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訳あり物件の買取業者の選び方|査定額より先に比べる契約条件

訳あり物件の買取業者は、最高査定額ではなく、契約上の買主、減額条件、売主負担費用、残置物、告知と契約責任、入金日をそろえて最終手取りで比べます。査定会社・仲介会社・買主が異なる場合は、それぞれの正式名と役割を確認します。

まだしないこと

買主欄、費用、責任、解除条件が不明な契約へ署名せず、売主向けの無条件クーリングオフを当てにしない

まずすべきこと
  1. 物件の権利・状態・希望・未確認事項を一枚にして全候補へ渡す
  2. 査定会社・媒介会社・契約上の買主の正式名と役割を分け、宅建業者と説明された会社の免許情報を照合する
  3. 売買代金から全売主負担を引き、入金日と責任を並べて比べる

このページで決めること買取候補を最終手取り・買主・責任・決済日で比べ、通常仲介も残したうえで契約案を読む候補を選べます。

訳あり物件の買取候補を手取りと契約条件で比較する所有者
公開日 2026年8月31日最終更新日 2026年9月6日法令・制度確認日 2026年8月31日執筆・編集 住まいのよりみち編集部読了目安 12

再建築不可、共有持分、雨漏りやシロアリ被害、大量の荷物(残置物)が残る家など、市場で売りにくい「訳あり物件」を手放すときは、提示された査定価格の高さだけで買取会社を決めてはいけません。

訳あり物件を売却するときに最も大切な基準は、査定額の表面的な数字だけに惑わされず、売買契約書に書かれる契約条件と、手元にいくら残るかという「実質的な手取り金額」を見極めることです。たとえ提示された査定額が高く見えても、後から残置物の処分費用や測量費用が売主の負担として差し引かれたり、引き渡し後に不具合の補修費用を請求される条項が入っていたりすると、かえって手元に残るお金が減ってしまいます。

買取会社を選ぶときは、まず相手が「仲介会社」なのか「直接買い取る会社」なのかをはっきりと見分けます。そのうえで、売買契約書に書かれる買主の名義、差し引かれる費用、残置物の扱い、契約不適合責任を免除する範囲、代金支払いの確実性を1つの比較表に書き写し、横並びで比べます。

最初に決める:仲介と直接買取の違いを整理する

訳あり物件の処分を検討するとき、不動産会社の関わり方には「仲介(媒介)」と「直接買取」の2種類があります。この関わり方の違いをあらかじめ整理しておかないと、売れる時期や費用負担の見通しが大きく狂う原因になります。

仲介は、不動産会社が売主と媒介契約を結び、一般の市場で広く買い手を探す方法です。市場の相場に近い価格で売却できる可能性がある一方で、買い手が見つかるまでいつ売れるかが決まらず、売買が成立したときには法律の上限に基づいた仲介手数料がかかります。また、個人の一般買主へ売却する場合は、建物の不具合を売主が直す責任(修補責任)を負う特約を求められる傾向があります。

一方の直接買取は、不動産会社自身が買主となって物件を直接買い取る方法です。業者が再販のリスクやリフォーム費用を見込んで査定するため、提示される金額は仲介の相場価格より低くなるのが一般的です。しかし、売買契約の相手が不動産会社自身になるため、仲介手数料はかかりません。買い手を探す時間がかからないため、代金を受け取る(決済する)までの期間を短縮しやすいメリットがあります。ただし、実際の決済時期は買主側の資金準備や権利整理の進み具合によって左右されます。また、建物の老朽化や欠陥について、引き渡し後に売主が修補責任を負わないとする「免責特約」を結ぶ合意がしやすい点も特徴です。

注意が必要なのは、「買取査定」を依頼したつもりが、実際には「仲介で買い手を探すための想定売り出し価格」を提示されているケースです。査定額を提示された段階で、相手会社自身が買主となる売買契約なのか、それとも他社や第三者へ仲介するための媒介提案なのかを書面で確認します。

物件の『訳あり』条件を推測せず資料化する

訳あり物件の査定を依頼する前には、建物の傷みや複雑な権利関係を口頭だけで説明せず、客観的な資料を集めて整理します。物件の難点が事前に伝わっていないと、契約の直前になって大幅な減額を求められたり、商談そのものが白紙に戻ってしまったりするトラブルにつながります。

まず確認すべき資料は、法務局が管理している登記情報です。インターネット経由で最新の権利関係を確認できる登記情報提供サービス「サービス概要」(新しいタブで開きます)を利用すれば、所有者の名義、単独所有か共有持分か、住宅ローンなどの抵当権や差押えが設定されていないかを、その場ですぐに見て確かめられます。ただし、このサービスの閲覧画面や印刷した用紙は、法的な効力を持つ証明書ではありません。実際の契約手続きや公的な証明が必要な段階になったら、法務局の窓口や「登記・供託オンライン申請システム」などを通じて、正式な「登記事項証明書」を取得します。

続いて、毎年の固定資産税納税通知書に同封されている「課税明細書」、または役所で取得する「固定資産評価証明書」を用意します。これらを見ると、土地の現在の使い道(地目)や評価額、自治体が把握している課税床面積を確認できます。登記していない増改築などがある場合、課税床面積と登記簿上の床面積が一致しないことがあります。そのため、両方の資料を見比べて状況を確かめておきます。

さらに、家を建て替えられない「再建築不可」などの道路との接し方や法的な制限を把握するため、道路図や建築確認の記録だけで自分で判断してはいけません。役所の建築指導課などの建築担当窓口へ行き、接している道路の種類や、「建築確認台帳記載事項証明書」があるかどうかを直接調べます。あわせて、雨漏り、シロアリ被害、床の傾き、井戸や浄化槽が残っているかどうか、家財や粗大ゴミの量などを写真に撮り、不具合のある箇所を一覧表(リスト)にまとめておきます。

事前に客観的な資料とともに不具合を正確に伝えておくことで、不動産会社側も補修にかかる費用を見込んだ現実的な買取金額を計算できます。その結果、契約後の減額交渉や予期せぬトラブルを防げます。

会社情報と宅建業免許を確認し行政処分歴を調べる

物件の買取を打診する会社が見つかったら、会社の基本情報と宅地建物取引業の免許状況を確認します。

日本国内で宅地や建物の売買や仲介を事業として行う事業者は、宅地建物取引業法に基づき免許を受ける必要があります。国土交通省「宅地建物取引の免許について」(新しいタブで開きます)によると、2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合は国土交通大臣免許、1つの都道府県内のみに事務所を設置する場合は都道府県知事免許が交付されます。

免許番号に記載された「(1)第○○号」などの括弧内の数字は、新規免許取得時が「(1)」であり、5年ごとの免許更新を経るごとに数字が1ずつ増えていく仕組みです。更新回数が多い会社は一定の営業年数を経ている目安になりますが、免許番号が表示されていること自体が個々の取引の安全性や契約履行を無条件に保証するわけではありません。

具体的な事業実態を調べる際は、免許確認と処分歴の調査を手順として分けて行います。

まず会社情報の確認には、国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」(新しいタブで開きます)を活用します。このシステムでは商号(会社名)や免許番号、所在地を入力して照会し、検索結果画面から商号、代表者名、主たる事務所の所在地、役員名などを確認できます。代表者名そのものを入力して直接検索する機能ではない点に留意します。

次に過去の行政処分歴については、国土交通省の「ネガティブ情報等検索システム」(宅地建物取引業者: https://www.mlit.go.jp/nega-inf/cgi-bin/search.cgi?jigyoubunya=takuti )や、各都道府県の免許行政庁が公開している処分情報窓口を併せて照会します。ただし、これらのシステムで公表される行政処分には「直近5年間」などの対象期間や対象となる処分の範囲に制限があります。検索結果で該当がない場合でも、過去のトラブルが皆無であると断定できるわけではない点に留意し、取引条件そのものを慎重に吟味する姿勢が欠かせません。

査定担当会社と契約上の買主が同一か確かめる

買取の商談では、「査定や相談に対応した不動産会社」と「売買契約書に署名・押印する買主」が同じ法人であるかを必ず確かめます。

不動産の取引形態には、自社で直接買い取る形のほかに、仲介(媒介)、代理、そして買い取った後に自社の責任で再販売する形態などがあります。これらをあいまいにせず、実際に売買契約を結ぶ当事者と、相談窓口になっている会社がどのような法律上の立場にあるのかを、明確に切り分けておく必要があります。

事業者のなかには、自社で買い取る資金や意思がないにもかかわらず直接買取であるかのように案内し、後から別の買取専門業者を紹介して仲介手数料を請求したり、買い手が見つからない段階で大幅な値下げや仲介への切り替えを迫ったりする事例が見られます。一方で、グループ内の買取専門会社や提携先の法人が買主となるような、正当な取引形態も存在します。そのため、買主の名義が異なることだけをもって、すぐに不正な仲介だと決めつける必要はありません。まずは相手の会社に具体的な理由と契約関係の説明を求めます。

直接買取を前提とする場合は、商談の早い段階で次の点を確認します。

  • 売買契約書の買主欄には相談窓口の会社名が入るのか、それとも別の法人が入るのか
  • 別の法人が買主となる場合、相談窓口の会社は「仲介(媒介)」や「代理」など、どのような立場で関わるのか
  • 売主が媒介契約書を結ぶ必要があるのか、仲介手数料などの報酬を誰に支払う約束になっているか

もし別の法人が買主となり仲介取引となる場合は、仲介手数料の負担や買主側の資金力、住宅ローンなどの融資が通らなかったときに白紙解除になる特約(融資利用特約)がないかなどを、改めて細かく確かめなければなりません。

提示額から差引費用を引いて手取りを比べる

各社から提示された査定額を比べるときは、提示された金額の大きさだけで比べず、諸費用をすべて差し引いた「手元に残る現金(手取り額)」を計算して横並びで比べます。

たとえば、提示額が2,000万円であっても売主負担の諸費用が200万円かかる会社では手取りが1,800万円になります。一方、提示額が1,900万円で諸費用を買主側が全額引き受けてくれる会社なら手取りは実質1,900万円となり、こちらの方が多くなります。提示額の高さだけで選ぶと、実際に手元に残るお金が少なくなる逆転現象が起こります。

手取り額は、差し引く時点を分けて整理します。

  • 売却費用を引いた後(契約・引渡時):提示額から、売主が負担する残置物処分、測量、解体、登記、契約書の印紙税などを引いた金額です。買主負担として提示額へ織り込み済みの費用を、重ねて差し引かないようにします。紙の契約書と電子契約では印紙税の扱いが異なるため、契約方式も確認してください。
  • ローンを返済した後(決済当日):売却代金から借入金の残りを返し、抵当権抹消費用や金融機関の手数料、固定資産税などの精算を反映した金額です。
  • 売却後の税金を見込んだ手取り:譲渡所得が出る場合は、確定申告後に納める所得税や住民税も見込んで、最終的に残る金額を試算します。

売却にかかる諸費用は物件の状況によって大きく変わります。大まかな相場をそのまま信じ込まず、各社から「現地の状況を反映した見積もりの内訳」を取り寄せて比較します。

残置物・測量・解体・登記の負担を条文で切り分ける

訳あり物件の取引では、契約書に「現況有姿(現在の状態のまま引き渡す)」という言葉がよく使われます。しかし、何を買主が引き受け、何を売主が負担して対応するのかを契約書の条文ではっきりと決めておかないと、引き渡しの直前に深刻な食い違いが生じてしまいます。

第一に、残置物(残された荷物)を処分する範囲です。タンス、冷蔵庫、衣類、布団、物置内の家財などをそのまま不動産会社が引き取る契約なのか、引き渡し日までに売主が自分のお金で運び出して部屋を空にする条件なのかを書面で明記します。会社が引き取る場合でも、特定の危険物、液体、家電リサイクル法対象品目などが除外されていないか、例外の規定を確認します。

第二に、公簿売買と境界明示・測量の違いです。登記簿上の面積で売買代金を確定し、実際の測量による精算を行わない「公簿売買」と、現地で隣の土地の所有者と境界を確認して境界の目印(境界標)を示す「境界明示義務」は、法律上まったく別の取り決めです。「公簿売買だから測量や境界明示は当然どれも一切不要だ」と思い込まず、契約書面で売主の境界明示義務が免除されているかを確認します。実際に測量して精算することがあるのか、測量図の作成や境界の立ち会いを行うのか行わないのか、そして隣地との境界標が見つからない場合や越境が発覚した場合に引き渡し日の延期や契約解除、費用の負担がどうなるかを個別の条文で確認します。

第三に、建物の解体や修繕の義務です。雨漏りの修理、床の傾きの補修、建物を解体して更地にして引き渡すことなどを、売主の費用と責任で行う条項が入っていないかを点検します。

第四に、名義を買主に移す(所有権移転)前に行う登記(前提登記)です。亡くなった人から名義を変える相続登記、引っ越しなどに伴う住所や氏名の変更登記、住宅ローンの抵当権を消す抵当権抹消登記などの進め方について、どの司法書士を選び、費用をどちらが負担するのかを特定します。

契約不適合責任と解除・違約金条項を確認する

契約書を取り交わすにあたり、最も慎重に確認すべき条項が「契約不適合責任」と「契約の解除・違約金」です。

契約不適合責任とは、引き渡された物件が契約の内容と種類・品質・数量の面で合っていない場合に買主が主張できる権利のことです(e-Gov法令検索「民法」第562条〜第565条(新しいタブで開きます))。買主は売主に対して、不具合を直すよう求める追完請求、代金の減額請求、契約解除、損害賠償請求を行えます。

宅地建物取引業者が直接買い取る取引では、実務上「売主は本物件の契約不適合責任を負わない」とする全部免責の特約を結ぶケースが多く見られます。しかし、業者が買主だからといって、法律上当然に責任が消えるわけではありません。免責の特約が契約書に明記されているか、免除される対象(シロアリ、給排水管、雨漏り、地面の下に埋まっているゴミや基礎など)や期間、例外事項がどのように定められているかを点検する必要があります。

また、免責特約を結んだ場合であっても、e-Gov法令検索「民法」第572条(新しいタブで開きます)の定めにより、売主が知っていたのに告げなかった事実については責任を免れません。雨漏り、これまでに浸水した履歴、近隣とのトラブル、事件・事故・孤独死などの事実を知っている場合は、必ず物件状況等報告書や告知書に記入して相手に知らせなければなりません(心理的瑕疵や告知すべき事項の範囲は物件ごとの具体的な事情によって異なるため、判断に迷う点は書面にして確認します)。

不動産の売却では、売主側に法律上の無条件なクーリング・オフ制度は適用されません。国土交通省「高齢者の自宅の売却トラブルにご注意ください」(新しいタブで開きます)でも注意が呼びかけられているように、宅地建物取引業法第37条の2に定められたクーリング・オフは、宅建業者が自ら売主となり、一般の消費者が買主となる取引を保護する制度です。したがって、不動産を売却する売主側からの無条件解除は認められていません。また、特定商取引法にある訪問購入のクーリング・オフも、不動産売買には適用されません。署名・押印の後に、自分の都合だけで一方的にお金を払わずに契約を取り消す(無償撤回する)ことは認められていません。ただし、だまされたり脅されたりして契約を結ばされた場合の取り消し(詐欺・強迫)や、大きな勘違いに基づく取り消し(重大な錯誤)、買主が代金を支払わないなどの重大な契約違反(債務不履行)に基づく法定解除権まで否定されるわけではありません。

契約解除と違約金については、手付解除(e-Gov法令検索「民法」第557条(新しいタブで開きます))と違約金条項を分けて確認します。手付解除とは、契約時に受け取った手付金を放棄するか、手付金の倍額を相手に実際に提供することで契約を解除できる仕組みです。ただし手付解除ができるのは、「相手方が契約の実行にとりかかる(履行に着手する)まで」、または「契約書に定めた手付解除期日まで」に限られます。期日を過ぎた後の解除に伴う違約金の割合(売買代金の10%〜20%など)は、法律で決まった一律の基準があるわけではなく、個別の契約合意によって定められます。そのため、過大な違約金が設定されていないか条文をしっかり読み込みます。

さらに、一定の条件によって効力が生まれたり消えたりする条件付契約(停止条件・解除条件・解除権留保)の条項を確認します。条件が満たされて初めて効力が出る停止条件(e-Gov法令検索「民法」第127条(新しいタブで開きます))のほか、買主の融資利用特約、社内承認、次の買い手が見つからなかった場合の解除特約が含まれることがあります。こうした条項がある場合は、条件の内容、確認資料を提示する義務があるか、期限はいつまでか、条件が不成立のときの手付金返還ルールや費用精算の扱いを個別に点検します。

決済日・支払方法・引渡条件を確定する

売買契約を結んだ後の残代金決済と物件引き渡しの手順を確定します。

直接買取における代金の支払いは、契約当日に支払われる手付金と、後日の引き渡し時に支払われる残代金の2回に分かれるのが一般的です。契約から残代金支払いまでの期間は、物件の権利関係の整理状況や買主の資金準備、契約条件によって異なります。そのため、各社に具体的な日程計画を提示させます。

取引の安全性を確保するうえで重要となるのが「同時履行」の原則です。e-Gov法令検索「民法」(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)と日本司法書士会連合会「家・土地 Case1」(新しいタブで開きます)の実務解説を踏まえ、残代金の受け取りと物件・登記書類の引き渡しを同時に行える段取りを整えます。

ただし、代金の振込と同時に法務局での登記手続きが完了するわけではありません。法務局による登記手続きの完了には、通常は数日から数週間かかります。実際の決済実務では、売主と買主が立ち会いのもと、担当の司法書士が双方の本人確認・意思確認を行います。そして、権利証(登記識別情報)や印鑑登録証明書などの登記申請書類を事前に点検して預かります。そのうえで、買主の金融機関口座から売主の口座へ残代金の振込が行われ、売主側で「全額の着金」を確認した瞬間に、司法書士へ登記申請の委任が確定し、司法書士が管轄の法務局へ登記申請を行うという手順を踏みます。

危険なのは、司法書士の立ち会いや安全を確保する措置がないまま、買主に対して登記書類や鍵を無条件に先渡ししてしまい、代金は後日支払うという提案に応じることです。万一、登記だけが先に行われて代金が支払われなかった場合、物件の権利を取り戻すことは極めて困難になります。残代金の着金確認と書類の引き渡し・登記申請の段取りを担当の司法書士とともに事前に共有しておくことが大切です。

あわせて、買主が自己資金で支払うのか、金融機関の融資を利用するのかを確認します。融資の審査が通らなかった場合に白紙解除となるローン特約が付いている場合、決済の直前で契約が解消されてしまうリスクを売主が負うことになります。

急がせる・高齢者だけに判断させる場合の停止線

悪質な事業者や強引な営業によるトラブルを防ぐため、商談を一時中断すべき「停止線」をあらかじめ決めておきます。

国土交通省「高齢者の自宅の売却トラブルにご注意ください」(新しいタブで開きます)国土交通省「消費者向け不動産取引に関するお知らせ」(新しいタブで開きます)、さらに国民生活センター「訪問してきた不動産業者へ自宅を売却する際の注意」(新しいタブで開きます)でも、訪問や電話による勧誘で十分に理解・納得しないまま契約を結んでしまう被害に対して注意を呼びかけています。

特に次のような言動が見られた場合は、その場で判断を下さず即座に商談を停止します。

  • 「今日中に契約書に判を押してくれればこの金額で買う」と即決を執拗に迫る
  • 「契約書は形式的な書類だから読まなくて大丈夫」と説明を省こうとする
  • 判断力に不安のある高齢の所有者に対して、同居家族や親族の同席を断り単独で署名を求める
  • 査定額の根拠や差し引かれる費用の内訳を質問しても明確な書面を提出しない
  • 登記識別情報(権利証)や実印、印鑑登録証明書を契約成立前に預かろうとする

不動産の売買契約書に一度署名・押印を行うと、後から詐欺や強迫を法的に証明して契約を取り消すことは簡単ではありません。少しでも不審な点がある場合は、契約書の草案を持ち帰り、周囲の家族や専門家に見せる時間を確保します。

候補各社へ同じ質問を送る比較表

複数の買取会社を客観的に比較するため、すべての候補会社に対して同じ質問票を送り、回答内容を1つの表にまとめます。

スマートフォンなどの画面でも項目ごとの比較と未確認事項の洗い出しが行いやすいよう、確認の着眼点と回答の記入枠を次のように整理します。

表:比較項目、確認の着眼点、A社回答、B社回答、特記事項・未確認事項
比較項目確認の着眼点A社回答B社回答特記事項・未確認事項
取引形態・買主名義自社直接買取か仲介か。契約書上の買主法人名
宅建業免許・処分歴免許番号の更新状況、処分歴の照会結果
提示査定額売買契約書面に記載される売買代金の額面
売主負担費用残置物処分、測量、解体、登記等の売主負担見込
実質手取り見込提示査定額から諸費用を引いた額(残債・税別)
残置物の扱い家財丸ごと引取りか、売主による撤去・空室渡しか
測量・境界明示公簿売買での境界明示義務の免除特約の有無
契約不適合責任売主の修補・賠償責任を免責とする特約の範囲
手付金と手付解除手付金の金額と、手付解除が可能な期日
条件付条項融資利用特約や社内承認等の解除条件の有無
決済手順・日程着金確認と同時の登記書類交付、決済予定日

この比較表を用いると、提示額が最も高い会社なのに諸費用や契約不適合責任が売主負担になっている例や、提示額は控えめでも残置物の引き取りと責任免除によって手取り額が最も高くなる例など、各社の実質的な違いが明確になります。

契約前に司法書士・弁護士等へ確認する場面

訳あり物件の取引では、不動産会社との売買契約を締結する前に、登記・法律・税務などの各分野の専門家へ個別に相談すべき場面があります。各専門家は担当する業務と権限が異なるため、相談内容に応じて適切な窓口を選ぶ必要があります。

  • 相続登記の未了、過去の名義変更、抵当権抹消手続き:司法書士
  • 土地の境界紛争、境界標の亡失、未登記建物の表題登記:土地家屋調査士
  • 共有者間の対立、契約書特約(免責・解除条件等)の法的評価、親族間の紛争:弁護士
  • 売却後の譲渡所得税、特例適用の可否、相続税申告との関係:税理士
  • 所有者の認知機能や意思能力に不安がある場合:弁護士・司法書士(成年後見制度の利用検討など)

専門家に相談する際は、相談時間を有効に使うため次の資料を準備して持参します。

  • 最新の登記事項証明書(登記簿謄本)および公図・地積測量図
  • 固定資産税課税明細書または固定資産評価証明書
  • 買取業者から提示された査定書および条件提示書
  • 買取業者が作成した売買契約書案(特約条項を含む)
  • 宅地建物取引業者から交付された場合の重要事項説明書案(宅建業者が自ら買主となる直接買取では、売主に対する重要事項説明書の交付義務はありません。媒介業者が介在する場合など、交付されたときだけ持参資料に加えます。制度の条文はe-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)で確認できます)
  • 物件の図面、現況写真、把握している不具合や過去の経緯を記したメモ

相談の場では、「提示された契約書の特約条項によって、引き渡し後に売主が損害賠償や解除を請求されるリスクはないか」「前提として必要な登記手続きや権利調整にどのような書類と期間が必要か」という点を具体的に質問します。

まとめ:高値より手取りと契約条件をそろえる

訳あり物件を売却する際、査定額の高さだけに目を奪われると、想定外の差引費用や引き渡し後の補修責任によって、最終的な手元資金を減らしてしまう恐れがあります。

安全に取引を完了させるための本質は、各社から提示された条件を1つの比較表へ揃え、実質的な手取り額とリスク負担を横並びで検証することにあります。

  • 相談相手が仲介会社か直接の買主かを切り分け、契約書に記載される買主名義を確認します。
  • 物件の欠陥や権利関係を客観的な資料で整理し、隠さず正確に開示します。
  • 諸費用の負担区分を確定し、提示額から差引費用を引いた実質手取り額で比較します。
  • 契約不適合責任の免責特約の有無と範囲、除外項目を契約条文で確認します。
  • 司法書士の立ち会いのもと、残代金の着金確認と同時の登記申請手順を厳守します。
  • 即決を迫る会社には応じず、共通の比較表を用いて複数の候補を同じ条件で検証します。

条件をそろえた比較表を作成し、不透明な費用や不利な免責条項を排除したうえで、確実に代金が決済される相手を選定してください。

参照資料

国土交通省「消費者向け不動産取引に関するお知らせ」参照日 2026年8月31日国土交通省「宅地建物取引の免許について」参照日 2026年8月31日国土交通省「高齢者の自宅の売却トラブルにご注意ください」参照日 2026年8月31日国民生活センター「訪問してきた不動産業者へ自宅を売却する際の注意」参照日 2026年8月31日国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」参照日 2026年8月31日日本司法書士会連合会「家・土地 Case1」参照日 2026年9月6日e-Gov法令検索「民法」第127条・第557条等参照日 2026年9月6日登記情報提供サービス「サービス概要」参照日 2026年9月6日