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親の土地をただで借りて家を建てるなら、土地の購入代金はかかりません。その一方で、親の土地に家を建てるときは、税金、住宅ローン、兄弟との関係で先に決めておくことがあります。どれも、土地をただで借りるか、地代を払って借りるか、もらうか買うかで答えが変わります。
親の土地に家を建てる形は3つある
親の土地に子が家を建てるとき、土地の使い方は大きく3つに分かれます。どの形にするかで、贈与税や住宅ローン、将来の相続の話し合いが変わってきます。家族で話す前に、それぞれの違いを押さえておきましょう。
| 形 | 土地の名義 | 親に払うお金 | 主に確かめること |
|---|---|---|---|
| ただで借りる | 親のまま | なし | 相続の話し合い、ローンの担保 |
| 地代を払って借りる | 親のまま | 地代(一時金がある場合も) | 地代の額と税の扱い |
| もらう・買う | 子に移る | 贈与ならなし、売買なら代金 | 贈与税、値段の決め方、名義変更の費用 |
ただで借りる形は土地代がかからず大きな利点ですが、デメリットもあります。土地が親の名義のままなら、ローンの担保や相続の場面で、親や兄弟の協力が要るからです。借りる側の保護が弱く、土地の持ち主が代わると、住み続けにくくなることもあります。
また、土地は親、建物は子という、名義の分かれた状態が続きます。この状態の家を将来売るときの進め方は、土地と建物の名義が違う不動産の売却の記事で扱っています。
ただで借りて建てると、贈与税はかかる?
地代も権利金も払わずに土地を借りることを、使用貸借といいます(出典:国税庁 No.4552。参照資料の一覧へ移ります)。親の土地を使用貸借して子が家を建てる場合、土地を使う権利の価額はゼロとされます。そのため、借地権(建物を建てるために土地を借りる権利)をもらったとして贈与税がかかる扱いにはなりません。
ただし、税がかからないのは「土地を使う権利」の部分だけです。土地そのものや建築資金を親からもらえば、それが贈与税の対象になるかは別に確かめます。家づくり全体に贈与税がかからない、という意味ではない点に気をつけてください。
親が亡くなったときの土地の扱いも、知っておきたい点です。使用貸借で貸している土地は、相続税の計算で、人に貸している土地としての減額をしません。親が自分で使っている土地と同じように評価する扱いです(出典:国税不服審判所。参照資料の一覧へ移ります)。
実家に相続税がかかりそうかは、実家の相続税の記事で確かめられます。土地の評価を下げる特例が使えるかの判定は、小規模宅地等の特例の記事に分けました。
では、親に固定資産税の分を渡していれば、地代を払っていることになるのでしょうか。お金のやりとりがあっても、使用貸借と判断される場合があります。国税不服審判所が公表した1996年(平成8年)3月29日の裁決が、その例です(出典:国税不服審判所 裁決。参照資料の一覧へ移ります)。
この裁決では、土地の持ち主に払っていたお金を地代とする主張が認められませんでした。地代の取り決めがなく、領収証や帳簿、支払いの経緯から、税の負担分とみられたためです。問われたのは金額よりも、そのお金が土地を使う対価かどうかでした。古い裁決のため、今の契約のルールそのものではなく、お金の性質の見方を知る例として捉えてください。
地代を払って借りると、何が変わる?
土地を使う対価として地代を払って借りるなら、賃貸借や借地権の扱いを確かめます。地域によっては、借地権を設定するときに権利金(借りるときに一度に払うお金)を払う慣行があります。そうした地域では、相当の地代(権利金の代わりとなる水準の地代)に満たない地代だと、税の扱いが変わってきます。借地権の設定で受けた利益を、贈与として扱う場合があるからです(出典:国税庁 相当の地代通達。参照資料の一覧へ移ります)。
つまり、地代を少し払えば税の問題がなくなる、とはいえません。権利金の慣行、払う額、契約の中身、お金の性質によって扱いが変わるためです。地代を払う形を考えるなら、契約を結ぶ前に税務署か税理士に相談してください。
詳しく:相当の地代と権利金
詳しい説明を開く
権利金を払う代わりに相当の地代を払う場合は、通達の条件のもとで、借地権の設定による利益はないものとして扱います(出典:国税庁 相当の地代通達。参照資料の一覧へ移ります)。相当の地代の額は、土地の価額などの条件をもとに計算します。通達の中でも、ふつうの地代とは区別されています。
インターネットでは「権利金の認定課税」という説明を見かけることもあります。これは法人税の説明で、法人が持つ土地を対象にしています(出典:国税庁 No.5730。参照資料の一覧へ移ります)。個人の親子の土地の使い方に、そのまま当てはめるものではありません。
土地をもらう・買うなら、どんな税金を確かめる?
土地そのものを親からもらうと、個人からもらった財産として贈与税の対象になります(出典:国税庁 No.4402。参照資料の一覧へ移ります)。暦年課税(1年ごとに計算する方法)では、その年にもらった財産の合計が出発点です。そこから基礎控除(税がかからない枠)110万円を引いて計算します(出典:国税庁 No.4408。参照資料の一覧へ移ります)。土地のほかに同じ年にもらったお金があれば、それも合わせて計算します。
合計が基礎控除を超えるときは、もらった子が、原則として翌年2月1日から3月15日までに申告して納めます(出典:国税庁 No.4429。参照資料の一覧へ移ります)。たとえば2026年にもらったなら、2027年(令和9年)2月1日から3月15日までが原則の期間です。
例として、ほかに贈与がなく、暦年課税で、土地の評価が1,000万円の場合を考えます。1,000万円から110万円を引いた890万円が、基礎控除を引いた後の金額です。これは納める税額ではありません。税率を掛ける計算や、土地をいくらと評価するかは、税務署か税理士に確かめてください。
親から土地を買う場合も、値段によっては贈与税の対象になります。著しく低い値段で買うと、時価との差額をもらったとみなす扱いがあるからです(出典:国税庁 No.4423。参照資料の一覧へ移ります)。「著しく低い」かどうかは、個々の事情に応じて判定されます。ここでいう時価は通常の取引の値段で、相続税の評価額をそのまま使うものではありません。
値段を決める前に、税理士か税務署に相談しておくと、後からの手直しを防げます。親の側に、売ったことによる税金がかかるかどうかも、あわせて確かめてください。
もらう形でも買う形でも、名義を子に移す登記の費用がかかります。土地の名義を移す登記には、登録免許税(登記のときに納める税)がかかります。売買と贈与では、税額表の区分が分かれています(出典:国税庁 No.7191。参照資料の一覧へ移ります)。登記の手続きは、司法書士に頼めます。
さらに、土地の購入や贈与、建物の新築には、不動産取得税(不動産を取得したときに都道府県へ納める税)がかかります(出典:滋賀県。参照資料の一覧へ移ります)。住宅には軽減があるため、実際に納める額は、土地のある都道府県の税の窓口で確かめます(出典:岐阜県。参照資料の一覧へ移ります)。
親名義の土地のまま住宅ローンは組める?
親名義の土地に子が家を建てる場合も、住宅ローンを利用できる場合があります。ただし、金融機関は、建物だけでなく土地にも抵当権を求めることがあります。抵当権は、返済が止まったとき、担保の不動産を売って、その代金から優先して返してもらえる権利です(出典:裁判所 担保不動産競売。参照資料の一覧へ移ります)。
フラット35を例にとると、次のような案内があります(出典:住宅金融支援機構。参照資料の一覧へ移ります)。
- 敷地が借地でも、条件を満たせば利用できる場合がある
- 敷地には、原則として第1順位の抵当権を設定する
- 地主が申し込む人の親などの直系の親族なら、敷地にも抵当権を設定する
- 土地をさらに又借りしている場合は扱いが違うため、取扱金融機関に確かめる
使用貸借の場合も、地主である親が担保を出すことが、取扱会社の案内に書かれています(出典:SBIアルヒ。参照資料の一覧へ移ります)。三井住友銀行の案内でも、融資の対象の物件に抵当権を設定する条件があります(出典:三井住友銀行。参照資料の一覧へ移ります)。同じ案内では、銀行と保証会社の審査があり、結果によっては断られる場合もあるとしています。抵当権を付けられることと、ローンが通ることは別の話です。
親が担保を出すと、子が返せなくなったときに、親の土地が競売にかけられることがあります(出典:石川県信用保証協会。参照資料の一覧へ移ります)。親が担保を出すだけなのか、保証人や連帯債務者にもなるのかは、契約の中身で決まります。保証人は、子が返せないときに代わりに返済を求められる人です(出典:徳島県消費者情報センター。参照資料の一覧へ移ります)。連帯債務者は、子と一緒に借金を負い、親自身も返済の責任を持つ人です(出典:住宅金融支援機構 FAQ。参照資料の一覧へ移ります)。
金融機関には、親が何に署名し、どこまで責任を負うのかを聞いておきましょう。親が担保を出すときに、年齢や書類にどんな条件があるかは、候補の金融機関に直接聞いてください。ローンを返し終える前に親が亡くなれば、担保の付いた土地を誰が継ぐかという話にもつながります。兄弟にも、担保を出す予定を早めに伝えておくと、行き違いを減らせます。
固定資産税は、土地は親・建物は子に届く
固定資産税は、原則として毎年1月1日の時点で、土地や家屋を持っている人が納めます(出典:東京都主税局。参照資料の一覧へ移ります)。そのため、土地が親の名義のままなら土地の分は親に、子が建てた家の分は子に納税通知書が届きます。年の途中で名義を移しても、その年度に納める人は切り替わりません。
子が親に税の分のお金を渡す約束をしても、役所が税を請求する相手は変わりません。家族の中で誰が負担するかと、役所が誰に請求するかは、分けて考えておきましょう。税の分を渡すなら、それが地代ではなく税の負担分だと書面に残しておくと、後で説明しやすくなります。
住宅が建っている土地には、税を軽くする住宅用地の特例があります。特例では、課税標準(税額を計算するもとの金額)を次のように下げます(出典:古河市。参照資料の一覧へ移ります)。
| 土地の部分 | 課税標準 |
|---|---|
| 住宅1戸につき200㎡までの部分 | 価格の6分の1 |
| それ以外の住宅用地 | 価格の3分の1 |
例として、住宅1戸の敷地と認められる300㎡の土地なら、200㎡が6分の1、残る100㎡が3分の1の区分です。これは面積の区分の話で、請求される税額が6分の1になるという意味ではありません。
家を増やすと、土地の税は下がる?
特例は住宅1戸ごとに面積を数えるため、住宅が増えると区分が変わることがあります。ただし、今の土地がどう判定されているかや、敷地をどう使うかで結果は変わるため、下がるとは言い切れません。
東京都の説明では、住宅と一体の庭や自家用の駐車場は、住宅用地の例に入ります(出典:東京都主税局。参照資料の一覧へ移ります)。一方で、空き地や、住宅を建てている途中の土地は、住宅用地に入らない例とされています。土地や家屋の状況が変わったときは、住宅用地の申告が必要とされています。出す書類や時期は、土地のある市区町村の固定資産税の窓口で確かめてください。
古い建物を壊して建てる場合は、扱いが別になることがあります。壊す時期を決める前に、同じ窓口へ聞いておきましょう。
その土地に家を建てられる?実家と同じ敷地でもよい?
親の土地でも、そこに家を建てられるとは限りません。道路への接し方や区域、土地の種類によっては、建てられないか、許可が要ります。設計を頼む前に、次の点を市区町村の窓口で確かめておくと、計画のやり直しを防げます。
道路・区域・農地を確かめる
建物の敷地は、原則として建築基準法の道路に2m以上接していなければなりません(出典:長崎市。参照資料の一覧へ移ります)。建築基準法の道路は原則として幅4m以上ですが、4m未満でも道路として扱う制度があります(出典:神戸市。参照資料の一覧へ移ります)。目の前に道があっても、それだけでは建てられるかを判断できません。
市街化調整区域(建物を建てることを抑える区域)では、家を建てるのに原則として許可が要ります。許可が不要な建築物もあるため、事前に市区町村へ確かめてください(出典:福井市 調整区域。参照資料の一覧へ移ります)。
福井市の例では、親族の土地というだけでは、建てられるとは決まりません(出典:福井市 分家住宅。参照資料の一覧へ移ります)。土地の持ち方や家が必要な理由などの基準を満たし、許可を受ける必要があります。許可の履歴の調べ方は、市街化調整区域の家・土地の売却の記事でも扱っています。
畑や田に建てるときは、農地を住宅の敷地に変える許可(農地転用許可)が原則として要ります(出典:農林水産省。参照資料の一覧へ移ります)。市街化区域(街づくりを進める区域)の中なら、あらかじめ農業委員会に届け出る扱いです。許可の基準や受付のしかたは、土地のある自治体と農業委員会で確かめてください。
古い納屋や空き家を壊してから建てる場合は、解体業者の選び方の記事で、許可や見積もりの見方を確かめられます。
実家と同じ敷地に建てるとき
建築の決まりでは、1つの敷地には1つの建物を建てるのが原則です(出典:福井市 一団地認定。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、用途の上で切り離せない関係にある複数の建物は、1つの敷地にまとめられます。子の家がそうした関係にあたらなければ、実家の敷地を分けて考えます。
敷地を分けると、残る実家の敷地は狭くなります。その結果、実家が今の決まりに合わない建物(違反建築物)になる場合があります(出典:三鷹市。参照資料の一覧へ移ります)。分けたあとの両方の敷地で、道路に接する長さや、敷地の広さに対する建物の大きさを確かめます。
また、建築のための敷地の分け方と、登記の上で土地を分ける位置は、同じになるとは限りません。登記の1区画ごとに家1軒、と考えると、実際の決まりとずれることがあります。三鷹市の案内では、敷地を分けるときの事前の相談で、次のような資料を参考にしています。
- 配置図や現況図(建物の位置が分かる図)
- 公図と地積測量図(土地の形と広さが分かる図)
- 登記簿
- 実家の建築確認の書類など、今の建物が分かる資料
必要な資料は自治体によって違うことがあるので、土地のある市区町村の窓口で確かめてください。
分筆にかかる作業と費用
分筆(登記の上で土地の区画を分けること)は、土地家屋調査士に頼むのが一般的です(出典:法務省 分筆の登記。参照資料の一覧へ移ります)。土地家屋調査士の分筆の仕事には、次の作業が含まれます。
- 法務局の資料などの調査
- 隣の土地や道路との境目の確認
- 測量と図面の作成
- 法務局への申請
分筆が要るかは、建築の決まりだけでなく、土地の名義をどうするかとも関わります。名義の予定も伝えたうえで、分筆が必要かどうかを土地家屋調査士や司法書士に相談してください。
費用の目安として、2025年度の調査の数字があります。条件は、264㎡の市街地の宅地を2つに等分するケースです。報酬の全国平均は482,028円、中央値は461,415円でした(どちらも税抜き)(出典:日調連 報酬ガイド。参照資料の一覧へ移ります)。この条件には、土地全体の測量や、道路・隣の土地との境目の確認が含まれています。
交通費や境界杭などの実費と消費税は別にかかり、現場の状況で総額は変わります。見積もりは、報酬と実費を分けて書いてもらってください。
兄弟にはどう話し、何を書き残す?
兄弟がいる場合、親の土地をただで使うことが、将来の相続の話し合いで話題になることがあります。贈与税がかからないことと、相続人どうしでどう扱うかは、別の問題だからです。
相続人の1人が多額の生前贈与などを受けていた場合、その分を特別受益(先に受け取った分)として考えることがあります(出典:京都家庭裁判所。参照資料の一覧へ移ります)。そのうえで、それぞれの取り分を計算する場合があります。ただし、土地をただで借りていたことが特別受益にあたるかは、ここでは断定できません。家族の事情によって考え方が変わりうるため、気になるときは弁護士に相談してください。
編集部としては、親が元気なうちに、親も交えて家族で話しておくことを勧めます。土地をどう使うか、担保を出すか、税の分を誰が払うかを、建てる前に共有しておくためです。親の口から事情を伝えてもらえると、兄弟も受け止めやすくなるでしょう。
書き残しておきたいこと
特別受益を主張するときは、利益の中身や時期、金額を具体的に示し、裏付けの資料を出すよう案内されています(出典:京都家庭裁判所。参照資料の一覧へ移ります)。何年もたつと、当時の取り決めを誰も正確に思い出せなくなりがちです。決めたことを書面に残しておけば、後の話し合いの材料になります。
次の項目は、法律で決まったものではなく、話し合いの手がかりです。
- 土地のどの範囲を使うか
- 何のために使うか(子の家族の住まいなど)
- 地代を払うか、払うならいくらか
- 固定資産税などを誰が負担するか
- いつまで使うか、建物を将来どうするか
- 担保に出す範囲
- 事情が変わったときに、誰とどう話し合うか
書面があっても、将来の相続の結果が決まるわけではありません。契約書の形にするかどうかは、司法書士や弁護士に相談して決めてください。
親の土地に建てる前の確認の順番と相談先
確かめる順番の一例を挙げます。これは編集部の提案で、決まった手続きの順番ではありません。
- 土地と実家の資料を集める(登記簿、公図、固定資産税の通知書など)
- 家を建てられるかを、市区町村の窓口や建築士に聞く
- どの形で土地を使うかを、親と兄弟で話す
- 金融機関に、担保の条件と親の役割を聞く
- 税・登記・契約を専門家に確かめ、決めたことを書面に残す
相談先は、確かめる中身によって分かれます。
| 確かめること | 相談先 |
|---|---|
| 贈与税、地代、低い値段での売買 | 税務署、税理士 |
| 名義の変更(登記) | 法務局、司法書士 |
| 分筆、測量 | 土地家屋調査士 |
| 建てられるか、敷地の分け方 | 市区町村の建築の窓口、建築士 |
| 固定資産税 | 市区町村の固定資産税の窓口 |
| 不動産取得税 | 都道府県の税の窓口 |
| 住宅ローン、担保 | 金融機関 |
| 相続の取り分、家族の取り決め | 弁護士 |
親の判断力に不安があるときは、担保の承諾や贈与を進められないことがあります(出典:泉佐野市。参照資料の一覧へ移ります)。進める前に、金融機関や専門家へ相談してください。
親の財産を家族が管理するしくみは、家族信託と後見の違いの記事で比べています。この記事の内容は一般的な情報です。自分の家族の場合は、上の表の相談先に確認してください。
