頼んでいない買取業者が来たと聞くと心配になるものです。押し買いは、家に来た業者が貴金属などを強引に買い取るトラブルを指す呼び方で、公表された相談もあります。断り方と、売ってしまった後の期限を先に知っておけば、親と落ち着いて決められます。
押し買いとは?普通の出張買取との違い
業者が家に来て品物を買い取る取引は、法律では「訪問購入」と呼ばれます(出典:消費者庁 訪問購入。参照資料の一覧へ移ります)。決まりは特定商取引法(新しいタブで開きます)(訪問販売などの取引のルールを定めた法律)の中にあります。訪問購入は取引の分け方の1つなので、自分で頼んだ出張買取も当てはまることがあります。
一方で、押し買いは法律の言葉ではありません。訪問購入のうち、売るつもりのない物まで強引に買い取るトラブルを指して使われています。見分ける手がかりは、誰が来てほしいと頼んだのか、何を売る話だったのか、の2つです。
国民生活センターは、2023年と2024年に訪問購入の注意喚起を出しています(出典:国民生活センター 2023年。参照資料の一覧へ移ります)。資料に載っている例と、そのとき気をつけたいことを並べると、次のとおりです(出典:国民生活センター 2024年。参照資料の一覧へ移ります)。
| 公表された相談の例 | 気をつけたいこと |
|---|---|
| 支援や寄付を口実に、訪問を承諾させる | 何を買い取りに来たのかを聞く |
| 不用品の買取のはずが、貴金属まで買い取られた | 売る予定の物以外は出さない |
| 「査定だけ」と言って貴金属を見せさせる | 頼んでいない査定は断る |
| 家に上がったまま帰らない | 家族や警察に連絡する |
| 品物を持ち去られたようだ | 渡した物と書面を確かめる |
これらは相談した人の申出をもとにした例で、業者の行為が確かめられたものではありません。それでも、予定にない物の話が出たら、いったん話を止める合図と考えてよいでしょう。
訪問購入の相談は、2025年度に7,523件が登録されています(2026年5月31日現在の集計)(出典:国民生活センター 訪問購入。参照資料の一覧へ移ります)。この件数は、PIO-NET(全国の消費生活センターなどに寄せられた相談を集めた登録データ)の数です。ただし、法律上の訪問購入に当たらない相談も含まれます。被害の件数や、違法と認められた件数ではない点に注意してください。
頼んでいない業者が、買取を勧めてよい?
勧めてはいけません。勧誘を頼んでいない人に、家などで買取を勧めることは禁止されています(出典:消費者庁 訪問購入。参照資料の一覧へ移ります)。「売る物はありませんか」と、勧誘を受けるかどうかを聞くことも、この禁止に含まれます。
業者は勧誘の前に、会社名と、買取の勧誘に来たことを告げる必要があります。買い取りたい品物の種類も、先に明らかにしなければなりません(出典:国民生活センター 報告書。参照資料の一覧へ移ります)。「近くまで来たので」とだけ言う相手には、まずどこの会社で、何を買いに来たのかを聞いてかまいません。
ただし、品物の種類や取引の形によっては、このルールが当てはまらない場合もあります。対象にならない品物は、後の節で説明します。
「査定だけ」「不用品だけ」と言って来た場合
査定だけを頼まれて来た業者が、査定を超えて買取を勧めることも、禁止に当たると説明されています(出典:消費者庁 訪問購入。参照資料の一覧へ移ります)。食器や古着の買取で来ることを承諾した場合も、同じように考えます。頼んでいない貴金属の買取を、その場で勧めることは禁止されています(出典:消費者庁 逐条解説。参照資料の一覧へ移ります)。
親が「お皿を見てもらうだけ」のつもりで約束していても、指輪やネックレスを出すよう言われることがあります。予定していない物を見せる必要はありません。
押し買いの断り方は?電話と玄関先で言うこと
国民生活センターは、突然来た業者を家に入れないよう勧めています(出典:国民生活センター 2023年。参照資料の一覧へ移ります)。電話で訪問の約束を求められても、安易に承諾しないことも呼びかけています。予定になかった貴金属の売却は、断ってかまいません。
断る言葉は短くてよく、理由を説明する必要もありません。次のように、売らないことをはっきり伝えます。
- 玄関で:「買取はお断りします。お帰りください」
- 電話で:「訪問はお断りします」
- 何度も来る相手に:「売りません。もう来ないでください」
契約しない意思を示した人に、勧誘を続けることは禁止されています(出典:消費者庁 訪問購入。参照資料の一覧へ移ります)。日を改めて、同じ買取を勧めに来ることも同じです。
注意したいのは、あいまいな返事です。「忙しいので後日にしてほしい」と言うだけでは、後日の勧誘まで断ったことにはならない、という解説があります(出典:消費者庁 逐条解説。参照資料の一覧へ移ります)。
断っても帰らず、怖いと感じるときは、ためらわずに110番に通報してください。警察への相談の使い分けは、記事の最後の節で説明します。
家に上げる前に、親と決めておくこと
国民生活センターが公表した相談に、次のような申出があります(出典:国民生活センター 報告書。参照資料の一覧へ移ります)。高齢の相談者は、不用品のお皿を買い取ってもらうつもりで準備していました。ところが、査定だけと言われて貴金属を見せることになったといいます。売るとは言っていないのに書面に署名し、買取に進められたそうです。
相談者は後でクーリング・オフ(決められた期間なら、理由を問わず契約をやめられる仕組み)を申し出ました。しかし、署名したことを理由に断られたと話しています。これは相談者の申出で、業者の行為が確かめられたものではありません。ただ、一人で対応すると、その場の流れを止めにくいことが見えてきます。
国民生活センターは、訪問を承諾する場合も一人で対応しないよう勧めています(出典:国民生活センター 2024年。参照資料の一覧へ移ります)。親が一人で住んでいるなら、次のような約束を前もって決めておくと、親も断りやすくなります。
- 買取の約束は、家族がいる日にだけ入れる
- 知らない業者が来たら、話す前に家族へ電話する
- 来た人の名前、会社名、連絡先を聞いて控える
- 売る予定の物だけを出し、ほかの部屋には通さない
- その場では署名せず、品物も渡さない
- もらった名刺や書面は捨てずに取っておく
家族が離れて住んでいるときは、業者から電話や訪問があったら、親が子どもに電話をつなぐ約束にする方法もあります。親が一人で返事をしなくて済むからです。あとから様子を知っても、親を責めず、何があったかを一緒に確かめてください。
古物商の許可証を見せてもらう
中古品を買い取る営業は、許可がないとできません。許可は、主たる営業所(営業の中心となる事業所)がある都道府県の公安委員会が出します(出典:警察庁 古物営業法の概要。参照資料の一覧へ移ります)。ルールは古物営業法(新しいタブで開きます)にあります。
家などに出向いて買い取るときは、古物商の許可証か、行商従業者証を携帯する義務があります(出典:福島県警察 解釈運用基準。参照資料の一覧へ移ります)。行商従業者証は、古物商の代理人などが持つ証明書です。見せてもらえるかを聞き、会社名と許可の番号を控えておきましょう。
ただし、許可は盗品の売り買いを防ぐことなどを目的とした制度です。許可があることは、買取の値段や対応のよさを保証するものではありません。許可を確かめた後も、売るかどうかはその場で決めないでください。
家が空くときや、片付けの途中のとき
親が施設に入るなどして家が空くときは、業者の訪問とは別に、空き巣への備えも要ります。鍵や郵便物の扱いは、空き家の防犯対策の記事にまとめました。片付けを何から始めるかは、相続した実家の片付けの進め方の記事で確かめられます。
亡くなった親の遺品を売るときは、売る前に相続人で話し合ってください。形見の分け方は、形見分けの記事で説明しています。相続放棄を考えている間は、売る・手放す前に、相続放棄を検討中の実家の片付けの記事も読んでください。売った後に、品物が戻るとは限りません。
売ってしまったら、いつまでクーリング・オフできる?
訪問購入のルールが当てはまる取引なら、クーリング・オフができます。期間は、法定書面(業者が渡すよう法律で決められた書面)を受け取った日を含めて8日間です(出典:消費者庁 訪問購入。参照資料の一覧へ移ります)。申込書と契約書を別の日に受け取ったときは、早いほうの日から数えます(出典:国民生活センター クーリング・オフ。参照資料の一覧へ移ります)。
たとえば、10月6日に最初の書面を受け取ったとします。6日を1日目に数えるので、通知を出せるのは10月13日までです。契約した日や、家族が気づいた日から数えるのではありません。
書面に署名した後でも、代金を受け取った後でも、期間内なら通知できます。受け取ったお金は、あとで業者に返すことになります。
品物はまだ渡さなくてよい?
契約していても、クーリング・オフの期間内は、品物の引き渡しを拒めます(出典:消費者庁 訪問購入。参照資料の一覧へ移ります)。拒んだことだけで、約束を破った扱いにはなりません。業者が期間内に親から直接品物を受け取るときは、引き渡しを拒めることを告げる義務もあります(出典:国民生活センター 報告書。参照資料の一覧へ移ります)。
まだ品物が家にあるなら、期間が過ぎるまでは渡さずに置いておけます。対象の取引なら、「いま持って帰らないと契約できない」と言われても、期間内は引き渡さなくてかまいません。
詳しく:8日を過ぎていても通知できる場合
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法定書面を受け取っていないときや、大事な事項が書かれていないときは、8日間の数え始めが来ないと説明されています(出典:消費者庁 逐条解説。参照資料の一覧へ移ります)。この場合、期間を過ぎてもクーリング・オフできることがあります。
ただし、紙の書面がないことだけで、書面を受け取っていないとは言い切れません。所定の手続きで親が承諾していれば、書面の中身がメールなどで渡されている場合があるからです。承諾の手続きや渡し方、親に届いたかどうかも、消費生活センターで確かめられます。
うその説明や脅しで通知できなかったときも、期間を過ぎて通知できる場合があります(出典:国民生活センター クーリング・オフ。参照資料の一覧へ移ります)。当てはまるかは個別の判断になるため、消費生活センターに確認してください。
クーリング・オフの通知はどう書いて送る?
通知は、はがきなどの書面のほか、電子メールや業者の専用フォーム、FAXでも出せます(出典:国民生活センター クーリング・オフ。参照資料の一覧へ移ります)。通知の効力は、通知を出した時に生じると解説されています(出典:消費者庁 逐条解説。参照資料の一覧へ移ります)。期間内に業者へ届いている必要はありません。電話で伝えるだけで済ませず、記録の残る形で出しましょう。
通知には、どの契約かが分かる内容を書きます(出典:消費者庁 電子通知Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。「〇〇」の所は、手元の書面を見て書き写してください。品物をまだ渡していないときや、代金を受け取っていないときは、該当する行を消します。
通知書
次の契約を解除します。
契約年月日 〇〇年〇月〇日
品物 〇〇(書面のとおり)
契約金額 〇〇円
事業者名 〇〇 担当者名 〇〇
引き渡した品物を返してください。
受け取った代金はお返しします。
〇〇年〇月〇日
住所 〇〇
氏名 〇〇契約したのが親なら、親の名前で出すのが分かりやすい形です。子どもが代わりに通知する場合は、親の意思や必要な手続きを、出す前に消費生活センターに確認してください。親が自分で書けないときも同じです。
はがきで送るとき
送る前に、はがきの両面をコピーします(出典:国民生活センター クーリング・オフ。参照資料の一覧へ移ります)。郵便局では、特定記録郵便や簡易書留など、出した記録が残る方法を選びます。受け取った控えとコピーは、書面と一緒に保管してください。
メールやフォームで送るとき
書面にクーリング・オフの通知先や送り方の記載があれば、それを見て送ります(出典:消費者庁 電子通知Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。メールなら送信したメールを保存します。フォームなら、送信した画面をスクリーンショットで残しておきましょう。
品物とお金はどうなる?
クーリング・オフをすると、渡した品物を返すよう求め、受け取った代金は業者に返します(出典:国民生活センター クーリング・オフ。参照資料の一覧へ移ります)。品物や代金を返すのにかかる費用は、業者の負担です(出典:消費者庁 訪問購入。参照資料の一覧へ移ります)。売った側が、違約金や損害賠償を払う必要もありません。
ただし、品物がそのまま戻るとは限りません。業者が品物をほかの人に売ってしまった場合など、取り戻せないことがあるからです(出典:国民生活センター 2023年。参照資料の一覧へ移ります)。公表された相談には、返された品物を確かめると指輪が足りなかった、という申出もあります(出典:国民生活センター 報告書。参照資料の一覧へ移ります)。
家具や古本、自分から呼んだ業者でも同じ?
すべての品物が、訪問購入のルールの対象ではありません。原則として、家具、書籍、自動車(二輪を除く)などは対象外です(出典:消費者庁 対象外の物品。参照資料の一覧へ移ります)。一方で、指輪やネックレスなどの貴金属は、押し買いの相談で取り上げられている品物です。
自分から出張買取を頼んだ場合も、それだけでクーリング・オフがなくなるわけではありません。来てもらうことを承諾した、見積もりを頼んだ、というだけでは、例外に当たらないと説明されています(出典:消費者庁 逐条解説。参照資料の一覧へ移ります)。
対象外の品物の一覧と例外の整理は、実家の片付けで売れるものの記事にもあります。遺品の売り先の選び方や、店頭・宅配・出張買取の違いも、そこにまとめました。この記事は、頼んでいない業者が来たときの対応を中心に説明します。
片付けを頼んだ業者から買取を持ちかけられたときは、遺品整理業者の選び方の記事で確かめ方を説明しています。
詳しく:ルールが当てはまらないことがある場合
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次の2つは、消費者庁の解説で説明されています(出典:消費者庁 逐条解説。参照資料の一覧へ移ります)。
- 骨とう品や収集品として取引される物は、家具や本に見えても対象になる
- 自分から自宅での契約をはっきり求めた場合は、一部の決まりが当てはまらないことがある
そのほかにも、取引の形による例外があります(出典:消費者庁 訪問購入。参照資料の一覧へ移ります)。住まいを退去するときに自分から取引を頼んだ場合が、その1つです。実家の片付けというだけで、退去の例外に当たるとは限りません。クーリング・オフが使えるかは、消費生活センターで確認してください。
押し買いの相談先:188と警察の使い分け
消費者ホットライン188は、全国共通の電話番号です。かけると、身近な自治体(市区町村や都道府県)の消費生活センターなどを案内してくれます(出典:消費者庁 消費者ホットライン。参照資料の一覧へ移ります)。消費者庁に直接つながる番号ではありません。
かける前に知っておきたい点は、次のとおりです(出典:消費者庁 188の案内。参照資料の一覧へ移ります)。
- 相談は無料だが、窓口につながった時から通話料がかかる
- 通話料が定額のプランでも、別料金になる場合がある
- 相談できる曜日や時間帯は、つながる窓口によって違う
- 一部のIP電話などでは、地域の窓口に直接かける必要がある
親本人が電話できなくても、家族などから消費生活センターに相談できます(出典:国民生活センター 2024年。参照資料の一覧へ移ります)。書面、名刺、来た日時、言われたことのメモを手元に置いてからかけると、話が早く進みます。
警察には、急ぎでない相談と、緊急の通報で別の番号があります(出典:警察庁 相談窓口。参照資料の一覧へ移ります)。
| 困っていること | 相談先 |
|---|---|
| 売った後の解約、書面の見方、業者とのやりとり | 188(消費生活センター) |
| 何度も来て不安、つきまといが心配 | #9110、または最寄りの警察署 |
| 帰らない、脅されているなど、いま危険がある | 110番 |
この記事の内容は一般的な情報です。個別の契約でクーリング・オフが使えるかは、消費生活センターで確認してください。返金や品物の返還をめぐって業者と争いになったときは、弁護士にご相談ください。
