相続した家を売却したときの税金は、売却代金へそのまま税率を掛けて計算するものではありません。基本は、売却による収入から、被相続人から引き継ぐ取得費、売却に直接かかった譲渡費用、適用を確認した特例を差し引いた課税譲渡所得を求めます。
相続売却で特に間違えやすいのは、次の3点です。
- 取得費と取得日は、原則として被相続人から引き継ぐ
- 相続税評価額、固定資産税評価額、住宅ローン残高は、売却時の取得費へそのまま入れない
- 「3年以内」という一つの期限で、取得費加算と空き家控除をまとめない
この記事では、確認済みの数字だけで税額を概算し、未確認の項目は0円にせず「確認待ち」として残します。読み終えると、譲渡所得の計算表、特例候補、不足資料、申告期限、売却代金から確保する金額を一枚に整理できます。
結論:税額より先に、日付・取得費・特例候補を確認する
課税譲渡所得の基本式は次のとおりです。
> 課税譲渡所得 = 譲渡価額 − 取得費 − 譲渡費用 − 適用を確認した特別控除
土地・建物の譲渡所得は、給与等とは分けて計算します。国税庁も2026年版の案内(新しいタブで開きます)で、この計算式と分離課税を示しています。
2026年分の一般税率は、売却年1月1日時点で所有期間5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%です。相続した家は、原則として亡くなった人の取得日を引き継いで判定します。詳細な判定と税率の内訳は後段で確認します。国税庁「土地や建物を売ったとき(2026年分)」(新しいタブで開きます)
ただし、式だけ分かっても税額は出ません。次のどれかが不明なら、税額欄は「未確認」のままにします。
- 被相続人がいつ、いくらで土地・建物を取得したか
- 建物取得費から差し引く減価償却費相当額
- どの支出が譲渡費用に当たるか
- 長期・短期を判定する取得日
- 取得費加算または空き家控除の適用可否
- 売買の譲渡日をどの日として申告するか
不明項目を0円にして計算すると、確定額ではなく入力漏れのある数字になります。まず「確認済み・資料あり未計算・見積り・不明・特例適用確認待ち」の状態を付けてください。
相続時の税金と売却時の税金を時点で分ける
「相続した家の税金」には、異なる時点・異なる計算の税が含まれます。
| 時点 | 主に確認する税・金額 | 本記事での扱い |
|---|---|---|
| 相続時 | 相続税 | 遺産全体で判定。売却益への税とは別 |
| 相続登記 | 登録免許税、司法書士等へ依頼する場合の費用 | 売却準備の現金支出と取得費候補を分ける |
| 保有中 | 固定資産税・都市計画税、管理費等 | 保有費。譲渡費用へ一律に入れない |
| 売買契約時 | 紙の契約書にかかる印紙税 | 売主負担分は譲渡費用候補 |
| 売却後 | 譲渡所得に対する所得税・復興特別所得税・住民税 | 本記事の中心 |
| 翌年 | 確定申告・納税 | 特例と添付資料を含めて準備 |
相続税は家の売却価格だけで決まりません。国税庁は、相続・遺贈等で取得した財産等から債務等を差し引いた正味遺産額と、3,000万円+600万円×法定相続人の数の基礎控除等から課税対象を判定すると案内(新しいタブで開きます)しています。配偶者の税額軽減等、税額が0円になっても申告が適用条件となる制度があるため、本記事から相続税の申告要否を一律に決めません。
紙で作成する不動産売買契約書には印紙税がかかり、一定の契約書には2027年3月31日まで軽減措置があります。契約金額ごとの税額は国税庁の案内(新しいタブで開きます)で契約時点の制度を確認してください。電子契約を含む個別の課税文書判定は、契約方法を示して確認します。
売買契約書の印紙税や仲介手数料、登記、ローン完済等を含む現金手取りは、不動産売却の費用と手取りで別に計算してください。ローン残高は手取りを減らしますが、それだけで譲渡所得から差し引ける取得費・譲渡費用にはなりません。
金額より先に「日付カード」を作る
所有期間、特例、申告期限は日付で変わります。税率を掛ける前に、次を記入します。
【相続売却の日付カード】
被相続人が土地を取得した日:
被相続人が建物を取得・新築した日:
相続開始日(死亡日):
相続税の申告期限:
相続税を申告・納付した日:
被相続人が家に住まなくなった日:
相続後に人へ貸した・住まわせた・事業で使った期間:
解体日または予定日:
耐震工事の完了日または予定日:
売買契約日または予定日:
引渡日または予定日:
売却代金を分配・使用する予定日:被相続人の取得日が分からない場合、相続開始日を代わりに入れません。取得時期も被相続人から引き継ぐためです。
売買契約日と引渡日が別の年になる場合も止まります。国税庁は、譲渡日は原則として引渡日としつつ、契約の効力発生日に譲渡があったものとして申告する取扱いも示しています(新しいタブで開きます)。どの年分で申告するかにより税制・期限が変わり得るため、年末をまたぐ契約は契約前に確認してください。
課税譲渡所得を5行で組み立てる
次の5行を一度に埋めず、資料が確認できた行から更新します。
| 行 | 入力するもの | 状態 |
|---|---|---|
| A 譲渡価額 | 売却価格、固定資産税等の受取精算金、その他の譲渡対価 | 確認済み・見積り・不明 |
| B 通常の取得費 | 被相続人の土地・建物取得費、購入時費用、建物の減価償却後の額等。Cを含めない | 確認済み・資料あり未計算・不明 |
| C 相続税額の取得費加算 | 適用を確認した相続税額の一部。Bへ含めない | 適用確認済み・候補・対象外 |
| D 譲渡費用 | 売却に直接要した確認済み費用 | 確認済み・判断待ち・不明 |
| E 特別控除 | 適用を確認した空き家控除等 | 適用確認済み・候補・対象外 |
この表での計算式は次のとおりです。
> 課税譲渡所得 = A − B − C − D − E
まず A−B−D で譲渡損益を求めます。プラスの場合だけ、確認済みのCを取得費へ加え、適用するEを控除します。Cは特例を使わず計算した譲渡益が上限で、Eも控除前の譲渡所得を超えて差し引けないため、C・Eによって課税譲渡所得をマイナスにはしません。国税庁 No.3267(新しいタブで開きます)、No.3306(新しいタブで開きます)
A−B−D がマイナスなら譲渡損失です。税率を掛けず、他の土地・建物の譲渡所得や一定のマイホーム特例を含む申告上の扱いを別に確認します。国税庁 No.3203(新しいタブで開きます)
Cの取得費加算は、税務上は取得費へ加える特例です。本記事では通常の取得費Bと二重計上しないため、確認欄を分けています。空き家控除をEへ入れる場合は、同じ譲渡についてCを入れません。Eへ別の特例を入れる場合は、取得費加算との併用可否を個別に確認します。
【5行計算表】
A 譲渡価額: 円 状態[ ]
B 通常の取得費: 円 状態[ ]※Cを含めない
C 相続税額の取得費加算:円 状態[ ]※Bへ含めない
D 譲渡費用: 円 状態[ ]
E 特別控除: 円 状態[ ]
Eへ入れた特例の正式名称:
CとEの併用可否を確認した資料・回答者:
BとCを別々に入力した:はい/未確認
課税譲渡所得 A-B-C-D-E:円
長期/短期:
使用する年分の税率:
税額:確認済み/暫定/未確認特例が「使えそう」なだけなら、C・Eへ金額を入れません。「候補」と書き、特例を使わない場合の暫定計算も残します。
A:譲渡価額は売却価格だけとは限らない
Aには、売買契約書の売却価格だけでなく、税務上の収入金額へ入るものを集めます。
国税庁は、売却代金のほか、売主が受け取った未経過固定資産税・都市計画税に相当する精算金も譲渡価額へ算入すると説明(新しいタブで開きます)しています。決済精算書で受取額を確認してください。
手付金と残代金は、売却価格の受取時期を分けたものです。売却価格に手付金をもう一度足しません。現金の入出金と税務上の譲渡価額を別表にすることで、二重計上を防げます。
| 確認項目 | 資料 |
|---|---|
| 売却価格 | 売買契約書 |
| 固定資産税等の受取精算金 | 決済・精算書 |
| その他の対価・経済的利益 | 契約書、合意書、税務確認 |
| 売主の持分 | 登記事項証明書、遺産分割資料、契約書 |
共有者がいる場合、物件全体の売却価格を一人の収入にしません。持分、実際の取得関係、代金配分を税務確認し、売主ごとに表を作ります。
B:取得費と取得時期は被相続人から引き継ぐ
相続した土地・建物の取得費は、原則として被相続人が買ったときの購入代金や購入手数料等を基に計算します。取得時期も被相続人から引き継ぎます。国税庁 No.3270(新しいタブで開きます)
そのため、次の金額を取得費へ置き換えません。
- 相続税を計算したときの土地・建物の評価額
- 固定資産税評価額
- 相続開始時の査定額・時価
- 売却時の住宅ローン残高
- 売却価格から逆算した任意の金額
最初に探す資料は次のとおりです。
| 探す資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 被相続人の売買契約書 | 土地・建物の購入代金、取得日、内訳 |
| 建築請負契約書・工事資料 | 建物の建築費、完成日、増改築 |
| 購入時の精算書・領収書 | 仲介、登記、不動産取得税等の取得時費用 |
| 通帳・ローン資料 | 支払先、時期、契約資料の手掛かり |
| 相続税申告書 | 取得費加算の計算と対象財産の確認 |
| 相続登記の請求書・領収書 | 相続人が負担した取得費候補 |
業務に使われていない土地建物について、相続人が相続取得時に支払った登記費用や不動産取得税は取得費に含まれると国税庁は案内(新しいタブで開きます)しています。ただし、物件の利用状況や5%の概算取得費を使うかで扱いが変わるため、領収書を残して個別に確認します。
書類集めの全体は相続した家の売却に必要な書類、名義変更の書類は相続登記の必要書類で整理できます。
建物の取得費は減価償却後の金額にする
建物は、購入代金や建築代金をそのまま取得費へ入れません。国税庁は、建物の取得費を購入代金等から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算すると説明(新しいタブで開きます)しています。
計算には、少なくとも次の確認が必要です。
- 土地と建物の取得価額の内訳
- 建物の構造・用途
- 被相続人の取得日と売却日
- 事業・賃貸・居住等の利用状況
- 増改築等を取得費へ反映する資料
土地建物一括の購入価格しかない、古い契約で建物内訳がない、賃貸と居住が混在した、増改築を繰り返した等の場合は、一般的な計算例だけで確定しません。税務署・税理士へ資料を見せ、土地建物の配分と減価償却の計算方法を確認します。
Bが未確認なら、税額を確定しない
取得費が分からない場合や、実際の取得費が譲渡価額の5%相当額を下回る場合、譲渡価額の5%相当額を概算取得費とする方法があります。国税庁 No.3258(新しいタブで開きます)
ただし、購入契約書が手元にないだけで5%の使用を確定しません。Bは「不明」とし、被相続人の売買契約書、建築資料、購入時の精算書・領収書の有無を確認します。資料の探索先、代替資料、5%を使う判断は、取得費不明を主目的とする第21記事で扱います。
5%を使う場合、相続人が支払った登記費用等を別途取得費へ足すことはできないと国税庁 No.3270(新しいタブで開きます)は説明しています。「5%+相続登記費用」と自動計算しません。
D:譲渡費用は「売るために直接かかったか」で見る
譲渡費用は、売却の現金支出すべてではありません。国税庁は、土地・建物を売るために直接かかった費用とし、主な例に次を挙げています。国税庁 No.3255(新しいタブで開きます)
- 売却の仲介手数料
- 売主が負担した売買契約書の印紙税
- 売却のために支払った一定の測量費
- 貸家売却のために支払った立退料
- 土地を売るために建物を取り壊した場合の一定の取壊し費用等
一方、修繕費、固定資産税等の維持・管理費は譲渡費用にならないと同ページで示されています。家財撤去、清掃、空き家管理、交通費、住所変更登記等も、支払っただけで一律に譲渡費用とは断定しません。
| 支出 | 現金手取り | 譲渡所得の計算 |
|---|---|---|
| ローン完済額 | 差し引く | それだけでは取得費・譲渡費用にならない |
| 仲介手数料 | 差し引く | 売却に直接要した額は譲渡費用候補 |
| 固定資産税等の支払・精算 | 実際の支払額と買主からの受取精算金を別々に記録 | 支払税額は原則譲渡費用ではなく、受取精算金は譲渡価額へ算入 |
| 修繕・片付け | 差し引く | 内容・目的ごとに確認。自動計上しない |
| 取得費 | 現在の支払いではない場合あり | 譲渡所得から差し引く |
現金がいくら残るかと、税務上いくら差し引けるかは別の表です。同じ領収書を手取り表と税務表の両方で使っても構いませんが、二つの計算目的を混ぜないでください。
既に支払った固定資産税を売却手取りからもう一度引きません。手取り表の計算開始日以後に実際に支払う保有費と、買主から受け取る精算金を別々に記録します。
2026年分の長期・短期と通常税率
長期・短期は、相続してから何年たったかではなく、被相続人の取得時期を引き継いで判定します。売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超えれば長期、5年以下なら短期です。
国税庁は、2026年中に売った場合、2020年12月31日以前の取得は長期、2021年1月1日以後の取得は短期と示しています(新しいタブで開きます)。
2026年分の通常税率は次のとおりです。
| 区分 | 2026年分の内訳と単純合計 |
|---|---|
| 長期譲渡所得 | 所得税15%+復興特別所得税0.315%相当+住民税5%=20.315% |
| 短期譲渡所得 | 所得税30%+復興特別所得税0.63%相当+住民税9%=39.63% |
この単純合計は、2026年分の一般的な長期・短期の入口です。税額計算の端数処理、特別控除、マイホーム等の別特例、他の譲渡、申告内容により最終額は変わります。国税庁は2027年分以後について防衛特別所得税等を含む案内をしているため、20.315%・39.63%を別の年へ流用しません。
被相続人の取得日が確認できない場合は「相続したばかりだから短期」とも、「古い家だから長期」とも決めず、取得日を未確認にします。
C:相続税額の取得費加算は期限と課税の有無を確認する
相続または遺贈で取得した財産を一定期間内に売り、売主本人に相続税が課税されている等の要件を満たす場合、相続税額のうち一定金額を取得費へ加算できる可能性があります。
入口条件は次のとおりです。
- 相続または遺贈で対象財産を取得した
- 売主本人に相続税が課税された
- 対象財産が相続税の計算に含まれている
- 相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡する
- 確定申告で必要な計算明細書等を提出する
期限と必要書類は国税庁 No.3267(新しいタブで開きます)で確認できます。「相続から3年以内」と短く置き換えません。
取得費へ加算できるのは、支払った相続税の全額とは限りません。対象財産ごとの算式で求め、特例を使わず計算した譲渡益が上限です。相続税申告書と計算明細書を用意し、税務確認後の金額だけをCへ入れます。
【取得費加算の候補カード】
相続開始日:
相続税申告期限:
取得費加算の譲渡期限:
売主本人の相続税:課税あり/なし/不明
対象財産が相続税計算に含まれる:はい/いいえ/不明
相続税申告書:あり/探索中/なし
計算明細書:作成済み/未作成
適用:確認済み/候補/対象外期限が近い場合でも、急いで不利な条件の売買契約を結ぶとは限りません。税負担の差と売却条件を並べ、契約前に税理士と不動産会社へ期限を共有します。
E:相続空き家の特別控除は「候補」と「適用済み」を分ける
被相続人が住んでいた一定の古い家と敷地等を相続し、要件を満たして売却する場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。売却期限は、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日までです。2024年1月1日以後の譲渡で、被相続人居住用家屋とその敷地等を相続・遺贈により取得した相続人が3人以上の場合、控除額は一人あたり最高2,000万円です。国税庁 No.3306(新しいタブで開きます)
入口で確認するのは次の項目です。
- 被相続人が原則として相続開始直前に主として住んでいたか(要介護認定等を受けて老人ホーム等へ入所していた一定の場合は、入所直前の居住家屋が対象になり得る)
- 1981年5月31日以前に建築された家屋か
- 区分所有建物登記がされた建物ではないか
- 相続直前に原則として被相続人以外の居住者がいなかったか
- 相続後、居住・賃貸・事業に使っていないか
- 家を残す、耐震対応する、取り壊す時期はいつか
- 相続開始日、売却予定日、売却代金、他の相続人による分割売却はどうか
- 所在市区町村の確認書類を用意できるか
一つでも不明なら、Eへ3,000万円または2,000万円を入れません。詳細な耐震・取壊し期限、1億円判定、市区町村の確認書、老人ホーム入所時の条件等は、第20記事で独立して扱います。
また、国税庁はこの空き家特例の要件として、売った家屋・敷地等について相続税額の取得費加算等を受けていないことを示しています(新しいタブで開きます)。同じ譲渡へCとEを同時に入れず、どちらを適用するか確認します。
相続後に「とりあえず貸す」案がある場合、空き家特例の不使用要件へ影響します。募集前に売る・貸す・残すの比較で、契約と税務の確認順を整理してください。
練習例:確認済みの数字だけで暫定税額を出す
次は全国平均や査定例ではなく、計算順を確認するための架空例です。
| 項目 | 架空の確認額 |
|---|---|
| 売却価格 | 30,000,000円 |
| 固定資産税等の受取精算金 | 100,000円 |
| A 譲渡価額 | 30,100,000円 |
| B 取得費(建物の減価償却後) | 12,000,000円 |
| C 取得費加算 | 0円(適用なしを確認) |
| D 譲渡費用 | 1,100,000円 |
| E 特別控除 | 0円(適用なしを確認) |
課税譲渡所得は、次のとおりです。
> 30,100,000円 − 12,000,000円 − 0円 − 1,100,000円 − 0円 = 17,000,000円
被相続人の取得日を引き継ぎ、2026年分の長期譲渡所得と確認できた場合、単純計算は次のとおりです。
> 17,000,000円 × 20.315% = 3,453,550円
短期なら同じ課税譲渡所得でも単純計算は6,737,100円です。実際の申告では端数処理や他の条件を確認するため、この数字をそのまま納付額とはしません。
同じ例でBを確認できず、5%概算取得費の使用を検討する場合は、税額が大きく変わり得ます。本記事ではBを「不明」として止め、資料探索と5%を使う判断は第21記事で扱います。
未確認の金額を0円にせず、税準備額を分ける
未確認項目は、次のいずれかで残します。
| 状態 | 記入方法 |
|---|---|
| 確認済み | 金額、資料名、確認日を記入 |
| 資料あり未計算 | 資料名と計算担当・期限を記入 |
| 見積り | 最小・最大、前提、有効期限を記入 |
| 不明 | 0円にせず、探索先と回答期限を記入 |
| 特例適用確認待ち | 控除額を入れず、適用しない場合も計算 |
税準備額は「納付税額の確定」ではなく、使わない資金を管理する欄です。取得費が未確認なら実額候補と5%概算の両ケース、特例候補なら特例なしのケースも残し、確認が終わるまで大きい方を使わない金額として分けておく方法があります。
ただし、資金拘束の適切な額は、他の所得、納付時期、共有者、特例、売却代金の使途で変わります。住み替え、相続人への分配、借入返済等へ全額を充てる前に税務確認してください。
売却した翌年の確定申告を準備する
譲渡所得の申告は、原則として譲渡した年の翌年2月16日から3月15日です。具体的な受付日が休日等で変わる場合があるため、対象年分の国税庁案内を確認します。国税庁 No.3102(新しいタブで開きます)
取得費加算と相続空き家の特別控除は、必要書類を添えた確定申告が適用手続です。国税庁 No.3267(新しいタブで開きます)、No.3306(新しいタブで開きます)
土地・建物の通常の譲渡損失は、他の土地・建物の譲渡所得から控除できる場合を除き、給与等との損益通算は原則できません。ただし、一定のマイホームには譲渡損失の特例があります。国税庁 No.3203(新しいタブで開きます) したがって、「税額が0円・損失だから申告不要」と一律に決めず、適用制度と他の譲渡の有無を確認します。
【確定申告準備カード】
売却した年:
譲渡日として確認する日:
原則の申告期間:
対象年分の正式な受付日:
申告先:
売買契約書:あり/なし
購入・建築時資料:あり/探索中/なし
取得費計算:完了/未完了
譲渡費用の請求書・領収書:あり/不足
登記事項・持分資料:あり/不足
相続税申告書:あり/対象外/不明
取得費加算の明細:完了/候補/対象外
空き家控除の確認書等:完了/候補/対象外
譲渡所得の内訳書:作成済み/未作成
税額確認日:
納付資金として分ける額:
住民税を含む資金計画の確認先:売却した人が申告前に死亡した、または出国する場合は期限が変わります。国税庁は、出国時の申告や、譲渡者死亡時に相続人が行う準確定申告の期限を同ページで案内しています。該当する場合は通常の翌年期限で管理しません。
税務署・税理士へ渡す問い合わせメモ
「相続した家を売ります。税金はいくらですか」だけでは、確認に必要な情報が足りません。次を一枚にして渡します。
【相続不動産の売却税・問い合わせメモ】
被相続人の死亡日:
被相続人の土地・建物取得日:
被相続人と相続後の利用状況:
売主名・持分:
売買契約日/引渡予定日:
売却価格:
固定資産税等の受取精算金:
確認できた取得費:
取得費不明の項目:
建物減価償却の計算状況:
譲渡費用候補:
相続税申告・納付の有無:
取得費加算の候補:
空き家控除の候補:
解体・耐震工事の予定:
他に検討している特例:
確認したいこと:
1. 譲渡価額、取得費、減価償却、譲渡費用の各金額
2. 長期・短期の区分と対象年分の税率
3. 取得費加算・空き家控除等の適用と併用可否
4. 申告年、申告期限、必要書類
5. 売却代金から確保しておく金額
添付資料:
回答希望日:不動産会社には最終的な税務判定を求めるのではなく、売買契約日、引渡日、売却価格、固定資産税等精算金、売主負担費用、解体・耐震・引渡条件を一覧で依頼します。税務署・税理士へは、その取引条件と取得資料を渡します。
税額や特例を確定せず止まる条件
次に当てはまる場合は、概算表を作っても、特例を前提に売却・工事・代金分配を確定しません。
- 被相続人の取得日・購入資料が不明
- 土地建物の価格内訳や建物減価償却を計算できない
- 贈与、買換え、交換、二次相続等で取得履歴が複雑
- 取得費加算の期限が近い、または相続税申告書がない
- 空き家控除候補で、賃貸・居住・事業利用、耐震、取壊し、1億円判定、自治体確認書が未確認
- 取得費加算と空き家控除等を同じ譲渡へ重ねようとしている
- 共有持分と売却代金の配分が一致しない、換価分割・代償分割が関係する
- 親族・同族法人等へ売る、通常の売買ではない
- 売買契約と引渡しが年をまたぐ
- 売主が非居住者、海外転居・出国予定、法人または事業的売買に該当する
- 譲渡損を給与等と相殺したい
- 売却済みで申告期限が近い、過ぎた、または売主が申告前に死亡した
- 税額未確認のまま売却代金を分配・住み替え・投資へ全額使う予定
非居住者等が売主の場合、買主側に売買代金の源泉徴収が必要となる場合があり、決済日の受取額も変わります。国税庁 No.2879(新しいタブで開きます)を確認し、通常表とは分けてください。
よくある質問
相続税評価額より安く売ったら、譲渡所得の税金はかかりませんか
相続税評価額と売却時の取得費は別です。売却の課税譲渡所得は、被相続人から引き継ぐ取得費等を使って計算します。相続税評価額との高低だけでは、利益や税額を判断できません。
住宅ローンの残りは譲渡所得から引けますか
ローン完済額は現金手取りを減らしますが、その返済額自体を取得費・譲渡費用として差し引く計算ではありません。購入代金等の取得費とローン返済を分けてください。団信、相続人が負担する残債、抵当権が未確認なら、相続した家の住宅ローン確認順へ戻ります。
相続から3年以内に売れば税金が安くなりますか
一律ではありません。取得費加算と空き家控除では期限の数え方も要件も異なります。どの特例候補かを分け、実際の日付を入れて確認します。
片付け代や修繕費は全部譲渡費用になりますか
全部とは限りません。譲渡費用は売却に直接要した費用で、修繕や維持管理は原則対象外です。支出名だけでなく、目的、契約、売買との関係を資料で確認します。
兄弟で相続した家は、税金も人数で均等に分けますか
必ず均等とは限りません。各人の持分、取得関係、相続税、売却収入、特例要件により計算が変わります。物件全体の税額を単純に人数で割らず、売主ごとの表を作ります。
譲渡所得が0円なら確定申告は不要ですか
適用した特例、他の譲渡、損失、申告状況等で判断が変わります。特例を使って0円になる場合は確定申告が要件となることがあるため、「計算結果が0円」だけで申告不要と決めません。
家族と税務担当者へ渡す完成シート
【相続した家の売却税・完成シート】
相続開始日:
被相続人の土地・建物取得日:
売買契約日/引渡日:
売主・持分:
A 譲渡価額: 円[状態/資料/確認日]
B 通常の取得費: 円[状態/資料/確認日]※Cを含めない
C 相続税額の取得費加算:円[確認済み/候補/対象外]※Bへ含めない
D 譲渡費用: 円[状態/資料/確認日]
E 特別控除: 円[確認済み/候補/対象外]
Eへ入れた特例の正式名称:
BとCを別々に入力した:はい/未確認
CとEの併用可否を確認した資料・回答者:
課税譲渡所得: 円[確定/暫定/範囲未完成]
長期・短期:
対象年分の税率:
暫定税額: 円
確認済み税額: 円
不足資料:
探索先/期限:
特例候補:
取得費加算の譲渡期限:
空き家控除の譲渡期限:
期限を確認した資料/確認日:
税務確認先/予約日:
申告年/期限:
売却代金から確保する額:
税準備額の算定ケース[実額取得費/5%概算取得費/特例なし/特例確認済み/その他]:
税準備額に含むもの[所得税等/住民税/その他]:
次回更新日:
代金を分配・使用してよい確認日:次にすること
今日の最初の作業は、被相続人の購入・建築資料、相続税申告書、売却費用の領収書を集め、日付カードとA〜Eの状態欄を埋めることです。
次の順番で進めます。
- 被相続人の取得日と相続開始日を記入する
- 売買契約書・精算書からAを記入する
- 購入・建築資料と減価償却からBを作る
- 売却に直接要した領収書だけをDへ集める
- C・Eは候補と適用確認済みを分ける
- 2026年分または実際の売却年分の税率を確認する
- 問い合わせメモを税務署・税理士へ渡す
- 申告期限と使わず確保する金額を完成シートへ記入する