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親から相続した家を売るか、貸すか、残すかは、家族の気持ちや査定額だけでは決めにくいものです。いったん貸したり売買の契約を結んだりすると、あとから戻しにくいこともあります。そこで、3案に順位は付けず、それぞれを「候補として残す」「現時点では外す」「未確認」のどれかに分けます。足りない資料には、確かめる人と日付を付けて進めましょう。
3分確認:6つの問いで3案を仕分ける
3案は、次の3つの状態のどれかに置きます。点数を付けて、1つの正解を選ぶ方法は取りません。
- 候補として残す:止まる条件が片づき、数字を比べる段階に進める案
- 現時点では外す:いまの条件では進めない理由がはっきりした案
- 未確認:資料や見積もりが足りず、まだ決められない案
資料がそろっていなくても、分からない問いは「不明」のままで構いません。次の節で書類を探してから、この表に戻ってください。
| 問い | 「いいえ」「不明」のとき |
|---|---|
| 1. 家の名義人と共有者、契約できる人が分かっている | 売る・貸すは未確認 |
| 2. ローン、団体信用生命保険(団信)、火災保険の状況が分かっている | 売る・貸すは未確認 |
| 3. 家族の誰かが住む予定と、その時期が決まっている | 残すは、使う人が決まるまで未確認 |
| 4. 建物の傷み具合、貸す前の修繕費、借り手がいるかが分かっている | 貸すは未確認 |
| 5. 空き家特例の候補になるかを確かめた | 貸すは未確認 |
| 6. 管理する人と、費用を出す人・出せる額が決まっている | 貸す・残すは未確認 |
団信は、ローンを借りた人が亡くなったときに、残りを保険金で返す仕組みです。空き家特例は、亡くなった親が1人で住んでいた家を売るときに、税を軽くできる特例を指します。貸すとこの特例を使えなくなる場合があるので、問い5が不明なうちは貸す案を進めません。
問い3が「はい」なら、残す案と、期間を決めて貸す定期借家を検討します。定期借家は、建物・費用・借り手・管理担当などを確かめるまで未確認です。売る案を現時点で外すかは、住む予定の時期と家族の合意を踏まえて決めます。
1つでも「未確認」が付いた案は、契約・募集や、貸すための改修工事に進みません。ほかの問いの答えがよくても、未確認を打ち消すことはできないからです。特に、次の3つは戻しにくい行為です。
- 普通の借家契約で貸す:自分の都合だけでは契約を終えられない
- 相続した家を貸す、家族が住む:空き家特例を使えなくなる場合がある
- 売買契約を結ぶ:気が変わっても、簡単には取り消せない
図の説明
6つの問いに、はい・いいえ・不明で答える。「いいえ」か「不明」のとき、問い1「家の名義人と共有者、契約できる人が分かっている」は売る・貸すが未確認。問い2「ローン、団体信用生命保険、火災保険の状況が分かっている」は売る・貸すが未確認。問い3「家族の誰かが住む予定と、その時期が決まっている」は、使う人が決まるまで残すが未確認。問い4「建物の傷み具合、貸す前の修繕費、借り手がいるかが分かっている」は貸すが未確認。問い5「空き家特例の候補になるかを確かめた」は貸すが未確認。問い6「管理する人と、費用を出す人・出せる額が決まっている」は貸す・残すが未確認。1つでも未確認が付いた案は、契約・募集や、貸すための改修工事に進まない。ほかの問いの答えがよくても、未確認を打ち消すことはできない。資料が足りなくても、分からない問いは不明のままでよい。足りない資料には、確かめる人と日付を付けて進める。
最初に集める資料と、見つからないときの聞き先
6つの問いに答えるには、まず手元の書類を集めます。実家では、金庫や仏壇のまわり、書類をまとめた引き出しや箱から探し始めましょう。どれも、あとで専門家に相談するときにそのまま使えます。
| 書類 | 分かること | 見つからないとき |
|---|---|---|
| 登記事項証明書(権利証・登記識別情報通知も手元にあれば保管) | 現在の登記名義人、共有の割合(持分) | 法務局で登記事項証明書を取る |
| 固定資産税の納税通知書・課税明細書 | 毎年の税額、土地と建物の評価額 | 市区町村の税の窓口に再発行や証明書を尋ねる |
| ローンの返済予定表・残高証明書、通帳の引き落とし欄 | 借入先と残高を確かめる手がかり | 通帳の引き落とし先から借入先を探し、現在の残高と団信の保障状況を聞く |
| 火災保険の証券、保険料の案内 | 保険会社、補償の範囲 | 通帳の引き落とし記録から保険会社を探す |
| 家を買ったときの売買契約書、領収書 | 買った値段(売るときの税の計算に使う) | 税理士か税務署に、資料がないときの扱いを聞く |
| 建築確認済証、設計図面 | 建てた時期、増改築の記録 | 不動産会社か建築士に、ほかの確かめ方を聞く |
登記事項証明書は、法務局が出す書類で、家の名義人や持分が載っています。持分は、共有している人それぞれの割合のことです。
書類が見つからなくても、聞く先と聞くことが分かれば先に進めます。
- 法務局:登記事項証明書を取り、名義人・持分・抵当権(ローンの担保として家に付けた権利)を見る
- 金融機関:ローンの残高、団信に入っていたか、保障の対象になるかを聞く
- 保険会社:空き家になったと伝え、今の契約のまま補償が続くかを聞く
- 税理士か税務署:買ったときの資料がない場合、税の計算をどうするかを聞く
契約・募集の前に止まる4つの条件
次の4つのうち1つでも分からないうちは、売買・賃貸の契約や入居募集、貸すための改修工事を進めません。落下や倒壊の危険がある場所は立ち入りを防ぎ、市区町村や専門業者に相談してください。表の「止めること」は、条件が分かるまで決めないことです。
| 条件 | 止めること | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 所有:名義人・共有者・契約できる人 | 売買契約、賃貸契約 | 法務局、司法書士 |
| お金:ローン・抵当権・団信・保険 | 入居募集、売る条件の確定、保険の解約 | 金融機関、保険会社 |
| 税:空き家特例の候補か | 貸すこと、家族が住み始めること | 税務署、税理士 |
| 建物と管理:傷み、修繕費、借り手、管理する人 | 入居募集 | 不動産会社、建築士 |
名義と共有者
家を買った人に名義を移すには、その前に相続登記が要ります。相続登記とは、亡くなった親から相続人へ名義を変える登記です。相続登記の申請は、2024年(令和6年)4月1日から義務になりました(出典:法務省 相続登記の義務化。参照資料の一覧へ移ります)。相続で取得したと知った日から3年以内に申請し、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(行政上の罰)の対象です。
家を共有しているときは、売るには共有者全員の同意が要るのが一般的です。貸す場合は、期間が短い賃貸借(建物は3年以内)なら、持分の過半数で決められることがあります(出典:民法 第252条。参照資料の一覧へ移ります)。それを超える期間や、更新が原則の普通借家では、全員の同意が問題になります。誰の同意が要るかは、司法書士か弁護士に確認してください。
ローン・団信・保険
亡くなった親のローンが残っていたら、まず団信に入っていたかを確かめます。加入していて保障の対象になれば、残りのローンは保険金で返されます(出典:住宅金融支援機構 団信。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、加入の有無や保障の中身は契約ごとに違うため、借入先の金融機関に聞いてください。
ローンを返している家を貸したいときは、先に借入先へ相談します。フラット35では、転勤などで一時的に住めない場合に、戻ることを前提とした賃貸が認められています(出典:住宅金融支援機構 よくある質問。参照資料の一覧へ移ります)。ほかのローンの扱いは契約ごとに違うため、借入先に確かめてください。残高や抵当権の確かめ方は、相続した家に住宅ローンが残っているときの記事で順に説明しています。
火災保険にも注意が要ります。住まなくなったあとも今の契約のまま補償が続くかは、契約によって違うからです。保険会社に空き家になったことを伝え、補償が続くかを約款で確かめます。屋根や塀が崩れて人にけがをさせたときは、所有者が賠償の責任を負う場合もあります(出典:民法 第717条。参照資料の一覧へ移ります)。
空き家特例
亡くなった親が1人で住んでいた一戸建ては、空き家特例の候補になることがあります。相続から売るまでの間に貸したり住んだりすると、この特例は使えません(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。そのため、貸す案や家族が住む案は、特例の候補かを確かめてから決めます。期限と細かい条件は、後ろの「賃貸・税務の詳しい確認」にまとめました。
建物の状態と管理する人
建物の傷み具合と、貸す前の修繕費が分からないうちは、入居募集を始めません。雨漏りやシロアリ、床の傾き、柱や土台の傷みがあると、修繕費がふくらみやすいからです。売る場合も、今の状態のまま引き渡すかどうかの条件に関わります。
建てた時期も確かめましょう。1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた家は、旧耐震基準(今より前の耐震の基準)の建物かもしれません。増改築や耐震改修の有無で違うため、耐震性は建物ごとに確かめます。耐震性の調査や、買う人のローンの確認が必要になる場合があります。
なお、空き家特例でいう「建てた日」とは別の日付なので、特例の判定に使う資料は税理士に確かめてください。
家財の片付けも、どの案でも避けられません。空き家の管理や処分で困ることとして、片付けや家財の処分が挙がっています(出典:国土交通省 空き家所有者実態調査。参照資料の一覧へ移ります)。費用は荷物の量や運び出す道の条件で変わるため、専門業者の見積もりを取ります。
貸すなら、借り手がいるかと、管理を誰が担うかも募集の前に決めます。この4つの条件は、点数や有利な収支と相殺しません。家賃が高く見込めても、ローンの承諾が取れていなければ貸せないからです。
売る・貸す・残すを同じ表で比べる
止まる条件を確かめたら、3案を同じ期間でそろえて比べます。期間は、たとえば今後3〜5年など、家族が見直せる長さにします。これはこの記事の比べ方で、決まりではありません。
| 項目 | 売る | 貸す | 残す |
|---|---|---|---|
| 最初にかかるお金 | 仲介手数料、印紙税、登記費用、片付け、必要なら測量・解体 | 修繕、清掃、募集の手数料、鍵の交換 | 片付け、屋根・外壁・塀などの安全対策 |
| 毎年のお金 | 売った後はかからない | 家賃から管理料・税・保険・修繕・ローン返済を引いた残り | 税・保険・光熱費・草刈り・交通費の持ち出し |
| 所有者の手間 | 査定、契約、引き渡しの時期に集中 | 自分で管理するか、管理会社に任せるかで変わる | 換気・通水・草刈り・点検、または委託先の報告確認 |
| 契約と法律 | 引き渡し後も、契約の条件で対応が要ることがある | 借りる人は法律で守られる。契約の種類を選ぶ | 管理が不十分だと、市区町村から指導を受けることがある |
| 期間の終わり | 売ったお金を分けたり、ほかに使ったりできる | 契約の種類によって、売る・住む・貸し続けるを選び直す | 建物が古くなり、解体費や修繕費が増えやすい |
売った額と、数年分の家賃をそのまま並べて比べるのは避けます。貸す案や残す案では、期間の終わりにも家が手元に残るからです。その時点の家の値打ちと、将来売るときの費用、残っているローンまでそろえて比べます。
3案の数字を並べるときは、売る・貸す・残す判断シートを使えます。売却の手取り、賃貸の1年目と2年目以降の収支、保有の期間の合計を書き込めるシートです。順位を自動で決めるものではなく、入力した内容は送信も保存もされません。
売るなら、手取りを2段階で見積もる
不動産会社の査定額は、売り出すときの目安の値段です。そのまま手元に残るお金ではありません。手取りは、税を確かめる前と後の2段階に分けて見積もります。
- 税を確かめる前の手取り=売れた値段-ローンの完済額-売るための費用
- 税に備えた後の手取り=税を確かめる前の手取り-譲渡所得の税(所得税・住民税)
売るための費用は、仲介手数料、印紙税、登記の費用、片付けや測量・解体の費用です。税の計算に入れられる費用の範囲は、税理士か税務署に確かめてください。800万円以下の空き家などは、仲介手数料の上限を最大33万円(税込)とする特例があります(出典:国土交通省 不動産取引。参照資料の一覧へ移ります)。費目ごとの計算は、不動産売却の費用と手取りの記事にまとめています。
売って利益が出たときは、所得税と住民税がかかります。この利益(譲渡所得)は、売った値段から、取得費と売るための費用を引いて出します(出典:国税庁 不動産等を売却した方へ。参照資料の一覧へ移ります)。取得費とは、親が家を買ったときの代金などから、建物が古くなった分を引いた額です。相続した家の取得費と取得した時期は、亡くなった親のものを引き継ぎます(出典:国税庁 No.3270。参照資料の一覧へ移ります)。
税額の計算や使える特例は、相続した家の売却にかかる税金の記事で確かめられます。売る案では、いつ引き渡せるかも書いておきましょう。空き家特例を使うなら、特例の期限に間に合うかどうかで、手取りが大きく変わるためです。引き渡しの後も、契約の条件によっては、見つかった不具合への対応を求められることがあります。
国の認定を受けた太陽光を付けたまま売るなら、その認定と売電契約の名義を買主に変える手続きも要ります。売主がそろえる書類と契約書への書き方は、太陽光発電付き住宅の売却の記事にまとめています。
詳しく:購入時の契約書が見つからないとき
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親が家を買ったときの売買契約書がなくても、すぐにあきらめる必要はありません。当時の預金通帳の出金記録、ローンの契約書、家に付けた抵当権の額などが、手がかりになる場合があります。どれも示せないときは、売った値段の5%を取得費として計算する方法があります。この場合は税が重くなることがあるため、使える資料を税理士か税務署に確認してください。
貸すなら、1年目と2年目以降を分けて現金を数える
毎月の家賃に12を掛けた額は、利益ではありません。貸す人には、修繕や管理、税金の支払いが続くからです。手元の現金の出入りは、1年目と2年目以降に分けて数えます。
- 1年目:入った家賃-修繕・清掃・募集の費用-毎年の支出
- 2年目以降:入った家賃-管理委託料-固定資産税など-保険料-修繕費-ローン返済額
「入った家賃」は、空室や滞納の月を除いた、実際に受け取る額です。急な故障に備える予備費は、この計算には入れず、別に取り分けておくお金として書きます。空室の割合や管理料、修繕費の割合に、全国共通の目安はありません。地元の管理会社から、家賃の見込みと管理料、修繕の見積もりを取って入れてください。
貸す人には、借りた人が住むのに必要な修繕をする義務があります(出典:民法 第606条。参照資料の一覧へ移ります)。給湯器やエアコン、水道管の故障は、貸している間にも起こりえます。借りた人の不注意で壊れた場合などは、この義務の例外です。
管理を管理会社に任せると、頼む内容に応じた手数料がかかります。自分で管理すれば手数料はかかりません。その代わり、入居者からの連絡や故障の手配を、すべて自分で受けることになります。
この現金の計算は、税金の計算とは別のものです。たとえば、ローンの元本の返済は現金が出ていきますが、税金の計算では通常、経費になりません。
貸す案を考えている人は、後ろの「賃貸・税務の詳しい確認(必要な人だけ)」も開いてください。空き家特例と貸すことの関係、借家契約の終わり方、家賃の税金、ローン返済中の家の確認点をまとめています。
残すなら、期間の合計と「使う人・管理する人」を決める
「決められないから、ひとまず残す」は、何もしない案ではありません。住まない家にも、毎年お金と手間がかかり続けます。残す案のお金は、次の3つに分けて書きます。
- 毎年の費用:固定資産税・都市計画税、火災保険料、水道・電気の基本料金、草刈り、通う交通費
- 一時的な修繕:屋根・外壁・塀などに傷みが見つかったときの工事
- 緊急の予備費:台風の被害や設備の故障に備えて取り分けるお金
残す案の期間の合計は、片付け・安全対策の初期費用に、毎年の費用×残す年数と一時的な修繕費を足して出します。緊急の予備費は支出と分け、手元に確保する額を書きます。毎年の費用の出し方は、空き家の維持費の記事で項目ごとに分けています。
残すと決める前に、次の5つを家族で決めます。1つでも空いていれば、残す案は未確認のままです。
- 誰が使うか(帰省先、物置、将来住む人など)
- いつから使うか
- 誰が管理するか(換気、通水、郵便物の整理、点検)
- 費用を誰が、いくらまで出すか
- いつ見直すか(再判断日)
共有しているときは、近くに住む1人に見回りが偏ると、家族の間で不満が出ることがあります。管理会社の巡回サービスを使うかどうかも含めて、先に話し合っておきましょう。
管理が行き届かないと、市区町村から改善の指導や勧告を受けることがあります。対象は、管理不全空家や特定空家(放置すると危ないと市区町村が判断した空き家)です。勧告を受けると、住宅が建つ土地の固定資産税の特例が外れ、税が上がることがあります(出典:国土交通省 空家法。参照資料の一覧へ移ります)。仕組みと時期は、空き家の固定資産税の記事で確かめられます。
賃貸・税務の詳しい確認(必要な人だけ)
賃貸・税務の詳しい確認を開く
ここは、貸す案を考えている人と、空き家特例を使うかもしれない人向けの補足です。
空き家特例と、貸すことの関係
空き家特例は、条件を満たすと、売った利益から最高3,000万円を差し引ける特例です。主な条件は次のとおりです。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家で、マンションなどの区分所有建物ではない
- 相続の直前に、亡くなった親が1人で住んでいた(老人ホームなどに入っていた場合も、一定の条件で対象)
- 相続から売るまでの間、貸したり、住んだり、事業に使ったりしていない
- 相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
- 売った代金が1億円以下(ほかの相続人が売った分なども合わせて判定)
- 耐震基準を満たすか、取り壊して売る(買った人が翌年2月15日までに改修・取り壊しをする場合も含む)
この特例は、2027年(令和9年)12月31日までの売却が対象です(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。家と土地を相続した人が3人以上なら、1人あたりの上限は2,000万円になります。期限は制度の改正で変わることがあるため、売る時点の国税庁の案内で確かめてください。条件の細かい確かめ方は、相続した空き家の3,000万円控除の記事にまとめています。
普通借家と定期借家の終わり方
普通借家は、期間が来ても続くのが原則の借家契約で、貸す人の都合だけでは終えられません。貸す人が更新を断るには、正当な理由が要ります(出典:借地借家法。参照資料の一覧へ移ります)。理由があるかは、双方の事情や建物の使われ方、立ち退き料の申し出なども合わせて判断されます。
定期借家は、条件を満たせば期間の満了で終わり、更新がない借家契約です(出典:国土交通省 定期建物賃貸借。参照資料の一覧へ移ります)。将来住む予定があるときや、数年後に売るつもりのときに検討されます。ただし、次の手続きが要ります。
- 契約を書面などで結ぶ
- 契約書とは別の書面を契約前に渡し、更新がなく期間満了で終わることを説明する(借りる人が承諾すれば電子的な方法も可)
- 期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに、契約が終わることを通知する
事前の説明がないと、更新のない契約という取り決めは効力を持ちません(出典:国土交通省 定期借家の流れ。参照資料の一覧へ移ります)。通知を忘れると、期間が来ても、終わったことを借りる人に主張できなくなります。住める期間が限られる分、家賃は普通借家より低めになることがあります。期間が来ても、借りる人がすぐに出ていくとは限らない点にも注意しましょう。
家賃の税金と、手元の現金は別に数える
家賃の収入は、不動産所得として所得税の対象になります(出典:国税庁 No.1370。参照資料の一覧へ移ります)。不動産所得は、家賃などの収入から必要経費を引いて計算します。申告が要るかは、ほかの所得などによって変わるため、税務署か税理士に確かめてください。
税金の計算と手元の現金は、次の2点でずれます。
- ローンの元本の返済:現金は出ていくが、通常は必要経費にならない
- 減価償却費(建物の値打ちが年々減る分を経費にするもの):経費になるが、同じ年に同じ額の現金が出るとは限らない
3案を比べるときは、手元の現金の計算を使います。税金の計算は、それとは別に税理士と確かめましょう。
サブリースの家賃は変わることがある
サブリースは、業者が家を借り上げて、ほかの人に貸す仕組みです。「家賃保証」とうたわれていても、同じ家賃が続くとは限りません。業者は法律にもとづいて家賃の減額を求めることができ、貸す人の側から解約しにくい点もトラブルになりがちです(出典:国土交通省 サブリース。参照資料の一覧へ移ります)。契約の前に、減額と解約の条件を契約書で確かめてください。
ローン返済中の家を貸すとき
相続した人自身がローンを返している家を貸すなら、前もって借入先に相談します。転勤などで一時的に貸す場合も、借入先への手続きや条件を確かめる必要があります(出典:住宅金融支援機構 よくある質問。参照資料の一覧へ移ります)。亡くなった親のローンが団信で返されたかどうかが分からないうちは、入居募集を始めません。
家族で決める5つのことと、状態別の次の一手
6つの問いと比較表ができたら、家族で次の5つを決めます。紙1枚に書いて、全員が同じものを持つようにしましょう。
- 3案それぞれの状態(候補として残す・現時点では外す・未確認)
- 足りない資料と、その取り寄せ先
- 確かめる担当者
- 資料を取る期限と、再判断日
- 保留の間の予算と、仮に管理する人
候補として残す案
見積もりと査定を集めて、数字を比べる段階に進みます。売るなら複数の不動産会社の査定と引き渡しの条件、貸すなら家賃の見込みと修繕の見積もりです。候補が2つ以上残っても、止まる条件が片づくまでは契約しません。
現時点では外す案
外した理由と、どうなれば見直すかを書いておきます。たとえば「家族が住む予定があるので、売る案は外す。住む計画がなくなったら見直す」のように書きます。理由が書いてあれば、次に家族で話すときに同じ議論をくり返さずに済みます。
未確認の案
未確認は、「残す」と読み替えません。確かめる人と資料をそろえる日、再判断日を決め、その日に最初の問いへ答え直します。保留の間の固定資産税や見回りの費用を誰が出すかと、仮に管理する人も決めておきます。
たとえば、次のような場合です(想定の例)。1981年より前に建った一戸建てに、亡くなった母が1人で住んでいました。兄弟2人が相続して名義も移し、ローンは残っておらず、2人とも住む予定はありません。雨漏りがあり、修繕費はまだ分からず、見回りをする人も決まっていない状態です。
- 売る:候補として残す。空き家特例の候補なので、期限までに査定と引き渡しの条件を集める
- 貸す:未確認。修繕費、管理担当、空き家特例の適用見込みを確かめてから、貸す案を残すか決める
- 残す:未確認。使う人も管理する人もいないため、兄が仮に見回りを受け持ち、再判断日を決める
この記事の内容は一般的な情報です。名義と共有は法務局か司法書士、税は税務署か税理士、査定と募集は不動産会社に確認してください。ローンは借入先の金融機関、火災保険は契約している保険会社が窓口になります。
