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相続した土地の価格はどう調べる?売却査定・相続税評価・遺産分割を分ける

相続した土地の価格は一つではありません。売却査定額、相続税評価額、固定資産税評価額、遺産分割で使う金額は目的と基準が違います。まず何を決めるための価格かを固定し、同じ土地・持分・基準日・前提で資料をそろえます。

まだしないこと

固定資産税評価額を売値にしたり、査定額を相続税申告へ使ったりしない

まずすべきこと
  1. 価格を使う目的を売却・税・分割等から一つ書く
  2. 土地の地番・筆・持分・利用状況を資料で確認する
  3. 目的に合う価格資料と基準日を同じ表へ記録する

このページで決めること用途に合う価格資料を選び、家族協議・査定・税務相談のどこへ同じ条件で渡すか決められます。

相続人が土地の売却査定、遺産分割の時価、税評価を分けて確認する様子
公開日 2026年9月2日法令・制度確認日 2026年9月2日執筆・編集 住まいのよりみち編集部読了目安 15

相続した土地の価格を調べるとき、土地には単一の決まった価格が存在しないという点に注意が必要です。土地の価格には売却、税務申告、遺産分割といった異なる目的があり、目的に適さない価格基準を使うと、相続人間の協議が決裂したり税務申告で誤りを生じたりします。

土地の価格を正しく把握するためには、まず調べる目的をはっきりさせましょう。そのうえで、登記事項証明書や公図、固定資産税課税明細書を手元にそろえ、それぞれの目的に合った調べ方を選びます。

土地の価格は5種類ある|目的と公的指標の違いを整理する

土地取引や評価の実務では、広く知られている公的な指標に不動産会社の査定価格などを加え、実務上の目的別に5つの価格基準として整理して比べます。だれが公表や計算をしているのか、いつの時点の価格なのか、本来は何のために使うのかを知ることが、価格調査の土台となります。

表:価格の種類、公表・算出主体、基準日・公表時期、主な利用目的
価格の種類公表・算出主体基準日・公表時期主な利用目的
実勢価格(時価)市場の取引当事者取引成立時実際の売買契約、遺産分割協議での公平な価値基準
不動産会社の査定価格宅地建物取引業者査定実施時点売却活動における売出希望価格の検討
公示地価・基準地価国土交通省土地鑑定委員会/都道府県知事1月1日時点(3月公表)/7月1日時点(9月公表)一般の土地取引の指標、公共用地取得の算定基準
相続税評価額(路線価・倍率)国税庁・国税局長1月1日時点(7月公表)※相続開始年の現況を当該年分の基準で評価相続税や贈与税の課税価格の計算
固定資産税評価額市町村長(東京23区は東京都知事)1月1日時点(3年ごとに評価替)※住宅用地特例等により課税標準とは異なり得る固定資産税・都市計画税・登録免許税の算定基準

公的な土地評価の目安として、国土交通省「公的土地評価について」(新しいタブで開きます)によると、相続税路線価は地価公示水準の約8割、固定資産税評価額は約7割を目安に設定されています。

ただし、公的な価格を割り戻して「路線価を0.8で割れば実際の売却価格になる」と機械的に計算してはいけません。公的な価格は標準的な土地(画地)を想定した一律の評価基準であり、道路の幅や敷地の間口、売り手と買い手のバランス(需給バランス)、擁壁(ようへき)の有無といった個別の取引事情が反映されていないためです。

土地を売りたいとき|成約事例の確認と不動産会社の査定比較

相続した土地をお金に換えたい場合や、維持や管理の負担をなくすために売却を検討する場合は、近隣で実際に売れた事例(成約事例)を調べたうえで不動産会社へ査定を依頼します。

売出価格と成約価格を区別する

不動産情報サイトなどに掲載されている価格は、売り手が希望している「売出価格」であり、実際に契約が成立した「成約価格」ではありません。売出価格には売り手の希望や値引き交渉の余地が含まれているため、市場の相場より高めに設定されている傾向があります。

実際の相場水準を調べる際は、国土交通省が提供するWebGISシステム(地図情報システム)を活用します。国土交通省「不動産情報ライブラリとは」(新しいタブで開きます)で紹介されているシステムでは、不動産の取引価格情報や地価公示、用途地域、防災情報などを地図上で重ね合わせて確認できます。実際に取引された時期や面積、土地の形状、前面道路の状況といったデータ項目を確かめ、相続した土地に近い成約水準を把握します。なお、システムを利用するにあたっては国土交通省「不動産情報ライブラリ 利用上の注意」(新しいタブで開きます)に記載された利用条件を確認してください。

不動産会社の査定根拠を比較する

不動産会社に土地の査定を依頼すると、周辺で似たような土地が取引された事例と比較して価格を算出します。不動産流通推進センター「価格査定マニュアル」(新しいタブで開きます)では、住宅地の査定において「事例比較法」を採用しています。これは、標準的な土地(画地)や近隣の取引事例と比べながら、道路との接し方や土地の形状、駅やバス停への近さ(交通接近性)といった違い(格差率)を反映して査定価格を導き出す方法です。

査定を依頼する際は、複数の会社へ同じ資料を渡して根拠を確認します。提示された査定額の高さだけで判断せず、どのような取引事例をもとにしているのか、どのような値下がり要因(減価要素)を織り込んだのかなど、説明の具体性を比較します。

相続税を申告するとき|利用単位で分ける路線価と倍率方式

亡くなった方(被相続人)が亡くなった日(相続開始日)の属する年分における相続税申告のための土地評価額は、国税庁が定める財産評価基準に基づいて算出します。国税庁 No.4602「土地家屋の評価」(新しいタブで開きます)に定められているとおり、土地の評価は登記簿上の地目にかかわらず、相続開始日時点での実際の地目(現況地目)と実際の面積(現況地積)で行います。なお、農地や山林などは宅地と評価方法や単位が異なるため、実際の地目区分に応じて評価します。

宅地は登記の筆数ではなく利用単位(1画地)で評価する

宅地を税金面で評価するときは、登記簿上の1筆(いっぴつ)単位にとらわれず、利用の単位となっている「1画地(いっかくち)」ごとに判定します。国税庁 No.4603「宅地の評価単位」(新しいタブで開きます)に定められているとおり、自分で住むためや事業のために一体として利用している宅地は、その全体を1画地とします。

一方で、自分で使っている部分と賃貸アパートの敷地(貸家建付地)が隣り合っている場合や、人に土地を貸す権利(借地権)を設定している部分がある場合は、利用区分ごとに分けて別々の1画地として評価します。

路線価地域は補正率を掛けて計算する

市街地にある宅地には、道路ごとに1平方メートルあたりの千円単位の価格を示した「路線価」が付けられています。国税庁 No.4604「路線価方式による宅地の評価」(新しいタブで開きます)に基づき、相続が始まった年の正面路線価に、奥行きの長さに応じた「奥行価格補正率」を掛けます。さらに角地であれば側方路線影響加算率、表と裏の両方が道路に接していれば二方路線影響加算率を加えて1平方メートルあたりの単価を求め、面積(地積)を掛けて評価額を計算します。

道路に接する間口が狭い土地や、奥行きが極端に長い土地、形が整っていない不整形な土地については、定められた補正率を使って価格を下げる調整(減価調整)を行います。

路線価のない地域は倍率方式を適用する

郊外や農村部など、路線価が定められていない地域の宅地などでは「倍率方式」を用います。国税庁 No.4606「倍率方式による土地の評価」(新しいタブで開きます)に定められているとおり、その土地の相続が始まった年分に対応する「固定資産税評価額」に、国税局が定めた評価倍率表の一定倍率を掛けて算出します。

近くの市街地に路線価があるからといって、勝手にその数値を引っ張ってきて換算することは認められていません。固定資産税評価額は、都税事務所や市区町村役場の税務窓口で固定資産課税台帳(名寄帳)または固定資産評価証明書を取得し、相続が始まった年分の数値を確認します。

家族で遺産を分けるとき|相続税評価額と時価の乖離を防ぐ

遺産分割協議で土地の価格を決めるときは、相続税評価額と市場の時価に開きがある点を理解しておく必要があります。

遺産分割における評価基準の考え方

遺産分割の話し合いでは、相続人全員が合意していれば、固定資産税評価額や相続税評価額を目安として採用すること自体は禁止されていません。しかし、相続税評価額は公的な課税基準であり、実際の市場の実勢価格より低めに設定されていることが多いため、財産の構成によって不公平が生じやすくなります。

例えば、長男が時価4,000万円・相続税評価額3,000万円の土地を取得し、次男が預貯金3,000万円を取得するとします。このとき相続税評価額を基準にすると「等しく3,000万円ずつ取得した」ように見えますが、実質的な経済価値には1,000万円の差が生じます。そのため、公平性を重視して話し合う場合や評価について意見が対立する場合は、相続税評価額ではなく「分割協議を行う現時点の時価」を基準に協議を進めることが一般的です。ただし、遺産分割で合意した評価額をそのまま税務署への相続税申告には転用できません。

代償分割を行う際の税務上の注意点

相続人のうち1人が土地を現物のまま取得し、他の共同相続人に金銭を支払う「代償分割」を行う場合は、土地の時価をもとに代償金の額を決定することが多く見られます。

代償分割の対象となった特定の土地について、代償分割をしたときの通常の取引価額(時価)をもとに代償金の額(代償債務額)を決めた場合は、相続税の課税価格を計算する際に按分調整を行います。国税庁 No.4173「代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」(新しいタブで開きます)では、「代償債務額×(代償分割の対象となった土地の相続税評価額÷その土地の代償分割時の通常の取引価額)」という調整式を用いて計算すると定めています。なお、相続人同士でこれと異なる合理的な算定方法について全員の合意がある場合は、その合意による計算が認められることもあります。そのため、この調整式だけが唯一の計算方法とされているわけではありません。

また、代償金として現金の代わりに相続人自身がもともと持っていた不動産を渡した場合は、その不動産を渡した時点の時価で資産を譲渡したとみなされます。その結果、譲渡所得税の課税対象となる点にも注意が必要です。

協議がまとまらない場合の調停と鑑定評価の位置付け

査定の根拠や資料を突き合わせても相続人同士で合意が得られず、弁護士を交えた協議でも解決が難しい場合は、法的な手続きとして家庭裁判所への遺産分割調停の申し立てがあります。

裁判所「遺産分割調停」(新しいタブで開きます)の手続きでは、相手方のうち1人の住所地を受け持つ家庭裁判所、または当事者全員の合意で定めた家庭裁判所へ申し立てを行います。申し立ての費用として、亡くなった方(被相続人)1人につき収入印紙1,200円分と連絡用郵便切手が必要となり、不動産の登記事項証明書や固定資産評価証明書などの資料を提出します。

調停では、双方が提出した不動産会社の査定書などを参考にしながら合意を目指します。それでも価格をめぐる対立が解消せず、調停が不成立となって審判(裁判官が判断を下す手続き)へ移行する際など、裁判所が必要と判断した場合には、家庭裁判所が選任する不動産鑑定士による鑑定評価が実施されることがあります。鑑定を実施するかどうかや見積もり、予納金の負担方法は事案に応じて裁判所から指示されるため、申し立て先の家庭裁判所に確認します。

机上の計算だけで確定させない|現地確認と役所調査が必要な減価要因

公図や路線価図、固定資産税課税明細書などの机上の書類を見ただけでは、土地の現実の取引価値を確定することはできません。道路後退(セットバック)が必要かどうか、擁壁(ようへき)の工事費用がかかるか、敷地からはみ出しているもの(越境物)がないかといった、価格を下げる個別の要因(減価要因)が潜んでいるためです。

  • 接道状況と道路後退(セットバック):敷地に接している道路(前面道路)が建築基準法上の道路かどうか、また道路の幅が4メートル未満で建て替えるときに敷地を後退させる必要があるかによって、実際に使える敷地面積が変わります(e-Gov法令検索「建築基準法」第42条(新しいタブで開きます))。道路の指定種別や後退の要否・範囲は、市区町村の建築指導窓口などで確認してください。
  • 敷地の形状と接道長さ:建築基準法では、原則として敷地が道路に2メートル以上接していなければなりません(e-Gov法令検索「建築基準法」第43条(新しいタブで開きます))。接道長さが足りない土地や、通路のような細長い敷地の先にある土地は、建て替えが制限される場合があります。ただし、認定・許可や自治体の条例などにより扱いが異なるため、一律に再建築不可と決めつけず、担当窓口へ確認してください。
  • 高低差と擁壁:道路や隣の土地との高低差が大きく、古い擁壁の造り替えや土留め(どどめ)工事が必要な場合は、多額の造成工事費用が差し引かれます。
  • 権利関係と越境:隣の家の屋根や雨樋(あまどい)、ブロック塀が敷地をまたいで越境している場合や、地中に古い水道管などの埋設管が存在する場合は、撤去や是正の合意を取り交わす負担が生じます。
  • 用途地域と法令制限:市街化を抑える市街化調整区域内の土地は、原則として建物の新築や建て替えが制限されるため、買い手が限られます。

これらの要因は、現地に足を運んで境界を示す目印(境界標)や実際の様子を目で確かめ、市区町村役場の建築指導課や道路管理課で道路の種別や都市計画の制限を調査しなければ判明しません。また、公図や地積測量図は境界を確認するための重要な資料ですが、取得しただけで現地の境界が確定するわけではありません。境界標が見当たらない場合や、図面と現地の状況が一致しない場合は、土地家屋調査士への現地照合や測量調査の依頼を検討します。

調査を始める前に集める書類と専門家への相談手順

土地の価格調査をスムーズに進め、家族での話し合いや専門家への相談を実りあるものにするために、事前に手元へそろえる資料と相談手順をまとめます。すべての書類が最初からそろっていなくても初回の相談は可能ですが、手元にある資料を持参することで、より具体的な助言を受けられます。

手元にそろえる基本資料

  • 登記事項証明書(土地・建物):法務局で取得し、所有者の名義、地目、面積(地積)、抵当権などの権利関係を確認します。
  • 公図・地積測量図・建物図面:法務局で取得し、敷地の形状や道路との位置関係、隣の土地との境界の状況を確認するための基礎資料とします。
  • 固定資産税の納税通知書・課税明細書:毎年春に市区町村から送られてくる書類で、固定資産税評価額や課税地積(課税の基準となる面積)を確認します。
  • 現地の写真・境界確認資料:土地の現況、道路との段差、境界標の有無などを写真やメモで記録しておきます。

専門家への相談分岐と役割

相談窓口は、調べる目的や直面している課題によって異なります。それぞれの専門分野に応じて相談先を選びましょう。

  • 不動産会社(売却したいとき):実際の相場価格(実勢価格)の把握や、売却活動を進めるための相談窓口です。登記事項証明書や公図を持参し、「近隣で最近売れた事例(成約事例)」「売り出しを想定する価格と売却までにかかる見込み期間」「今の状態のままで売れるか、建物の解体や測量が必要か」を確認します。
  • 税理士(相続税を申告するとき):相続税評価額の計算や、税金の優遇措置(特例)を適用できるか相談する窓口です。固定資産税課税明細書や名寄帳(なよせちょう)を持参し、「遺産の総額が相続税の基礎控除を超えるか」「小規模宅地等の特例が使えるか」「申告期限までのスケジュール」を確認します。
  • 司法書士(登記や書類を作るとき):不動産の名義を変更する相続登記の申請や、遺産分割協議書の作成を依頼する窓口です。家庭裁判所へ提出する書類の作成支援も相談できますが、家庭裁判所での調停代理などは行えないため、役割を理解したうえで相談します。
  • 弁護士(話し合いが難航しているとき・もめているとき):相続人同士の意見対立における交渉代理や、家庭裁判所での調停・審判の手続きを代理できる法律の専門家です。代償分割の合意条項の作成や調停を申し立てる手順を相談します。
  • 不動産鑑定士(客観的な価格を評価したいとき):遺産分割や親族間売買において、公的に通用する客観的な時価を算定したい場合の相談窓口です。鑑定評価の対象範囲や見積もり費用を確認します。

価格比較メモで条件をそろえる

他の相続人と土地の扱いを話し合うときは、感情的な対立を避けるため、客観的な比較メモを作成して共有します。金額だけを並べてしまうと、評価した時点や前提条件の食い違いから誤解が生じてしまいます。

  • 比較メモに記載する項目:土地の所在、対象となる持分(土地全体か一部の持分か)、評価時点(いつの時点の価格か)、現況条件(建物が建ったままか更地で引き渡すか)、費用の含み方(仲介手数料、解体費、測量費などが差し引かれているかどうか)、算定根拠・情報源。
  • 査定条件の統一:複数の不動産会社の査定価格を載せる際は、建物の解体や確定測量の要否など、査定の前提条件がそろっているか確認します。必要かどうかが定かでない測量費や解体費をすべての案へ一律に差し引いて載せるのではなく、現況のままで売却する案と、土地を整備してから売却する案を分けて記載します。
  • 分割方法ごとの受取見込み額:土地を売却して現金で分ける「換価分割」や、一人が引き取って代償金を支払う「代償分割」について、それぞれが受け取れる見込み額を試算します。換価分割における受取額は、実際に売れた金額から実際の諸経費を差し引いた残額を、法定相続分や全員で合意した分配割合に応じて分ける形になります(均等に分けるのは分配割合の一例です)。

まとめと最初のアクション

相続した土地の価格には、売却査定価格、相続税評価額、固定資産税評価額、遺産分割での時価という目的別の基準があり、それぞれ計算方法や役割が異なります。

公的な価格を機械的に割り戻して売却価格と決めつけたり、相続税評価額をそのまま遺産分割の基準に据えたりすると、家族間のトラブルや申告の不備を招いてしまいます。まずは公的な証明書類をそろえ、何のための価格調査なのかをはっきりさせてから手続きを進めてください。

参照資料

国土交通省「不動産情報ライブラリとは」参照日 2026年9月2日国土交通省「不動産情報ライブラリ 利用上の注意」参照日 2026年9月2日不動産流通推進センター「価格査定マニュアル」参照日 2026年9月2日国税庁 No.4602「土地家屋の評価」参照日 2026年9月2日国税庁 No.4603「宅地の評価単位」参照日 2026年9月2日国税庁 No.4604「路線価方式による宅地の評価」参照日 2026年9月2日国税庁 No.4606「倍率方式による土地の評価」参照日 2026年9月2日国税庁 No.4173「代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」参照日 2026年9月2日裁判所「遺産分割調停」参照日 2026年9月2日国土交通省「公的土地評価について」参照日 2026年9月2日