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不動産売却の契約不適合責任とは?売主が確認する告知・免責・期間

契約不適合責任は、古い家の欠陥を売主がすべて直すという制度ではなく、引き渡した土地・建物や権利が契約で合意した内容に適合するかが出発点です。既知の不具合と不明点を告知し、買主が了承する状態、売主が行う作業、責任・通知・期間を契約へ具体的に反映します。

まだしないこと

「現状有姿」「免責」の一語だけで責任がなくなると判断しない

まずすべきこと
  1. 土地・建物・設備・権利ごとに既知事実と不明を洗い出す
  2. 告知書・設備表と売買契約書の該当箇所を並べる
  3. 買主了承事項と売主作業、通知・期間を契約前に確認する

このページで決めること告知内容と契約上の約束を照合し、責任範囲や通知期間で専門家へ確認すべき箇所を特定できます。

不動産売主が契約不適合責任に備えて告知書・契約条項・修繕履歴を確認する様子
公開日 2026年8月31日最終更新日 2026年9月14日法令・制度確認日 2026年8月31日執筆・編集 住まいのよりみち編集部読了目安 17

不動産を売却したあとに「雨漏りが見つかった」「シロアリ被害があった」として、買主から修繕費用や損害賠償を請求されるトラブルがあります。引き渡した物件が契約の内容と合っていないときに、売主が負う法的な責任を「契約不適合責任」と呼びます。

売主が知っておくべき結論ははっきりしています。「現況有姿」や「全部免責」という言葉を契約書に入れただけで、あらゆる責任が自動的に消えるわけではありません。売却後のトラブルを防ぐ確実な方法は、物件の現状や契約で約束する品質・数量・権利だけでなく、知っている過去の不具合も漏れなく書類に書き出して、契約内容と実際に引き渡す状態を一致させることです。

契約書に書かれていない不具合があとから見つかると、売主は高額な修繕費を請求されたり、契約を解除されたりする危険があります。事前に告知書や特約に書いておき、買主の合意を得ておくことが欠かせません。ただし、伝えた事実の範囲や直すと約束した内容、事前の説明を超える不具合があるかどうか、特約そのものが法的に有効かどうかなどは、個別に判断されます。

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契約不適合責任の基本構造と買主が持つ4つの救済手段

2020年4月に施行された改正民法によって、それまでの「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」は「契約不適合責任」へと改められました。なお、2020年4月1日より前に結んだ売買契約には、法改正前の民法が適用される経過措置が設けられています。そのため、昔の契約に対して現在の規定を機械的に当てはめることはできません。

旧民法の瑕疵担保責任では、「隠れた欠陥(普通に注意していても見つけられない欠陥)」があったかどうかが主な問題でした。これに対して現在の民法では、「引き渡された目的物が、種類・品質・数量に関して契約の内容に合っているかどうか」が判断の基準になります(e-Gov法令検索「民法」第562条(新しいタブで開きます))。

引き渡された不動産が契約内容と違っていた場合、買主には法律上、4つの救済手段が認められています。これらは、常に決まった順番で使うものではありません。e-Gov法令検索「民法」(新しいタブで開きます)に定められたそれぞれの条件を満たせば、状況に合わせて選んだり、同時に使ったりできます。

表:買主の請求権、請求の内容、主な要件、売主の帰責事由
買主の請求権請求の内容主な要件売主の帰責事由
追完請求(修補請求)目的物の補修や不足分の引き渡しを求める目的物に不適合がある場合(買主の責めに帰すべき事由による場合を除く)不要(売主に落ち度がなくても請求される)
代金減額請求不適合の程度に応じて売買代金の減額を求める原則として相当期間を定めて追完を催告しても応じない場合等(買主帰責の場合を除く)不要
損害賠償請求不適合によって生じた金銭的損害の賠償を求める債務不履行の一般原則(民法第415条)に基づく必要(契約等の発生原因・社会通念に照らし免責を判断)
契約解除契約関係を解消し、代金の返還等を求める催告解除(軽微な不履行を除く)または履行不能等の無催告解除不要(買主帰責事由による解除は不可)

1. 追完請求(民法第562条)

雨漏りしている屋根を直したり、シロアリの被害に遭った場所を修繕したりするなど、目的物の補修や不足分の引き渡しを求める権利です。売主にわざと(故意)や不注意(過失)といった落ち度(帰責事由)がなくても、請求される可能性があります。ただし、契約と合わない原因が買主側にあるときは請求できません。また、買主が不適切な補修方法を求めてきた場合でも、売主は買主に過度な負担をかけない範囲で、別の方法を選んで直すことができます。

2. 代金減額請求(民法第563条)

売主が補修に応じないときや、直すことが客観的に不可能なときに、不具合の度合いに応じて売買代金の値引きを求める権利です。原則として、まず直すための相当な期間を決めて催告(請求)し、それでも売主が応じない場合などに使われます。ただし、買主側の原因で起きた不具合については、代金の減額を請求できません。

3. 損害賠償請求(民法第564条・第415条)

契約と違うことによって買主に発生した金銭的な損害について、賠償を求める権利です。追完請求や代金減額請求とは違い、約束を果たせなかったことに関して売主側に責任がない事情(免責事由)があるときは、責任を負いません。具体的には、契約ができた原因や世間一般的な取引の常識(社会通念)に照らし合わせて、売主の落ち度とは言えない事情によるものであれば、損害賠償を支払う義務は発生しません。

4. 契約解除(民法第564条・第541条・第542条)

売買契約の関係を解消し、売買代金の返還などを求める手段です。相当の期間を定めて履行を催告しても履行がない場合の催告解除(契約および取引通念上、軽微な不履行であるときを除く)と、履行不能など法定の要件を満たす場合の無催告解除があります。売主の帰責事由は要件とされていませんが、買主の責めに帰すべき事由による場合は解除できません。

不適合の対象は建物の傷み(品質)だけではありません。土地の面積が契約書記載より著しく狭い場合(数量不適合)や、登記された抵当権が抹消されていない場合(権利不適合)も、すべて契約不適合責任の対象となります。

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民法上の通知期間と実務契約での責任期間の違い

契約不適合責任で誤解されやすいのが、「買主がいつまで責任を追及できるか」という期間の扱いです。民法が定める原則規定と、不動産売買契約書で交わす特約期間は性質が異なります。

民法第566条は、種類または品質の不適合について定めています。買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、追完・減額・損害賠償・解除の権利を行使できません。ただし、売主が引渡時に不適合を知っていた場合や、重大な過失によって知らなかった場合は、この期間制限を受けません。この通知期限と、別途適用される消滅時効は区別して捉える必要があります(e-Gov法令検索「民法」第566条(新しいタブで開きます))。

中古住宅の個人間売買では、引き渡しから何年も経過したあとに予期せぬ通知を受ける事態を避けるため、契約条項で通知期間や責任範囲をあらかじめ取り決める例が多く用いられます。法定の原則はe-Gov法令検索「民法」(新しいタブで開きます)で確認し、個別の特約と分けて考えてください。

表:区分、民法の原則規定(特約なし)、個人間売買における特約例
区分民法の原則規定(特約なし)個人間売買における特約例
対象とする不適合種類・品質に関する不適合(数量・権利は第566条通知期間の対象外)雨漏り・主要構造部の腐食・給排水管・シロアリ等に限定する例がある
通知期間種類・品質は知った時から1年以内(売主の引渡時の悪意・重過失を除く)引渡し完了日から1〜3か月以内などに通知期間を限定する例がある
権利行使と救済手段追完・代金減額・損害賠償・解除を法定要件に基づき行使修補請求を中心とし、解除や減額の扱いを明確に合意する例がある
消滅時効権利行使可能と知った時から5年/行使できる時から10年(完成猶予等は個別確認)特約通知期間内に通知された請求にも消滅時効規定が並行して適用される

実際の取り引きで使われる契約条項では、売主と買主がどこまでリスクを背負うかをはっきりさせる工夫がされています。たとえば、引き渡しが終わった日から一定の期間(1〜3か月など)に買主から通知があった主な不具合についてだけ直す責任を負い、代金の減額請求や契約解除をどう扱うかを特約で整理しておく方法が多く見られます。

なお、土地の面積が足りない場合(数量不適合)や、他人の権利がついていた場合(権利不適合)は、e-Gov法令検索「民法」(新しいタブで開きます)第566条が定める「知った時から1年以内の通知」というルールの対象外です。これらには、一般的な借金や請求権と同じ消滅時効のルール(民法第166条:権利を使えると知った時から5年間、または使える時から10年間。時効の完成猶予や更新があるかどうかは個別に確認が必要です)が適用されます。そのため、土地を売買するときの面積や境界の確認は、長い目で見て厳密に行っておく必要があります。

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個人売主・宅建業者・事業者の法規制の違い

売買契約書に盛り込む特約がどこまで法的に有効になるかは、「売主や買主がどのような立場で取り引きしているか」によって、法律による制限が大きく異なります。

売主・買主の属性に応じた特約の効力と法的な制限は次の通りです。

表:売主の属性、買主の属性、適用される主な法律、免責特約・期間短縮の有効性
売主の属性買主の属性適用される主な法律免責特約・期間短縮の有効性
個人(非事業者)個人(非事業者等)民法(契約自由の原則)全部免責特約や通知期間短縮特約(引渡し後3か月など)は原則有効
宅地建物取引業者個人(一般法人含む非宅建業者)宅地建物取引業法第40条引渡し日から2年以上となる特約を除き、民法第566条より不利な特約は無効
事業者(法人・事業目的の個人事業主)個人(消費者)消費者契約法第8条等損害賠償の全部免責や故意・重過失の一部免責等は無効(解除排除も検証要)

1. 個人売主と個人買主の取引

事業者ではない個人の売主が、自宅や個人的に相続した不動産を民間の個人買主へ売却する場合、法律によって一律に制限されること(強行法規による規制)は原則としてありません。双方が合意すれば、「通知期間を引き渡し後3か月に限る特約」だけでなく、「売主は契約不適合責任を一切負わない(全部免責特約)」と定めることも原則として有効です。築年数が古い建物が残った土地などを売る際に、実際によく使われています。

2. 宅建業者が自ら売主となる取引

不動産会社(宅地建物取引業者)が買い取った中古住宅をリフォーム(リノベーション)し、自ら売主となって宅建業者ではない買主へ売却することがあります。この場合は、宅地建物取引業法第40条が適用されます(e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第40条(新しいタブで開きます))。

宅建業法第40条では、担保責任についての通知期間に関して、「引き渡しの日から2年以上」とする特約を定める場合を除いて、民法第566条のルールより買主に不利な特約を結ぶことを禁止しています。これは通知期間についての制限であり、すべての法的責任を2年に限定したり固定したりする規定ではありません。もし「引き渡しから1年で通知を締め切る」という特約や、「一切責任を負わない(全部免責)」という特約を結んでも無効になります。その場合は特約が最初からなかったものとして扱われ、民法第566条の原則(知った時から1年以内の通知)が適用されます。

3. 法人・個人事業主が売主で、個人が買主となる取引

法人が売主になる場合や、個人事業主が事業用の資産として持っている不動産を売却し、一般の個人(消費者)が買い取る取り引きでは、消費者契約法が適用されます。ただし、個人事業主という肩書があっても、仕事とは関係のない個人的な住まいを売却する場合は、消費者契約法でいう「事業者」には当てはまりません。

消費者契約法が適用される場合、事業者が約束を果たさなかったことで消費者に発生した損害について、賠償する責任をすべて免除する条項は無効になります(同法第8条第1項)。さらに、事業者にわざと(故意)や重大な落ち度(重過失)がある場合に責任の一部を免除する条項が無効になることや、同条第2項にある別の物を渡したり直したりする責任などの例外が当てはまるかどうか、消費者が契約を解除する権利を奪ったり制限したりする特約が有効かどうかなども、個別に確認しなければなりません。そのため、法的に有効な免責条項として、一般的なひな形(テンプレート)を安易にそのまま使うことはできません。

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免責特約の限界|「現況有姿」の誤解と告知義務違反

「契約書に全部免責と書いてあるから安心だ」「物件をありのままの状態で引き渡す『現況有姿売買』だから自分に責任はない」と考えるのは危険です。免責の特約が通用しない場面には、実際の取り引きで特に注意したい2つの落とし穴があります。

1. 「現況有姿」の一言では契約不適合責任を免除できない

契約書や物件概要書に「現況有姿(げんきょうゆうし)にて引き渡す」と書かれることがあります。しかし裁判の実務において、「現況有姿」とは、単に「引き渡す時点の物理的な状態のままで引き渡す」という意味にすぎません。そのため、当然に売主の契約不適合責任を免除することに合意したとは認められません(国民生活センター「不動産売買契約書 中古住宅を買うとき売るとき(その2)」(新しいタブで開きます))。

責任を免除する取り決めを有効にするには、「売主は本物件の品質に関する契約不適合について一切の責任を負わない」というように、責任を免除する内容を契約書の条項として明確に定めておく必要があります。

2. 知りながら告げなかった事実は免責されない(民法第572条)

契約書に免責特約を設けていたとしても、売主が責任を免れられない法律上の制限があります。それが民法第572条の規定です。

> 民法第572条(担保責任を負わない旨の特約) > 売主は、第562条第1項本文又は第565条に規定する担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。 > 出典:e-Gov法令検索「民法」(新しいタブで開きます)

民法第572条は、知りながら告げなかった事実等について責任を免れることができないと定めています。この規定により免責条項の全体が無効になるのではなく、売主が知っていて告げなかった個別の不適合について免責の主張が否定されます。なお、引渡時に売主が悪意・重過失であった場合の通知期間の例外(民法第566条ただし書)と、免責特約の効力制限(民法第572条)は法律上の根拠が異なります。そのため、両者は区別して理解する必要があります。

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物件状況等報告書と付帯設備表による書面化の具体策

売主が契約不適合責任のリスクを正しく防ぐための重要な手段が、「把握している物件の不具合や修繕の履歴を契約前に開示し、契約内容の一部として整理しておくこと」です。

物件に不具合があったとしても、その内容が物件状況等報告書や契約書に具体的に書かれていれば、状況は大きく変わります。買主がその欠陥を知ったうえで納得し、契約を結んだのであれば、その範囲については「合意した契約内容通りの引き渡しである」と認められやすくなります。ただし、伝えた事実の範囲を超えて不具合が広がっている場合や、直すと約束していた合意内容がある場合、特約が法的に有効かどうかなどは個別に判断されます。

そのために作成する書類が「物件状況等報告書(告知書)」と「付帯設備表」です(国民生活センター「中古住宅を売るとき(その2)」(新しいタブで開きます))。

※告知書の具体的な記入手順や、過去の事実を漏れなく収集する方法については、関連記事「不動産の物件状況等報告書(告知書)の書き方」をご確認ください。

物件状況等報告書で記載すべき主要項目

  • 雨漏りの履歴(過去の発生場所、修繕工事の実施年月、現在の状況)
  • シロアリ被害・害虫害獣被害(過去の駆除履歴、防蟻処理の時期)
  • 建物の傾き・構造躯体の腐食・床鳴り・建具の建付け不良
  • 給排水管の詰まり・漏水・赤水・異臭の有無
  • 敷地内の地中埋設物(コンクリートガラ、古井戸、旧浄化槽、旧建物の基礎)
  • 浸水被害・土砂崩落・地盤沈下の履歴
  • 境界標の有無・越境物の存在(雨樋、樹木、ブロック塀など)
  • 事件・事故・火災・近隣トラブル(心理的瑕疵や環境的瑕疵)

相続した不動産などで建物の修繕履歴や境界の状態が分からない場合でも、安易に「該当なし」と書いてはいけません。まだ確認できていない事柄や調査中の項目は、「調査中」または「不明」とはっきり書き、売主自身が把握している範囲の情報を客観的に記録します。「なし」と書いたあとに不具合が見つかると、事実を知っていながら隠したと受け取られてしまうおそれがあります。

付帯設備表で記載すべき主要項目

  • 給湯器・給排水設備(正常に作動するか、異音や水漏れはないか)
  • エアコン・換気扇・暖房器具(撤去して引き渡すのか、故障状態で残置するのか)
  • キッチン・コンロ・水栓・食洗機(故障箇所、不作動の有無)
  • 照明器具・インターホン・アンテナ・建具

例として、「撤去する設備」と「そのまま引き渡す設備」をしっかりと分け、動かないものや壊れている設備については、「故障あり」「修理する義務は負わない」と付帯設備表にはっきり書き込みます。設備機器については、「引き渡しから7日間に限って修理する」など建物本体より短い特約を付けるケースや、年数が経って劣化したことを考えて一切責任を負わないと決めるケースなど、売り手と買い手の双方が納得できるリスク分担で合意を取り交わします。

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建物状況調査(インスペクション)と瑕疵保険の活用と限界

建物の傷み具合を確かめ、売却後のトラブルを防ぐ手段として、「建物状況調査(インスペクション)」や「既存住宅売買瑕疵保険」を利用する方法があります。これらを使う場合も、どこまで調査できてどこまで補償されるのか、その限界を知っておく必要があります。

1. 建物状況調査(インスペクション)の役割と限界

宅地建物取引業法に基づく建物状況調査とは、国が指定する登録講習を修了した建築士が行う現場調査のことです。建物の重さを支える重要な柱や梁(構造耐力上主要な部分)や、雨漏りを防ぐ屋根や外壁(雨水の浸入を防止する部分)について、調査の時点で見ることができる範囲を目視や計測などで確認します(国土交通省「既存住宅における建物状況調査の活用」(新しいタブで開きます))。

  • メリット:講習を修了した建築士が客観的に状態を確かめてくれるため、売主と買主の双方が現状を把握しやすくなり、安心して取り引きを進められます。
  • 限界:壁を壊さずに調べる非破壊検査が原則なので、目で見える範囲の確認に限られます。壁の内部や床下の奥深く、地中に埋まっている物、給排水管の中までは確認できません。また、あくまで調査した時点の状態を確かめるものであり、将来にわたって欠陥が出ないことを保証するものでもありません。

2. 既存住宅売買瑕疵保険の補償と免責条項

既存住宅売買瑕疵保険とは、引き渡したあとに建物の重要な構造部分や雨漏りを防ぐ部分に欠陥が見つかった場合、修理費用などを補ってくれる保険です。個人同士の売買では、専門の検査機関が売主側の保証責任を引き受ける形で加入する仕組みが一般的です。

  • メリット:万が一の修繕費用(建物の構造部分や雨漏りを直す費用など)について、保険金を受け取ることができます。
  • 限界:加入できる条件や対象となる場所、支払われる保険金の上限、自己負担額(免責金額)、保険が出ない条件(免責事由)は、保険法人の約款で細かく決まっています。年数が経って自然に傷んだ場合や地震による被害は対象外になるなど、すべての損害がカバーされるわけではありません。

インスペクションや瑕疵保険は、売主が背負うリスクを減らすための手段です。これらを利用したからといって、知っている事実を伝える義務(告知義務)がなくなったり、契約書の記載確認をしなくてよくなったりするわけではありません。

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土地・境界・法令・権利の確認ポイント

契約不適合責任は、建物の不具合だけに限りません。土地の売買や相続した不動産の売却では、お隣との境界や権利関係の食い違いによるトラブルも起こり得ます。

契約を結ぶ前に確認しておきたい主なポイントは、次の4点です。

1. 境界標と境界確認書の有無

隣の土地との境界線がはっきりしないまま引き渡すと、引き渡し後に境界をめぐる争いが起きる原因になります。まずは現地に境界標(境界を示す杭やプレート)が入っているかを確かめてください。境界確認書(筆界確認書)がない場合でも、費用をかけて境界を確定する測量を行うか、境界をはっきりさせないまま引き渡す(非明示)かという、どちらか一方だけの選択肢に限られるわけではありません。すでにある地積測量図などの資料や現地の調査結果、売り手と買い手の合意内容を総合的に踏まえて、どこまで対応するかを決めます。

2. 越境物の覚書

敷地内の木の枝や雨どいが隣の敷地へはみ出している場合や、逆にお隣のブロック塀や水道管がこちらの敷地に入り込んでいる場合は、その事実を売買契約書にしっかり記載します。もしお隣の所有者と「将来建て替えるときに解消する」といった覚書を取り交わしているなら、その覚書の内容を買主に引き継ぐ(承継させる)手続きを進めます。

3. 公簿売買と実測売買の取り決め

土地の売買には、登記簿に載っている面積のまま取り引きする「公簿売買」と、実際に測り直した面積で取り引きする「実測売買」があります。公簿売買を選ぶ場合は、あとから測った実際の面積とズレがあっても、お互いに代金を増やしたり減らしたり請求しないという特約を、契約書にはっきり書いておく必要があります。この取り決めがあいまいだと、「面積が足りないから代金を返してほしい」という減額請求などをめぐる争いにつながるおそれがあります。

4. 権利関係と法令上の制限

住宅ローンなどの抵当権がついている場合は、代金の受け取りと引き渡しのタイミングで、抵当権を消す登記(抹消登記)を確実に実行できる段取りを整えます。また、「法律上、建物の建て替えができない(再建築不可)」「道路の幅を広げるために敷地を後退させる必要がある(セットバック)」といった法律上の制限も、重要事項説明書や契約書の内容と食い違いがあると、契約不適合を追及される原因になります。

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契約前の照合手順と専門家への相談準備

売買契約書に調印する直前の段階で、売主自身が確認すべき具体的な照合手順を整理しました。

【ステップ1:事実の洗い出し】
所有期間中に起きた修繕、不具合、近隣との取り決めをメモに書き出す
  ↓
【ステップ2:告知書の作成と照合】
物件状況等報告書と付帯設備表に、ステップ1で出た事実を漏れなく記載する
  ↓
【ステップ3:契約書条項の精読】
責任の対象・期間・免責特約が自分の認識と一致しているか条文を突き合わせる
  ↓
【ステップ4:専門家への確認】
疑問点や免責条項の有効性を宅地建物取引士や弁護士へ確認する

契約条項を確認する際は、「既知の事実」「告知書への記載」「売買契約上の約束」「引渡方法」「責任・通知条項」の各段階が矛盾なく整合しているかを確かめる必要があります。この5つの要素が一貫していなければ、予期せぬ修補請求や契約解除につながりかねません。

実務でよく問題となる事象をもとにした照合の整理例は次の通りです。

表:既知の事実、告知書への記載、売買契約上の約束、引渡方法、責任・通知条項(特約)
既知の事実告知書への記載売買契約上の約束引渡方法責任・通知条項(特約)
過去の雨漏り(屋根補修済みで、現在は雨染みのみ残存)補修時期・箇所および現状の雨染み位置を明記屋根は現状のまま補修なしで引き渡す合意現況有姿(雨染み容認)告知済みの雨漏り履歴・雨染み箇所について売主の修補責任を免責
給排水管の経年劣化(築年数が古く、配管未更新で微小な異音あり)付帯設備表に設備の劣化状況・異音の有無を記載設備は修理せず現状の状態で引き渡す現状引渡し(性能保証なし)付帯設備の修補義務期間を契約で定めた短期間に限定(または設備全部免責)
境界の越境(隣地の樹木の枝が敷地内へ一部越境)越境箇所と現況を図面や写真とともに記載将来の伐採に関する隣地との合意覚書を買主へ承継越境状態を容認して引渡し覚書承継を条件とし、越境を理由とする契約解除や代金減額請求を排除

契約書の文章を確かめるときは、特に次の3点に目を配ってください。

  1. 売主が責任を負う通知期間や、責任の対象となる範囲がはっきりと決められているかどうか。
  2. 直す要求(修補請求)、代金の減額請求、契約解除について、売主と買主のどちらがどこまでリスクを背負うかが、どのような条項で合意されているかどうか。
  3. 告知書に書いたすでにある不具合について、「売主は直す責任を負わない」という特約が明確に盛り込まれているかどうか。

宅地建物取引士や弁護士へ相談する際に持参する書類一覧

  • 登記識別情報通知書または登記済証(権利証)
  • 土地・建物の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 公図・地積測量図・建物図面
  • 過去の建築確認済証・検査済証・設計図書
  • 過去の修繕工事・リフォーム・害虫駆除の領収書や仕様書
  • 境界確認書・確定測量図(作成済みのものがある場合)
  • 売主自身が作成した不具合や修繕履歴のメモ
  • 仲介会社から提示された売買契約書(案)・重要事項説明書(案)・物件状況等報告書(案)

専門家に相談するときは、「自分が把握しているこの不具合(過去の雨漏りの履歴や基礎のひび割れなど)は、契約書案のどの条項で免責や了承済みの事項として整理されていますか」と具体的に確認してください。

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引渡し後に不具合連絡が届いた場合の証拠保全と初動

引き渡しが終わったあとに買主や仲介会社から「欠陥が見つかった」と連絡が入っても、慌ててその場で修理代の支払いや補修を口約束してはいけません。

  1. 現状の証拠を残す:連絡があった場所の写真や動画を送ってもらい、どのような状態になっているかを客観的に把握します。
  2. 契約書と告知書を見直す:指摘された不具合が、告知書にすでに書いてあることか、契約書で決めた通知期間の中に入っているか、売主が責任を負わないと合意した範囲に含まれているかを突き合わせます。
  3. 現地を確認する:必要に応じて仲介会社や専門業者と一緒に現地へ行き、引き渡す前からあったものなのか、引き渡したあとの使い方や年月の経過によって起きたものなのかを見極めます。
  4. 書面で回答する:電話や口頭のやり取りだけで済ませず、話し合って決めたことや確認した結果は、必ず書類や電子メールなどの形に残します。

契約内容とぴったり一致する正確な告知書を作って合意しておけば、引き渡し後に連絡が来ても、伝えてあった事実の範囲を契約内容と照らし合わせて冷静に確認できます。ただし、事前の説明を超える別の不具合が出ていないか、補修すると別途約束したやり取りがなかったかも含めて、事実関係を慎重に整理することが大切です。

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契約内容と現状を一致させることが最大の防御

不動産を売却するときの契約不適合責任は、正しい知識を持って丁寧に書類を作っていれば、必要以上に恐れることはありません。

  • 契約不適合責任は、「隠れた欠陥があるかどうか」ではなく、「契約内容と実際に引き渡した状態のズレ」に対して発生します(e-Gov法令検索「民法」(新しいタブで開きます)。2020年4月1日より前に結んだ契約には、旧民法が適用される経過措置があります)。
  • 「現況有姿」と書くだけでは、当然に責任を免除することに合意したとは認められません。
  • 知っている不具合をわざと隠して免責の特約を結んでも、民法第572条により、知りながら伝えなかった事実についての責任は逃れられません。
  • 欠陥があっても、事前に物件状況等報告書や契約書にはっきり書いて合意した範囲であれば、「契約内容通りの引き渡しである」と認められやすくなります。ただし、合意した内容や事前の説明を超える不具合があるかどうかなどは、個別に判断されます。
  • 個人同士の売買では、売主と買主のリスク分担として、通知できる期間を一定の期間(1〜3か月など)に区切る特約がよく使われます。
  • 建物状況調査(インスペクション)や既存住宅売買瑕疵保険は有効なリスク対策ですが、事実を伝える告知義務がなくなったり、将来ずっと欠陥が出ないことを保証したりするものではありません。

売却をスムーズに進める基本は、「知っていることを隠さずに、すべて書類に残すこと」です。契約を結ぶ前の段階で必要な書類をそろえ、納得できる条文の形になっているかどうかを丁寧に確かめてください。

参照資料

e-Gov法令検索「民法」参照日 2026年8月31日e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」参照日 2026年8月31日国民生活センター「不動産売買契約書 中古住宅を買うとき売るとき(その2)」参照日 2026年8月31日国民生活センター「中古住宅を売るとき(その2)」参照日 2026年8月31日国土交通省「既存住宅における建物状況調査の活用」参照日 2026年8月31日