境界が分からない、道路に接していない、古い擁壁がある、あるいは地中に何が埋まっているか分からないといった土地でも、売却は可能です。
「訳あり土地だから」と焦って処分を急ぐ必要はありません。売却を成立させるためには、すぐに多額の工事費をかける前に、土地が抱える課題を「境界・権利」「道路・接道」「安全・地盤」「環境・地中」「インフラ・利用規制」の5つに切り分けて、事実関係を正確につかむことが大切です。
買い手が最も心配するのは、課題があることそのものよりも、「購入したあとにどれだけの追加費用や法律上のトラブルが起こるか見通せないこと」です。公的な資料や専門家による調査で客観的な事実関係を整理できれば、費用をかけて直してから一般の市場で売るか、それとも相応に価格を調整して事実を伝えたうえで今の状態(現況)のまま売るか、無理のない判断基準が定まります。
手元の公的資料を集めて現状の記録を揃える
土地の調査は、現地へ行く前に手元の書類を確認することから始めます。まずは自宅にある権利証(登記済証や登記識別情報通知書)、不動産関係の封筒、過去の売買契約書を探してみましょう。手元に見当たらないときは、法務局や土地がある市区町村の窓口で公的な証明書を取得します。過去に土地の造成や建物の解体をした記憶があるなら、当時の工事書類も有力な手がかりになります。最初からすべての資料が揃わなくても問題ありません。手に入らない項目は「未確認」としたまま、整理を進められます。
登記簿に書かれた数値と現地の実態が食い違っているケースは珍しくありません。公的な記録でどのように扱われているかを把握するため、主に次のような書類を揃えます。
- 登記事項証明書(土地の全部事項証明書):法務局で取得します。地目(土地の用途区分)、公簿地積(登記上の面積)、所有者の住所や氏名、抵当権などの権利関係を確認します。
- 公図(字限図)・地積測量図:法務局で取得します。敷地の形や隣の土地との位置関係、過去に測量が行われているかを確かめます。
- 固定資産税・都市計画税の課税明細書または名寄帳:市区町村の税務窓口で取得します。実際の使われ方に応じた地目(現況地目)や課税標準額、固定資産税評価額を確認します。
昔から相続を繰り返してきた土地では、登記簿に書かれた面積と実際の面積が大きく異なる「縄伸び(実測が登記より広いこと)」「縄縮み(実測が登記より狭いこと)」が起きている場合があります。また、登記上の地目が「山林」や「原野」のまま宅地として使われていたり、反対に雑草や空き地などの雑種地になっていたりすることもあります。そのため、登記簿と課税明細書を見比べることが欠かせません。
現地の安全と立入りリスクを確認する
斜面や崩れかけた石積みがある土地、倒木や雑草が生い茂る土地では、調査をするときに安全を確保することが最優先です。敷地の境目や地面の様子を見る前に、落石や地滑り、足元の崩落といった危険がないかを目で見て確かめます。
古くなった擁壁(土留めの壁)や急な斜面がある場合、所有者の方が自力で法面(斜面)を登ったり、草刈りや補修をしたりしてはいけません。足元が緩んで滑り落ちたり、擁壁の崩壊に巻き込まれたりする重大な危険があるためです。
所有者ご自身が行う現地の確認は、安全な公道や平らな敷地内から周囲を見渡し、状況を写真に残す程度にとどめましょう。危険がありそうな場所の詳しい確認は、無理をせずに専門の調査会社や自治体の相談窓口に任せてください。
境界標・越境・権利関係(境界・権利)を調べる
土地の売却で深刻なトラブルになりやすいのが、隣の土地との境界をめぐる争いや越境、共有名義や借地権といった権利関係のもつれです。客観的な資料と現地の状態を突き合わせ、関係者と合意をつくるための事実関係を整理していきましょう。
境界標の有無と筆界特定制度の活用
敷地の四隅に、コンクリート杭や金属標、刻み目などの境界標(境目を示す目印)が残っているかを確かめます。境界標が見当たらない場合や、隣の人と境目の主張が食い違っているときは、土地家屋調査士に頼んで隣の土地の所有者に立ち会ってもらい、「確定測量」を行って筆界確認書(境界確認書)を交わすのが一般的です。ただし、買い手との合意や取引の条件(登記簿の面積を基準にして測量をせず売買する「公簿売買」や、ありのままの状態で売る「現況有姿売却」など)によっては、売り主による確定測量が必ずしも欠かせない条件にならない取引もあります。詳しい進め方は「境界不明の土地を売却する手順」をご覧ください。
隣の土地の所有者がどこにいるか分からなかったり、立ち会いを断られたりして話し合いがまとまらないときは、法務局の法務省「筆界特定制度」(新しいタブで開きます)を利用する方法があります。これは、土地の所有者などが申請することで、法務局の筆界特定登記官が外部の専門家(筆界調査委員)の意見をもとに、土地が登記された当時に定められた公法上の境目(筆界)を職権で特定してくれる行政の制度です。ただし筆界特定は、公の境目を明らかにする制度であり、民事上の所有権がどこまで及ぶか(所有権界)を確定したり、越境している物の撤去を命じたりする力はありません。事案や測量の手間によってかかる期間や費用も違い、必ずしも裁判より負担が軽いとは限らない点に注意が必要です。
庭木の枝やブロック塀が隣から自分の敷地にはみ出している(越境している)、または自分の敷地からはみ出している場合は、越境している事実を図面に記録し、「将来建て替えるときに解消する」という合意書(覚書)を交わすのが一般的な対策です。状況や買い手との合意によっては、今の状態のまま引き継ぐ条件(現況承継事項)として売買契約に盛り込む選択肢もあります。なお、2023年4月1日に施行された改正民法により、越境された側の土地所有者が、一定の催告(通知)や条件を満たしたうえで自分で枝を切り取れるルール(e-Gov法令検索「民法」(新しいタブで開きます)第233条)が新たに設けられました。感情的な対立を避けるためにも、あらかじめ土地家屋調査士や弁護士に手順を確認しておくことをおすすめします。具体的な合意書の交わし方は「越境がある家・土地を売却する方法」で解説しています。
共有名義・借地権の権利関係と合意形成
土地を借りている「借地」の場合、権利が「地上権」であれば原則として地主の承諾がなくても他人に譲り渡せます。しかし一般的な「土地賃借権」の場合は、地主(賃貸人)の承諾が必要です。もし借地の上にある建物を別の人に売ろうとしても地主の承諾が得られない場合は、地主の承諾に代わる許可を裁判所に求める裁判所「借地非訟事件」(新しいタブで開きます)の手続き(e-Gov法令検索「借地借家法」(新しいタブで開きます)第19条)を検討することになります。借地権の売却手順は「借地権付きの相続した家を売却する手順」をご覧ください。
土地が共有名義になっている場合、自分の持分(共有持分)だけを別の人に売ることは法律上可能です。しかし、敷地全体をまとめて売却するには、民法上、共有者全員の同意が求められます。共有名義の整理については「共有名義で相続した不動産を売却する方法」、土地と建物の所有者が違っている場合は「土地と建物の所有者が異なる不動産の売却方法」で詳しく解説しています。
接道義務と私道の通行掘削(道路・接道)を調べる
土地に建物を新築したり建て替えたりできるかどうかは、道路にどう接しているか(接道条件)や、私道の権利関係によって大きく左右されます。
建築基準法の接道要件と道路種別
都市計画区域や準都市計画区域の中で建物を建てたり建て替えたりするには、e-Gov法令検索「建築基準法」(新しいタブで開きます)第43条第1項に定められた「接道義務」を守らなければなりません。具体的には、敷地が建築基準法で認められた道路に2m以上接している必要があります。この接道条件を満たしていない場合の対応は「再建築不可物件を売却する方法」で詳しく解説しています。
道路の種別は、市区町村の建築指導窓口にある「指定道路図」などで調べます。道路の種類には、主に次のようなものがあります(国土交通省「道路の種類」(新しいタブで開きます))。
- 第42条第1項第1号:道路法による道路(国道、都道府県道、市区町村道など)
- 第42条第1項第2号:都市計画法や土地区画整理法などによってつくられた道路
- 第42条第1項第5号:特定行政庁(都道府県や市区町村)から位置の指定を受けた道路(位置指定道路)
- 第42条第2項:建築基準法が施行されたときに、すでに建物が建ち並んでいた幅4m未満の道(みなし道路。道路の中心線などから敷地を後退させる「セットバック」が必要)
敷地が「幅4m以上の法律に適合した道路」に2m以上接していなくても、すぐに建築が不可能と決まるわけではありません。幅が4m未満であっても、第42条第2項の道路に指定されていれば、セットバックをすることで建築が可能になります。また、敷地のまわりに広い空地があるなどして、特定行政庁が交通や安全の面で問題がないと認めて許可や認定を出す規定(建築基準法第43条第2項の「43条例外」)もあります。指定道路図を確認し、建築指導窓口で相談しながら、2項道路に当てはまるかや例外規定が使えるかを調べることが大切です。
また、敷地の前の道路が私道(個人が所有する道)の場合は、売り主がその道路の持分を持っているか、あるいは他の私道所有者から「私道通行掘削承諾書(上下水道やガスの配管を埋めたり直したりする承諾書)」をもらえるかが重要になります。これらは売却価格や買い手の住宅ローン審査に影響を与える大きなポイントです。私道の権利関係や承諾書をもらう手順は「私道に面した家・土地を売却する注意点」を参考にしてください。
傾斜・擁壁・崖条例・盛土規制(安全・地盤)を確認する
敷地の中に高低差がある土地や斜面では、土砂が崩れるのを防ぐ安全対策が法律で求められ、対策費用がかかるかどうかが売却価格に直接ひびきます。
崖条例による建築制限
一定の高さを超える崖の上や下に建物を建てる場合は、各都道府県や市区町村が定めている建築安全条例(いわゆる「崖条例」)が適用されます。対象となる崖の高さや、崖から建物をどれだけ離すか(離隔距離)、どんな安全対策が必要かは、自治体の条例ごとに決められています。
すでに擁壁がある場合でも、造った当時の「検査済証」がない古い石積みの擁壁、二段擁壁(古い擁壁の上にさらに擁壁を重ねたもの)、コンクリートブロックを積んだ擁壁などは、条例の基準に合っているか、構造として安全か(健全度)を個別に確かめる必要があります。対策としては、深基礎工事(高低差に合わせて建物の基礎を深く打ち込む工法)や補強工事、杭を打つ工事、擁壁自体の造り替えなどがあり、費用は敷地の条件によって大きく変わります。そのため、まずは自治体の建築指導窓口で条例上の扱いを確認し、専門家の調査結果を踏まえて方針を決めます。
擁壁の状態については、国土交通省「宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル」(新しいタブで開きます)などの公的な基準を参考にしながら、専門家に健全度の判定を依頼することをおすすめします。
盛土規制法とハザード情報
2023年5月に施行された宅地造成及び特定盛土等規制法(通称「盛土規制法」)に基づき、都道府県などは危険な盛土(土を盛ること)や切土(土を削ること)を規制する区域を指定しています(国土交通省「盛土・宅地防災」(新しいタブで開きます))。この規制区域の中で一定の規模を超える盛土や切土の造成工事を行う場合は、都道府県知事などの許可や届出が必要です。
敷地が、谷を土で埋めて造成された土地(谷埋め盛土)であるかどうかは、自治体が公開している国土交通省「大規模盛土造成地マップ」(新しいタブで開きます)でおおよその手掛かりがつかめます。ただしこのマップは、大まかな位置や規模を示すものであり、載っている土地がすぐに危険だという意味ではありません。反対に、載っていないからといって安全だと決めつけられるものでもない点に注意してください。
また、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)や土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されているかどうかは、国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」(新しいタブで開きます)で調べられます。特に特別警戒区域に入っている場合、家を建てるときに構造上の厳しい制限がつく可能性があり、安全対策の状況や金融機関の審査基準によっては、買い手が住宅ローンを組む条件に影響が出ます。
地中埋設物・土壌汚染の履歴(環境・地中)を整理する
地中の問題は目で見て確認するのが難しいため、撤去費用や調査費用の負担をめぐるトラブルを防ぐには、過去にその土地がどう使われていたか(利用履歴)を客観的にたどることが大切です。見た目だけで安易に「汚染されている」「地盤が軟弱だ」と決めつけず、公的な制度に沿って段階的に確認を進めていきます。
地中埋設物の有無と確認方法
昔の建物が建っていた土地や古い造成地では、地中に次のようなものが残されていることがあります。
- 建物の解体工事で撤去されずに残ったコンクリートの基礎や杭
- 使われなくなった古井戸、肥溜めの跡、古い単独処理浄化槽
- 建材の破片(ガラ)、コンクリート片、瓦礫(がれき)、埋め戻された産業廃棄物
- 隣の敷地からはみ出して埋まっている古い給排水管やガス管
これらが残っていないかは、過去の解体工事の請負契約書やマニフェスト(産業廃棄物管理票)が残っているかを手がかりに確認を進めます。ただし、手元の資料だけで地中の状態をすべて把握できるわけではありません。そのため、資料で確認できた範囲とまだ調べていない部分をはっきり分けたうえで、地中レーダー探査(電磁波を使って地面を掘らずに調べる調査)や、ショベルカーなどの重機で浅く掘ってみる「試掘調査」を行うか、あるいは売買の交渉の中で「もし埋設物が見つかったら費用をどう分担するか、免責にするか」を取り決めます。なお、古い家が残ったままでの売却判断については「古家付き土地を解体して更地にするかそのまま売るかの判断基準」も参考になります。
土壌汚染対策法と土地利用履歴の確認
その土地で過去に、ガソリンスタンド、メッキ工場、ドライクリーニングの取次店を除き実際に洗濯や洗浄作業を行っていた工場、印刷所、化学薬品を扱う施設などが動いていた場合は、土壌汚染のリスクを調べる必要があります。
e-Gov法令検索「土壌汚染対策法」(新しいタブで開きます)では、有害な物質を使っていた施設(有害物質使用特定施設)を廃止するときに、原則として土壌調査が義務付けられています(ただし調査猶予などの例外もあります)。また、3,000平方メートル以上(その施設が今もある土地では900平方メートル以上)の土地の形や性質を変える工事(形質変更)を行うときは、原則として届出が必要になり、汚染のおそれがあると都道府県知事などが認めた場合は調査命令が出されます。調査猶予になっている土地の形質変更についても、別途届出や調査のルールが定められています(環境省「土壌汚染対策法のしくみ」(新しいタブで開きます))。
一般的な住宅地の売買では、まず閉鎖登記簿謄本や古い住宅地図、航空写真などを確認して、過去にどんな用途で使われていたかを洗い出す「フェーズ1調査(土地利用履歴調査)」を、不動産会社や専門会社を通じて行います。その調査結果や買い手との取引条件に合わせて、環境省の環境省「指定調査機関一覧」(新しいタブで開きます)に載っている調査機関に頼んで土壌ガス調査や土の採取(フェーズ2調査)へ進むか、それとも「未調査の部分がある」として契約条件を整理するかを判断します。思い込みだけで汚染されていると決めつけず、資料で確認できた範囲と未調査の部分を客観的に分けて整理しましょう。
インフラ状況と公法上の利用規制を調べる
敷地に生活に欠かせないライフラインが引き込まれているか、また法律上建物を建てられる地域(用途地域など)なのかを確かめます。
ライフラインの埋設位置と他者敷地通過
上下水道や都市ガスなどの配管は、前の道路に本管が通っているだけでなく、自分の敷地の中まで直接引き込まれているかが大切です。
- 上水道:水道局の給水台帳で配管図を取得し、引き込まれている水道管の太さ(口径が13mmの場合は、20mmへ太くする増径工事が必要になることがあります)や位置を確認します。
- 下水道:市区町村の下水道台帳で本管があるかや、敷地内の最終枡(ます)の位置を確認します。下水道が整っていない地域では、合併処理浄化槽の設置と、排水を流す先(道路の側溝などにつなぐ許可)が必要です。
- 他人地通過・共同配管:古い住宅街では、個人の給排水管がお隣の土地の下を通って引き込まれていたり、複数の家で1本の配管を一緒に使っていたりすることがあります。他人の敷地を通っていると、将来パイプを直すときに「掘削の承諾が得られない」といったトラブルに発展しやすいため、配管の通り道を書面で確認しておくことが欠かせません。
こうしたインフラの整備状況や引き込み工事が必要かどうか、また買い手の住宅ローンの融資条件にどう影響するかは、各自治体の水道局や金融機関の窓口で個別に確かめます。
都市計画法と農地法による制限
敷地がどの都市計画区域に位置しているかを確認します(e-Gov法令検索「都市計画法」(新しいタブで開きます))。
市区町村の都市計画課で、その土地が「市街化区域」か「市街化調整区域」かを調べます。街を広げないように抑制する「市街化調整区域」にある土地は、原則として建物を新築したり建て替えたりすることが制限されています。そのため、開発許可(都市計画法第29条)や建築許可(同法第43条)の基準を満たさなければ住宅を建てられません(国土交通省「開発許可制度の概要」(新しいタブで開きます))。具体的な売却手順は「市街化調整区域の家・土地を売却する方法」にまとめています。
また、実際の使われ方や登記簿の地目が「田」や「畑」になっている農地は、農地法にもとづく転用(農地以外の用途に変えること)の手続きが必要です。自分で使うために転用するのか(農地法第4条)、売買などで権利を移しながら転用するのか(第5条)を確認し、原則として都道府県知事など(または指定市町村長)から転用許可を受ける必要があります。一方で、市街化区域の中にある農地であれば、事前に農業委員会へ届け出ればよいという特例が設けられています。自治体によって手続きを窓口に任せる権限委譲の状況も異なりますので、そもそも農地に当たるかどうかの判断も含めて、現地の農業委員会の窓口で確認しましょう。
訳あり土地の確認表:項目・確認先・売却への影響
土地の課題を整理するための確認項目を一覧化しました。道路や建築の条件はe-Gov法令検索「建築基準法」(新しいタブで開きます)、用途や開発の条件はe-Gov法令検索「都市計画法」(新しいタブで開きます)を基礎に、自治体の担当窓口で対象地ごとに確認します。調査に着手した項目から「確認済み」「未確認」「確認先」を記録し、手元で唯一の正本となる「土地条件確認カード」としてまとめておきます。未確認の事項を「問題なし」と決めつけず、未確認事項を含めた現況のまま査定先へ提示することが、正確な査定とトラブル防止につながります。
| 分類 | 主な確認項目 | 主な確認先・取得資料 | 判明時の売却への影響 | 是正・対処の選択肢 |
|---|---|---|---|---|
| 境界・権利 | 境界標の有無・位置 | 法務局(公図・地積測量図)、現地確認 | 境界不明による紛争リスク、買い手のローン審査への懸念 | 土地家屋調査士による確定測量、筆界特定制度の利用、公簿売買特約 |
| 境界・権利 | 建物・工作物・樹木の越境 | 現地確認、隣地所有者への聞き取り | 将来の解体・改修時のトラブル懸念 | 越境に関する覚書(将来是正の合意)の締結、現況承継特約 |
| 境界・権利 | 共有名義・借地・抵当権 | 法務局(登記事項証明書) | 単独売却の制限、地主承諾料(賃借権譲渡時)の発生、完済条件 | 共有者全員の合意、地主との協議(賃借権は借地非訟も検討)、抵当権抹消 |
| 道路・接道 | 建築基準法上の接道幅員・間口 | 市区町村建築指導窓口(指定道路図等) | 接道要件不足による建築制限・減価懸念 | 指定道路図の確認、セットバック協議、43条第2項の許可・認定協議 |
| 道路・接道 | 私道通行掘削の権利関係 | 法務局(公図・私道登記簿)、私道所有者 | インフラ引き込みや車両通行の制約、融資審査条件への影響 | 私道所有者からの通行掘削承諾書の取得、私道持分の取得交渉 |
| 安全・地盤 | 崖条例・古い擁壁の安全性 | 市区町村建築指導窓口、現地確認 | 擁壁補強や深基礎工事等に伴う費用発生の可能性 | 専門家による健全度判定、是正工事、工事費相当の価格調整 |
| 安全・地盤 | 盛土規制区域・土砂災害区域 | 自治体担当窓口、ハザードマップ、大規模盛土造成地マップ | 造成工事の許可・届出要件、建築時の構造制限 | 規制基準の所管窓口確認、正確な重要事項説明、現況有姿売却 |
| 環境・地中 | 地中埋設物(基礎・ガラ・浄化槽) | 過去の解体工事関係資料、現地試掘調査 | 基礎工事の遅延、撤去費用負担を巡るトラブル | 資料確認・試掘による範囲特定、契約不適合責任特約での費用負担協議 |
| 環境・地中 | 土壌汚染の利用履歴 | 閉鎖登記簿、古地図、環境省指定調査機関 | 調査・浄化費用の発生懸念、利用用途の制限 | フェーズ1(履歴調査)の実施、調査範囲・未調査部分の明示、用途限定売却 |
| インフラ・利用規制 | 給排水・ガスの引き込み状況 | 市区町村水道局・下水道課、ガス事業者 | 新規引き込みや配管更新の工事費発生、融資条件への影響 | 配管台帳の確認、見積もり提示、買主負担条件での価格設定 |
| インフラ・利用規制 | 市街化調整区域・農地転用 | 市区町村都市計画課、農業委員会、知事等の許可窓口 | 建物の新築・建替え制限、所有権移転の制限 | 開発許可等の要件確認、農地転用手続き(届出・許可要件の確認)、専門買取の検討 |
土地条件確認カードの記録フォーマット
上記の確認表をもとに、手元で情報をまとめて管理する「土地条件確認カード」を作成します。項目ごとに調べた状況や確認先を1枚のシートに集約し、査定会社や専門家へそのまま見せることで、お互いの認識の食い違いを防ぐことができます。
【土地条件確認カード(基本フォーマット)】
■ 物件情報:所在地( )/ 地番( )
■ 論点別の確認状況
1. 論点名(境界・道路・安全・地中・インフラ等):
- 状態:[確認済み / 未確認]
- 確認できた事実:
- 根拠資料(公図・登記事項証明書・台帳等):
- 確認先(法務局・自治体窓口・専門家等):
- 用途への影響(再建築・利用制限・工事要否等):
- 次の行動(資料取得・現地確認・窓口相談等):
■ 売却方針の記録
- 最初に比較する売却経路:[通常仲介 / 条件明示仲介 / 権利者相談 / 専門買取 / 確認後再判断]
- 選択理由:
- 再判断日(次の確認期限): 年 月 日売却経路の比較:是正仲介・現況仲介・権利者相談・専門買取・再判断
課題が見つかった土地をどのように売るかは、「自分でお金を出して直してから一般向けに仲介で売る」か、「今の状態のまま条件を書類に明記して、仲介や専門業者の買い取りで売る」か、あるいは「関係する権利者に相談する」「詳しく調べてから改めて判断する」かを比べて決めます。
売却の主なルートは、次の5つに分かれます。
- 通常仲介(直してから売る):確定測量をして境目をはっきりさせたり、残置物を片付けたり、擁壁を補修したりしてから一般の市場で売り出す
- 条件明示の仲介(今の状態のまま売る):土地の課題を書面ですべてオープンにし、そのぶん価格を調整して、一般の個人や事業者にそのまま売り出す
- 関係権利者への相談:隣の土地の所有者、共有者、地主などに、直接買ってくれないか相談する
- 専門会社への買取:訳あり物件を再生して販売している不動産会社に、今の状態のまま買い取ってもらう
- 確認後の再判断:測量の結果や役所の調査結果など、まだ分からない点がはっきりするまで売却活動をいったん止め、結果が出てから判断する
判断の目安は次の表の通りです。
| 比較項目 | 通常仲介(是正後) | 条件明示の仲介(現況) | 関係権利者への相談 | 専門会社への買取 | 確認後の再判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| 想定手取り | 相場水準を目指せるが是正実費が差し引かれる | 是正費相当を減額した価格水準 | 当事者間の交渉次第(隣地合筆等で高値の例もある) | 相場より低い水準(事業者の再商品化費用等が考慮される) | 調査結果に応じて手取りの見通しを再計算する |
| 所要期間 | 長くなりやすい(調査・工事期間+売却活動) | 買い手の探索や条件交渉、融資審査による | 交渉相手の意向による(合意できれば早い) | 比較的早い傾向(買い手側の査定・決済手順による) | 一定の保留期間(調査完了まで)が発生する |
| 売主の作業量 | 多い(測量・工事の手配、立ち会い、打ち合わせ等) | 中程度(資料の収集、重要事項の開示準備) | 少ない〜中程度(権利者との協議・交渉) | 最小限(現況引き渡しを前提とした手続き) | 調査資料の取得・照合作業に集中する |
| 売却の確実性 | 市場需要による(是正しても売れるとは限らない) | 条件に合う買い手(投資家・事業者等)が見つかるかによる | 相手の購入意欲・資金力に左右される | 高い(買い取り条件が合致すれば契約成立) | 保留のため確実性は調査後の選択肢に委ねられる |
| 適しているケース | 是正費用をかけても手取りが大幅に上回る好立地の土地 | 費用持ち出しを避けたい土地、再生需要のある土地 | 隣地が敷地拡大を望んでいる場合や共有持分の整理 | 早期に現状のまま手放したい土地、隣地紛争等がある土地 | 未確認項目が多く、是正費用や法的制限の見通しが立たない土地 |
注意すべき点として、是正費用をかけても、その全額を売却価格に上乗せできるとは限りません。例えば、現況のままでも1,200万円程度で売却できる土地があるとします。確定測量や擁壁補修に合計480万円を投じて1,500万円で売却できたとしても、差し引きの手取りは1,020万円となり、現況のまま売却したときの手取りを下回ってしまいます。
一方で、専門会社による買取は売却価格が低くなる傾向があるため、最初から買取だけに絞り込むのも得策ではありません。まずは是正工事の見積もりと現況での査定額を並べ、手元に残る最終手取り額を算定して比較します。仲介と買取の詳しい仕組みの違いは「不動産の仲介と買取の違いを比較」、買取業者の選定基準は「訳あり物件の買取業者を選ぶ基準」、査定時の確認基準は「土地査定で見られるポイントと減額要因」で詳しく解説しています。
告知書(物件状況等報告書)と売買契約の合意ポイント
今の状態のまま売る場合や、売ったあとの責任を負わない特約(契約不適合責任の免責)をつける取引であっても、売り主が知っている事実を伝える義務(告知義務)がなくなるわけではありません。
2020年4月に施行された改正民法により、引き渡された物件の種類・品質・数量が契約内容と合っていない場合、買い手は売り主に対して一定の請求ができるようになりました。具体的には、直すよう求める「追完請求」をはじめ、代金の減額請求、契約の解除、損害賠償の請求が認められています(e-Gov法令検索「民法」(新しいタブで開きます)第562条以下)。
契約書に「今の状態のまま引き渡す」「契約不適合責任を負わない」という特約を設けていても、売り主が知っていたのに買い手に伝えなかった事実があれば、その責任を逃れることはできません(民法第572条)。
国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(新しいタブで開きます)(2026年4月1日版を含む)でも、買い手が適切に判断できるよう、物件の過去の利用履歴や欠陥について売り主から告知書を提出してもらい、重要事項説明を適切に行うことが明記されています。
なお、国土交通省のウェブサイトなどで公表されている国土交通省「物件状況等報告書(告知書)参考様式」(新しいタブで開きます)は、業界団体などが作成した参考の様式例であり、全国一律で定められた公式の書類ではありません。実際の取引では、仲介会社や取引の形に合わせた告知書の用紙を使い、すでに分かっている事実、分からない事柄、調査した範囲やまだ調べていない部分をはっきりと記載して買い手に書面で渡します。告知書の詳しい書き方や注意点は「売主のための物件状況報告書(告知書)の書き方と注意点」をご確認ください。
告知書には、主に次のような内容を盛り込みます。
- 境界標がどこにあるか、境目が決まっていない場所や越境があるか
- 過去に浸水の被害や土砂崩れ、地盤沈下があった履歴
- 地中に埋まっている物(建物の基礎、ガラ、浄化槽など)があるか、試掘を行った結果はどうだったか
- 過去に土壌汚染の調査をしたことがあるか、また過去に工場などを動かしていた履歴があるか
- 擁壁にひび割れや水抜き穴の詰まりがないか、これまでに増改築をした経緯
- 前の道路の権利関係や、通行や掘削の承諾を取れているかどうか
「知っている事実をすべて契約書と告知書に書き、買い手がそれを納得したうえで購入した」という証拠を書面で残しておくことこそが、売却後のトラブルや損害賠償の請求を防ぐ確実な備えになります。
専門家・相談窓口の役割分担と相談前の準備
土地の困りごとは多岐にわたるため、課題の種類に合わせて相談先を正しく選ぶことが、費用と時間を無駄にしない一番の近道です。
- 土地家屋調査士:境界標が見当たらない、境界確認書がない、公図と現地の形が合わない、地積測量図を作りたいときの相談先です。
- 建築士・指定確認検査機関:接道条件を満たしているか、建て替えができるか、崖条例の制限や擁壁が法律に合っているかを確認する窓口です。
- 地盤調査会社・地質コンサルタント:擁壁が壊れる危険がないか(健全度判定)、地盤が強いかどうか、盛土が安全かを調べてもらえます。
- 環境省指定調査機関:過去に有害な物質を使っていた土地で、土地利用履歴の調査や土壌汚染の調査を行います。
- 司法書士:相続登記や名義変更(所有権移転登記)の手続き、裁判所に出す書類の作成などを相談できます。
- 弁護士:共有者同士や隣の人とのトラブルの交渉、借地非訟事件や境界確定訴訟などの代理を頼めます。
- 市区町村の窓口(建築指導・都市計画・宅地防災の担当):指定道路図を見て道路の種類を確かめたり、市街化調整区域での開発・建築の基準や、盛土規制法の規制区域を確認したりできる公的な窓口です。
専門家への相談前に準備する3点セット
相談窓口へ向かう際は、あらかじめ次の資料を用意しておくことで、初回の面談から実務的な助言を得られます。
- 法務局・役所で取得した資料:登記事項証明書、公図、地積測量図、固定資産税課税明細書
- 現地の状況が分かる写真:接道している道路、境界付近、擁壁や傾斜地、敷地全景を異なる角度から撮影したもの
- これまでの利用履歴のメモ:「いつ頃取得したか」「以前どんな建物が建っていたか」「隣地とどのようなやり取りがあったか」を時系列でまとめたメモ
専門家や不動産会社に相談する際は、次の3点を具体的に質問し、現実的な方針を固めていきます。
- 直すのにいくらかかるか(是正工事や測量等の費用見積もり)
- 現況のまま売却した場合の市場価格はいくらか(現況での査定額)
- 是正した場合と現況売却した場合の最終手取りの差額はどれくらいか
