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家を売る・貸す・残す、どれがいい?相続した実家の判断表

相続した家を売る・貸す・残すのどれがよいかに、全国共通の正解はありません。3案それぞれを「候補として残す」「現時点では外す」「未確認」に分けます。名義・ローン・税特例・建物の安全が分からないうちは契約を進めず、未確認の案には担当と再判断日を付けます。

まだしないこと

名義・ローン・保険・空き家特例を確かめる前に、入居募集や売買契約、貸すための改修工事を始めないでください。危険な箇所は先に安全を確保します。

まずすべきこと
  1. 登記・固定資産税・ローン・保険の書類を一か所に集める
  2. 6つの問いに答え、分からない項目を「不明」と書き出す
  3. 未確認の項目ごとに、確かめる人と再判断日を決める

このページで決めること3案を同じ条件で比べ、候補に残す案、今は外す案、期限を決めて保留する案と、足りない資料を決められます。

所有者が家を売る・貸す・持ち続ける三案の収支と管理負担を比較する様子
公開日 2026年8月24日最終更新日 2026年9月29日法令・制度確認日 2026年9月29日執筆・編集 住まいのよりみち編集部読了目安 18分
この記事の目次を開く(9項目)

親から相続した家を売るか、貸すか、残すかは、家族の気持ちや査定額だけでは決めにくいものです。いったん貸したり売買の契約を結んだりすると、あとから戻しにくいこともあります。そこで、3案に順位は付けず、それぞれを「候補として残す」「現時点では外す」「未確認」のどれかに分けます。足りない資料には、確かめる人と日付を付けて進めましょう。

3分確認:6つの問いで3案を仕分ける

3案は、次の3つの状態のどれかに置きます。点数を付けて、1つの正解を選ぶ方法は取りません。

  • 候補として残す:止まる条件が片づき、数字を比べる段階に進める案
  • 現時点では外す:いまの条件では進めない理由がはっきりした案
  • 未確認:資料や見積もりが足りず、まだ決められない案

資料がそろっていなくても、分からない問いは「不明」のままで構いません。次の節で書類を探してから、この表に戻ってください。

表:問い、「いいえ」「不明」のとき
問い「いいえ」「不明」のとき
1. 家の名義人と共有者、契約できる人が分かっている売る・貸すは未確認
2. ローン、団体信用生命保険(団信)、火災保険の状況が分かっている売る・貸すは未確認
3. 家族の誰かが住む予定と、その時期が決まっている残すは、使う人が決まるまで未確認
4. 建物の傷み具合、貸す前の修繕費、借り手がいるかが分かっている貸すは未確認
5. 空き家特例の候補になるかを確かめた貸すは未確認
6. 管理する人と、費用を出す人・出せる額が決まっている貸す・残すは未確認

団信は、ローンを借りた人が亡くなったときに、残りを保険金で返す仕組みです。空き家特例は、亡くなった親が1人で住んでいた家を売るときに、税を軽くできる特例を指します。貸すとこの特例を使えなくなる場合があるので、問い5が不明なうちは貸す案を進めません。

問い3が「はい」なら、残す案と、期間を決めて貸す定期借家を検討します。定期借家は、建物・費用・借り手・管理担当などを確かめるまで未確認です。売る案を現時点で外すかは、住む予定の時期と家族の合意を踏まえて決めます。

1つでも「未確認」が付いた案は、契約・募集や、貸すための改修工事に進みません。ほかの問いの答えがよくても、未確認を打ち消すことはできないからです。特に、次の3つは戻しにくい行為です。

  • 普通の借家契約で貸す:自分の都合だけでは契約を終えられない
  • 相続した家を貸す、家族が住む:空き家特例を使えなくなる場合がある
  • 売買契約を結ぶ:気が変わっても、簡単には取り消せない
6つの問いに「いいえ」か「不明」と答えると、売る・貸す・残すの案が未確認になる
図の説明

6つの問いに、はい・いいえ・不明で答える。「いいえ」か「不明」のとき、問い1「家の名義人と共有者、契約できる人が分かっている」は売る・貸すが未確認。問い2「ローン、団体信用生命保険、火災保険の状況が分かっている」は売る・貸すが未確認。問い3「家族の誰かが住む予定と、その時期が決まっている」は、使う人が決まるまで残すが未確認。問い4「建物の傷み具合、貸す前の修繕費、借り手がいるかが分かっている」は貸すが未確認。問い5「空き家特例の候補になるかを確かめた」は貸すが未確認。問い6「管理する人と、費用を出す人・出せる額が決まっている」は貸す・残すが未確認。1つでも未確認が付いた案は、契約・募集や、貸すための改修工事に進まない。ほかの問いの答えがよくても、未確認を打ち消すことはできない。資料が足りなくても、分からない問いは不明のままでよい。足りない資料には、確かめる人と日付を付けて進める。

最初に集める資料と、見つからないときの聞き先

6つの問いに答えるには、まず手元の書類を集めます。実家では、金庫や仏壇のまわり、書類をまとめた引き出しや箱から探し始めましょう。どれも、あとで専門家に相談するときにそのまま使えます。

表:書類、分かること、見つからないとき
書類分かること見つからないとき
登記事項証明書(権利証・登記識別情報通知も手元にあれば保管)現在の登記名義人、共有の割合(持分)法務局で登記事項証明書を取る
固定資産税の納税通知書・課税明細書毎年の税額、土地と建物の評価額市区町村の税の窓口に再発行や証明書を尋ねる
ローンの返済予定表・残高証明書、通帳の引き落とし欄借入先と残高を確かめる手がかり通帳の引き落とし先から借入先を探し、現在の残高と団信の保障状況を聞く
火災保険の証券、保険料の案内保険会社、補償の範囲通帳の引き落とし記録から保険会社を探す
家を買ったときの売買契約書、領収書買った値段(売るときの税の計算に使う)税理士か税務署に、資料がないときの扱いを聞く
建築確認済証、設計図面建てた時期、増改築の記録不動産会社か建築士に、ほかの確かめ方を聞く

登記事項証明書は、法務局が出す書類で、家の名義人や持分が載っています。持分は、共有している人それぞれの割合のことです。

書類が見つからなくても、聞く先と聞くことが分かれば先に進めます。

  • 法務局:登記事項証明書を取り、名義人・持分・抵当権(ローンの担保として家に付けた権利)を見る
  • 金融機関:ローンの残高、団信に入っていたか、保障の対象になるかを聞く
  • 保険会社:空き家になったと伝え、今の契約のまま補償が続くかを聞く
  • 税理士か税務署:買ったときの資料がない場合、税の計算をどうするかを聞く

契約・募集の前に止まる4つの条件

次の4つのうち1つでも分からないうちは、売買・賃貸の契約や入居募集、貸すための改修工事を進めません。落下や倒壊の危険がある場所は立ち入りを防ぎ、市区町村や専門業者に相談してください。表の「止めること」は、条件が分かるまで決めないことです。

表:条件、止めること、確かめる先
条件止めること確かめる先
所有:名義人・共有者・契約できる人売買契約、賃貸契約法務局、司法書士
お金:ローン・抵当権・団信・保険入居募集、売る条件の確定、保険の解約金融機関、保険会社
税:空き家特例の候補か貸すこと、家族が住み始めること税務署、税理士
建物と管理:傷み、修繕費、借り手、管理する人入居募集不動産会社、建築士

名義と共有者

家を買った人に名義を移すには、その前に相続登記が要ります。相続登記とは、亡くなった親から相続人へ名義を変える登記です。相続登記の申請は、2024年(令和6年)4月1日から義務になりました(出典:法務省 相続登記の義務化。参照資料の一覧へ移ります)。相続で取得したと知った日から3年以内に申請し、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(行政上の罰)の対象です。

家を共有しているときは、売るには共有者全員の同意が要るのが一般的です。貸す場合は、期間が短い賃貸借(建物は3年以内)なら、持分の過半数で決められることがあります(出典:民法 第252条。参照資料の一覧へ移ります)。それを超える期間や、更新が原則の普通借家では、全員の同意が問題になります。誰の同意が要るかは、司法書士か弁護士に確認してください。

ローン・団信・保険

亡くなった親のローンが残っていたら、まず団信に入っていたかを確かめます。加入していて保障の対象になれば、残りのローンは保険金で返されます(出典:住宅金融支援機構 団信。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、加入の有無や保障の中身は契約ごとに違うため、借入先の金融機関に聞いてください。

ローンを返している家を貸したいときは、先に借入先へ相談します。フラット35では、転勤などで一時的に住めない場合に、戻ることを前提とした賃貸が認められています(出典:住宅金融支援機構 よくある質問。参照資料の一覧へ移ります)。ほかのローンの扱いは契約ごとに違うため、借入先に確かめてください。残高や抵当権の確かめ方は、相続した家に住宅ローンが残っているときの記事で順に説明しています。

火災保険にも注意が要ります。住まなくなったあとも今の契約のまま補償が続くかは、契約によって違うからです。保険会社に空き家になったことを伝え、補償が続くかを約款で確かめます。屋根や塀が崩れて人にけがをさせたときは、所有者が賠償の責任を負う場合もあります(出典:民法 第717条。参照資料の一覧へ移ります)。

空き家特例

亡くなった親が1人で住んでいた一戸建ては、空き家特例の候補になることがあります。相続から売るまでの間に貸したり住んだりすると、この特例は使えません(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。そのため、貸す案や家族が住む案は、特例の候補かを確かめてから決めます。期限と細かい条件は、後ろの「賃貸・税務の詳しい確認」にまとめました。

建物の状態と管理する人

建物の傷み具合と、貸す前の修繕費が分からないうちは、入居募集を始めません。雨漏りやシロアリ、床の傾き、柱や土台の傷みがあると、修繕費がふくらみやすいからです。売る場合も、今の状態のまま引き渡すかどうかの条件に関わります。

建てた時期も確かめましょう。1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた家は、旧耐震基準(今より前の耐震の基準)の建物かもしれません。増改築や耐震改修の有無で違うため、耐震性は建物ごとに確かめます。耐震性の調査や、買う人のローンの確認が必要になる場合があります。

なお、空き家特例でいう「建てた日」とは別の日付なので、特例の判定に使う資料は税理士に確かめてください。

家財の片付けも、どの案でも避けられません。空き家の管理や処分で困ることとして、片付けや家財の処分が挙がっています(出典:国土交通省 空き家所有者実態調査。参照資料の一覧へ移ります)。費用は荷物の量や運び出す道の条件で変わるため、専門業者の見積もりを取ります。

貸すなら、借り手がいるかと、管理を誰が担うかも募集の前に決めます。この4つの条件は、点数や有利な収支と相殺しません。家賃が高く見込めても、ローンの承諾が取れていなければ貸せないからです。

売る・貸す・残すを同じ表で比べる

止まる条件を確かめたら、3案を同じ期間でそろえて比べます。期間は、たとえば今後3〜5年など、家族が見直せる長さにします。これはこの記事の比べ方で、決まりではありません。

表:項目、売る、貸す、残す
項目売る貸す残す
最初にかかるお金仲介手数料、印紙税、登記費用、片付け、必要なら測量・解体修繕、清掃、募集の手数料、鍵の交換片付け、屋根・外壁・塀などの安全対策
毎年のお金売った後はかからない家賃から管理料・税・保険・修繕・ローン返済を引いた残り税・保険・光熱費・草刈り・交通費の持ち出し
所有者の手間査定、契約、引き渡しの時期に集中自分で管理するか、管理会社に任せるかで変わる換気・通水・草刈り・点検、または委託先の報告確認
契約と法律引き渡し後も、契約の条件で対応が要ることがある借りる人は法律で守られる。契約の種類を選ぶ管理が不十分だと、市区町村から指導を受けることがある
期間の終わり売ったお金を分けたり、ほかに使ったりできる契約の種類によって、売る・住む・貸し続けるを選び直す建物が古くなり、解体費や修繕費が増えやすい

売った額と、数年分の家賃をそのまま並べて比べるのは避けます。貸す案や残す案では、期間の終わりにも家が手元に残るからです。その時点の家の値打ちと、将来売るときの費用、残っているローンまでそろえて比べます。

3案の数字を並べるときは、売る・貸す・残す判断シートを使えます。売却の手取り、賃貸の1年目と2年目以降の収支、保有の期間の合計を書き込めるシートです。順位を自動で決めるものではなく、入力した内容は送信も保存もされません。

売るなら、手取りを2段階で見積もる

不動産会社の査定額は、売り出すときの目安の値段です。そのまま手元に残るお金ではありません。手取りは、税を確かめる前と後の2段階に分けて見積もります。

  • 税を確かめる前の手取り=売れた値段-ローンの完済額-売るための費用
  • 税に備えた後の手取り=税を確かめる前の手取り-譲渡所得の税(所得税・住民税)

売るための費用は、仲介手数料、印紙税、登記の費用、片付けや測量・解体の費用です。税の計算に入れられる費用の範囲は、税理士か税務署に確かめてください。800万円以下の空き家などは、仲介手数料の上限を最大33万円(税込)とする特例があります(出典:国土交通省 不動産取引。参照資料の一覧へ移ります)。費目ごとの計算は、不動産売却の費用と手取りの記事にまとめています。

売って利益が出たときは、所得税と住民税がかかります。この利益(譲渡所得)は、売った値段から、取得費と売るための費用を引いて出します(出典:国税庁 不動産等を売却した方へ。参照資料の一覧へ移ります)。取得費とは、親が家を買ったときの代金などから、建物が古くなった分を引いた額です。相続した家の取得費と取得した時期は、亡くなった親のものを引き継ぎます(出典:国税庁 No.3270。参照資料の一覧へ移ります)。

税額の計算や使える特例は、相続した家の売却にかかる税金の記事で確かめられます。売る案では、いつ引き渡せるかも書いておきましょう。空き家特例を使うなら、特例の期限に間に合うかどうかで、手取りが大きく変わるためです。引き渡しの後も、契約の条件によっては、見つかった不具合への対応を求められることがあります。

国の認定を受けた太陽光を付けたまま売るなら、その認定と売電契約の名義を買主に変える手続きも要ります。売主がそろえる書類と契約書への書き方は、太陽光発電付き住宅の売却の記事にまとめています。

詳しく:購入時の契約書が見つからないとき

詳しい説明を開く

親が家を買ったときの売買契約書がなくても、すぐにあきらめる必要はありません。当時の預金通帳の出金記録、ローンの契約書、家に付けた抵当権の額などが、手がかりになる場合があります。どれも示せないときは、売った値段の5%を取得費として計算する方法があります。この場合は税が重くなることがあるため、使える資料を税理士か税務署に確認してください。

貸すなら、1年目と2年目以降を分けて現金を数える

毎月の家賃に12を掛けた額は、利益ではありません。貸す人には、修繕や管理、税金の支払いが続くからです。手元の現金の出入りは、1年目と2年目以降に分けて数えます。

  • 1年目:入った家賃-修繕・清掃・募集の費用-毎年の支出
  • 2年目以降:入った家賃-管理委託料-固定資産税など-保険料-修繕費-ローン返済額

「入った家賃」は、空室や滞納の月を除いた、実際に受け取る額です。急な故障に備える予備費は、この計算には入れず、別に取り分けておくお金として書きます。空室の割合や管理料、修繕費の割合に、全国共通の目安はありません。地元の管理会社から、家賃の見込みと管理料、修繕の見積もりを取って入れてください。

貸す人には、借りた人が住むのに必要な修繕をする義務があります(出典:民法 第606条。参照資料の一覧へ移ります)。給湯器やエアコン、水道管の故障は、貸している間にも起こりえます。借りた人の不注意で壊れた場合などは、この義務の例外です。

管理を管理会社に任せると、頼む内容に応じた手数料がかかります。自分で管理すれば手数料はかかりません。その代わり、入居者からの連絡や故障の手配を、すべて自分で受けることになります。

この現金の計算は、税金の計算とは別のものです。たとえば、ローンの元本の返済は現金が出ていきますが、税金の計算では通常、経費になりません。

貸す案を考えている人は、後ろの「賃貸・税務の詳しい確認(必要な人だけ)」も開いてください。空き家特例と貸すことの関係、借家契約の終わり方、家賃の税金、ローン返済中の家の確認点をまとめています。

残すなら、期間の合計と「使う人・管理する人」を決める

「決められないから、ひとまず残す」は、何もしない案ではありません。住まない家にも、毎年お金と手間がかかり続けます。残す案のお金は、次の3つに分けて書きます。

  • 毎年の費用:固定資産税・都市計画税、火災保険料、水道・電気の基本料金、草刈り、通う交通費
  • 一時的な修繕:屋根・外壁・塀などに傷みが見つかったときの工事
  • 緊急の予備費:台風の被害や設備の故障に備えて取り分けるお金

残す案の期間の合計は、片付け・安全対策の初期費用に、毎年の費用×残す年数と一時的な修繕費を足して出します。緊急の予備費は支出と分け、手元に確保する額を書きます。毎年の費用の出し方は、空き家の維持費の記事で項目ごとに分けています。

残すと決める前に、次の5つを家族で決めます。1つでも空いていれば、残す案は未確認のままです。

  • 誰が使うか(帰省先、物置、将来住む人など)
  • いつから使うか
  • 誰が管理するか(換気、通水、郵便物の整理、点検)
  • 費用を誰が、いくらまで出すか
  • いつ見直すか(再判断日)

共有しているときは、近くに住む1人に見回りが偏ると、家族の間で不満が出ることがあります。管理会社の巡回サービスを使うかどうかも含めて、先に話し合っておきましょう。

管理が行き届かないと、市区町村から改善の指導や勧告を受けることがあります。対象は、管理不全空家や特定空家(放置すると危ないと市区町村が判断した空き家)です。勧告を受けると、住宅が建つ土地の固定資産税の特例が外れ、税が上がることがあります(出典:国土交通省 空家法。参照資料の一覧へ移ります)。仕組みと時期は、空き家の固定資産税の記事で確かめられます。

賃貸・税務の詳しい確認(必要な人だけ)

賃貸・税務の詳しい確認を開く

ここは、貸す案を考えている人と、空き家特例を使うかもしれない人向けの補足です。

空き家特例と、貸すことの関係

空き家特例は、条件を満たすと、売った利益から最高3,000万円を差し引ける特例です。主な条件は次のとおりです。

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家で、マンションなどの区分所有建物ではない
  • 相続の直前に、亡くなった親が1人で住んでいた(老人ホームなどに入っていた場合も、一定の条件で対象)
  • 相続から売るまでの間、貸したり、住んだり、事業に使ったりしていない
  • 相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
  • 売った代金が1億円以下(ほかの相続人が売った分なども合わせて判定)
  • 耐震基準を満たすか、取り壊して売る(買った人が翌年2月15日までに改修・取り壊しをする場合も含む)

この特例は、2027年(令和9年)12月31日までの売却が対象です(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。家と土地を相続した人が3人以上なら、1人あたりの上限は2,000万円になります。期限は制度の改正で変わることがあるため、売る時点の国税庁の案内で確かめてください。条件の細かい確かめ方は、相続した空き家の3,000万円控除の記事にまとめています。

普通借家と定期借家の終わり方

普通借家は、期間が来ても続くのが原則の借家契約で、貸す人の都合だけでは終えられません。貸す人が更新を断るには、正当な理由が要ります(出典:借地借家法。参照資料の一覧へ移ります)。理由があるかは、双方の事情や建物の使われ方、立ち退き料の申し出なども合わせて判断されます。

定期借家は、条件を満たせば期間の満了で終わり、更新がない借家契約です(出典:国土交通省 定期建物賃貸借。参照資料の一覧へ移ります)。将来住む予定があるときや、数年後に売るつもりのときに検討されます。ただし、次の手続きが要ります。

  • 契約を書面などで結ぶ
  • 契約書とは別の書面を契約前に渡し、更新がなく期間満了で終わることを説明する(借りる人が承諾すれば電子的な方法も可)
  • 期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに、契約が終わることを通知する

事前の説明がないと、更新のない契約という取り決めは効力を持ちません(出典:国土交通省 定期借家の流れ。参照資料の一覧へ移ります)。通知を忘れると、期間が来ても、終わったことを借りる人に主張できなくなります。住める期間が限られる分、家賃は普通借家より低めになることがあります。期間が来ても、借りる人がすぐに出ていくとは限らない点にも注意しましょう。

家賃の税金と、手元の現金は別に数える

家賃の収入は、不動産所得として所得税の対象になります(出典:国税庁 No.1370。参照資料の一覧へ移ります)。不動産所得は、家賃などの収入から必要経費を引いて計算します。申告が要るかは、ほかの所得などによって変わるため、税務署か税理士に確かめてください。

税金の計算と手元の現金は、次の2点でずれます。

  • ローンの元本の返済:現金は出ていくが、通常は必要経費にならない
  • 減価償却費(建物の値打ちが年々減る分を経費にするもの):経費になるが、同じ年に同じ額の現金が出るとは限らない

3案を比べるときは、手元の現金の計算を使います。税金の計算は、それとは別に税理士と確かめましょう。

サブリースの家賃は変わることがある

サブリースは、業者が家を借り上げて、ほかの人に貸す仕組みです。「家賃保証」とうたわれていても、同じ家賃が続くとは限りません。業者は法律にもとづいて家賃の減額を求めることができ、貸す人の側から解約しにくい点もトラブルになりがちです(出典:国土交通省 サブリース。参照資料の一覧へ移ります)。契約の前に、減額と解約の条件を契約書で確かめてください。

ローン返済中の家を貸すとき

相続した人自身がローンを返している家を貸すなら、前もって借入先に相談します。転勤などで一時的に貸す場合も、借入先への手続きや条件を確かめる必要があります(出典:住宅金融支援機構 よくある質問。参照資料の一覧へ移ります)。亡くなった親のローンが団信で返されたかどうかが分からないうちは、入居募集を始めません。

家族で決める5つのことと、状態別の次の一手

6つの問いと比較表ができたら、家族で次の5つを決めます。紙1枚に書いて、全員が同じものを持つようにしましょう。

  1. 3案それぞれの状態(候補として残す・現時点では外す・未確認)
  2. 足りない資料と、その取り寄せ先
  3. 確かめる担当者
  4. 資料を取る期限と、再判断日
  5. 保留の間の予算と、仮に管理する人

候補として残す案

見積もりと査定を集めて、数字を比べる段階に進みます。売るなら複数の不動産会社の査定と引き渡しの条件、貸すなら家賃の見込みと修繕の見積もりです。候補が2つ以上残っても、止まる条件が片づくまでは契約しません。

現時点では外す案

外した理由と、どうなれば見直すかを書いておきます。たとえば「家族が住む予定があるので、売る案は外す。住む計画がなくなったら見直す」のように書きます。理由が書いてあれば、次に家族で話すときに同じ議論をくり返さずに済みます。

未確認の案

未確認は、「残す」と読み替えません。確かめる人と資料をそろえる日、再判断日を決め、その日に最初の問いへ答え直します。保留の間の固定資産税や見回りの費用を誰が出すかと、仮に管理する人も決めておきます。

たとえば、次のような場合です(想定の例)。1981年より前に建った一戸建てに、亡くなった母が1人で住んでいました。兄弟2人が相続して名義も移し、ローンは残っておらず、2人とも住む予定はありません。雨漏りがあり、修繕費はまだ分からず、見回りをする人も決まっていない状態です。

  • 売る:候補として残す。空き家特例の候補なので、期限までに査定と引き渡しの条件を集める
  • 貸す:未確認。修繕費、管理担当、空き家特例の適用見込みを確かめてから、貸す案を残すか決める
  • 残す:未確認。使う人も管理する人もいないため、兄が仮に見回りを受け持ち、再判断日を決める

この記事の内容は一般的な情報です。名義と共有は法務局か司法書士、税は税務署か税理士、査定と募集は不動産会社に確認してください。ローンは借入先の金融機関、火災保険は契約している保険会社が窓口になります。

参照資料

※14国税庁 No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」参照日 2026年9月29日 ↗国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」参照日 2026年9月29日 ↗※5国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」参照日 2026年9月29日 ↗※9国税庁 No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」参照日 2026年9月29日 ↗※12国土交通省「定期建物賃貸借」参照日 2026年9月29日 ↗※13国土交通省住宅局・日本賃貸住宅管理協会「《大家さんのための》定期建物賃貸借契約」(令和6年11月)参照日 2026年9月29日 ↗※11e-Gov法令検索「借地借家法」参照日 2026年9月29日 ↗※15国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト「適正化のための措置(規制の内容・標準契約書等)」参照日 2026年9月29日 ↗※4住宅金融支援機構 フラット35 Q&A 3149「返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか」参照日 2026年9月29日 ↗※1法務省「相続登記の申請義務化について」参照日 2026年9月29日 ↗※6国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)参照日 2026年9月29日 ↗※3住宅金融支援機構「新機構団体信用生命保険制度」参照日 2026年9月29日 ↗※7国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」参照日 2026年9月29日 ↗※2e-Gov法令検索「民法」参照日 2026年9月29日 ↗※8国税庁「不動産等を売却した方へ」参照日 2026年9月29日 ↗※10国土交通省「空家法とは」参照日 2026年9月29日 ↗