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空き家になった実家に住む前に|名義・修繕・税金・生活条件の確認表

空き家になった実家へ住むかは、改修前に名義、建物の安全、生活動線、5年程度の維持費を確認して判断します。住む、売る、貸す、期限を決めて保留する案を同じ期間と費用項目で比べます。

まだしないこと

権利関係と建物の状態を確認する前に、片付けや大規模改修へまとまった費用をかけない

まずすべきこと
  1. 名義、家族の意向、建物の危険箇所を確認する
  2. 通勤、通院、買物、災害リスクを現地で確かめる
  3. 住む・売る・貸す・保留を同じ期間の支出で比べる

このページで決めること実家へ住むための前提条件と費用を確認し、他の活用案と比べて次の調査を決められます。

空き家になった実家の名義と建物と生活条件を確認する家族
公開日 2026年9月21日法令・制度確認日 2026年9月21日執筆・編集 住まいのよりみち編集部読了目安 13

空き家になった実家に住む選択肢を検討する際は、片付けやリフォームに着手する前に確認すべき重要な項目があります。不動産の名義や権利関係、建物の安全性、ライフライン(電気・ガス・水道などの生活基盤)の状態、税金・保険、そして通勤・通院・買物といった生活条件の事前確認が欠かせません。

「実家なら安く住める」と考えがちですが、建物の状態によっては多額の修繕費や継続的な維持費が発生します。また、自分たちによる目視の確認だけでは安全性を判断できません。住み始めてから想定外のトラブルや負担に直面しないよう、必要に応じて専門家による建物調査や耐震診断を検討し、権利関係や費用の全体像を把握した上で判断を進めましょう。

先に住める権利を確認する

実家に住み始める前に、まず確認すべきなのが不動産の権利関係です。自分が住むことについて正当な権利があり、他の関係者から異議が出ない状態になっているかを明確にします。

不動産の所有者が誰であるかによって、確認の入口が分かれます。

  • 親(所有者)が存命の場合: 親が施設へ入所したことなどに伴い実家が空き家になった場合は、所有者本人との間で居住の承諾を得る必要があります。無償で使用するのか(使用貸借)、家賃を支払うのか(賃貸借)、固定資産税や建物の維持管理費をどちらが負担するのかといった利用条件を事前に取り決めます。
  • 親(所有者)が死亡している場合: 法律上、相続開始によって相続人が財産上の権利義務を承継します。その上で、遺産分割協議が整って自分が単独で取得したのか、あるいは相続人間で共有状態にあるのかを確認します。あわせて、法務局の登記簿上で名義変更(相続登記)が完了しているかも確認します。
  • 共有状態での使用条件: 共有名義のままの場合、居住する条件、固定資産税や維持修繕費の負担割合、将来退去したり売却したりする際の扱いについて、共有者間で話し合い、書面で合意内容を整理しておくことが望まれます。なお、共有物の使用・管理・変更などに関する法律上の決定要件は行為の内容によって異なります。すべての行為に一律で全員一致が必要となるわけではありませんが、後々の争いを防ぐためにも、大規模な改修を行う場合や意見の対立がある場合は事前に個別の法律要件を確認してください。
  • 抵当権等の有無: 過去の住宅ローンなどの担保権(抵当権)が設定されたまま残っていないかを登記簿で確認します。

注意が必要なのは、相続登記、固定資産税の納税手続き、住民票の異動はそれぞれ別の手続きである点です。市町村から届く固定資産税の納税通知書の名義を変更して納税していたり、住民票を実家に移したりしても、相続登記の代わりにはなりません。相続登記は、相続による不動産の取得を登記記録に反映する手続きであり、現在は法律上の申請義務が設けられています(参照:法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」(新しいタブで開きます))。

権利関係を曖昧にしたまま独断で住み始めたり、合意形成が不十分なまま改修工事を行ったりすると、後から親族間で金銭や権利の深刻なトラブルに発展する恐れがあります。個別の権利関係の整理や法的な判断については、司法書士や弁護士などの専門家に相談してください。

相続発生後の具体的な登記手続きや必要書類の流れについては、相続登記の手続き解説記事で詳しく案内しています。

建物の安全と修繕範囲を分ける

実家で安全に暮らすためには、建物の状態を正しく把握し、どの範囲まで修繕が必要かを見極める必要があります。長期間空き家だった建物は、換気不足や雨漏り、設備の放置によって急速に劣化が進んでいることがあります。

建物の確認では、自分で安全に確認できる範囲と、専門家に依頼すべき検査を明確に分けることが大切です。天井裏や床下へ無理に入り込んだり、長期放置された設備を通電・分解したりすることは事故につながる恐れがあるため避けてください。

自分で安全に確認できる項目(書類・外観)

  • 図面・修繕記録: 建築確認済証、検査済証、設計図書、過去のリフォーム履歴などの保管状況。
  • 室内の目視確認: 安全に立ち入れる室内からの雨染みやカビの跡、建具の建て付け、床の著しいたわみや傾き。
  • 建物の外観: 外壁の大きなクラック(ひび割れ)、基礎の破損、屋根材のズレや雨樋の外れ。
  • 建築時期の確認: 建築確認の時期が1981年5月以前の「旧耐震基準」か、1981年6月以降の「新耐震基準」か。

専門家に依頼すべき検査項目(構造・設備)

  • 構造部・雨漏り: 天井裏や小屋裏の雨漏り痕、基礎や柱・梁の構造的な健全性の調査。
  • シロアリ被害: 床下の湿気環境、蟻道(シロアリの通り道)の有無、構造木部の食害。
  • 給排水設備: 給水管・排水管の経年劣化や漏水、排水トラップの封水切れや異臭、給湯器内部の安全点検。
  • 電気・ガス: 配線の漏電や被膜の劣化、分電盤・ブレーカーの容量、ガス配管やガス器具の保安点検。

建物の安全性は、居住者による目視だけで判断してはいけません。壁の内部や床下、天井裏の腐食、配管内部の劣化などは外観からは確認できないためです。また、新耐震基準の建物であっても、長年の雨漏りやシロアリ被害、接合部の緩みなどによって耐震性能が低下している場合があり、建築時期だけで耐震安全性を判定できません。

客観的な専門調査として「建物状況調査(インスペクション)」の活用が挙げられます。これは、既存住宅状況調査技術者の登録講習を修了した建築士が調査を実施する制度です。建物の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分について、目視や計測などの非破壊検査(建物を壊さずに行う検査)を中心に確認します(参照:国土交通省「建物状況調査(インスペクション)活用に向けて」(新しいタブで開きます)国土交通省「既存住宅状況調査技術者講習制度」(新しいタブで開きます))。

ただし、建物状況調査には範囲と限界があります。目視を中心とした非破壊検査であるため、破壊調査を行わなければ判明しない隠れた欠陥まで完全に把握できるわけではなく、「瑕疵(かし)が存在しないこと」を保証するものではありません。また、耐震診断や設備の全面的な性能検査を行うものでもありません。特に構造耐力が懸念される古い木造住宅の場合は、より詳細な耐震診断や精密調査の実施を検討してください。

空き家を適切に維持するための点検基準については空き家の定期点検に関する解説記事を、長期間停止していたライフラインを安全に復元する手順については電気・ガス・水道の再開手順に関する解説記事をご確認ください。

初期費用と継続費を一覧化する

実家に住む際にかかる費用は、住み始める前に発生する「初期費用」と、住み続けていくために発生する「継続費」に分けて一覧化し、全体の支出を見積もることが欠かせません。

これらはすべての世帯に一律で発生する固定費ではなく、建物の状態や生活様式に応じて必要性が変わります。実際の状況に合わせて項目を取捨選択し、見積もり金額を記入できるように整理します。

表:費用の区分、主な項目、確認・見積もりのポイント
費用の区分主な項目確認・見積もりのポイント
初期費用片付け・残置物処分家財道具の搬出・処分費用、専門業者による清掃・遺品整理費用
初期費用調査・診断費用建物状況調査(インスペクション)、耐震診断、給排水管の精密点検などの費用
初期費用設備・建物の修繕水回り設備の更新、給排水管や給湯器の交換、雨漏り補修、シロアリ防除
初期費用耐震・断熱改修耐震補強工事、窓やサッシの二重化・断熱改修工事
初期費用ライフライン再開点検休止配管の漏水点検、通電に伴う絶縁測定、ガス開栓に伴う点検費用
初期費用引越し・転居関連家財の搬送運賃、荷造り費用、工事期間中の仮住まい費用
初期費用権利・登記手続き相続登記の登録免許税、司法書士報酬、戸籍謄本・登記事項証明書等の取得費
継続費税金・公租公課固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
継続費保険料火災保険料・地震保険料(建物の構造や築年数に応じた保険料)
継続費ライフライン・通信電気・ガス・水道の基本料金と使用料、インターネット回線費用
継続費建物の定期維持・保全外壁・屋根の定期点検や将来の修繕積立、庭木の剪定・除草費用
継続費移動・交通費自家用車の維持費(車両代・ガソリン代・車検・任意保険)、公共交通機関の運賃

資金計画を立てる際、公的な補助金を前提にして予算を組むことは避けてください。自治体によっては耐震診断・補強工事や空き家改修に対する補助制度を設けていますが、利用にあたっては制度ごとの厳格な要件確認が必要です。

具体的には、対象年度や対象となる住宅・申請者の要件をはじめ、補助対象となる工事内容や申請期限の確認が必要です。あわせて、交付決定の時期、契約や着工に関する制限、予算上限や受付状況なども個別に把握しなければなりません。契約や着工ができる時点は制度ごとに異なるため、「申請しただけで着工できる」「着工前であればすでに契約していてもよい」とは判断せず、自治体の公式案内で最新の要件を確認してください。

生活条件を現地で試す

建物や費用の懸念を整理できても、実際の住み心地や立地条件が現在の生活に合わなければ、長期間住み続けることは困難です。現地を訪れ、曜日や時間帯を変えて生活条件を検証することが重要です。

確認すべき生活条件:

  • 通勤・通学: 平日の朝夕の通勤・通学時間帯における、職場や学校までの移動時間や交通混雑の状況。
  • 医療・買物: かかりつけ医や総合病院、日常使いのスーパー、ドラッグストアまでの距離や移動手段。
  • 災害リスク: 自治体のハザードマップにおける、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域への該当有無。
  • 通信環境: スマートフォンの電波状況や、光回線などの高速インターネット回線の引き込み可否。
  • 冬・夏の室内環境: 昔の木造住宅に見られる冬の底冷えや結露、夏の室温上昇といった室内温熱環境。
  • 車の要否と運転環境: 日常生活に必要な自動車の台数、駐車スペースの出入りのしやすさ、冬期の路面凍結や積雪の有無。

これらの生活環境に対する許容度は人によって異なります。「慣れれば問題ない」「車があれば多少遠くても平気」と決めつけず、同居する家族それぞれの生活様式や将来的な変化も見据えて慎重に判断してください。

住む・売る・貸す・保留を比較する

実家の活用方法には、「住む」以外にも「売る」「貸す」「保留(期限を設けた現状維持)」という選択肢があります。判断を誤らないためには、あらかじめ比較する期間(例:5年間、10年間など)を設定し、同じ費用項目を並べて慎重に比較検討することが大切です。

表:比較項目(共通軸)、住む、売る、貸す、保留(期限付き管理)
比較項目(共通軸)住む売る貸す保留(期限付き管理)
初期支出片付け、調査、居住に必要な修繕・断熱改修費用残置物の処分、売却に伴う測量・解体・仲介手数料等賃貸向けのリフォーム、ハウスクリーニング、募集費用現状維持のための片付け、最低限の修繕費用
保有中の継続費用固定資産税、火災・地震保険料、日常の管理費売却・引渡しが完了するまでの固定資産税、管理費用固定資産税、火災保険料、管理委託料(手数料)固定資産税、火災保険料、定期管理費(通風・草刈り)
将来・突発の修繕費屋根・外壁塗装、設備故障などの自己負担なし(引渡し後は買主負担。契約不適合責任等に留意)入居中の設備修繕義務、退去時の原状回復費用劣化進行に伴う雨漏りや外壁剥落等の応急補修費
住居・交通費用の変化現在の家賃負担は減るが、通勤・移動費が増減する可能性別に暮らす自宅の住居費・交通費がそのまま継続別に暮らす自宅の住居費・交通費がそのまま継続別に暮らす自宅の住居費・交通費がそのまま継続
収入・資金の見込みなし(支出の抑制効果のみ)売却代金(立地・需要により変動。成立は無保証)賃料収入(空室時は途絶。満室・相場は無保証)なし
終了時・将来のリスク将来の解体費負担、家族構成変化時の再活用判断引渡し完了により将来の維持管理責任から解放借主の退去、将来の再募集や売却・解体の判断放置による特定空家指定、建物の資産価値低下

選択肢を検討する際は、売却を選んでも即座に固定資産税や管理の手間から解放されるわけではない点に留意が必要です。買い手が見つかり、売買契約を締結して決済・引渡しが完了するまでは、所有者として固定資産税の納税義務や敷地・建物の維持管理責任が継続します。また、保留を選ぶ場合も無期限の放置に陥らない配慮が不可欠です。「1年後の固定資産税の納税通知書が届くまで」「家族が集まる次のお盆まで」といった具体的な期限と、次に判断するための条件をあらかじめ定めておきます。

最も避けるべきなのは、他の選択肢を十分に比較検討しないまま、先に多額の費用をかけて大規模改修へ進んでしまうことです。改修後に生活が合わなかったり維持費が負担になったりして売却や賃貸へ切り替えたとしても、立地や建物の需要によっては投じた改修費用を回収できない恐れがあります。売却や賃貸の成立や収益性は地域や建物の状況に大きく左右され、希望通りの条件で引き受け手が見つかる保証はありません。

各選択肢の具体的な試算額は個別条件による見積もりに委ねられます。まずは現状のまま権利関係と修繕の必要範囲を確認し、同じ時間軸で4つの選択肢を比較した上で、最も無理のない方針を選択してください。

実家を売る・貸す・現状維持する際の手続きや判断基準の比較については、家を売る・貸す・残す場合の判断表をご確認ください。

参照資料

法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」参照日 2026年9月21日国土交通省「建物状況調査(インスペクション)活用に向けて」参照日 2026年9月21日国土交通省「既存住宅状況調査技術者講習制度」参照日 2026年9月21日