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親の死亡後、家の相続登記は調べていても、屋根の太陽光発電までは気が回らないものです。売電の明細や振込の通知が親の名前で届き、別の手続きが要ると気づく人もいます。
親が持ち主で国の買取制度の認定を受け、今も売電している設備なら、太陽光発電の名義変更は3つに分かれます。国への届出、売電契約、振込口座です。
太陽光発電の名義変更は、家の相続登記とは別に要る
家の相続登記を済ませても、太陽光発電の手続きは終わりません。屋根の設備には、国の認定と、余った電気を買い取る会社との契約が別にあるからです(出典:事後変更届出マニュアル。参照資料の一覧へ移ります)。相続登記そのものの進め方は、相続した不動産の手続きチェックリストで確かめられます。
余った電気を売る太陽光には、固定価格買取制度(FIT)という国の仕組みが関わっています。国が決めた値段で、一定の期間、電気を買い取ってもらえる制度です。親が持ち主で、FITの認定を受けていて、今も売電している設備なら、手続きは次の3つです。
| 手続き | 窓口 | 変えるもの |
|---|---|---|
| 国への事後変更届出 | 国の電子申請サイト(再生可能エネルギー電子申請) | 認定を受けている人(親→引き継ぐ人) |
| 売電契約の名義変更 | 買取先(余った電気を買い取る会社) | 売電の契約者 |
| 振込口座の変更 | 買取先 | 売電代金の振込先 |
順番は、国への届出が先です。買取先で名義を変えるときに、国への届出の受理日が分かる資料を出すよう案内されているからです(出典:中部電力パワーグリッド。参照資料の一覧へ移ります)。
すでに売電をやめている設備では、買取先に契約と口座の扱いを確かめてください。
国の手続きには、「変更認定申請」という別の名前のものもあります。相続で設備の持ち主が変わるときは、2026年9月17日版の国のマニュアルで「事後変更届出」に分けられています(出典:変更認定申請マニュアル。参照資料の一覧へ移ります)。10kW未満の家庭用の設備も、この届出の対象です。
事後変更届出は、持ち主が変わった後に、国へその変更を届け出る手続きです。相続のことで調べるときは、事後変更届出の案内を見てください。
名義変更しないとどうなる?
名義を変えないまま置いておいたときに何が起きるかは、一律には決まっていません。そのうえで、困りごとにつながる点が2つあります。
1つ目は、買取先の契約を変えられないことです。買取先によっては、契約を変えるときに、国で受理された届出の資料を求めます(出典:中部電力パワーグリッド。参照資料の一覧へ移ります)。そのため、国への届出を省いて、売電契約だけを先に変えられるとは考えないでください。
2つ目は、売電代金の振込先です。亡くなった人の口座には、原則として振込ができなくなると案内している銀行があります(出典:三菱UFJ銀行。参照資料の一覧へ移ります)。親の口座のまま、売電代金を受け取り続けられるとは限りません。
想定の例で、どう困るかを見てみましょう。親の口座に売電代金が入り続けていたので、太陽光の手続きを後回しにしていました。ところが、銀行に親の死亡を伝えると口座が止まり、その後の代金を受け取れる口座がなくなったのです。結局、国への届出から口座の変更までを、急いで進めることになりました。
まず確かめる:親の設備か、買取先はどこか
手続きを始める前に、確かめることが2つあります。設備が本当に親のものか、そして売電の相手がどの会社か、です。ここを取り違えると、窓口を間違えて手戻りが出ます。
「0円設置」やリースなら、設備の持ち主を確かめる
設置のときに「初期費用0円」だった設備は、親の持ち物ではないことがあります。PPAやリース、屋根貸しなど、ほかの会社が設備を持つ方式があるからです(出典:環境省 第三者所有。参照資料の一覧へ移ります)。PPAは、会社が屋根に設備を置き、家は使った電気の代金を払う形の契約です。
こうした方式では、契約の期間が終わった後の設備の扱いなども、契約内容によって違います(出典:環境省 PPAモデル。参照資料の一覧へ移ります)。相続のときにどうなるかを一律に決めた家庭向けの案内は、見当たりません。「0円だったから親の財産」と決めず、契約書を探して次の点を見てください。
- 設備の持ち主は誰か(親か、契約した会社か)
- 契約の残りの期間
- 契約した人が亡くなったときの決まり
設備が会社のものなら、国への届出の前に、契約した会社に連絡して扱いを聞きましょう。
買取先は、売電の明細で確かめる
買取先とは、屋根で余った電気を買い取っている会社のことです。家で使う電気を買っている契約先とは、別の会社の場合があります。
東京電力エナジーパートナーも、買取先が別の会社なら、その会社に申し込むよう案内しています(出典:東京電力エナジーパートナー。参照資料の一覧へ移ります)。似た会社名でも、窓口が違うことがあるわけです。
買取期間は終わった?いつ終わる?
家庭用の10kW未満の太陽光では、FITで買い取ってもらえる期間は10年間です(出典:環境省 太陽光発電。参照資料の一覧へ移ります)。この10年は、その設備で売電を始めたときから数えます。相続したからといって、そこから新しく10年が始まるわけではありません。
期間中か、もう終わっているかで、この先の売電の条件が変わります。先に、終わる日(満了日)を確かめておきましょう。
満了日の調べ方
満了日は、買取先から届く満了の通知や、売電の契約書・明細で確かめます。東京電力パワーグリッドとの契約なら、購入した電力量を知らせる画面にも満了日が出ます(出典:東京電力パワーグリッド 満了。参照資料の一覧へ移ります)。
通知が届く時期は、買取先によって違います。国の電子申請サイトのFAQには、満了の半年ほど前に案内が郵送されるという説明があります(出典:電子申請FAQ。参照資料の一覧へ移ります)。親あての郵便に、満了の案内が混ざっていないかも見ておきましょう。
買取期間が終わった後の売電と、国への届出
期間が終わった後の売電の扱いは、買取先の契約によって変わります。満了後の売り先の考え方は、買取期間が終わった後と蓄電池の記事で確かめられます。
買取期間が終わっていても、国への届出は要ります。ただし、2026年9月17日版のマニュアルでは、その場合の添付書類は要らないとされています(出典:事後変更届出マニュアル。参照資料の一覧へ移ります)。
詳しく:親の設備の買取単価
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買取の単価は、国の認定を受けた時期によって異なります。たとえば東京都環境局の資料は、令和7年度下半期の認定分を、1〜4年目と5〜10年目の2段階の単価で示しています(出典:東京都環境局 Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。
親の設備がいつ認定されたかで単価は変わるため、この記事では一律の値段を書けません。売電の契約書や明細で、実際の単価を確かめてください。
誰が引き継ぐ?遺産分割がまとまらないときは
国に届け出るのは、設備を引き継ぐ人です(出典:事後変更届出マニュアル。参照資料の一覧へ移ります)。家と太陽光の設備を同じ人が相続しなければならない、という決まりは、国の資料からは確かめられませんでした。国の資料が求めているのは、届け出る人が設備を引き継いだと分かる書類です。
ただ、設備は家の屋根に載っています。家と設備の持ち主を分けると、屋根の修理や家を売るときに、相談する相手が増えることが考えられます。どう分けるかは家族の事情によるので、迷うときは司法書士に相談してください。
遺産分割協議書に、太陽光設備を書く
国への届出には、遺産分割協議書(遺産の分け方を相続人全員で決めた書類)などを付けます。この書類には、相続する財産に太陽光設備が入っていると分かる書き方が要ります(出典:変更認定申請マニュアル。参照資料の一覧へ移ります)。家の土地と建物だけを書いた協議書では足りない、と考えておきましょう。これから協議書を作るなら、設備のことを書き漏らさないようにします。
話し合いがまとまらない間は
相続人の話し合いがまとまらないと、届出に付ける協議書も、相続人全員の同意書もそろいません。その間の売電代金の扱いは、買取先と国の窓口に個別に相談してください。話し合いを進める手順は、相続人の意見がまとまらないときの記事にまとめています。
親が施設に入っただけのときは
親が介護の施設に入っても、亡くなっていなければ、相続の届出はしません。相続による国の届出は、持ち主が亡くなったことを前提にした手続きだからです。親の代わりに契約の手続きをするなら、成年後見など別の仕組みの話になります。
国への事後変更届出には、どの書類が要る?
国への届出の案内とマニュアルは、国の電子申請サイト(再生可能エネルギー電子申請)にあります。相続による届出で基本となる書類は、次のとおりです(出典:事後変更届出マニュアル。参照資料の一覧へ移ります)。
- 親の戸籍・除籍の謄本(戸籍の附票を含む)
- 法定相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書
- 遺産分割協議書、または相続人全員の同意書
- 土地の取得が分かる書類など(どの書類かはマニュアルで確かめる)
親の戸籍・除籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本は、法定相続情報で代わりにできます(出典:変更認定申請マニュアル。参照資料の一覧へ移ります)。法定相続情報は、相続人が誰かを一覧にした、公的な証明の書類です。条件が合えば、公正証書遺言(公証役場で作る遺言書)で審査を受ける方法もあります。上の一覧は一般的な情報で、案件によっては追加の書類を求められます。
死亡から数える届出期限は、確認した国のマニュアルには明記が見当たりませんでした。提出の時期は、電子申請の窓口に確認してください。ただし、添付する書類には発行日の条件があるので、取る時期に気をつけます。
届出そのものに手数料がかかるかどうかは、窓口で確かめてください。戸籍や印鑑証明書を取る費用は、これとは別にかかります。
設備IDやログイン情報が分からないとき
親の設備の設備ID(国が設備ごとに付けた番号)が分からないときは、国の「設備ID照会」で調べられます(出典:設備ID照会。参照資料の一覧へ移ります)。入力するのは、認定を受けている人の名前、設備の所在地の代表地番(登記上の土地の番号)、その所在地の郵便番号です。入力は、登録された内容と完全に一致させる必要があります。
国の電子申請サイトのログインIDやパスワードが分からないときは、照会と再発行の手続きがあります(出典:ログインID照会の案内。参照資料の一覧へ移ります)。登録したメールが使えないなどで解決しないときは、案内にある問い合わせフォームを使います。設備IDも見つからないときは、電力会社の書類や検針票を確かめるよう案内されています。
詳しく:書類の発行日と、代わりに届け出るとき
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国に出す公的な書類は、原則として届出日の前3か月以内に発行されたものに限られます(出典:事後変更届出マニュアル。参照資料の一覧へ移ります)。親の戸籍・除籍謄本だけは、この条件から外れます。早く取りすぎると、届出のときに取り直すことになりかねません。
買取期間が終わった後の届出では、添付書類は要りません。ただし、代理の人が届けるときは、委任状などが要ります。家族の誰かが代わりに届けるときは、要る書類を先に窓口で確かめてください。
売電契約と振込口座は、買取先で変える
国への届出が受理されたら、買取先で売電契約の名義を変えます。このとき、届出の受理日が分かるものを出すよう、国のマニュアルが案内しています(出典:事後変更届出マニュアル。参照資料の一覧へ移ります)。
手続きの受け付け方には、買取先ごとに違いがあります。東京電力エナジーパートナーでは、名義と口座で書類が分かれています(出典:東京電力エナジーパートナー。参照資料の一覧へ移ります)。中部電力パワーグリッドは、どちらも同じ申込システムで受け付けます(出典:中部電力パワーグリッド。参照資料の一覧へ移ります)。どちらも、家庭用などの小さな「低圧」の契約の例です。
| 買取先の例 | 名義の変更 | 振込口座の変更 |
|---|---|---|
| 東京電力エナジーパートナー | 所定の申込書と、国への届出の受理日が分かるものなど | 別の「口座振込依頼書」 |
| 中部電力パワーグリッド | 同社の申込システム。電子の届出なら、受理日が分かる申請画面の写し | 同じ申込システム |
ほかの電力会社では、書類や受け付け方が違うことがあります。実際の買取先の案内を見て、分からない点は買取先に問い合わせてください。
名義を変えても、振込口座が一緒に変わるとは限りません。次に届く明細で、名義と振込先の両方が変わったかを見ておくと、手続きの漏れに気づけます。
相続税と、親の売電収入の申告は?
親が持ち主だった太陽光の設備は、経済的な価値があれば、相続税の対象になる財産に入ることがあります。お金に見積もれる経済的な価値のあるものは、すべて相続税がかかる財産とされているからです(出典:国税庁 No.4105。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、家庭の設備をいくらと評価するかは、この原則だけでは決まりません。相続税がかかるかどうかの考え方は、実家にかかる相続税の記事で確かめられます。
もう1つは、親の売電収入にかかる所得税です。家庭の太陽光で余った電気を売った収入は、雑所得(業務)の例に挙げられています(出典:国税庁 申告漏れの注意。参照資料の一覧へ移ります)。雑所得は、給与や事業など、ほかの種類に当たらない所得のことです。
親に所得税の申告が必要だった場合は、相続人が準確定申告(亡くなった人の分の確定申告)をします。対象は、亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得です。期限は、相続があったと知った日の翌日から4か月以内です(出典:国税庁 No.2022。参照資料の一覧へ移ります)。
売電収入があったというだけで、申告が要るとは決まりません。ほかの所得も合わせて判断するため、税務署か税理士に確認してください。
手続きのあと、家をどうするかで次が変わる
太陽光の名義を変えた後の進め方は、家をどうするかで変わります。
- 住み続ける:買取期間の後の売電や、蓄電池を足すかどうかは買取期間が終わった後と蓄電池の記事で
- 売る:屋根の設備を買主にどう引き継ぐかは太陽光のある家を売るときの記事で
- 解体する:パネルを外す段取りは解体前の太陽光パネル撤去の記事で
手続きの細かい点は、買取先と、国の電子申請サイトの窓口に確かめてください。相続全体の段取りは司法書士、税のことは税務署や税理士が相談先になります。
