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親が亡くなり、実家の片付けが見えてくると、形見分けをいつ、誰と進めるのかが気になってきます。指輪や時計、着物のように、家族の何人かが思い入れを持つ品もあるでしょう。形見分けは気持ちの問題であると同時に、相続の手続きともつながっています。日にちを決める前に、先に分けやすい品と、話し合いまで待つ品を分けるところから始めましょう。
形見分けはいつする?四十九日は目安で、決まりはない
形見分けは、親が愛用していた物や大切にしていた物を、近い親族や親しい友人に贈る慣習です。品を通して、親をしのぶための習わしといえます。時期については、四十九日を過ぎてから遺品を整理し、その中から形見を選ぶ流れが案内されています(出典:全互協。参照資料の一覧へ移ります)。
ただし、これは全国共通の期限ではありません。時期に特に決まりはなく、忌明け(忌中の期間が終わること)に合わせるという案内もあります(出典:JA北九。参照資料の一覧へ移ります)。神道の葬儀では、五十日祭という祭事を過ぎてから行うという説明も見られます(出典:警固神社。参照資料の一覧へ移ります)。宗教や地域、家の習わしで考え方が違うので、迷うときは親族や、お付き合いのある寺・神社に聞いてみてください。
慣習の日に家族がそろわないなら、集まれる日を選んでもかまいません。一方で、四十九日を過ぎたかどうかは、相続放棄の期限や、遺品を処分してよいかの目安になりません。相続の手続きの期限は、法要の日取りとは別に数えるからです。
遺品整理全体をいつ始めるかは、遺品整理を始める時期と期限の記事で整理しています。片付けそのものの手順は、相続した実家の片付けの進め方にまとめました。
誰が決める?相続人と遺言を先に確かめる
形見分けの品の中には、遺産として扱う物も含まれます。そうした品の分け方は、喪主や長男だけでは決められません。遺産の分け方は、相続人全員の合意が前提だからです(出典:税大講本。参照資料の一覧へ移ります)。税務大学校の研究論文(執筆者個人の見解)にも、同じ整理があります(出典:税務大学校論叢。参照資料の一覧へ移ります)。
そこで、話し合う相手が誰なのかを先に確かめます。親の配偶者は常に相続人になり、子は第1順位の相続人です(出典:国税庁 No.4132。参照資料の一覧へ移ります)。片方の親が健在なら、その親も話し合いに加わります。きょうだいだけで決めてよいと、思い込まないようにしましょう。
遺言書があるかどうかも、先に確かめたい点です。有効な遺言で受け取る人が決まっている品は、その内容を先に確かめます(出典:大阪家裁。参照資料の一覧へ移ります)。まだ決まっていない品だけが、話し合いの対象です。すでに遺産分割(相続人で遺産の分け方を決めること)が済んでいる品も、同じように扱います。
孫や親の友人にも渡せる?
形見分けは、近い親族だけでなく、親しかった友人に贈ることも含む慣習です。そのため、孫や親の友人に形見を贈ること自体は、慣習の範囲に入ります。ただし、形見を受け取ることと、相続人であることは別の話です。
孫は、孫というだけでは相続人になりません。親の子が先に亡くなっている場合に、その子の子が代わりに相続人になります(出典:国税庁 No.4132。参照資料の一覧へ移ります)。値打ちのある品を相続人でない人に贈るなら、相続人の間で合意してから渡します。受け取った人の税金の考え方は、後の節で説明します。
アクセサリーや時計、現金も遺産になる?
家の中の物だからといって、遺産から外れるわけではありません。遺産分割の対象には、原則として不動産のほか、動産(家財などの動かせる物)や現金も含まれます(出典:京都家裁。参照資料の一覧へ移ります)。家庭裁判所に出す書類の書き方でも、貴金属類や絵画、骨董品が遺産の例に挙がっています。
ただし、同居の家族の私物や借り物は、遺産ではありません。遺産として一覧に載せる前に、持ち主を確かめます。
着物や時計、アクセサリーも、品によっては値打ちがあります。とはいえ、品名だけで値打ちは分かりません。値打ちがあるかもしれない品は、受け取る人を話し合いで決めるまで、誰も持ち帰らないでおくのが無難です。
先に分けるか待つかは、次のように考えると整理しやすくなります(編集部の目安です)。
| 品の種類 | 例 | 進め方の目安 |
|---|---|---|
| 値打ちがあるかもしれない品 | 貴金属、宝石、時計、着物、絵画、骨董品 | 遺産分割の話し合いで受け取る人を決める |
| 現金 | 財布や金庫、引き出しにあったお金 | 金額を記録し、話し合いで分ける |
| 手続きに使うかもしれない物 | 手紙、日記、手帳、住所録 | 分けずに保管する |
| 売り物にならないと分かっている思い出の品 | 使い込んだ湯のみ、手作りの品 | 相続放棄を考えていない場合の目安。相続人で話がつけば、先に分けやすい |
手紙や日記、手帳、住所録は、後で必要になることがあるため、保管するよう案内されています(出典:全互協。参照資料の一覧へ移ります)。なお、相続放棄を考えている人は、表の最後の行の品も含めて、受け取る前に次の節を読んでください。
値打ちの見当がつかない品は、分ける前に確かめておくと話し合いを進めやすくなります。確かめ方は、実家の片付けで売れる物の記事にまとめています。出張買取を頼むときや、頼んでいない業者が来たときは、押し買いの断り方とクーリング・オフの記事で確かめられます。
現金を「形見分け」として配ってもいい?
親の手元にあった現金も、遺産です。家庭裁判所の書類では、亡くなった時点で金庫などにあった紙幣や硬貨を、現金として書くよう案内されています(出典:京都家裁。参照資料の一覧へ移ります)。「形見」という呼び名で配っても、遺産であることは変わりません。
配るなら、誰がいくら受け取るかを遺産分割の話し合いで決めてからにします。見つけた現金は、金額と見つけた場所、日付を書き留めておきましょう。そのうえで、話し合いまで手を付けずに保管します。
相続放棄を考えているなら、持ち帰る前に立ち止まる
相続放棄(財産も借金も引き継がないこと)には、家庭裁判所への申述(申し出)が必要です(出典:裁判所 相続の放棄。参照資料の一覧へ移ります)。家族に「遺産はいらない」と伝えるだけでは、相続放棄にはなりません。申述の期限は原則として、自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内です。
気をつけたいのは、放棄を決める前に遺品を処分してしまうことです。相続財産を処分すると、相続を受け入れた(単純承認した)とみなされることがあるからです(出典:国税不服審判所。参照資料の一覧へ移ります)。骨董品や貴金属など、値打ちのある遺品を処分すると、相続放棄ができなくなるおそれがあります(出典:神奈川県弁護士会。参照資料の一覧へ移ります)。形見として値打ちのある品を持ち帰る場合は、処分にあたるかどうかを弁護士に確かめてください。
値打ちのない物を形見として持ち帰る程度なら、問題にならないとする案内もあります。ただし、値打ちの有無を自分で決めてよいとは限りません。この弁護士会の案内にも、何円以下なら問題ないという金額の基準はありません。放棄を考えている間は、持ち帰る前に弁護士に確かめてください。
放棄を考えている間の片付け全体の注意は、相続放棄を検討中の実家の片付けの記事にまとめています。
詳しく:放棄した後の扱いと、期限を延ばす申立て
詳しい説明を開く
単純承認とみなされる場合は、民法第921条(新しいタブで開きます)に定められています。ただし、保存行為(財産を守るための行為)や、一定の期間を超えない賃貸は、処分から除かれます。どこまでが保存行為かは個別の判断なので、迷うときは弁護士に確認してください。
放棄の手続きが済んだ後でも、相続財産を隠したり、自分のために使ったりすると、同じ問題が生じることがあります(出典:国税不服審判所。参照資料の一覧へ移ります)。放棄したから遺品を自由に扱える、とは考えないでください。
財産を調べても、相続を受け入れるか放棄するかを判断する資料がそろわない場合があります。その場合は、家庭裁判所に期間を延ばす申立てができます(出典:東京家裁。参照資料の一覧へ移ります)。延ばすかどうかは、家庭裁判所が判断します。自動では延びないため、3か月の期間内に申し立てます。
きょうだいで希望が重なったら、どう決める?
希望の出し方や、重なったときの決め方は、相続人で相談します。相続人どうしで合意できれば、法定相続分(法律が決めた取り分)と違う分け方にしてもかまいません(出典:国税庁 No.4132。参照資料の一覧へ移ります)。法定相続分は、合意できなかったときの遺産の持分とされているからです。
進め方の一例として、次の順番があります(編集部の提案です)。
- 形見の候補を写真に撮り、品名と置き場所を一覧にする
- 一覧を相続人全員に送り、欲しい品を書き出してもらう
- 希望が1人だけの品と、重なった品に分ける
- 重なった品は、値打ちを確かめてから話し合う
- 決まらない品は、いつまでに決めるかを決めて保管しておく
重なった品は、順番に1つずつ選ぶ、ほかの品と組み合わせて分けるといった決め方があります。どれを使うかは、全員が納得できるかどうかで選びます。遠方のきょうだいがいても、一覧を共有すれば、実家に集まらずに希望を出せます。
たとえば、次のような場合です(想定の例)。姉と妹が、母の指輪を2人とも希望しました。値打ちが分からないので、査定で値段の見当をつけるまでは、どちらにも渡さずに保管することにします。見当がついてから、ほかの品とあわせて分け方を話し合う、という進め方です。
一覧に残しておきたい項目
一覧は、後から「誰が何を受け取ったか」を確かめるための記録です。家庭内で共有する一覧は、表計算ソフトや紙のノートで作れます。残しておきたい項目は、次のとおりです。
- 品の写真
- 品名と、見つけた場所・いまの置き場所
- 希望した人
- 受け取ると決まった人
- 決めた日と、話し合いに加わった人
遺産分割の調停(家庭裁判所で話し合う手続き)では、相続人が自分で資料を集めるよう案内されています(出典:大阪家裁。参照資料の一覧へ移ります)。主張を裏づける客観的な証拠を出す必要もあります。写真と一覧があれば、後で話し合いが必要になったときにも、品の状態を説明しやすくなるでしょう。ただし、記録を残せばもめごとを防げる、というものではありません。
決められない品は、いったん預けて待つ
形見分けは、すべての品をいっぺんに決めなくてもかまいません。決めることと、なくしたり傷めたりしないよう預かることは、分けて考えられます。手紙や日記、手帳、住所録のように、後で必要になるかもしれない物も、分けずに残しておく品です。
残しておく物は、無料の相続した実家の「捨てない物」チェックリストで一つずつ確かめられます。
なお、相続放棄を考えている人は、品を運び出す前に、弁護士に確かめてください。自宅や親族の家に預ける場合も同じです。預かるだけなら問題ない、とは言い切れないためです。
話し合いや片付けが続いて疲れてきたら、いったん手を止めるのも1つの方法です。
まずは自宅や親族の家で預かる
預ける品が少なければ、相続人の誰かの家で預かる方法があります。近くに住む親族の家に置かせてもらうのも、1つの手です。このときは、預かっているだけで、受け取ったわけではないことを全員で確かめておきます。一覧に「預かっている人」と「置き場所」を書き足しておくと、後で取り違えにくくなります。
置き場所がないときは、外の保管サービスも選択肢
実家を売ったり取り壊したりする予定で、決まるまで実家に置いておけない場合もあるでしょう。預かれる家がないときは、トランクルームなど外の保管サービスを借りる方法もあります。利用する場合は料金と契約条件を確認し、費用の負担者と保管期間を相続人で相談します。
現金、通帳、権利証、貴金属、高価な時計は、保管サービスに預けず、手元か貸金庫、相続人で決めた人の金庫で管理します。保管の方法ごとの違いは、実家の荷物を一時保管する方法の記事で比べています。
外の保管サービスを借りなくてよいのは、次のような場合です。
- 預ける品が少なく、相続人の家に置き場所がある
- 実家をしばらくそのまま置いておける
- 話し合いが近いうちにまとまりそう
相続放棄を考えている人は、保管の契約をする前にも、弁護士に確かめてください。
形見をもらったら、相続税や贈与税はかかる?
相続税の対象になる財産には、現金や宝石など、お金に見積もれる価値のある物がすべて含まれます(出典:国税庁 No.4105。参照資料の一覧へ移ります)。形見と呼んで受け取っても、それだけで対象から外れるわけではありません。
ただし、相続税がかかるかどうかは、形見の値段だけでは決まりません。判断に使うのは、形見以外の財産も含めた課税価格(税金の計算に使う財産の金額)の合計です。
この合計と比べるのが、基礎控除額(相続税がかからない枠)です。基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人(法律で決まった相続人)の数です(出典:国税庁 No.4152。参照資料の一覧へ移ります)。たとえば法定相続人が子2人だけなら、3,000万円+600万円×2で4,200万円になります。
申告が必要な場合の期限は、原則として亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です(出典:国税庁 No.4205。参照資料の一覧へ移ります)。形見分けが済んでいなくても、この期限は変わりません(出典:国税庁 No.4208。参照資料の一覧へ移ります)。申告が要るかどうかは、税務署か税理士に確認してください。
基礎控除と申告期限の見方は、実家を相続すると相続税はかかる?の記事でも確かめられます。
孫や友人が受け取ったときは、受け取り方で変わる
孫や親の友人が受け取る場合は、誰から、どのように受け取ったかで税の入口が変わります。親から相続や遺贈(遺言で財産を渡すこと)で受け取った物は、相続税の側で考えます。一方で、生きている人から贈与で受け取った物は、贈与税の側で考えます(出典:国税庁 No.4402。参照資料の一覧へ移ります)。
たとえば、相続人がいったん受け取った品を孫に渡す場合は、どちらの税で考えるかが変わることがあります。個別の扱いは、税務署か税理士に確認してください。
贈与税のふつうの計算方法(暦年課税)では、受け取った人が1年間にもらった財産を合計します。1年間は1月1日から12月31日までで、合計から基礎控除の110万円を差し引きます。2人以上からもらっても、110万円は受け取った人ごとに1年で1つです(出典:国税庁 No.4410。参照資料の一覧へ移ります)。
条件をそろえた計算例です。同じ年に2人から70万円ずつもらい、ほかに贈与がなければ、140万円から110万円を引いて30万円が残ります。これは税額ではなく、税率を掛ける前の金額です。個別の計算は、税理士に相談してください。
詳しく:形見の値段はどう決まる?
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相続税や贈与税では、家財などの一般動産は、原則として1個または1組ごとに値段を決めます(出典:財産評価基本通達。参照資料の一覧へ移ります)。値段は、売買の実例や、その品に詳しい人の意見を参考にします。それが分からないときは、同種・同規格の新品の小売価格をもとにします。そこから、製造時から評価時までの償却費(使った分の目減り)などを差し引きます。
家庭用の品で、1個または1組の値段が5万円以下の物は、一世帯ごとなどにまとめて値段を出せます。ただし、5万円は非課税になる金額ではなく、相続放棄に影響しない金額でもありません。
もらった形見は売ってもいい?
自分の物として受け取った品は、法令の範囲内で使ったり手放したりできます(出典:環境省 資料。参照資料の一覧へ移ります)。これは、民法第206条(新しいタブで開きます)が所有者に認めている権利です。ただし、自分が受け取ると決まっていない遺産は、話し合いの前に売らないでください。相続放棄を考えている人が売ると、前の節で触れた処分にあたるおそれがあります。
売って得たお金に、所得税がかかるかも気になるところです。衣服や家財など、生活に通常必要な動産を売った所得には、原則として所得税がかかりません(出典:国税庁 No.3105。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、貴金属や宝石、書画、骨董などで、1個または1組の値段が30万円を超える物は、この扱いから外れます。
古着や家財をネットオークションなどで売った場合も、同じ考え方が示されています(出典:国税庁 No.1906。参照資料の一覧へ移ります)。30万円は品の値段の線で、売ったお金の全額に税金がかかるという意味ではありません(出典:国税庁 No.3152。参照資料の一覧へ移ります)。この記事に出てくる金額は、次のようにそれぞれ別の決まりの数字です。
| 金額 | 何の数字か | 当てはめてはいけない使い方 |
|---|---|---|
| 1個・1組5万円以下 | 相続税・贈与税で、家庭用の品をまとめて値段を出せる線 | 非課税の額、相続放棄に影響しない額 |
| 1個・1組30万円を超える | 売った所得が非課税にならない貴金属などの線 | 売ったお金の全額に税金がかかる線 |
| 1年110万円 | 暦年課税の贈与税の基礎控除 | 贈った人ごとに使える枠 |
売った品が対象になるかどうかや計算は、税務署か税理士に確認してください。
話し合いがまとまらないときの相談先
相続人で話し合っても分け方が決まらないときは、家庭裁判所の遺産分割調停などを使えます(出典:裁判所 遺産分割調停。参照資料の一覧へ移ります)。調停では、相続人それぞれの希望や資料を確かめながら、合意を目指して話し合います。形見の一覧と写真は、ここでも手元の記録として役立ちます。
何が遺産にあたるか、税金がかかるかは、個別の事情で変わります。困りごとごとの相談先は、次のとおりです。
| 困りごと | 相談先 |
|---|---|
| 相続放棄を考えている、受け取ってよいか迷う | 弁護士 |
| 遺産の分け方で話し合いがつかない | 弁護士、家庭裁判所 |
| 相続税・贈与税・売ったときの所得税 | 税務署、税理士 |
| 形見分けの時期や作法 | 親族、お付き合いのある寺・神社 |
