古い家は、解体して更地にすれば必ず高く売れるわけではありません。一方で、倒壊や部材落下の危険がある家を、価格比較だけのために残し続けるのも適切ではありません。
危険が差し迫っていないなら、解体契約より先に、現況売却・売買成立後の更地渡し・先行解体の3案を査定します。そのうえで、各案の想定成約価格から、その案だけで売主が負担する費用と引渡しまでの保有費を引き、同じ基準で判断します。
先に決めるのは解体会社ではなく、比較条件です。読み終えたら、次の5点を一枚にまとめてください。
- 第一候補となる売り方
- 三案それぞれの価格根拠と想定期間
- 解体関連費の見積総額と除外項目
- まだ確認できていない税・建築・補助制度
- 誰がいつまでに確認するか
結論:壊す前に3つの売り方を同じ条件で比べる
比較するのは「古家付きか更地か」の二択ではありません。
| 売り方 | 解体する時点 | 先に確定するもの |
|---|---|---|
| 現況売却 | 売主は解体せず引き渡す | 建物・家財・外構をどの状態で渡すか |
| 契約後の更地渡し | 買主と売買契約後、引渡しまでに売主が解体 | 売買代金、解体範囲、期限、追加費用の負担 |
| 先行解体 | 買主が決まる前に売主が解体 | 解体費、資金、販売戦略、税・制度への影響 |
契約後の更地渡しなら、買主が決まる前に解体費を出して土地が売れ残るリスクを抑えられる場合があります。ただし、工事遅延、地中物、石綿、境界、近隣対応等が売買契約の履行へ影響するため、解体範囲と追加費用の負担を曖昧にできません。
最初の行動は解体見積りだけではなく、物件所在地を扱う不動産会社へ、査定基準日や売り方などの前提をそろえて三案の価格と期間を書いてもらうことです。相場を知るだけか、現地の状態まで価格へ反映するか迷う場合は、机上査定と訪問査定の違いを先に確認してください。
解体契約より前に止まる7つの確認
次のどれかが未確認なら、見積りは取っても、解体契約と着工は保留します。
| 確認すること | なぜ先に必要か | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 土地・建物の所有者と共有者 | 一人で解体・売却を決められない場合がある | 登記事項証明書、相続資料、司法書士等 |
| 抵当権・借入・保険 | 解体や売却に金融機関・保険会社への連絡が必要な場合がある | 借入先、保険会社 |
| 再建築できるか | 現在の建物を失うと、同じように建て直せない土地がある | 市区町村等の建築担当、不動産会社、建築士 |
| 境界・越境・私道 | 解体後の塀、樹木、配管の扱いと土地価格へ影響する | 法務局資料、土地家屋調査士、不動産会社 |
| 固定資産税等 | 解体日と翌年以後の保有負担が変わり得る | 市区町村の資産税担当 |
| 税特例 | 解体時期・売買契約・引渡しの順で要件確認が必要 | 税務署、税理士 |
| 補助・行政手続 | 契約・着工後では申請できない制度がある | 市区町村の空き家・建築担当 |
所有者と名義がまだ整理できていない場合は、相続した家を売却する流れへ戻り、売却準備を進められる人を確認します。
再建築可否が未確認なら壊さない
国土交通省は、建築物の敷地について、原則として幅員4m以上の建築基準法上の道路へ2m以上接するという接道義務(新しいタブで開きます)を案内しています。一方、法令には認定・許可等の例外があり、道路の種類、接道の測り方、都市計画区域、条例等でも確認事項が変わります。
したがって、地図上で道路に面している、間口が2mありそう、隣も建て替えているという情報だけで再建築可能とは決めません。所在地の建築担当窓口へ、地番、道路位置、既存建物の資料を示して確認します。
再建築できない可能性がある家を先に壊すと、土地の利用方法と買主候補が変わることがあります。確認結果を文書や相談記録として残すまで、解体契約を保留してください。
三案の違いは、費用・時間・責任を分けて見る
| 比較軸 | 現況売却 | 契約後の更地渡し | 先行解体 |
|---|---|---|---|
| 解体費の先払い | 原則なし | 売買契約後に必要 | 買主決定前に必要 |
| 売れ残り中の状態 | 建物を管理する | 契約成立まで建物を管理する | 更地を管理する |
| 買主の選択 | 改修・解体の両方を検討できる | 更地を希望する買主が中心 | 土地として検討しやすい |
| 建物の安全対応 | 引渡しまで売主側で必要 | 解体完了まで必要 | 解体後は建物管理が終わる |
| 工事の追加費用 | 買主側の課題になり得る | 売買契約の負担分担が重要 | 売主が販売前に負担する |
| 売買契約で決めること | 現況、残置物、既知の状態 | 解体範囲、期限、地中物、遅延 | 土地、境界、地中物等 |
現況売却は「何も説明しなくてよい売り方」ではありません。雨漏り、傾き、シロアリ、越境、地中物、過去の修繕など、知っている状態を不動産会社へ伝え、買主へ何を説明し、契約上どこまでを取引条件にするか確認します。「古家付き」「現況渡し」「契約不適合責任を限定する特約」という言葉だけで、売主の説明と契約確認が不要になるわけではありません。
民法第562条以降(新しいタブで開きます)は、引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約内容に適合しない場合の追完、代金減額等を定めています。何が「契約内容」か、責任をどう調整できるかは、当事者、取引形態、特約、売主が知っていた事実等で変わります。古家付きという広告上の呼び方だけで判断せず、不動産会社から契約案の説明を受け、必要に応じて弁護士等へ確認します。
不動産会社には同じ前提で3案を査定してもらう
会社ごとに違う前提を出すと、価格差が売り方の差なのか、営業判断の差なのか分かりません。先に、査定基準日、仲介か買取か、想定販売期間、残置物・外構・境界・地中物の扱い、解体範囲をそろえます。各社へ同じ資料を渡し、次を回答してもらいます。
- 現況売却の想定成約価格帯の下限・中心値と想定販売期間
- 売買成立後に売主が更地渡しする場合の想定成約価格帯の下限・中心値
- 先に解体して更地で売り出す場合の想定成約価格帯の下限・中心値と想定販売期間
- 各価格の根拠となる成約事例、土地需要、建物利用の見込み
- 建物を残すことで検討できる買主と、外れる買主
- 解体することで検討できる買主と、外れる買主
- 売出価格を見直す時期と条件
- 境界、残置物、外構、地中物を誰の負担と想定したか
査定額は売却保証額ではありません。高い数字だけでなく、価格帯の下限・中心値とその根拠、買主像、販売期間、値下げ条件を並べます。三案の細かな試算に対応できない会社からも、最低限「各案の査定価格、想定期間、置いた前提、未確定項目」を書面で受け取ります。
仲介で時間を掛けて買主を探すか、不動産会社による直接買取も比べるかは、空き家の仲介と買取の違いで分けて判断できます。本記事では、どちらを使う場合も解体前後の物件条件をそろえることに集中します。
査定額ではなく、三案の概算手取りを同じ式で出す
更地の査定額が現況より高くても、解体費や引渡しまでの保有費を含めると順位が変わることがあります。契約後の更地渡しも省かず、三案を同じ表へ入れます。
| 入力項目 | 現況売却 | 契約後の更地渡し | 先行解体 |
|---|---|---|---|
| 成約想定レンジの下限・中心値 | (記入) | (記入) | (記入) |
| 想定販売・引渡し期間 | (記入) | (記入) | (記入) |
| 仲介手数料等、価格に連動する売却費 | (記入) | (記入) | (記入) |
| 家財整理・家庭ごみの売主負担 | (記入) | (記入) | (記入) |
| 建物本体の解体・運搬・処分 | 0円または負担額 | (記入) | (記入) |
| 石綿の調査・分析・除去 | 0円または負担額 | 未確定・金額を記入 | 未確定・金額を記入 |
| 外構、樹木、設備、地中物等 | (記入) | 条件・上限を記入 | 条件・上限を記入 |
| 測量、ライフライン、届出、登記等 | (記入) | (記入) | (記入) |
| 比較基準日から引渡しまでの保有費 | 期間と金額を記入 | 期間と金額を記入 | 期間と金額を記入 |
| 交付決定済みの補助等 | (記入) | (記入) | (記入) |
| 未確定の費用・条件 | (記入) | (記入) | (記入) |
| 税・ローン返済前の概算手取り | (計算) | (計算) | (計算) |
> 各案の税・ローン返済前の概算手取り = その案の想定成約価格 − その案で売主が負担する売却・準備費用 − 引渡しまでの保有費 + 交付決定済みの補助等
> 契約後解体の試算差額 = 契約後解体の概算手取り − 現況売却の概算手取り > 先行解体の試算差額 = 先行解体の概算手取り − 現況売却の概算手取り
現況売却でも家財整理、測量、仲介手数料等を売主が負担することがあります。全額を解体案だけから引かず、必ず各案の列へ入れてください。保有費には、土地・建物の税、保険、見回り、草刈り等を引渡しまでの期間で置きます。解体後に建物分の負担が減る可能性と、土地の税負担が変わる可能性の両方を反映します。
この表は、売り方を選ぶための税・ローン返済前の比較です。第一候補を選んだら、不動産売却の費用と手取り計算表へ進み、譲渡所得税、住宅ローン等の完済、抵当権抹消、手付金まで含む資金収支を作ります。未確認の費用を0円で確定させず、税額が分からなければ「未確認」のまま税理士・税務署へ持参してください。
補助制度は、申請しただけ、対象になりそう、予算枠が残っていそうという段階では0円として比べます。交付決定前の契約・着工が対象外になる制度もあるため、入金を当てにして先に契約しません。
固定資産税は「必ず6倍」ではなく、市区町村へ税額を聞く
住宅の敷地には、一定の住宅用地について固定資産税の課税標準を軽減する特例があります。国土交通省の土地の保有に係る税制(新しいタブで開きます)では、小規模住宅用地の200㎡までを価格の6分の1、200㎡を超える一般住宅用地部分を3分の1としています。都市計画税にも別の割合があります。
これは土地の課税標準に関する特例です。実際の納税額が解体前のちょうど6倍になるという意味ではありません。年の途中で解体しても当年度の建物分が日割りで消えるわけではなく、翌年1月1日時点で建物がなければ、原則として翌年度から建物分の税がなくなります。土地の面積、評価、負担調整、都市計画税、自治体の判定等も関係します。
国土交通省の空き家対策特設サイト(新しいタブで開きます)は、住宅用地かどうかを原則として課税年の1月1日時点で判定すると案内しています。また、建物を残していても、管理不全空家等または特定空家等として市区町村の勧告を受けた敷地は、住宅用地特例の対象から除外され得ます。
解体日だけから自分で税額を決めず、市区町村の資産税担当へ次を伝えて確認します。
- 土地・家屋の所在地と納税通知書の番号
- 現在の建物用途と利用状況
- 解体予定日と売出し予定日
- 解体後に年をまたぐ可能性
- 管理不全空家等・特定空家等に関する通知の有無
- 解体前後の概算税額を確認できるか
売れるまでの保有費は、空き家の年間維持費で作った金額を使い、三案それぞれの引渡しまでの期間と負担額を試算表へ転記します。
相続した家は、解体前に譲渡特例を確認する
相続した実家には、一定要件を満たす場合に被相続人の居住用財産を売ったときの特例を使える可能性があります。ただし、「相続した空き家なら3,000万円まで非課税」という制度ではありません。
国税庁の現行要件(新しいタブで開きます)には、家屋を取り壊して敷地を売る方法だけでなく、2024年1月1日以後の譲渡では、一定の期限までに買主側で家屋の全部を取り壊す等の方法も示されています。建築時期、利用状況、譲渡期限、売却代金、取得者数、他の特例との関係等、確認項目は複数あります。
そのため、税特例のためだけに売買契約前の解体を急ぐ必要があるとは限りません。一方で、売買契約書の条件、取壊しの完了時期、確認書類が要件へ影響します。相続の経緯、家屋の資料、想定契約日、解体案を税務署または税理士へ示し、契約と解体の前に確認してください。
国税庁の譲渡費用の案内(新しいタブで開きます)では、土地を売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用と建物の損失額を、主な譲渡費用として挙げています。ただし、譲渡費用は売るために直接かかった費用です。保有中の維持管理、売却と直接関係しない解体などをすべて自動的に差し引けるわけではありません。
解体を選ぶ場合は、売却方針を決めた記録、査定書、解体契約書、請求書、領収書、振込記録、滅失登記資料を保管し、申告時の扱いを個別確認します。
解体見積りは総額だけでなく、含むものと除外するものを見る
同じ建物でも、工事範囲と現場条件が違えば見積額は変わります。各社へ同じ範囲を伝え、少なくとも次を分けて書いてもらいます。
| 見積区分 | 確認する内容 |
|---|---|
| 建物本体 | 構造、階数、床面積、基礎、付属建物 |
| 仮設・安全 | 養生、足場、散水、交通誘導、狭い搬出路 |
| 石綿 | 事前調査、分析、届出、除去、処分、未確定時の扱い |
| 家財・家庭ごみ | 解体廃棄物と分け、市区町村のルール、一般廃棄物収集運搬の許可または市区町村からの委託、処分担当と時期を確認 |
| 外構 | 塀、門、車庫、物置、庭木、庭石、井戸、浄化槽 |
| 地中 | 既存基礎、埋設物、地中タンク等の追加単価と承認手順 |
| ライフライン | 電気、ガス、水道、通信の停止・撤去・残す位置 |
| 解体廃棄物 | 建材等の分別、運搬、処分先、完了を確認する資料 |
| 整地 | 仕上げ高さ、砕石、土の搬入出、雨水・隣地への配慮 |
| 手続 | 石綿報告、建設リサイクル法、除却届、滅失登記の分担 |
「一式」の総額だけで決めず、追加料金が発生する条件、発見時に誰の承認を得るか、工事を止める条件、上限を決められる項目を確認します。現地調査前の概算見積りと、現地確認後の契約見積りも区別します。
解体工事業の登録または必要な建設業許可、石綿事前調査を行う者の資格、解体廃棄物の処理方法、再委託先、近隣対応、損害保険も書面で確認します。極端に安い見積りが、必要な調査・処分・外構・地中物を除外した金額でないか比較してください。
家財が残っている場合、空き家を片付けずに売る判断で、残す物、家庭ごみ、買取可能品、買主と協議できる物を分けます。環境省の解体工事等で残された家財の案内(新しいタブで開きます)では、家庭の残置物は一般廃棄物であり、産業廃棄物処理業・解体工事業・古物商の許可だけでは処理できないと示しています。解体見積りに含まれていても、物件所在地の市区町村ルールに沿い、一般廃棄物処理業の許可を持つ者または市区町村から委託を受けた者が担当するかを確認してください。
解体を選んだら、工事前・工事中・完了後を分ける
工事前
- 所有者・共有者の同意と発注者を確定する
- 不動産会社から三案の査定と販売計画を受け取る
- 建築担当へ再建築可否と道路を確認する
- 資産税担当へ解体前後の概算税額を確認する
- 税務署・税理士へ特例と譲渡費用の扱いを確認する
- 自治体の補助制度を契約前に確認する
- 同じ工事範囲で複数の現地見積りを比較する
- 保険会社・借入先・ライフライン事業者へ連絡する
- 近隣への説明方法、工事時間、緊急連絡先を決める
政府広報は、老朽空き家の除却で国や市区町村の補助を受けられる場合があると案内しています。制度が全国一律にあるわけではありません。政府広報の空き家対策案内(新しいタブで開きます)を入口に、所在地の市区町村で対象建物、所得・所有要件、募集期間、契約前申請、完了期限、必要写真、予算残額を確認します。
工事に関する法定手続を確認する
厚生労働省の石綿総合情報ポータル(新しいタブで開きます)は、建築物の解体・改修工事では規模にかかわらず石綿含有の有無を事前調査し、建築物の解体部分が80㎡以上の場合は調査結果を報告する必要があると案内しています。80㎡未満でも事前調査自体が不要になるわけではありません。建築物の調査は要件を満たす者が行い、調査記録や現場掲示にも定めがあります。
特定建設資材が使われた床面積80㎡以上の建築物解体は、建設リサイクル法の対象です。国土交通省の届出案内(新しいタブで開きます)では、発注者または自主施工者が工事着手7日前までに都道府県知事へ届け出るとされています。委任する場合も、発注者として提出先、期限、控えを確認します。
さらに、国土交通省は10㎡を超える建築物を除却する場合の建築物除却届(新しいタブで開きます)を案内しています。提出方法や、他の届出との一体処理は所在地の特定行政庁へ確認してください。
工事中
- 工事範囲と残す塀・樹木・配管の位置を現場で再確認する
- 追加工事は、写真、理由、金額、工期への影響を受け取ってから承認する
- 石綿、地中物、境界付近の問題が見つかった場合の停止手順を守る
- 近隣苦情、事故、損傷の記録と連絡先を一本化する
- 売買契約後の工事なら、不動産会社と買主への報告時点を守る
完了後
- 建物、基礎、外構、残す設備、整地高さを契約書と照合する
- 工事前後の写真、廃棄物処理に関する資料、完了書類を受け取る
- 追加費用を承認記録と照合する
- 借入先、保険会社、市区町村へ必要な連絡をする
- 登記済みの建物は建物滅失登記を行い、未登記の建物は市区町村へ家屋滅失等の届出を確認する
- 販売図面、売買契約条件、固定資産情報を現況へ更新する
法務局の案内では、不動産登記法第57条により、登記された建物が滅失したときは、表題部所有者または所有権の登記名義人が滅失の日から1か月以内に建物滅失登記を申請(新しいタブで開きます)する必要があります。自分で申請するか、表示に関する登記の専門家である土地家屋調査士へ依頼するかを工事完了前に決めておきます。
登記されていない建物は建物滅失登記の対象ではありませんが、固定資産税の家屋台帳等を現況へ合わせる届出が必要な場合があります。解体業者の証明書、工事前後の写真、完了日が分かる資料を保管し、物件所在地の市区町村へ手続名と提出期限を確認してください。
第一候補を決める分岐
1. 危険が差し迫っているか
- はい:安全確保と行政・専門事業者への連絡を優先し、売却比較は並行または後で行う
- いいえ:三案の査定と停止条件の確認へ進む
2. 再建築可否、所有者、税特例、補助制度が確認できたか
- いいえ:解体契約を保留し、確認先と期限を決める
- はい:三案の価格、期間、費用を比較する
3. 建物を利用したい買主が見込めるか
- 見込める:現況売却を残し、中古住宅・古家付き土地としての販売根拠を確認する
- 見込めない:契約後解体と先行解体の価格・期間を比較する
- 不明:訪問査定で建物状態と地域需要を確認し、先に壊さない
4. 三案の概算手取りと販売上の利点が確認できたか
- 先行解体の試算差額がプラスで、販売期間や安全面にも根拠がある:先行解体を第一候補にできる
- 契約後解体の試算差額がプラスで、買主と工事条件を固められる:契約後解体を第一候補にできる
- 金額差が小さい、追加費用が未確定、買主が未定:現況売却または契約後解体を第一候補にする
- 買主が更地を条件に契約できる:契約後解体を第一候補にし、負担分担と工期を契約へ明記する
試算差額がプラスでも、手元資金、工事リスク、税・補助要件、売却期限を通らなければ解体案を確定しません。反対に、試算差額がマイナスでも、倒壊等の安全上の理由から除却が必要な場合は、金額だけで現況維持を選びません。
家族と専門家へ渡す結論シート
| 記録すること | 記入欄 |
|---|---|
| 第一候補 | 現況売却・契約後解体・先行解体・確認待ち |
| 第一候補の理由 | (記入) |
| 現況売却の価格帯・期間・概算手取り | (記入) |
| 契約後解体の価格帯・期間・概算手取り | (記入) |
| 先行解体の価格帯・期間・概算手取り | (記入) |
| 契約後解体の工事条件・試算差額 | (記入) |
| 先行解体の試算差額 | (記入) |
| 未確認の追加費用 | (記入) |
| 再建築・道路の確認結果 | (記入) |
| 固定資産税等の確認結果 | (記入) |
| 税特例の確認結果 | (記入) |
| 補助制度の申請期限 | (記入) |
| 確認担当と期限 | (記入) |
| 方針を見直す条件・日 | (記入) |
家族会議では、「古いから壊す」「税金が上がるから残す」という一言で決めず、この表の未確認欄を埋めます。不動産会社、解体会社、市区町村、税務の回答が食い違う場合は、誰がどの資料と前提で答えたかを記録し、該当分野の窓口へ再確認してください。
よくある質問
古い家を残したまま売ることはできますか?
できます。中古住宅、古家付き土地、買取など、建物を残して相談できる方法があります。ただし、建物や家財をどの状態で引き渡すか、既知の不具合、解体費を価格へどう反映したか、契約上の負担を明確にします。残せば必ず高く売れるとも、免責特約があれば何も説明しなくてよいとも限りません。
更地にすると固定資産税は6倍になりますか?
一律には言えません。6分の1は小規模住宅用地における土地の固定資産税課税標準の特例割合です。年途中の解体で当年度の建物分が日割りで消えるわけではなく、翌年1月1日時点で建物がなければ、原則として翌年度から建物分の税がなくなります。土地の面積、評価、都市計画税、負担調整等も関係するため、納税通知書と解体予定日を市区町村の資産税担当へ示し、概算税額を確認してください。
解体費は売却時の税金から必ず差し引けますか?
必ずではありません。国税庁は、土地を売るために建物を取り壊した費用等を譲渡費用の例に挙げていますが、売却へ直接かかった費用であることが前提です。解体の目的・時期、売買との関係、建物の損失額、利用する特例等を税務署・税理士へ確認し、契約書と支払資料を保管します。
買主に解体してもらう契約もできますか?
買主が現況で取得して解体する方法や、売主が売買契約後に更地で渡す方法があります。誰が発注者となるか、解体費、石綿、残置物、外構、地中物、工事遅延、滅失登記、固定資産税精算等の扱いを契約前に決めます。相続空き家特例を検討する場合は、取壊し完了期限と確認書類も税務上の要件に照らします。
解体補助金はどこで探しますか?
物件所在地の市区町村で、「空き家 除却」「老朽危険家屋」「解体 補助」等の制度を確認します。所有・空き家期間・老朽度・所得・税の滞納・施工業者・募集期間等の要件があり、事前調査や交付決定より前の契約・着工を対象外とする場合があります。解体会社と契約する前に担当窓口へ確認してください。
まだ売る会社が決まっていない場合、先に解体見積りだけ取ってよいですか?
見積りを判断材料として取ることはできます。ただし、現地を見ない概算と契約金額を区別し、同じ工事範囲で複数社を比較します。同時に現況・契約後解体・先行解体の査定を取り、再建築、税、補助制度を確認するまで契約・着工は保留します。
次にすること
まず、不動産会社へ次の一文を送り、三案を同じ条件で回答してもらいます。
「査定基準日、仲介か買取か、残置物・外構・境界・地中物、解体範囲の前提をそろえ、現況のまま売る場合、売買成立後に売主が更地で渡す場合、先に解体して更地で売る場合について、成約想定レンジの下限・中心値と根拠、想定販売期間、売主負担、未確定項目を分けて教えてください」
回答を受けたら解体会社の現地見積りと市区町村・税務の確認結果を追加し、結論シートを埋めます。どの査定方法から始めるか迷う場合は、机上査定と訪問査定を選ぶ基準へ進んでください。