相続した家に住宅ローンが残っていても、最初から「家を相続した人が払い続ける」「団信で自動的にゼロになる」「ローンがあるから売れない」のどれかに決めることはできません。
最初に確認する順番は、次のとおりです。
- 自己判断による返済変更や家の処分を止める
- ローンを一契約ずつ分ける
- 借入先へ死亡を連絡し、団信と返済の手順を確認する
- 団信の支払結果後の残高を確認する
- 登記上の抵当権とローン契約を照合する
- 相続方針を決め、保有するなら返済継続・債務引受、売却するなら完済・抵当権抹消の条件を確認する
住宅金融支援機構も、借入本人が亡くなったときは速やかに取扱金融機関へ連絡し、加入している保険を確認するよう案内しています。住宅金融支援機構「ご本人がなくなられたとき」(新しいタブで開きます)
同機構の団信手続では、必要書類を提出した後に生命保険会社が支払可否を審査し、死亡保険金が支払われた場合に残債務が完済となります。「加入していたらしい」と「請求・審査を経て完済が確認された」は別の状態です。住宅金融支援機構「諸変更・脱退時の手続」(新しいタブで開きます)
本記事では同機構の案内を具体例にしますが、民間金融機関を含むすべての商品で、書類、保障範囲、支払条件、審査中の返済が同じとは限りません。最終的には借入先と契約資料で確認してください。
結論:「団信・残高・抵当権」を別々に確認する
団信の保険金で対象契約の全額完済を確認できれば、その契約を相続人が返済し続ける前提ではありません。未加入・不支払・一部保障で残債がある場合は、債務を含めて相続方針を確認します。売却する場合は、決済日現在の完済必要額と抵当権抹消条件をそろえて判定し、団信の審査中はどの結論も確定しません。
住宅ローン付きの家では、次の3つを混同しないことが重要です。
> 表は、スマートフォンでは左右に動かして確認できます。
| 確認対象 | 分かること | これだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 団信 | 加入者、対象契約、保障範囲、請求・審査状態 | 保険金が支払われるか、支払後に残る債務 |
| ローン残高 | ある基準日現在の債務額、返済状態 | 登記上の抵当権が消えているか、売却日に必要な完済額 |
| 登記上の抵当権 | 抵当権者、債務者、債権額、順位、共同担保 | 現在残高、団信の加入、既に完済しているか |
登記にある「債権額」は、抵当権設定時の情報であり、今日のローン残高そのものではありません。反対に、ローンを完済していても、抵当権抹消の登記が未了なら登記記録に残っていることがあります。
ローン残高も一つの数字ではありません。少なくとも、死亡日現在の残高、確認日現在の残高、売却の決済予定日現在の完済必要額を分けます。完済必要額には、日付に応じた利息や手数料等が関係する場合があるため、売却前に金融機関へ指定日を伝えて算出してもらいます。住宅ローン控除用の年末残高証明書も、売却日の完済必要額の代用にはしません。
したがって、記事を読んだ時点の結論は、次の4つのどこにいるかを決めることです。
- 団信・債務・抵当権の確認待ち
- 相続方針の判断待ち
- 保有するなら返済継続・債務引受、売却するなら完済・抵当権抹消の条件を確認中
- 条件確認済みで、相続登記後の保有または売却準備へ進める
判断まで止めるのは「返済」ではなく、自己判断による変更と処分
次回返済日が近くても、本記事から「返済を止める」「必ず払い続ける」と一律には決めません。まず借入先へ死亡を連絡し、団信請求中を含む返済の取扱いを確認します。相続放棄等への影響が不安なら、支払う前に弁護士へ相談します。
確認が終わるまで、次の行為を家族だけで決めないでください。
- 故人名義の返済口座について、故人のキャッシュカードや認証情報を使った預金移動・解約
- 自動引落しの停止・変更や代替払込を、口座名義と契約上の返済義務を確認せずに行うこと
- 相続財産や自分の資金からの任意返済・一括返済
- 返済方法の変更、借換え、債務引受への署名
- 売買契約、長期賃貸、解体、新たな担保設定
- 「家を取る人がローンも全部取る」という家族内だけの確定
- 団信審査結果が出る前の売却可否・手取り額の確定
生存する連帯債務者やペアローン契約者が、自分の契約の約定返済まで一律に止めるという意味ではありません。契約ごとに借入先の指示を確認します。
既に行ったことがある場合は隠さず、日付、金額、原資、理由、相手、資料を記録します。相続全体の初動や3か月の考え方は、先に不動産の相続手続きは何から?で確認してください。
また、故人のキャッシュカードやネットバンキングを使って返済口座へ資金を動かすこともしません。金融機関が死亡を把握した後の口座取引制限と、ローン返済・団信審査は別の手続です。次回返済が近い場合は、ローン担当部署へ返済方法、代替の払込方法、引落しできなかった場合の扱いを同時に確認します。
最初の10分で「住宅ローン初動カード」を作る
全資料がそろうまで待つ必要はありません。今日の連絡先と最も近い期限を決めるため、まず次だけを書きます。
借入先や契約番号が分からない場合は、返済予定表、金銭消費貸借契約書、年末残高証明書、団信資料、通帳・明細の引落名、土地・建物の登記事項証明書にある抵当権者を確認します。登記上の債権額は現在残高ではありませんが、連絡先を探す手掛かりになります。見つからない欄は「不明」とし、次に調べる資料と担当者を決めます。
この記事で使う正本は、①10分で作る初動カード、②契約ごとのローンカード、③物件ごとの担保不動産カードの3種類です。後半の完成シートは、これらを再入力する別様式ではなく、カード番号と現在地を束ねる表紙として使います。
【住宅ローン初動カード】
亡くなった人:
死亡日:
被相続人の死亡を知った日:
自分が法律上相続人になったことを知った日:
3か月の起算日:確定/要確認
確認中の起算日候補:
法定期限:確定/未確定
期限未確定時の法律相談目標日:
借入先金融機関:
契約番号が分かる資料:
次回返済予定日:
引落口座:
延滞・督促・競売通知:あり/なしを資料で確認/不明
今日連絡する先:
担当者・連絡予定時刻:
現在止めること:
再開条件:このカードの完了条件は、残高を確定することではありません。次回返済日または確認予定日、最も近い法定期限または法律相談目標日、今日連絡する先の3つが決まれば初動は進んでいます。
ローンは人ではなく「一契約ずつ」整理する
「父の住宅ローン」「夫婦のローン」という呼び方だけでは、誰が何を負担し、どの団信がどこまで対象になるか判断できません。契約番号ごとにローンカードを作ります。
ペアローンは通常、本人側と相手側を別契約として確認するため、必ず2枚に分けます。同じ不動産を担保にした住宅ローン以外の借入れが見つかった場合も、別カードにします。
【ローンカード No. 】
金融機関・支店:
商品名・契約番号:
契約日:
資料の所在:
主債務者:
連帯債務者:
保証人・連帯保証人:
担保提供者:
現在の不動産所有者:
死亡日現在の残高:
確認日現在の残高・基準日:
売却決済予定日現在の完済必要額:未取得/取得済み
完済必要額の基準日:
次回返済日・金額:
返済口座:
延滞・督促・期限の利益喪失・競売通知:
あり/なしを資料で確認/不明
団信:あり/なしを金融機関確認/審査中/不明
団信加入者:
対象契約・保障割合:
請求日・提出済み書類・不足書類:
審査中の返済指示:
回答部署・担当者:
回答予定日・次回確認日:
審査結果:
審査後残高:
抵当権者:
登記上の債権額:
共同担保:
契約との一致:一致/不一致/未確認
確認資料・確認日・回答者:
次の確認・担当者・期限:「なし」は家族の記憶だけで選ばず、金融機関回答、契約書、登記事項証明書等の根拠を添えます。残高には必ず基準日を付け、売却の計算では改めて決済予定日現在の完済必要額を取得します。
借入人・被保険者・所有者・保証人を分ける
家に関係する人の役割は同じとは限りません。
| 役割 | 確認する資料・相手 | 注意点 |
|---|---|---|
| 主債務者 | 金銭消費貸借契約書、金融機関 | 返済義務の中心となる契約当事者 |
| 連帯債務者 | 契約書、金融機関 | 団信の加入者・保障割合を別に確認 |
| 団信の被保険者 | 団信資料、金融機関 | 所有者や全債務者と同じとは限らない |
| 保証人・連帯保証人 | 保証契約、金融機関 | 誰のどの債務を保証するのかを確認 |
| 担保提供者 | 抵当権設定契約、登記事項証明書 | 債務者でなくても所有物件を担保提供している場合がある |
| 不動産所有者 | 登記事項証明書 | 遺産分割で取得予定の人と現在名義は分ける |
被相続人の通常の可分な金銭債務は、原則として相続開始により法定相続分に応じて各相続人へ承継され、遺産分割の対象にはならないと裁判所が案内しています。遺産分割で「家は長男が取得し、ローンも長男だけが負担する」と合意しても、金融機関が承諾しない限り、その合意を当然に金融機関へ主張できるわけではありません。京都家庭裁判所「遺産分割調停の手続について」(新しいタブで開きます)
他の相続人を債務から外して一人へ一本化するには、金融機関の承諾を伴う債務引受等が必要になるのが基本です。ただし、連帯債務、保証、契約条項、相続放棄等で結論は変わります。債務引受、契約変更、審査、必要書類を借入先へ確認し、契約資料を弁護士にも示してください。家族の合意と金融機関の手続は別欄に残します。
金融機関へ死亡を連絡するときの質問票
連絡前に、死亡の事実、契約を特定できる資料、連絡者と被相続人の関係を整理します。必要な本人・相続関係書類は金融機関と契約ごとに確認してください。
最初の電話は、次のように伝えると状況を取り違えにくくなります。
> 「住宅ローン契約者の○○が○月○日に亡くなりました。私は○○(続柄)です。相続方針は未判断です。契約番号は○○です。死亡連絡の担当部署、団信手続、次回返済の扱い、必要な本人・相続関係書類を案内してください」
今日の初回連絡で確認する7項目
1. 死亡連絡とローン相続手続の担当部署・受付番号
2. 契約と債務者を確認するために必要な書類
3. 次回返済日・金額と当面の返済指示
4. 延滞、督促、期限の利益喪失、法的手続の有無
5. 団信の加入者・対象契約・保障割合
6. 団信の請求書類・提出先・商品固有の期限
7. 回答予定日・次回確認日団信結果後または売却検討時に追加確認する項目
1. 死亡日現在・確認日現在・団信審査後の残高
2. 団信対象外の残債について、返済継続・債務引受に必要な手続と審査
3. 同じ不動産を担保にした別契約の有無
4. 売却決済予定日現在の完済必要額、算入項目、申込期限
5. 完済証明・抵当権抹消書類の交付先、交付日、決済日の受渡方法各回答に、回答日、部署、担当者、回答を書面でもらえるか、次回回答日を付けます。口頭回答だけで家族内の金額を確定しないことが大切です。
団信は「あり・なし」ではなく4状態で管理する
1. 加入を確認、請求前
加入が分かったら、被保険者、対象契約、全額・一部などの保障範囲、請求書類、提出先、期限、審査中の返済を確認します。「加入あり」の欄を埋めただけでは完済ではありません。
住宅金融支援機構の案内では、死亡による債務弁済手続で団信弁済届や死亡証明書等を取扱金融機関へ提出します。ただし、民間金融機関の商品に同じ書類名をそのまま当てはめず、借入先から案内を受けてください。住宅金融支援機構「諸変更・脱退時の手続」(新しいタブで開きます)
2. 請求・審査中
審査中は「完済予定」として売却計算を確定しません。
請求日、提出済み・不足書類、審査中の返済指示、回答部署・担当者、回答予定日、次回確認日は、該当するローンカードへ追記します。独立したメモを増やさず、このカードを契約情報の正本にしてください。
住宅金融支援機構の手続でも、提出書類をもとに生命保険会社が支払可否を審査し、必要に応じて家族や主治医等へ確認する流れです。審査結果を先回りして決めません。
3. 保険金支払・完済を確認
支払決定後は、次の4点を金融機関から確認します。
- 支払対象となった契約と金額
- 支払後残高が0円か、一部残るか
- 返済済み金額の精算・返戻があるか
- 完済証明と抵当権抹消関係書類の交付先・時期
住宅金融支援機構の制度例では、死亡保険金が支払われた場合に機構等残債務が全額完済となり、保険事故日以後に支払われた償還金等を後日返戻する案内があります。これは同機構制度の例なので、自分の契約については借入先の回答で確定します。住宅金融支援機構「諸変更・脱退時の手続」(新しいタブで開きます)
4. 未加入・不支払・一部残高あり
債務が残る場合は、現在残高、返済状態、誰が契約当事者か、相続方針、債務引受や売却完済の条件を確認します。「家を取得する相続人が、自動的に一人でローンを引き継ぐ」とは決めません。
債務が残るときは、売却査定より先に相続判断を確認する
裁判所は、相続開始後の選択肢を、権利と借金等の義務を受け継ぐ単純承認、権利と義務を一切受け継がない相続放棄、相続で得た財産の限度で債務を負担する限定承認の3つに整理しています。裁判所「相続の放棄の申述」(新しいタブで開きます)
相続放棄と限定承認は、いずれも原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。限定承認は共同相続人全員で行います。期間内に相続財産を調査しても判断できないときは、熟慮期間の満了前に期間伸長を申し立てる選択肢があります。申立てだけで伸長が決まるわけではないため、期限前に確認してください。裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」(新しいタブで開きます)/裁判所「期間の伸長」(新しいタブで開きます)
個別の可否、既にした返済・処分の影響、保証や連帯債務の扱いは、本記事だけで判断せず弁護士へ相談してください。家庭裁判所には申述先、必要書類、受付方法等を確認します。
次に当てはまる場合は、売却査定、債務引受、一括返済より先に相談へ進みます。
- 3か月の起算日や期限が不明、近い、過ぎた
- 団信の有無・支払結果が不明
- 家の見込価格より債務・処分費が大きい可能性がある
- 住宅ローン以外の借金、保証、税滞納がある
- 既に返済、預金移動、家財処分、契約締結をした
- 先順位者の放棄により自分が相続人になった可能性がある
登記事項証明書で抵当権を一物件ずつ照合する
ローンカードを作ったら、土地と建物それぞれの登記事項証明書を確認します。マンションは専有部分と敷地権、戸建ては敷地が複数筆になっていないかにも注意します。
【担保不動産カード】
土地/建物/区分建物:
所在地・地番・家屋番号:
所有者・持分:
抵当権者:
登記上の債務者:
登記上の債権額:
順位番号:
共同担保目録:
ローン契約・金融機関回答との一致:
抹消関係書類:未確認/交付予定/受領
抹消申請:未着手/準備中/申請済み/完了を登記確認同じ住所の「家」でも、土地、建物、私道持分、別筆の駐車場等は登記が別です。抵当権の対象がどこまでか、共同担保目録を含めて確認します。
登記上の債権額と現在残高が違っても、直ちに誤りとは限りません。金融機関の残高回答と登記記録は目的が違うため、数字を上書きせず別欄に残します。
団信で完済しても、抵当権は別に抹消を確認する
完済と、登記上の抵当権が消えることは同じ作業ではありません。法務局は、住宅ローン等を完済して金融機関等から抵当権抹消に必要な書類を受け取ったら、紛失・汚損を避け、できるだけ速やかに登記申請するよう案内しています。法務局「抵当権の登記の抹消手続のご案内」(新しいタブで開きます)
一般的な抵当権抹消では、金融機関等から交付される登記原因証明情報、委任状、登記識別情報または登記済証等を確認します。
登記名義人が亡くなっている場合は、抵当権の抹消原因となる弁済・解除の日と死亡日の前後で申請順が変わります。抹消原因が死亡後なら、原則として先に相続登記をした上で抵当権抹消を申請します。抹消原因が死亡前なら、相続登記を経ず、相続を証する情報を添付して相続人から抹消申請できる場合があります。完済日・団信弁済日・死亡日・現在の登記名義を示して、法務局または司法書士へ確認してください。法務局「住宅ローン等を完済した」(新しいタブで開きます)
完了は「書類を受け取った」「司法書士へ渡した」ではなく、申請後の登記事項証明書等で対象の抵当権が抹消されたことまで確認して記録します。相続登記に必要な資料は相続登記の必要書類へ進んでください。
住宅ローンが残った家を売却できるかは4項目で判定する
ローンが残る家でも、売却代金等で完済し、抵当権を抹消できる道筋が整えば売却を検討できます。ただし、査定額が残高を上回っただけで売却可能とは決めません。
売却前に、少なくとも次をそろえます。
- 売主となる人と相続登記の道筋
- 決済予定日現在の完済必要額
- 売却費用・登記費用等を含む資金計算
- 金融機関が求める完済・抵当権抹消の条件と書類の交付時期
暫定計算は、次の形で行います。
売却見込額
- 売却費用の暫定額
- 決済予定日現在の完済必要額
- 抹消・相続登記・その他必要費用
= 暫定余剰/不足額住宅金融支援機構も、物件売却による完済で抵当権抹消書類を急ぐ場合には取扱金融機関窓口での手続を案内しており、売却には事前調整が必要なことが分かります。住宅金融支援機構「繰上返済」(新しいタブで開きます)
| 計算・確認状態 | 次の行動 |
|---|---|
| 団信の結果待ち | 完済額を仮定せず、審査結果と返済指示を待つ |
| 余剰見込み | 金融機関へ指定日完済額・抹消条件を確認する |
| 不足見込み | 売買契約を止め、自己資金で補えるか、別の対応が必要かを金融機関・弁護士へ相談する |
| 延滞・督促・競売通知あり | 通常売却の一般論で進めず、通知書を持って借入先と弁護士へ至急相談する |
余剰見込みでも、査定額は成約額ではなく、決済日が変われば完済額や費用も変わります。共有名義なら共有者の合意・署名・入金を確認するで売主ごとの実行方法を分けます。その後、不動産売却の費用と手取りで資金表を作り、売却工程は相続した家を売る流れへつなげます。
連帯債務・ペアローン・保証は一つにまとめない
| 確認結果 | 最初に分けること |
|---|---|
| 単独債務 | 被相続人が主債務者か、団信の対象契約か |
| 連帯債務 | 各債務者、団信加入者、保障割合、死亡後残高 |
| ペアローン | 2契約を別カード化し、死亡者側の団信結果と生存者側ローンを分ける |
| 保証・連帯保証 | 死亡者が主債務者か保証人か、誰のどの債務を保証するか |
| 担保提供のみ | 所有者、債務者、抵当権の対象を分ける |
| 形態不明 | 「夫婦で借りた」等の記憶で決めず契約書と金融機関回答を取得する |
たとえば、ペアローンの一方に団信保険金が支払われても、もう一方の契約まで当然に完済するとは決められません。契約ごとに被保険者、残高、返済、担保を確認します。
連帯債務者や保証人がいる場合、相続人同士の内部負担と、金融機関に対する契約上の扱いを混同しないでください。家族間だけで負担者を確定したり、金融機関の書類へ急いで署名したりせず、契約資料を弁護士にも示して確認します。
団信で完済したローンを相続税の債務から自動控除しない
住宅ローンの確認は、売却だけでなく相続税にも関係します。国税庁は、団信の保険金で返済され、相続人が支払う必要のない住宅ローンを、相続税の計算で債務控除した事例を誤りとして示しています。国税庁「相続税申告で誤りやすい事例」(新しいタブで開きます)
したがって、死亡日現在の残高が書かれた資料だけを見て、同額をそのまま控除しません。相続税の債務控除は「相続人が実際に支払った額」だけでは決まらず、被相続人の死亡時に存在し、確実と認められる債務かどうかが基準です。団信による補てんが確実で、相続人が支払う必要のない債務かを、契約資料、団信の審査結果、基準日付き残高資料に基づいて税務署・税理士へ確認します。
これは、売却時の譲渡所得で使う取得費とも別問題です。ローン残高や返済額が、そのまま家の取得費になるわけではありません。売却税の入口は相続した家を売ったときの税金で分けて確認してください。
住宅ローン・抵当権の困りごと別に確認先を選ぶ
| 未確定事項 | 最初の確認先 |
|---|---|
| 契約者、残高、返済、団信、完済・抹消条件 | 借入先金融機関 |
| 団信の審査状態・追加資料 | 金融機関を窓口に保険会社等 |
| 相続放棄、既実施行為、保証、連帯債務、争い | 弁護士 |
| 相続放棄等の申述先・必要書類・受付方法 | 家庭裁判所 |
| 所有権・抵当権の登記、抹消申請 | 司法書士・法務局 |
| 売却見込額・売却費用 | 停止条件と権利状態を伝えた上で不動産会社 |
| 相続・売却に関する税 | 税理士・税務署 |
相談時は「住宅ローンが残っています」だけでなく、作成したカードを添え、次の表紙だけを追加します。内容を一から書き直す必要はありません。
【相談用の表紙】
添付する初動カード:あり/なし
添付するローンカード No.:
添付する担保不動産カード No.:
既に行った返済・処分・署名:
今回確認したい判断:
回答が必要な日:自分だけで進めず止まる条件
次のいずれかに該当する場合は、一般記事だけで返済、債務引受、売却、解体、賃貸、相続放棄を確定しません。
- 団信の加入者・対象契約・支払結果が不明
- 3か月の起算日・期限が不明、近い、過ぎた
- 既に相続財産から返済した、預金を移動した、家財や家を処分した
- 住宅ローン以外の借金、保証、税滞納がある
- 連帯債務、ペアローン、保証、担保提供の関係が不明
- 登記名義、債務者、抵当権者、契約資料が一致しない
- 売却見込額から完済・費用を引くと不足する可能性がある
- 延滞、督促、期限の利益喪失、競売開始等の通知がある
- 相続人に未成年者、行方不明者、海外居住者等がいる
- 相続人間に取得者・返済・売却代金の争いがある
全部調べ終わってから相談しようとせず、分かった項目、不明欄、期限、既にした行為をそのまま持参してください。
よくある質問
親が亡くなったら、住宅ローンは自動的になくなりますか
自動的になくなるとは限りません。まず借入先へ死亡を連絡し、団信の加入者、対象契約、請求書類、審査中の返済を確認します。団信に加入していても、支払可否の審査と結果確認が必要です。
団信に入っていれば、抵当権も自動で消えますか
団信で残債が完済となっても、登記上の抵当権抹消は別に確認します。金融機関から抹消関係書類を受け取り、必要な登記を申請し、完了後の登記記録まで確認してください。
ローン残高は登記事項証明書で分かりますか
登記上の債権額は現在残高そのものではありません。現在残高と指定日現在の完済必要額は金融機関へ確認し、登記事項証明書では抵当権者、債務者、債権額、順位、共同担保等を確認します。
家を相続する人が住宅ローンも全部引き継ぎますか
遺産分割で家の取得者を決めることと、金融機関に対する債務関係は分けて確認します。契約者、連帯債務者、保証人、債務引受や契約変更の手続・審査を金融機関と弁護士へ確認してください。
ローンが残る家でも売れますか
決済時にローンを完済し抵当権を抹消できる道筋があれば、売却を検討できます。ただし、売主の権利、指定日完済額、売却費用、資金不足の有無、金融機関の抹消条件を先に確認します。査定額が残高を超えただけでは確定しません。
売却見込額よりローンが多いときはどうしますか
売買契約を急がず、決済日基準の完済必要額と全費用を確認します。不足が見込まれる場合は、自己資金で補う前提も含めて借入先と弁護士へ相談してください。延滞・競売通知がある場合は通常の売却記事だけで進めません。
ペアローンの一方が亡くなれば、両方のローンがなくなりますか
両方がなくなると一律には言えません。2契約を別カードにし、それぞれの債務者、団信加入者、保障範囲、支払結果、残高、返済を金融機関へ確認します。
相続放棄を考えていても金融機関へ連絡してよいですか
死亡連絡と契約・団信・返済手順の確認を行い、相続放棄を検討中であることも伝えます。ただし、返済、債務引受への署名、財産処分等を自己判断で進めず、3か月の起算日と既にした行為を示して弁護士へ相談してください。
ローンを完済したのに古い抵当権が残っています
完済時に交付された書類の有無を確認し、抵当権者または承継先の金融機関、法務局、司法書士へ相談します。所有者死亡や書類紛失、古い抵当権では追加手続が必要な場合があるため、一般的な抹消申請だけで判断しません。
家族と相談先へ渡す完成シート
ここでは前のカードを転記しません。初動カード、ローンカード、担保不動産カードを束ねる表紙だけを作ります。
【住宅ローン確認・完成表紙】
初動カード:作成済み/不明欄あり
ローンカード数:
ローンカード No.:
担保不動産カード数:
担保不動産カード No.:
相続方針:未判断/法律相談中/判断済み
現在地:
団信・債務・抵当権の確認待ち
/相続方針の判断待ち
/条件確認中:保有(返済継続・債務引受)/売却(完済・抹消)
/相続登記後の保有・売却準備へ進める
現在止めている行為:
再開条件:
未確認項目:
未確認項目の確認先・予定日:
保有方針の場合:
次回返済方法・返済する人:
債務引受・契約変更:不要を確認/審査中/未確認
売却方針の場合:
売却見込額の基準日:
決済予定日・完済必要額:取得済み/売却未定/未取得
暫定余剰・不足額:
次の相談先・予約日時:
今日の一歩:
作業担当・完了予定日:
次回更新日・更新者:完成表紙は1枚だけ作り、ローンカードはローン契約ごと、担保不動産カードは土地・建物等の担保不動産ごとに複製します。誰かが更新したら日付と更新者を残してください。
次にすること
今日の一歩は、現在地に応じて一つだけ選びます。
- 借入先へ未連絡:契約を特定できる資料を手元に置き、死亡、団信、次回返済、必要書類を連絡する
- 団信を請求中:不足書類、審査中の返済、回答予定日を記録する
- 債務や相続方針が未確定:3か月の起算日、ローンカード、既にした行為を持って弁護士へ相談する
- 完済を確認:抹消関係書類と相続登記の前提を法務局・司法書士へ確認する
- 家を保有する方針:返済を続ける人、次回返済方法、返済口座、債務引受・契約変更の要否と審査を借入先へ確認する。相続方針が未確定なら、署名前に弁護士へ相談する
- 売却条件を確認できた:売却に必要な書類を準備し、相続した家を売る流れへ進む
- 売却後の税が気になる:ローン残高と譲渡所得の計算を混同せず、相続した家の売却税で別に確認する