この記事の目次を開く(7項目)
親が亡くなってしばらくは、葬儀や役所の手続きが続きます。その合間に、遺品整理はいつから始めればよいのか、まだ手を付けないほうがよいのかと迷うのは自然なことです。時期を決める手がかりは、慣習の日付よりも、住まいと相続の状況から生まれる期限にあります。気持ちが整うまで待ってよい物と、待てない物を分けて考えましょう。
遺品整理はいつから始めてもいい?四十九日は期限ではない
遺品整理を始める日や終える日について、全国共通の決まりを示した公的な案内は見当たりません。四十九日の法要を区切りにする家もありますが、四十九日までに済ませるよう定めた公的な案内は見当たりません。家族の気持ちや、集まれる日に合わせて決めてよいのです。
ただし、遺品整理そのものの期限とは別に、まわりの手続きには期限があります。たとえば、賃貸の部屋の解約や、相続放棄、税の申告です。こうした手続きにかかわる物だけは、早めに確かめておくと予定を立てやすくなります。
| 分け方 | 主な物 | 考え方 |
|---|---|---|
| 急がなくてよい物 | 衣類、食器、本、写真、思い出の品 | 家族がそろう日や、気持ちが落ち着く時期に合わせる |
| 早めに探す物 | 遺言書、通帳、家と土地の書類、契約書類、借金の書類 | 手続きに使うので、捨てずに探して分けておく |
| 期限にかかわる物 | 賃貸の部屋の家財、売る・解体する家の家財 | 契約や予定の日から逆算する |
思い出の品を誰が受け取るかは、家族で話す時間が要ります。分け方の進め方は、親が亡くなったあとの形見分けの記事で説明しています。なお、相続放棄を考えている場合は、急がない物でも処分を待ってください。理由は次の節で説明します。
期限があるのは手続きの側。3か月・4か月・10か月の数え方
親が亡くなったあとの手続きには、月数で期限が決まっているものがあります。たとえば相続税の申告と納税は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です(出典:国税庁 No.4205。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、数え始める日は手続きごとに確かめる必要があり、どれも「家財を片付け終える期限」ではありません。
| 手続き | 期限 | 数え始め | 片付けとのかかわり |
|---|---|---|---|
| 相続放棄 | 3か月以内 | 自分のために相続が始まったと知った時 | 処分の前に弁護士などに確認する |
| 準確定申告と納税(親の所得税) | 4か月以内 | 相続の開始を知った日の翌日 | 申告に使う書類を捨てない |
| 相続税の申告と納税 | 10か月以内 | 亡くなったことを知った日の翌日 | 財産と借金の書類を捨てない |
| 賃貸の解約 | 契約書による | 解約を申し入れた日など | 明け渡しの日から逆算する |
3つの月数は、順に足したり、すべてを亡くなった日から数えたりはできません。相続放棄の3か月は、相続人それぞれが知った時から数えるので、家族で日付がずれることもあります(出典:裁判所 相続の放棄。参照資料の一覧へ移ります)。また、月数で決まる期限なので、90日や120日のような決まった日数とは一致しないことがあります(出典:参議院法制局。参照資料の一覧へ移ります)。
相続登記(不動産の名義を変える手続き)の3年など、全体の期限は、不動産の相続手続きの順番と期限の記事で確かめられます。
相続放棄を考えているなら、処分を止める
相続放棄(財産も借金も引き継がないこと)には、家庭裁判所への申述(申し出)が必要です(出典:裁判所 相続の放棄。参照資料の一覧へ移ります)。申述先は、親の最後の住所地を受け持つ家庭裁判所です。
気をつけたいのは、相続放棄を考えているのに遺品を処分してしまうことです。相続財産を処分すると、相続を受け入れたとみなされることがあるからです(出典:民法921条。参照資料の一覧へ移ります)。売るだけでなく、物を壊す行為も「処分」に含まれるという考え方もあります(出典:国税不服審判所 裁決。参照資料の一覧へ移ります)。
放棄すると決めただけでは、家庭裁判所への手続きは済んでいません。どの遺品なら動かしてよいかは、個別の判断になります。
期限の数え方や、片付けで避けたい作業は、相続放棄を考えている間の実家の片付けの記事にまとめています。
税の申告期限は、片付けを終える期限ではない
準確定申告は、亡くなった年の親の所得について、所得税を申告する手続きです。申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です(出典:国税庁 No.2022。参照資料の一覧へ移ります)。申告が要るかどうかは、親の所得や控除などによって変わります(出典:国税庁 No.2020。参照資料の一覧へ移ります)。
相続税は、全員に申告が必要なわけではありません。課税価格(相続税の計算に使う遺産の額)の合計が、基礎控除額(相続税がかからない枠)を超える場合に必要です(出典:国税庁 No.4205。参照資料の一覧へ移ります)。この判定には、土地の評価額を下げる特例などを使う前の額を用います。
相続税の申告先は、亡くなった時の親の住所が日本国内にある場合、親の住所地を受け持つ税務署です。相続人の住所地の税務署とは別です。
遺産分割の話し合いが終わっていなくても、申告が必要な場合の期限は延びません(出典:国税庁 No.4208。参照資料の一覧へ移ります)。一方で、どちらの申告も、家財を片付け終える期限ではありません。片付けで気をつけるのは、通帳や契約書類など申告に使う書類を捨てずに残すことです。申告が要るかどうかは、税務署か税理士に確認してください。
詳しく:期限を延ばせる場合と、前年分の申告
詳しい説明を開く
財産を調べても、3か月以内に放棄するか決められないこともあります。その場合は、家庭裁判所に期間の伸長(延長)を申し立てられます(出典:裁判所 期間の伸長。参照資料の一覧へ移ります)。申し立てが必要で、自動では延びません。
確定申告が必要だった親が、1月1日から申告期限までの間に、前年分を申告せず亡くなることもあります。このときは前年分と亡くなった年の分を、どちらも4か月以内に申告します(出典:国税庁 No.2022。参照資料の一覧へ移ります)。
相続税の申告期限が土日や祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限とみなされます(出典:国税庁 No.4205。参照資料の一覧へ移ります)。連休のときの日付や、ほかの手続きへの当てはめは、それぞれの窓口で確かめてください。
賃貸の部屋は、いつまでに空ければいい?
親が借りていた部屋は、亡くなっただけで契約が終わるとは限りません。通常の賃貸借では、部屋を借りる権利と室内の家財は、相続人に受け継がれます(出典:国土交通省 残置物。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、借主が亡くなった場合の扱いが、ふつうとは異なる種類の契約もあります(出典:国土交通省 終身建物賃貸借。参照資料の一覧へ移ります)。契約書で契約の種類を確かめ、大家さんや管理会社に亡くなった後の扱いを確認しましょう。
解約の申し入れの時期と条件は、契約書で確かめる必要があります(出典:国土交通省 民間賃貸住宅。参照資料の一覧へ移ります)。つまり、いつまでに空けるかは、契約の中身と、大家さんや管理会社との話し合いで決まります。
参考として、国が作った賃貸住宅標準契約書という、契約書のひな形を見てみましょう。このひな形では、借主は少なくとも30日前に申し入れれば解約できる形です(出典:国土交通省 標準契約書。参照資料の一覧へ移ります)。予告をせずに解約するときも、申し入れの日から30日分の賃料を払う条件になっています。ただし、ひな形を使うことは法令の義務ではありません(出典:国土交通省 標準契約書について。参照資料の一覧へ移ります)。
実際の条件は、手元の契約書で決まります。家財を運び出した日で、家賃が止まるとは限らないのです。大家さんや管理会社とは、次の点を分けて確かめます。
- 亡くなったことを伝える日
- 解約を申し入れる日と、契約が終わる日
- 家財を運び出す日と、部屋を明け渡す日
- 家賃が日割りになるか、いつの分まで払うか
- 契約書に、借主が亡くなった場合の特約があるか
亡くなったことを伝えるのと、解約に同意して書類に署名するのは別のことです。相続放棄を考えているなら、署名の前に弁護士などに確かめてからにしてください。
生前に、亡くなった後の部屋の解約や家財の処理を人に任せる契約を結んでいる場合もあります。国は、部屋に残る家財(残置物)の処理を任せる契約のモデル条項を示しています(出典:国土交通省 モデル契約条項。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、生前に結んでおく契約のひな形です。契約を結んでいない家に、自動で当てはまる手順ではありません。
持ち家は、売る・解体する・しばらく置くで予定が変わる
親の持ち家の片付けは、賃貸のような明け渡しの日ではなく、家をこの先どうするかという予定から考えます。売るのか、解体するのか、しばらく置くのかで、日程の決め方が変わります。
売る予定なら、引き渡しの条件から決める
売る場合は、不動産会社に、家財の処理の範囲と引き渡しの条件を確かめます。片付けにかかる日数は家ごとに違い、公的な資料に全国共通の目安は見当たりません。先に不動産会社と引き渡しの条件を話し、その日から逆算して片付けの日程を組みます。
解体する予定なら、1月1日と土地の税を確かめる
固定資産税は、毎年1月1日を基準の日として課税されます(出典:広島市。参照資料の一覧へ移ります)。この日は、納める期限でも、家財の片付けを終える期限でもありません。1月1日にあった家は、年の途中で取り壊しても、その年度の税が月割りで減ることはありません(出典:彦根市。参照資料の一覧へ移ります)。取り壊した翌年度からは、その家の固定資産税はかからなくなります。
一方で、住宅用地の特例(住宅が建つ土地の税を軽くする仕組み)が外れることがあります。その結果、土地の税額が上がる場合があるのです。解体の時期と税の増減は、所在地の市区町村の税の窓口に確認してください。
家財を片付けただけでは、家の固定資産税がなくなるわけではありません。片付けの日程は、解体業者に工事日と、工事の前に片付けておく家財の範囲を確かめ、その日から逆算します。
しばらく置くなら、管理の予定を決める
遠方に住んでいる、仕事で通えないといった理由で、片付けを先に延ばす家もあります。その間も、家の内外の点検や換気、通水、掃除を定期的にする必要があります(出典:国土交通省 資料。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、この資料には、通う間隔の目安は示されていません。
自分で通えないときは、管理業者や修繕業者に頼むことも検討するよう案内されています(出典:国土交通省 空き家の管理。参照資料の一覧へ移ります)。売る・解体する・残すで片付ける範囲がどう変わるかは、相続した実家の片付けの進め方で整理しています。
片付けより先に探しておく書類
遺品整理を急がない場合でも、手続きに使う書類だけは早めに探しておきます。財産を調べるときは、通帳や契約書、借用書といった遺品の書類が手がかりになります(出典:法テラス。参照資料の一覧へ移ります)。相続税の申告の準備としても、遺言書の有無と、財産・借金の一覧づくりが挙げられています(出典:国税庁 No.4202。参照資料の一覧へ移ります)。
先に探して、1つの箱や袋にまとめておくとよい物は次のとおりです。
- 遺言書(封のある物は開けない)
- 預金通帳
- 固定資産税の納税証明書や、権利証(登記済証)など家と土地の書類
- 賃貸借契約書など、契約の書類(原本と写し)
- 借用書や、お金を払うよう求める催告書
借金の書類は、相続放棄を考えるかどうかにかかわります。見つけたら捨てずに、ほかの書類と一緒に残してください。
先に探しておく物は、無料の相続した実家の「捨てない物」チェックリストで一つずつ確かめられます。
遺言書が見つかったら、開けずに置いておく
遺言書を見つけた相続人は、遅滞なく家庭裁判所に検認を請求する必要があります(出典:裁判所 遺言書の検認。参照資料の一覧へ移ります)。検認は、家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確かめ、記録する手続きです。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などが立ち会って開けます。見つけても、その場では開けないでください。
ただし、公正証書遺言(公証役場で作る遺言)は、検認が要りません(出典:国税庁 No.4202。参照資料の一覧へ移ります)。法務局に預けてある自筆証書遺言(自分で書いた遺言)も同じです。「遅滞なく」に日数の決まりは示されていないので、見つけたら早めに家庭裁判所に問い合わせましょう。片付けの途中で見つかったときの扱いは、相続した実家の片付けの進め方でも確かめられます。
詳しく:検認で分かること、分からないこと
詳しい説明を開く
検認は、遺言書の偽造や書き換えを防ぐための手続きです。一方で、遺言が有効か無効かを決める手続きではありません(出典:裁判所 遺言書の検認。参照資料の一覧へ移ります)。内容や書き方に疑問があるときは、弁護士に相談してください。
遺品整理の予定を期限から逆算する
ここまでの期限を、自分の状況に当てはめて書き出してみます。相続放棄の期限は、自分が相続人になったと知った時から数えます(出典:裁判所 相続の放棄。参照資料の一覧へ移ります)。税の期限とは数え始めが違うので、それぞれの日付を分けて書きましょう。
- 住まいの状況を書く(賃貸か持ち家か、持ち家なら売る・解体する・しばらく置く)
- 期限のある日を書く(賃貸の明け渡し、相続放棄、準確定申告、相続税)
- 書類を探す日を、いちばん前に入れる
- 手続きの期限とは別に、明け渡しや売却・解体に必要な片付けの期日と範囲を決める
- 家族が集まれる日と、形見を分ける日を入れる
書き出したら、その期日までに自分たちで片付けられる量かを考えます。家族が近くに住んでいて期限に余裕があるなら、業者に頼まず、少しずつ進める方法もあります。一方で、遠方で通える日が少ない、明け渡しの日が近い、家財の量が多いといった場合もあるでしょう。そのときは、業者に見積もりを頼むことも選択肢です。
相続放棄を考えているなら、自分たちで進める場合も業者に頼む場合も、処分を含む作業は待ちます。
この記事の期限や手続きの説明は、一般的な情報です。自分の家で何が必要かは、家庭裁判所、税務署、市区町村、大家さんや管理会社などに確認してください。
自分では終わらない分を業者に頼むとき
相続放棄を考えているなら、見積もりだけにして、作業日を入れるのは弁護士に確かめてからにします。
業者に頼むと決めたら、動かせない日から余裕をもって相談を始めます。見積もりから作業までの日数は業者によって違い、公的な資料に全国共通の目安は見当たりません。最初に明け渡しの日などの希望日を伝え、作業できる日を確かめましょう。
契約の前には、複数の業者から見積もりを取り、内容と料金を比べるよう呼びかけられています(出典:国民生活センター。参照資料の一覧へ移ります)。契約するときは、作業日、作業の内容、料金、支払い方法、解約料を確かめます。
作業日があいまいなまま契約して、困った相談もあります。2018年公表の相談例では、見積もりの日に契約をせかされ、「週明けから準備」と説明されました(出典:国民生活センター 報告書。参照資料の一覧へ移ります)。ところが確かめると作業日は決まっておらず、賃貸の解約に間に合うかで困ったという内容です。明け渡しのように動かせない日があるなら、作業日が決まっているかを契約前に確かめてください。
業者の許可や見積書の見方は、遺品整理業者の選び方の記事で確かめられます。料金の内訳と見積もりの比べ方は、空き家の片付け費用の記事にまとめています。見積もりの場で買取を持ちかけられたときは、押し買いの断り方とクーリング・オフの記事で対応を確かめられます。
