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親が亡くなったあと通帳を開くと、電気・ガス・水道やNHK、電話の引き落としが並んでいることがあります。こうした公共料金の名義変更や解約は、親の死亡を契約先に伝え、契約ごとに進める手続きです。何から手をつけるかは、親の口座の扱いと、実家に住み続ける人がいるかで整理できます。
親の口座は、いつ引き落としができなくなる?
銀行が口座の持ち主の死亡を知ると、その口座の入金や引き出しを止める(口座凍結)のが一般的です。止まるのは亡くなった瞬間ではなく、家族などからの連絡で銀行が死亡を知ったときです。三井住友銀行は、役所に出した死亡届の情報が銀行へ自動で伝わる仕組みはないと説明しています(出典:三井住友銀行 口座の凍結。参照資料の一覧へ移ります)。
口座が止まると、公共料金などの口座振替(毎月の自動引き落とし)はできなくなります。引き落とせなかった料金は、別に払わなければなりません(出典:三菱UFJ銀行 相続FAQ。参照資料の一覧へ移ります)。引き落とし口座を変えたいときは、新しい口座の名義人から契約先へ頼むよう案内している銀行もあります(出典:三井住友銀行 FAQ No.2219。参照資料の一覧へ移ります)。銀行に相続の連絡をしても、各契約の払い方までは切り替わらないということです。
銀行に知らせる前の引き落としが続くとは限りません。引き落とし日が近い契約は、銀行と契約先の両方に扱いを確認してください。
なお、親が亡くなる前に認知症で口座が止まるかどうかは、別の話です。銀行の判断で変わるため、認知症の親の口座が止まるかどうかの記事で説明しています。
最初に、親名義の契約を一覧にする
連絡を始める前に、親の名前で続いている契約を書き出します。手がかりは、通帳の引き落としの記録、クレジットカードの利用明細、届いている検針票や請求書です。高知市が出している死亡後の手続きの冊子にも、引き落としの確認項目があります。電気・ガスのほか、NHK、固定電話、携帯電話、インターネット、ケーブルテレビ、新聞などが並びます(出典:高知市 おくやみのしおり。参照資料の一覧へ移ります)。
見落としやすいのは、カード払いの契約と、ネットで申し込んだ契約です。ネットの契約は、書面が紙でなくメールなどで届くため、家族が見つけにくいことがあります(出典:国民生活センター デジタル終活報告書。参照資料の一覧へ移ります)。カード明細に見覚えのない請求があれば、その契約先も一覧に加えてください。
実家に届く郵便物も手がかりになります。郵便物の転送や、届いた書類を確かめる順番は、親が亡くなった後の郵便物の記事にまとめました。
一覧には、次の項目を書いておくと連絡のときに迷いません。編集部が連絡の準備用にまとめた項目なので、契約先が求める情報はそれぞれの案内で確かめてください。
| 項目 | 見る場所 |
|---|---|
| 契約先の名前 | 検針票、請求書、通帳の引き落とし名 |
| 契約者の名前 | 検針票、請求書 |
| お客さま番号など | 検針票、請求書、契約書類 |
| 払い方 | 通帳(口座振替)、カード明細(カード払い) |
| 使っている場所 | 実家か、ほかの場所か |
| 決めたこと | 名義変更、支払い方法の変更、解約、保留 |
親がマンションに住んでいたなら、管理費や修繕積立金も口座から引き落とされていることがあります。管理費の扱いは、持ち主が亡くなった後のマンション管理費の記事で確かめられます。家の相続で要る手続きの全体は、相続した家の手続きチェックリストで順に見渡せます。
名義変更・支払い方法の変更・解約は別の手続き
契約先への連絡は、主に次の3つの手続きに分かれます。言葉は似ていますが、変わるものが違うので注意しましょう。
| 手続き | 変わるもの | 考える場面 |
|---|---|---|
| 名義変更 | 契約者を親から家族へ | 実家で使い続ける家族がいる |
| 支払い方法の変更 | 料金を払う口座やカード | 親の口座やカードで払っていた |
| 解約 | 契約そのものを終える | この先だれも使わない |
この3つは、1回の連絡でまとめて済むとは限りません。東京ガスは、料金を払う人だけを変えるときは、名義変更とは別の「支払い情報の変更」へ案内しています(出典:東京ガス 名義変更。参照資料の一覧へ移ります)。NHKの手続きのページも、契約者の名前の変更と、支払い方法の変更を別の項目にしています(出典:NHK 契約確認・変更。参照資料の一覧へ移ります)。
名義変更のあとで、払い方を改めて申し込む例もあります。東京都水道局では、名義変更をすると口座振替やカード払いの登録が外れ、請求書での支払いに変わります(出典:東京都水道局 使用者名義変更届。参照資料の一覧へ移ります)。NTT東日本も、支払い方法を変えるなら、名義変更が終わってから別に手続きするよう案内しています(出典:NTT東日本 名義変更の種類。参照資料の一覧へ移ります)。
どの順で何を出すかは、会社や自治体で違います。連絡の前に、契約先の公式サイトで「死亡」「名義変更」「支払い方法」の案内を見ておくと、電話で聞くことを絞れます。
なお、ここでいう名義変更は、公共料金の契約の名義のことです。家の登記の名義を変える相続登記とは別の手続きで、その相談先は法務局や司法書士です。家の名義を親のままにしておくとどうなるかは、親名義のまま家を放っておく記事で確かめられます。
公共料金の名義変更は、住み続けるかどうかで決める
電気・ガス・水道をどうするかは、まず実家でこの先も使う人がいるかで分かれます。東京ガスも、契約者が亡くなったときの手続きを、使い続けるかどうかで分けて案内しています(出典:東京ガス 死亡時FAQ。参照資料の一覧へ移ります)。使わないなら使用停止(解約)、使い続けるなら名義変更、という分け方です。
住み続ける家族がいるとき
同居していた家族などが住み続けるなら、名義変更で契約を引き継ぐ方法があります。電気の例では、東京電力エナジーパートナーが、契約者の死亡による名義変更を電話で受け付けています(出典:東京電力EP 名義変更。参照資料の一覧へ移ります)。名前の字の誤りを直す手続きとは、受付の方法が違います。
ただし、名義変更には、親の未払い料金まで引き継ぐ形のものがあります。引き継ぎたくなければ、親の契約をいったん終えて、新しい名義で契約し直す方法を案内する会社もあります。どちらにするかは、次の節の注意を読んでから決めても遅くありません。
誰も住まなくなるとき
実家に誰も住まなくなるなら、使わない契約は解約を考えます。ただし、片付けや売却の準備のために、電気や水道をしばらく使う場合もあるでしょう。残すか止めるかの決め方は、相続した空き家の電気・ガス・水道の記事で確かめてください。
しばらく残すときも、親の口座が止まれば、そこからは払えません。誰の名義にして、どの口座やカードから払うかを、契約先に連絡する前に決めておきます。
別居している子が手続きするとき
離れて住む子が名義を引き継ぐときは、手続きの形が変わることがあります。東京ガスでは、別居の家族への変更は、今の契約を終えて新しい契約を始める手続きです(出典:東京ガス 名義変更。参照資料の一覧へ移ります)。
水道にも、手続きできる人を決めている所があります。東京都水道局のネットの名義変更届は、今の契約者か、新しい契約者本人が出す場合に使えるものです(出典:東京都水道局 使用者名義変更届。参照資料の一覧へ移ります)。それ以外の人が手続きするときは、お客さまセンターへ連絡します。
名義変更のあと、請求書の送り先が水道の所在地に変わる例もあります。離れて住む人が請求書を受け取りたいなら、送り先の変更もあわせて伝えてください。求められる書類も契約先によって違うため、連絡のときに聞いておくと二度手間を防げます。
名義変更すると、親の未払い料金も引き継ぐ?
引き継ぐ場合があります。名義変更には、親の契約をそのまま家族が受け継ぐ形のものがあるからです。契約先の案内には、たとえば次のような例があります。
- 東京電力エナジーパートナー:継承による名義変更では、請求中の料金の支払いも新しい名義の人へ移る(出典:東京電力EP 名義変更。参照資料の一覧へ移ります)
- 東京ガス:同居の家族への名義変更では、そのお客さま番号のガス・電気・警報器リースなどの権利と義務をすべて引き継ぐ(出典:東京ガス 名義変更。参照資料の一覧へ移ります)
- 東京都水道局:権利と義務を受け継ぐなら名義変更、受け継がないなら使用中止で精算してから使い始める(出典:東京都水道局 使用者名義変更届。参照資料の一覧へ移ります)
- NTT東日本:相続による「承継」では、計算中のものを含む未払いの料金なども引き継ぐ(出典:NTT東日本 名義変更の種類。参照資料の一覧へ移ります)
未払いを引き継ぎたくないときは、親の契約を終え、新しい名義で契約する方法を案内する会社があります。ただし、これは契約の手続きの違いにすぎません。解約や新しい契約をしても、相続人として親の未払い分を負うかどうかの問題が消えるとは限らないからです。
NHK・電話・携帯・ネットの契約はどう連絡する?
電気・ガス・水道のほかにも、親の名前の契約は残っています。一覧のどれから連絡するかは、毎月料金がかかる契約や、使う予定のない契約から始めるのが一つの方法です。これは編集部の案で、各社が決めた手続きの順番は、それぞれの案内に従ってください。
NHK
NHKの受信契約は、家族が住み続けるかどうかで手続きが分かれます。高知市の冊子は、残る家族がいれば名義変更や支払いの変更、いなければ解約と整理しています(出典:高知市 おくやみのしおり。参照資料の一覧へ移ります)。
NHKは、契約した住まいに誰も住まなくなる場合を、解約の対象に挙げています(出典:NHK 受信契約の解約。参照資料の一覧へ移ります)。解約の流れは、NHKふれあいセンターへ連絡し、所定の届出書を出すというものです。インターネットでの解約受付は対象が限られているため、死亡による解約の進め方はふれあいセンターで確かめてください。
固定電話とインターネット
固定電話では、相続による名義変更を「承継」と呼ぶ会社があります。NTT東日本は、親が生きているうちの名義変更を「譲渡」、相続によるものを「承継」と分けています(出典:NTT東日本 名義変更。参照資料の一覧へ移ります)。
インターネットの回線は、どの会社と契約しているかで連絡先が変わります。同じNTTの回線を使うサービスでも、光コラボレーション(回線を借りてほかの会社が売るサービス)などは別の案内です。請求書や明細に書かれた、実際の契約先に連絡してください。
携帯電話とサブスク
携帯電話は、家族が引き継ぐ「承継」と、引き継がない「解約」が別の手続きです。ドコモは、携帯電話だけでなく、ドコモ光などの契約も含めて、この2つを案内しています(出典:ドコモ 承継または解約。参照資料の一覧へ移ります)。
承継には、相続関係が分かる書類、新しい契約者の本人確認書類、毎月の支払いに使うものなどを用意します(出典:ドコモ 承継。参照資料の一覧へ移ります)。相続関係の書類で親の死亡を確かめられないときは、死亡を確かめられる資料も必要です。同じ会社でも、料金プランによって案内のページが分かれていることがあります。
携帯電話を解約しても、ほかの契約が残ることがあります。国民生活センターは、次のような相談を紹介しています(出典:国民生活センター 始めましょう!デジタル終活。参照資料の一覧へ移ります)。夫が亡くなったあと、家族は携帯電話を解約しました。ところが、スマホのセキュリティサービスのサブスク(定額で使い続ける契約)が残っていたという内容です。
家族はIDとパスワードを知らず、すぐには解約できないと言われました。サブスクは、契約した人が亡くなっても、解約しない限り請求が続きます(出典:国民生活センター デジタル終活報告書。参照資料の一覧へ移ります)。一方で、IDなどが分からなくても、解約できる場合があります。契約先が分かれば、家族の連絡で応じてもらえることが多いと、国民生活センターは説明しています。
カード払いの契約と新聞
親のクレジットカードで払っていた契約は、カード会社への連絡だけでは片づきません。JCBは、カードの退会、契約先への支払い方法の変更、残っている利用分の支払いの順に確かめるよう案内しています(出典:JCB 本会員が亡くなった場合。参照資料の一覧へ移ります)。カードを止める前に、そのカードで払っている契約を一覧で確かめておくと、払い方の変更が漏れません。
新聞などの定期購読は、契約先や配達している販売店に、停止と料金精算の方法を確認してください。
死亡後の手続きは、いつまでに必要?
公共料金や通信の名義変更・解約の届出時期は、契約先の案内で確かめてください。先延ばしにしないほうがよいのは、手続きをするまで契約が続き、料金がかかるからです。契約先の案内には、次のような例があります。
- ドコモ:死亡による解約では、亡くなった日までではなく、解約日までに使った料金が請求される(出典:ドコモ 承継または解約。参照資料の一覧へ移ります)
- NHK:契約がいらなくなったら、直ちに届け出る決まり。NHKが解約の理由を確認できた場合、原則として届け出た日の解約になる(出典:NHK 受信規約。参照資料の一覧へ移ります)
- サブスク:契約した人が亡くなっても、解約の手続きをしない限り請求が続く(出典:国民生活センター デジタル終活報告書。参照資料の一覧へ移ります)
NHKの解約も、亡くなった日にさかのぼるとは限りません。受信料の精算のしかたや、出す書類は、NHKに確かめてください。
急ぐ順番に迷ったら、使っていないのに料金がかかる契約から先に連絡します。実家で使い続ける契約は、払い方が決まるまで請求書が届くことがあるので、支払いが漏れないよう気をつけましょう。
未払いがあり、相続放棄を考えているときは
親の未払い料金を払うかどうかは、相続をどうするかの選択と結びついています。相続には、親の権利と義務をすべて受け継ぐ「単純承認」と、一切受け継がない「相続放棄」があります(出典:国税不服審判所 関係法令の要旨。参照資料の一覧へ移ります)。民法第921条は、相続財産の全部や一部を処分すると、保存行為などの例外を除き、単純承認とみなす決まりです(出典:民法。参照資料の一覧へ移ります)。
公共料金の支払いがこの「処分」に当たるかは、国や裁判所の公開資料では確かめられませんでした。支払いに使う資金や、契約上の債務を引き受けるかを含め、相続放棄への影響は弁護士に確認してください。相続放棄を考えているなら、次のことは弁護士に相談してから決めてください。
- 親の預金から、未払いの料金を払うこと
- 自分のお金で、親の未払い分を立て替えること
- 未払いも引き継ぐ形の名義変更をすること
- 親の預金の払戻しを受けること
これは編集部の注意です。どの行為も、行えば必ず相続放棄できなくなるという意味ではありません。
相続放棄は、原則として、自分が相続人になったと知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます(出典:裁判所 相続の放棄の申述。参照資料の一覧へ移ります)。相続するか決めるための材料がそろわないときは、この期間を延ばすよう家庭裁判所に申し立てる方法もあります。亡くなった日から全員一律に数えるわけではない点も、覚えておきましょう。
放棄が認められたあとに親の料金を請求されたときの対応は、弁護士に相談してください。ここに書いたのは一般的な情報です。個別の法的判断は弁護士へ、申述の手続きは家庭裁判所へ確認してください(出典:裁判所 家事事件Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。片付けとの関係も含めた注意は、相続放棄と実家の片付けの記事で確かめられます。
精算のお金に、親の預金は使える?
口座が止まったあとも、親の預金の一部を払い戻してもらえる制度があります。遺産分割(相続人全員で遺産の分け方を決めること)が終わる前でも使えるしくみです。民法第909条の2にもとづく制度で、2019年(令和元年)7月1日に始まりました(出典:全国銀行協会 払戻し制度。参照資料の一覧へ移ります)。各相続人は、家庭裁判所の判断を経ずに、1人で金融機関に払戻しを求められます。
受け取れる額は、親が亡くなった時点の預金額をもとに、口座や明細ごとに計算します。その額の3分の1に、払戻しを求める人の法定相続分(法律で決まった取り分)を掛けた額です(出典:民法。参照資料の一覧へ移ります)。同じ金融機関から受け取れるのは、相続人1人につき150万円までです(出典:e-Gov 省令。参照資料の一覧へ移ります)。支店が違っても合算します(出典:三井住友銀行 FAQ No.3049。参照資料の一覧へ移ります)。
払戻しには戸籍などの書類が要り、出してから受け取るまでに時間がかかります。必要な書類は金融機関によって違うため、口座のある金融機関に確かめてください。また、払い戻されたお金は、あとの遺産分割で、受け取った人がもらったものとして調整されます。相続分とは別に、上乗せで受け取れるお金ではありません。
全国銀行協会の案内は、使い道の例として生活費や葬儀費用を挙げています。公共料金の精算に使えるかは、案内の中で直接は触れられていません。使う前に金融機関に確かめ、相続放棄を考えているなら弁護士にも相談してください。
詳しく:払い戻せる額の計算
詳しい説明を開く
条件:相続人は子2人で、法定相続分はそれぞれ2分の1。親の預金は、同じ銀行の普通預金6,000,000円だけとします。
1人が受け取れる額は、6,000,000円×1/3×1/2=1,000,000円です。
同じ銀行に、普通預金6,000,000円と定期預金5,400,000円がある場合も見てみます。口座ごとに計算すると、1,000,000円と900,000円で、合わせて1,900,000円です。ただし、同じ銀行から受け取れるのは1人150万円までなので、受け取れるのは1,500,000円です。口座ごとに150万円ずつ受け取れるわけではありません。
