相続登記で納める登録免許税は、原則として課税価格の0.4%(1,000分の4)です。税率は国税庁 No.7191「登録免許税の税額表」(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)で確認できます。
ただし、手元の固定資産税の納税通知書に書かれている数字へ、そのまま機械的に0.4%を掛けると、税額の計算を間違えてしまうおそれがあります。実際の計算では、特例などで減額された「課税標準額」ではなく、減額前の「評価額(価格)」を使います。その上で、亡くなった方(被相続人)の共有持分割合の反映や、端数処理(1,000円未満や100円未満の切り捨て)、さらには100万円以下の土地などに用意された免税措置の判定が必要になるためです。
この記事では、手元の評価資料から課税価格を正しく読み取り、端数処理や免税措置を踏まえて登録免許税を正確に計算する手順を解説します。自分で手続きを進めたい方は、必要書類や申請手順をまとめた自分で相続登記を行う手順と必要書類とあわせて確認してください。
登録免許税の基本計算式と0.4%が適用される条件
登録免許税とは、不動産の所有権が移ったことなどを登記簿に記録する際に、国へ納める税金(国税)です。亡くなった方(被相続人)から相続人が不動産を受け継ぐ相続登記では、登録免許税法に基づき「課税価格の0.4%(1,000分の4)」が課税されます(出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(新しいタブで開きます))。
計算の基本式は次のとおりです。
- 課税価格(各不動産の評価額×持分を合算し、1,000円未満を切り捨てた額)× 0.4% = 登録免許税額(100円未満を切り捨て)
遺言による取得でも、受遺者が法定相続人なら「相続人に対する遺贈」として0.4%、法定相続人以外への遺贈は2.0%(1,000分の20)が基本です。登記原因と税率の対応は国税庁の税額表(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)で確認します。相続登記の最初の確認事項は相続登記の必要書類でも整理しています。
固定資産税の通知書から「課税価格」を正しく確認する
登録免許税の課税価格を計算する土台となるのは、市町村(東京23区は都税事務所)の固定資産課税台帳に登録されている価格、つまり「固定資産税評価額」です。
毎年4月から5月頃に自宅へ届く「固定資産税・都市計画税の納税通知書(課税明細書)」や、自治体の窓口で取得できる「固定資産評価証明書」を見て金額を確認します。
書類を確認する際は、書かれている欄の名称に注意してください。
- 「価格」または「評価額」欄の金額を確認する:登録免許税の計算の基礎となる金額です。
- 「課税標準額」欄の金額と見間違えない:住宅用地の特例や税負担の調整措置によって、評価額よりも低く減額されている場合がありますが、登録免許税の計算には使いません。
- 登記を申請する年度の評価額を使う:申請時に使える評価証明書の年度を、法務局のよくある質問(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)と管轄法務局で確認します。
評価額が記載されていない不動産がある場合の対応
私道(公衆用道路)や保安林などの非課税地は、固定資産税が非課税となっているため、納税通知書や評価証明書の価格欄が空欄または「0円」と記載されていることがあります。
また、新築直後で台帳にまだ登録されていない建物や、登記がされないまま放置されていた未登録の家屋も評価額の記載がありません。
評価額の記載がない不動産であっても登録免許税は発生します。この場合は、管轄法務局(登記所)の登記官が認定した価格を課税価格として計算します(出典:法務局「登記申請を御自身ですることを検討されている方からよくある質問」(新しいタブで開きます))。
- 公衆用道路などの非課税地:近隣にある宅地(近傍宅地)の1平方メートル当たり単価を基準とし、管轄法務局が定める一定の割合(例として100分の30など)を乗じて算出します。全国一律の割合ではないため、管轄法務局の認定基準を確認する必要があります。
- 新築直後の未登録建物:法務局ごとに定められている「新築建物課税標準価格認定基準表」の平方メートル単価に建物の延床面積を掛けて算出します。
- 相続した古い未登録建物(未登記家屋など):新築単価をそのまま掛けるのではなく、構造や用途に応じた経年減価(経過年数による減価補正)を反映させた基準が管轄法務局ごとに定められています。
これらの不動産が含まれる場合は、自己判断で0円とせず、法務局のよくある質問(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)を参照し、管轄法務局へ計算方法と認定基準を確認してください。
土地・建物・共有持分の計算手順
相続登記の対象になる不動産は、土地と建物でそれぞれ個別に評価額を確認し、持分割合を反映させて計算を進めます。
単独所有の場合の計算手順
亡くなった方が土地や建物を1人で100%所有(持分1分の1)していた場合は、書類に書かれている評価額がそのまま計算の基礎になります。
- 土地の評価額:1,200万円
- 建物の評価額:400万円
- 合計評価額:1,600万円
共有持分を所有していた場合の計算手順
亡くなった方が配偶者や兄弟などと不動産を共有していた場合は、不動産全体の評価額に、亡くなった方の持分割合を掛けた金額が課税価格の基礎になります。
- 計算式:不動産全体の評価額 × 亡くなった方の共有持分割合
たとえば、評価額が2,000万円の土地で、亡くなった方の持分が「2分の1」だった場合、登録免許税の計算対象になる金額は「2,000万円 × 1/2 = 1,000万円」です。不動産全体の2,000万円に対して税金を計算するわけではありません。
複数物件を1件の申請書で一括申請する場合の合算ルール
実家の土地と建物、あるいは複数の筆を1件の登記申請書にまとめるときは、物件ごとではなく申請単位で課税価格を合算して端数処理します。計算方法は国税庁 No.7191(新しいタブで開きます)とe-Gov法令検索「登録免許税法」(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)で確認します。
同じ登記申請書でまとめて申請する課税対象の物件については、まず各物件の評価額(持分を掛けた後の金額)をすべて足し合わせます。そして、その「合計額」に対して端数処理や税率の掛け算を行います。免税措置の対象になる物件がある場合は、あらかじめ計算から外して、課税される物件の分だけで計算します。
端数処理の3ステップと最低税額ルール
登録免許税の計算では、法律(国税通則法および登録免許税法)に基づき、課税価格と税額の両方で端数の切り捨てを行います。
端数を処理する手順は、次の3ステップです。
- 課税価格を合算して1,000円未満を切り捨てる:同じ申請書に入れる課税対象の各物件について、評価額(持分を考慮した後の金額)を足し合わせ、その合計額の1,000円未満を切り捨てます。
- 税率0.4%を掛ける:1,000円未満を切り捨てたあとの課税価格に「0.004」を掛けます。
- 税額の100円未満を切り捨てる:計算して出てきた税額の、100円未満を切り捨てます。
計算シミュレーション例
次の条件で実家の土地と建物を一括して相続登記する場合の税額を計算します。いずれも課税対象となる物件です。
- 土地(持分1分の1):評価額 12,345,678円
- 建物(持分1分の1):評価額 4,567,890円
計算の手順は以下のとおりです。
- 評価額の合算:12,345,678円 + 4,567,890円 = 16,913,568円
- 課税価格の端数処理:16,913,568円の1,000円未満を切り捨て = 16,913,000円(課税価格)
- 税率の掛け算:16,913,000円 × 0.4% = 67,652円
- 税額の端数処理:67,652円の100円未満を切り捨て = 67,600円
このケースで実際に納める登録免許税は「67,600円」となります。
最低税額は1,000円
評価額が非常に低い山林や建物を登記する場合、計算上の税額が数百円になることがあります。
登録免許税法第19条(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)により、1件の登記申請について計算した税額が1,000円未満の場合は1,000円を納付します。この最低税額は物件ごとではなく、申請全体に適用されます。
なお、後述する免税措置が適用されて申請全体が非課税となる場合は、この最低税額も課されません。
土地の登録免許税がゼロになる2つの免税措置(2027年3月31日まで)
所有者が分からなくなってしまう土地の発生を防ぐことなどを目的に、租税特別措置法に基づき、登録免許税がかからなくなる免税措置が設けられています。
これらの免税措置の期限は、いずれも「2027年(令和9年)3月31日まで」です(出典:津地方法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」(新しいタブで開きます))。
免税措置1:不動産の価額が100万円以下の土地
法務局「相続登記の登録免許税の免税措置」(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)によると、対象となる相続による所有権移転登記または所有権保存登記で、不動産の価額が100万円以下の土地は登録免許税が免除されます。
この免税措置1を利用するときの重要な条件は、以下のとおりです。
- 対象は「土地」のみ:建物は評価額が100万円以下であっても免税にはならず、通常の0.4%が課税されます。
- 全国の土地が対象:都市部・地方・農地・山林を問わず、全国の土地に適用されます。
- 1筆ごとに判定する:複数の土地を同時に申請する場合、合算額ではなく1筆ごとの価額で100万円以下かどうかを個別に判定します。
- 共有持分の場合は持分換算額で判定する:不動産全体の評価額に被相続人の持分割合を乗じた金額が100万円以下であれば免税対象です(例:土地全体の評価額が180万円でも、持分2分の1なら換算額90万円となり免税)。
一部の土地だけが100万円以下で、他の土地や建物が課税対象となる場合は、免税対象の土地を除外して課税物件だけで課税価格と税額を計算します。
相続登記をしないまま死亡した方に関する免税措置
祖父が亡くなったあと、父が相続登記をしないまま亡くなり、今回孫が名義を変更するようなケース(数次相続)に使える特例です。数次相続が起きた不動産を手放す際の注意点については、数次相続後の不動産売却手続きでも詳しく解説しています。
土地の所有権を受け継いだ個人が、自分への相続登記を済ませないまま亡くなった場合、その亡くなった方を名義人にする登記については登録免許税が免除されます。
- 対象は「土地」のみ:こちらの特例も、建物の登記は対象になりません(法務局の免税措置案内(新しいタブで開きます)、確認日: 2026-09-19)。
- 亡くなった中間の相続人名義にする登記が免税:祖父から父へ名義を変える際にかかる登録免許税が非課税になります。
- 2次相続の登記判定:父から孫へ名義を変える2回目の登記には、この特例(中間取得者の免税措置)は使えません。ただし、その土地自体の価額が100万円以下であるなど別の免税条件に当てはまっていれば、そちらの免税措置(免税措置1)を単独で適用できます。
申請書に根拠条文を記載しなければ免税されない
これらの免税措置を受けるためには、登記申請書の「登録免許税」欄に、根拠となる法令の条文をはっきりと書いておく必要があります。この記載を忘れてしまうと、通常どおり税金が課されてしまうため注意してください。
- 100万円以下の土地の記載例:「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」(法務局の免税措置案内(新しいタブで開きます)、確認日: 2026-09-19)
- 数次相続で亡くなった方名義にする登記の記載例:「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」
一部の土地だけが免税になる場合は、課税対象になる物件の税額を計算して書いた上で、免税になる土地について非課税の条文をあわせて記載します。
登記原因ごとの税率比較(売買・贈与・相続)
不動産の名義変更では、登記原因によって登録免許税率が異なります。国税庁 No.7191「登録免許税の税額表」(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)で該当する区分と適用期限を確認してください。売却時の諸費用は不動産売却の費用と手取り額の計算でも整理しています。
| 登記の原因 | 主な課税標準 | 税率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 相続・相続人への遺贈 | 固定資産税評価額 | 0.4%(1,000分の4) | 相続人は単独申請可能。土地の免税措置あり |
| 生前贈与 | 固定資産税評価額 | 2.0%(1,000分の20) | 相続の5倍の税率。別途贈与税の確認が必要 |
| 売買(土地) | 固定資産税評価額 | 1.5%(1,000分の15) | 租税特別措置法による軽減税率(2029年3月31日まで、本則は2.0%) |
| 売買(住宅用建物) | 固定資産税評価額 | 0.3%(1,000分の3)または 2.0% | 本則2.0%。自己居住など一定の要件を満たし証明書を添付した場合に0.3%(2027年3月31日までの取得等) |
| 第三者への遺贈 | 固定資産税評価額 | 2.0%(1,000分の20) | 法定相続人以外の個人や法人への遺贈 |
登録免許税の納付方法と申請書の書き方
登録免許税は、法務局へ登記申請書を提出するときに納めます(出典:法務局「登記申請を御自身ですることを検討されている方からよくある質問」(新しいタブで開きます))。
納付する方法は、主に以下の3通りです。
1. 収入印紙で納付する
個人が紙の申請書で手続きを行うときに、一番よく使われている方法です。
- 納める金額分の収入印紙を購入し、登記申請書とは別の登録免許税納付用台紙に貼って提出します。用紙と貼付方法は法務局のよくある質問(新しいタブで開きます)(確認日: 2026-09-19)で確認します。
- 収入印紙は法務局の中にある売店や、郵便局の窓口で購入できます。
- 貼った印紙に、印鑑などで割印や消印をしてはいけません。割印を押すと印紙が無効として扱われてしまうおそれがあります。消印の処理は法務局側で行います。
2. 電子納付(オンライン申請の場合)
「登記・供託オンライン申請システム」を使ってインターネット経由で申請する場合は、インターネットバンキングや対応しているATMから、Pay-easy(ペイジー)を使って納付できます。納付に必要な情報が発行されたら、決められた期限内に納付手続きを行います。
3. 税務署や金融機関の窓口で現金納付する
税金の額が高額になる場合などは、事前に日本銀行(代理店となっている銀行や郵便局の窓口)や、管轄の税務署で現金を納付することもできます。納付したあとに受け取る「領収証書」を申請書の台紙に貼り付けて提出します。
登記申請書の登録免許税欄の記載例
登記申請書の下部にある「課税価格」と「登録免許税」の欄には、次のように記入します。
課税価格 金16,913,000円
登録免許税 金67,600円100万円以下の免税になる土地と、課税される建物が混ざっている場合は、次のように記入します。
課税価格 金4,567,000円
登録免許税 金18,200円
(土地について租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税)計算の準備と法務局・専門家への相談手順
登録免許税の計算を間違いなく進めるために、まずは手元の書類を整理して、確認用の計算メモを作ってみましょう。不動産の売却や相続の手続きで必要になる書類一式については、相続した家の売却必要書類ガイドでもまとめて確認できます。
手元にそろえる資料
- その年度の固定資産評価証明書(または固定資産税課税明細書)
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本):権利関係や共有持分割合を正確に確認するために必要です。
- 亡くなった方の戸籍謄本・除籍謄本:だれが相続人になるのかを特定するために必要です。
法務局の「登記手続案内」を活用する場合の注意点
法務局では、自分で登記申請を行う方に向けて「登記手続案内」を無料で実施しています。
- 利用の形式:予約の要否、相談時間、窓口・電話・Web会議などの対応形式は法務局ごとに異なります。管轄法務局の案内を確認してください。
- 案内してもらえること:登記申請書の様式や一般的な記入事項、一般的な必要書類の確認、登録免許税の基本的な計算方法などです。
- 案内してもらえないこと:申請書の代筆や下書きの作成、遺産分割協議の中身に関するアドバイス、具体的な相続税や贈与税の相談などです。完成した申請書類の事前審査や、申請の受理を保証する窓口ではありません。
この案内を利用するときは、事前に登記事項証明書や評価証明書を取り寄せ、作成した申請書案や計算メモを用意すると相談内容を具体化できます。
司法書士へ相談したほうがよいケース
以下のような事情があるときは、登録免許税の計算だけでなく、手続き全体の難易度が高くなります。
- 私道や山林など、固定資産税評価額が書かれていない不動産が含まれている
- 相続登記が何代にもわたって放置されていて、関係する相続人が大勢いる
- 遺産分割協議がまとまっておらず、だれがどの持分を取得するのか決まっていない
司法書士に依頼する場合は、登録免許税(国に納める実費)とは別に、司法書士への報酬(手数料)がかかります。相談するときは「固定資産評価証明書」と「登記事項証明書」を持参すると、登録免許税の実費も含めた正確な見積もりをスムーズに受けられます。
