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相続した実家が旗竿地で、売りに出しても問い合わせが少ないと、このまま売れないのではと心配になるものです。ただ、売れにくさには、形だけでなく、建て替えられるかや車の出入りなど、買主が確かめる条件が関わります。
旗竿地とは?通路も敷地に入る
旗竿地は、細い通路の先に、家の建つ広い部分がある土地です。旗の付いた竿のような形から、こう呼ばれています。条例などでは「路地状敷地」といい、細い通路の部分だけで道路に接する敷地を指します(出典:大田区 路地状敷地。参照資料の一覧へ移ります)。
この細い部分(以下、通路部分)は、道路ではなく敷地の一部です。そのため、通路部分の面積も敷地面積に含まれます。売り出すときは、通路を含めた広さなのか、家の建つ部分だけの広さなのかを分けて伝えると、買主との話がかみ合います。
旗竿地だからといって、建て替えられない土地とは限りません。建て替えられるかは、前の道路の種類や道路に接する長さ、通路部分の幅と長さなどで変わるからです。所在地の条例や、建てる家の用途・大きさによっても、確かめる条件が違います。建て替えられない家の売り方は、再建築不可物件を売却する前の確認の記事で説明しています。
旗竿地が売れないと言われる理由は?
土地の値段は、日当たりや風通し、間口や形、接する道路の状態、法令の規制などで変わります(出典:国交省 鑑定評価基準。参照資料の一覧へ移ります)。家と敷地を合わせて見るときは、駐車場や通路、庭の配置も条件に入ります。旗竿地では、こうした条件のいくつかを、買主が念入りに確かめることになるのです。
買主が気にしやすい点と、売る前に確かめておくことは次のとおりです。
| 買主が気にする点 | 売る前に確かめること | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 建て替えられるか | 道路に接する長さ、通路の幅と長さ | 自治体の建築指導の窓口 |
| 車の出入り・駐車 | 通路を車が通れるか、どこに停められるか | 現地での計測、不動産会社 |
| 日当たり・風通し | 周りの建物との距離、窓の向き | 時間を変えた現地の確認 |
| 工事のしやすさ | 工事の車や資材を入れる道筋 | 工事業者の現地確認と見積もり |
| 住宅ローン | 金融機関が求める敷地の条件 | 買主が使う金融機関 |
ただし、旗竿地ならどこも日当たりが悪く、車が入らないというわけではありません。通路の幅や周りの建物の配置によって、条件は土地ごとに違います。旗竿地に共通する値下がり率や売却までの期間を示した公的な資料は、確認できていません。
工事の費用も同じです。重機や資材をどこから入れるかは、現地の条件で変わります。費用がどれだけ増えるかは、工事業者に現地を見てもらい、見積もりで確かめてください。
住宅ローンでは、敷地の条件を基準に入れている商品があります。たとえば住宅金融支援機構の財形住宅融資〈新築〉は、敷地が原則として道に2m以上接することを求めています(出典:住宅金融支援機構。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、これは新築向けの1つの商品の基準で、満たせば融資が通るという意味ではありません。相続した家を買う人がローンを使えるかは、金融機関ごとに確かめる必要があります。
通路の幅と長さで、建て替えられるかが変わる
建て替えられるかの出発点は、接道義務(敷地が道路に接していなければならない決まり)です。敷地は、建築基準法上の道路に、原則2m以上接している必要があります(出典:熊本市 接道の特例。参照資料の一覧へ移ります)。この2mは、道路に接している長さの条件です。決まりの根拠は、建築基準法第43条(新しいタブで開きます)にあります。
旗竿地では、通路部分が道路に接する所の長さを見ます。入り口で2mあっても、途中で細くなっていないか、通路の幅と長さも合わせて確かめておきましょう。接道義務などの決まりは、都市計画区域と準都市計画区域でかかります(出典:高知市 43条2項。参照資料の一覧へ移ります)。区域の外でも条例で決まりがある場合があるので、所在地の窓口で確かめてください。
通路が長いと、必要な幅が広がることがある
道路に接する2mとは別に、通路部分の幅を条例で決めている自治体があります。東京都の建築安全条例では、通路部分(条例では路地状部分)の長さに応じて、次の幅が原則です(出典:東京都建築安全条例。参照資料の一覧へ移ります)。
| 通路部分の長さ | 必要な幅(原則) |
|---|---|
| 20m以下 | 2m以上 |
| 20mを超える | 3m以上 |
20mちょうどは「20m以下」に入るので、必要な幅は2mです。一方で、建物の構造や大きさによって幅が広がる決まりや、知事が安全上支障がないと認める場合の例外もあります。
2mに足りなくても、例外で建てられる場合がある
接道義務には、43条2項の認定や許可による例外があります。ただし、認定にも、幅員4m以上の道に2m以上接する条件が付いています(出典:熊本市 43条2項。参照資料の一覧へ移ります)。2mに足りない場合は、許可の対象かどうかを窓口で確かめましょう。
許可を出すのは、建築の可否を判断する役所(特定行政庁)です。許可には、安全などに支障がないと認められることが要ります。建築審査会(許可の前に同意するかを審査する、自治体の機関)の同意も要ります(出典:福井市 43条。参照資料の一覧へ移ります)。このほか、周囲に広い空地があるなど、国土交通省令の基準に合う建築物であることも前提です(出典:建築基準法 43条。参照資料の一覧へ移ります)。
認められるとは限らないので、売り出す前に見込みを聞いておくと、買主に説明しやすくなります。
建て替えられない場合の売り方は、再建築不可物件を売却する前の確認の記事で詳しく扱っています。直して使う道を考えるなら、再建築不可の家のリフォームの記事にまとめました。
窓口には何を持っていく?
建て替えられるかは、所在地の自治体の建築指導の窓口(建築指導課など)で確かめます。高知市では、43条2項の事前相談で現地を確認し、可否と当てはまる基準を答える流れです(出典:高知市 43条2項。参照資料の一覧へ移ります)。持ち物は自治体で違いますが、高知市の例では次のような資料を添えます。
- 付近見取図(土地の場所が分かる地図)
- 公図(法務局で取れる、土地の区画を示した図)
- 土地と今の建物の登記事項証明書など
窓口には、道路に接する長さ、通路の幅と長さ、前の道路の種類が分かるメモを持っていきましょう。分からない項目は、窓口に何を調べればよいかを聞いてください。
詳しく:200㎡を超える建物と、港区の判定
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耐火建築物・準耐火建築物は、建築基準法で決めた、火災に耐える性能などの基準を満たす建物です(出典:建築基準法 2条。参照資料の一覧へ移ります)。延べ面積は、各階の床面積を合計した広さです。東京都の条例では、これらの建物以外で延べ面積が200㎡を超えると、必要な幅が広がります(出典:東京都建築安全条例。参照資料の一覧へ移ります)。
通路部分が20m以下なら3m以上、20mを超えるなら4m以上です。同じ敷地に建物が複数あるときは、延べ面積を合計します。200㎡ちょうどは「超える」に入りません。
港区では、通路の最も狭い幅Aと、奥の最も広い幅Bを比べます(出典:港区 路地状敷地。参照資料の一覧へ移ります)。A×1.5≧Bなら、原則として路地状敷地として扱いません。ただし、個別判断で扱う場合があります(出典:港区 FAQ。参照資料の一覧へ移ります)。これは港区の取扱いで、全国共通の判定式ではありません。
路線価の補正で、旗竿地の売値は分かる?
相続税や贈与税の申告では、路線価(道路ごとに決められた1㎡当たりの評価額)などを使って土地を評価します。旗竿地のように形がいびつな土地や、間口が狭い土地には、評価額を下げる補正があります。ただし、この評価は申告のためのもので、売値を決める計算ではありません(出典:国税庁 評価明細書・調整率表。参照資料の一覧へ移ります)。
旗竿地にかかわる補正には、主に次の3つがあります(出典:国税庁 財産評価基本通達。参照資料の一覧へ移ります)。
| 補正 | 何を見るか |
|---|---|
| 不整形地補正 | 形のいびつさ(かげ地割合)と、地区・面積の区分 |
| 間口狭小補正 | 道路に接する間口の狭さ |
| 奥行長大補正 | 間口に比べて、奥行がどれだけ長いか |
補正の率は、地区や区分ごとに表で決まっています(出典:国税庁 調整率表。参照資料の一覧へ移ります)。形だけで一律に何割下げる、という決まりではありません。
かげ地割合は、日陰の割合ではありません。土地全体を囲む、正面の道路に面した四角形(想定整形地)を考えます。その面積と実際の土地の面積の差を、想定整形地の面積で割った割合です(出典:国税庁 評価明細書様式。参照資料の一覧へ移ります)。たとえば想定整形地が300㎡、実際の土地が180㎡なら、(300−180)÷300で40%です。
接道義務を満たさない旗竿地は、さらに注意が要ります。間口が短くて接道義務を満たさず、通路を広げないと建築が大きく制限される宅地があるからです。国税庁は、こうした宅地を無道路地(道路に接しない土地)に準じて評価する考え方を示しています(出典:国税庁 質疑応答。参照資料の一覧へ移ります)。
評価額が下がっても、その割合で売値が下がるわけではありません。売値の見込みは、次に説明する査定で確かめます。相続税の申告で評価に迷うときは、税務署か税理士に相談してください。
詳しく:国税庁の設例で補正率を組み合わせると
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条件は、普通住宅地区、地積区分A(補正率の表で使う、地区と面積の区分)、かげ地割合50%、間口2m、奥行40mです。国税庁の無道路地の設例のうち、補正率の部分を取り出しました。補正率は、不整形地補正率が0.79、間口狭小補正率と奥行長大補正率がどちらも0.90です(出典:国税庁 No.4620。参照資料の一覧へ移ります)。3つを全部掛けるのではなく、次の2つのうち低い率を使います(出典:国税庁 付表。参照資料の一覧へ移ります)。
- 不整形地補正率×間口狭小補正率:0.79×0.90=0.711(小数点以下2位未満を切り捨てて0.71)
- 間口狭小補正率×奥行長大補正率:0.90×0.90=0.81
この例で使うのは、低いほうの0.71です。率の下限は0.60ですが、「売値が最大4割下がる」という意味ではありません。
査定額は何で決まる?売る前に集める資料
売るときの値段は、主に3つに分けて考えます(出典:東京都 不動産取引の手引き。参照資料の一覧へ移ります)。
- 査定価格:不動産会社が、売れそうな値段として示す価格
- 売出価格:売りに出すときの価格
- 成約価格:交渉の結果、売主と買主が合意した価格
旗竿地が売れないと感じたときは、どの段階の値段の話なのかを分けて考えましょう。査定より高い売出価格のまま反応がないのか、査定そのものが低いのかで、打つ手が変わるからです。
近くの取引の値段は、国土交通省の不動産情報ライブラリ(新しいタブで開きます)で調べられます。取引価格や地価公示(国が公表する土地の価格)を見られるサイトです。ただし、地価公示の価格は、近くのすべての土地に共通する値段ではありません(出典:不動産情報ライブラリ 利用上の注意。参照資料の一覧へ移ります)。形や面積、接する道路の違いを踏まえて比べる必要があります。
査定の根拠を聞く
仲介する不動産会社が価格について意見を言うときは、根拠を明らかにする必要があります(出典:東京都 不動産取引の手引き。参照資料の一覧へ移ります)。旗竿地だからと減額されたときも、その理由を聞いてかまいません。査定のときに次の点を聞いておくと、会社どうしを比べやすくなります。
- 比べた取引事例は、旗竿地か、四角い土地か
- 建て替えられることを前提にしているか
- 車の出入りや日当たりを、どう見たか
- 減額したなら、どの条件をどれだけ見たか
旗竿地の減額査定が争われた裁判例を、不動産適正取引推進機構が機関誌で紹介しています。旗竿地を含む複数の区画をまとめて売った売主が、仲介業者に損害賠償を求めた事案です。売主は、旗竿地として減額した査定は要らなかったなどと主張しました。東京地裁は2019年7月5日、不当な査定とは認められないとして、請求を退けました(出典:RETIO 128号 査定価格の説明。参照資料の一覧へ移ります)。
これはこの土地とこの契約についての判断で、旗竿地の相場や減額の割合を示すものではありません。査定額に納得できないときは、根拠を聞いたうえで、ほかの会社の査定と並べて比べてください。
知っている不具合は伝える
売主が知っている欠陥や不具合は、買主に伝えます(出典:東京都 不動産取引の手引き。参照資料の一覧へ移ります)。そのまま引き渡すか、直してから渡すかを契約の内容にしておくことも、もめごとを防ぐために必要とされています。旗竿地なら、窓口で確かめた建て替えの可否や、測った通路の幅も書き出しておきましょう。
仲介・隣地への売却・買取はどう違う?
旗竿地の主な売り方は、仲介・隣地の所有者への売却・不動産会社の買取の3つです。ただし、隣地の所有者に売るときも、不動産会社に仲介を頼むことがあります。そこで、「誰が買うか」と「仲介を頼むか」を分けて比べます。
| 比べる点 | 仲介 | 隣地の所有者への売却 | 不動産会社の買取 |
|---|---|---|---|
| 買主 | 不動産会社が探した人 | 隣の土地の持ち主 | 不動産会社 |
| 値段の決まり方 | 査定を参考に売り出し、交渉で決まる | 当事者の話し合いで決まる | 会社が示す条件で決まる |
| 買主探し | 要る | 要らない(相手は決まっている) | 要らない |
| 仲介を頼むか | 頼む | 頼む場合も、頼まない場合もある | 直接取引か、仲介が入るかを確かめる |
| 先に確かめること | 建て替えの可否、告知する内容 | 境界、契約書をどう作るか | 建物や残置物の扱い、引渡しの条件 |
どの売り方を選んでも、早く売れる、高く売れると決まるわけではありません。同じ土地について、条件をそろえて並べることが比べる前提になります。
そのまま仲介で売る
仲介では、不動産会社が買主を探します。流れは、相談→物件調査→査定→媒介契約→販売活動→契約交渉→売買契約→決済・引渡しです(出典:東京都 不動産取引の手引き。参照資料の一覧へ移ります)。媒介契約は、不動産会社に買主探しを頼む契約のことです。
仲介が向くのは、窓口で建て替えられると確かめられ、売れるまで時間をかけられる場合です。建て替えの見込みや、車が通れる幅を説明できると、買主は判断しやすくなります。
隣地の所有者に売る
隣の土地の持ち主にとっては、旗竿地と合わせると使いやすい形になる場合があります。熊本市は、再建築が難しく売りにくい土地について、隣地の所有者に買ってもらう交渉を選択肢として案内しています(出典:熊本市 空き家の管理。参照資料の一覧へ移ります)。神戸市も、単独では流通しにくい狭い土地などを、隣地と合わせて使う取組を案内しています(出典:神戸市 空き家・空き地。参照資料の一覧へ移ります)。とはいえ、隣地の所有者が買うと決まるわけではありません。
隣地の所有者に売るときは、境界がはっきりしているかを先に確かめます。境界があいまいなまま話を進めると、面積や値段でもめる原因になりかねません。隣が境界の確認に応じないときの手段は、筆界特定制度の記事にまとめています。
隣地との統合を後押しする補助がある自治体もありますが、内容は地域や年度で違います。使えるかどうかは、所在地の自治体の案内で確かめてください。値段を当事者だけで決めるときも、査定や近くの取引を物差しにしましょう。契約書の作り方は、不動産会社や弁護士に相談できます。
隣地への売却は、境界がはっきりしていて、隣の所有者が関心を示している場合に検討しやすくなります。関心がなければ、仲介の査定を先に進めましょう。
不動産会社の買取
買取では、不動産会社が買主になります。国土交通省の調査には、会社が戸建て住宅を買い取り、リフォームして売り直す「買取再販」の例が載っています(出典:国交省 政策研究178号。参照資料の一覧へ移ります)。相談に来る人の例として、仲介で買主が見つからなかった所有者も挙げられています。この調査に出た事業者の例では、取り扱う条件は次のとおりでした。
- 直して使える建物であること
- ファミリー向けの住宅の需要が見込めること
- 駐車スペースを確保できること
残置物(家に残った家具や荷物)ごと買い取る例も紹介されていますが、どの会社にも共通する条件ではありません。買取の値段が仲介の何割になるか、何日で終わるかを示す公的な目安は、確認できていません。複数の会社に条件を出してもらい、同じ前提で比べてください。
仲介で買主が見つかりにくい場合や、片付けの手間を減らしたい場合は、買取も比べる候補になります。ただし、建て替えが難しい土地を買い取ってもらえるかは、会社ごとに確かめる必要があります。
建て替えられると確かめられ、時間をかけられる場合は、買取を急ぐ理由は多くありません。売却を急ぐ事情がなければ、先に仲介の査定や隣地への打診を済ませておきましょう。その結果と買取の条件を並べると、比べやすくなります。
買取の条件を並べる項目は、訳あり物件の買取業者の選び方の記事で挙げています。境界や私道など、ほかの問題も重なる土地なら、訳あり土地の売り方を決める記事も役立ちます。
売り方を決めるまでの順番と相談先
旗竿地を売るときの進め方の一例です。建て替えられるかを先に確かめると、値段と売り方を比べる前提がそろいます。
- まず、登記事項証明書と公図を集め、測量図があればそろえる
- 通路部分の幅と長さ、道路に接する長さを書き出す
- 自治体の建築指導の窓口で、建て替えられるかを確かめる
- 複数の不動産会社に査定を頼み、減額の根拠を聞く
- 隣地の所有者への打診や、買取の条件も取って比べる
迷ったときの相談先は、知りたいことで分かれます。
| 知りたいこと | 相談先 |
|---|---|
| 建て替えられるか、通路の幅の決まり | 所在地の自治体の建築指導の窓口 |
| 売値の見込み、売り方 | 不動産会社(複数) |
| 隣地との境界 | 土地家屋調査士など |
| 相続税の評価 | 税務署、税理士 |
| 契約のもめごと | 弁護士 |
通路の幅や条例の条件は、土地ごとに違います。ここは一般的な説明なので、個別の判断は上の相談先で確認してください。
