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相続した土地を売却する流れ|相続登記・査定・境界・税金を順番に確認

相続した土地は、親の土地をひとまとめにせず、登記上の土地の区切り(筆)、私道・共有持分、土地の種類(地目)、利用状況ごとに確認します。誰がどの土地と権利を取得して何を売るかを決め、相続登記、用途別手続、境界・接道の確認、査定、契約、決済、代金配分、税資料の順につなぎます。

まだしないこと

土地・持分・取得者・用途を確かめる前に、売却条件を決めない

まずすべきこと
  1. 固定資産税の課税明細書か権利証を探し、まず一つの土地の所在地・地番・種類(地目)を書く
  2. 私道、建物、賃貸借、抵当権など関連する権利を確認する
  3. 遺言・相続人と、各土地を取得する人の状況を整理する

このページで決めること相続登記前でもできる資料収集・初期の査定相談と、契約・決済前に終える相続登記や用途別手続を分けられます。

相続人が土地売却の登記、測量、査定、契約、申告の順序を整理する様子
公開日 2026年9月2日最終更新日 2026年9月5日法令・制度確認日 2026年9月5日執筆・編集 住まいのよりみち編集部読了目安 17

相続した土地の売却を考えたとき、本当に必要かどうかも、かけた費用を回収できる見込みがあるかも確かめないまま、高額な造成工事や建物の解体、確定測量を急いで発注する必要はありません。自分のお金を先に出しても、その費用を売却価格にそのまま上乗せできるとは限らず、お金をかけた分だけ損をしてしまう(費用倒れになる)恐れがあるためです。ただし、倒木や害虫の発生、フェンスの破損など、近隣に危険が及ぶ恐れがある場合は別です。現在の様子を写真などで記録したうえで、安全を確保するために必要な最小限の応急処置や草刈りを先に行います。

安全かつスムーズに進める基本は、権利関係と土地の範囲を書類で特定し、現状のままで査定を受けてから必要な作業と支出を判断することです。

この記事では、売却対象となる土地(筆)の特定から相続登記、境界の確認、査定、売買契約、決済、そして売却後の確定申告まで、全体の手順を順番に解説します。

相続土地の売却手順と並行作業の一覧

土地の売却では、法律上の権利を確定させる手続きと、市場で買い手を探す売却活動が同時に進みます。すべてを一つずつ順番に終えるのを待つのではなく、同時に進められる作業をあらかじめ把握しておくと、無駄な待ち時間を防ぐことができます。全体の手順を一覧で確認したい方は、相続不動産の手続きチェックリストもあわせて活用してください。

表:段階、主な作業内容、実施の目安時期、先行・並行できる作業
段階主な作業内容実施の目安時期先行・並行できる作業
権利と資料の確認相続人調査、遺産分割、公図・登記事項の取得相続発生直後から納税通知書から地番と対象筆をリスト化
現況と法的規制の確認接道、占有、越境、各種法令規制の窓口確認資料収集と同時期周辺取引相場の自己調査
現状査定の依頼机上査定・現地査定の依頼、売却見込額の把握資料収集の完了後相続登記の書類収集・申請手続き
売却方針の決定仲介か直接買取かの選択、測量や解体の要否判断査定結果の受領後遺産分割協議書の作成・押印
相続登記の完了相続人への名義変更手続き媒介契約から契約前不動産会社による販売活動・購入者募集
契約と決済引き渡し売買契約の締結、残代金決済、所有権移転登記買い手決定後取得費・譲渡費用の領収書等の整理
税務申告譲渡所得税の計算、特例適用の判定、確定申告売却翌年の申告期間必要経費の控除書類の最終点検

遺言・相続人・登記名義を整理して売却権限を確定する

被相続人の名義のままでは買主への所有権移転登記を実行できないため、誰がその土地を単独または共有で引き継ぐのかを確定させます。実務上はトラブルを防ぐため売買契約の締結までに相続登記を終えておくのが安全ですが、法律上の権利承継自体は相続開始の瞬間に発生しています。

遺言書の有無を調べる

遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って土地を引き継ぐ人が決まります。

  • 自筆証書遺言:本人が手書きで作成した遺言書です。自宅などで保管されていた場合は、家庭裁判所で「検認(けんにん)」の手続きを受ける必要があります。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合は検認が不要で、法務局から「遺言書情報証明書」を取得できます。
  • 公正証書遺言:公証役場で公証人が作成した遺言書です。最寄りの公証役場にある遺言検索システムを利用して、遺言書が残されているかどうかを確認できます。

相続人を確定し遺産分割の合意を形成する

有効な遺言書がない場合は、法律上の相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」を行います。

  • 相続人調査:亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取り寄せて、法律上の相続人(法定相続人)を漏れなく確定します。
  • 遺産分割協議書の作成:相続人全員が合意に達したら協議書を作成し、全員が実印を押します。
  • 換価分割の検討:土地を売却して現金で分け合いたい場合、代表者一人へ便宜上名義を一本化し、売却後にお金を分配する方法もあります。ただし、この方法では代表者に売却の権限が集まります。売却後の分配割合、仲介手数料・測量費などの負担、各相続人の譲渡所得の申告について、事前に明確な取り決めが必要です。遺産分割協議書の作成は司法書士へ、譲渡所得の申告方法は税理士へ確認してください。共有名義のまま売却を進めるリスクは、共有名義で相続した不動産の売却で解説しています。

相続登記の義務化と法定期限の管理

2024年4月1日から、不動産の相続登記が義務化されました。不動産を取得した相続人は、相続によって所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。正当な理由がないのに申請を怠った場合、10万円以下の過料の対象となることがあります。2024年4月1日より前に発生した過去の相続も義務化の対象です。この場合は、2027年3月31日、または取得を知った日から3年のいずれか遅い日までに申請すればよいとする猶予期間(経過措置)が設けられています。

この法律上の期限は、売却活動が進んでいるかどうかに関係なく進みます。もし期限が近づいても遺産分割協議がまとまらない場合は、法務局へ「相続人申告登記」の申し出を行って申請義務を果たしておき、その後に遺産分割が成立した段階で正式な権利の登記を申請してください。手続きの詳細は法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(新しいタブで開きます)法務局「相続登記・遺贈の登記手続ハンドブック」(新しいタブで開きます)で確認できます。進め方の要点は相続登記を先に行うべき理由と手順でも解説しています。

課税資料と法務局図面を照合して対象筆を漏れなく特定する

相続した土地を売却する際、普段使っている現地の住所(住居表示)と、登記簿に書かれている「地番(ちばん)」は一致しないことがあります。また、一つの敷地に見える場所が複数の土地(筆:ひつ)に分かれていたり、私道部分の持ち分が別の筆になっていたりする場合もあります。そのため、自治体の窓口と法務局で資料を取得し、売却対象となるすべての筆を照らし合わせて確認します。

最初に入手すべき4つの重要資料

  • 固定資産税の納税通知書・課税明細書:毎年春に自治体から届く書類です。土地がある場所や地番、地目(土地の用途区分)、地積(面積)、評価額が記載されています。
  • 名寄帳(なよせちょう:固定資産課税台帳):市区町村役場の資産税窓口で取得します。税金がかからない私道や山林など、納税通知書に載らない土地が名寄帳に載るかどうかは自治体ごとに異なります。そのため、非課税の土地まで網羅されているかを窓口で確認します。
  • 登記事項証明書(登記簿謄本):地番をもとに法務局で取得します。現在の所有者として誰が登記されているかや、住宅ローンなどの担保(抵当権など)が設定されたままになっていないかを確認します。
  • 公図(こうず)および地積測量図:法務局で取得します。公図を見て隣の土地の地番や位置関係を把握し、過去に法務局へ提出された地積測量図があるかどうかを確認します。

地番が分からない場合の調べ方やオンラインでの請求方法は、法務省「地番や家屋番号が分からない場合」(新しいタブで開きます)および法務局「登記事項証明書、地図・図面証明書を取得したい方」(新しいタブで開きます)で案内されています。

道路種別や法令制限を確認し現地の安全管理を先行させる

資料がそろったら、現地が実際にどのように使われているかと、役所の窓口で法律上の制限を確認します。遠方に住んでいて現地へ行くのが難しい場合や、建物の傷みなどで安全上の不安がある場合は、不動産会社の現地調査に同行するか、代わりに現地を確認してもらうよう依頼してください。

建築基準法の道路種別と接道規制

建物を建築するためには、原則として建築基準法上の道路に敷地が2メートル以上接している必要があります(e-Gov法令検索「建築基準法」第43条(新しいタブで開きます))。

  • 道路の判定:公道であっても当然に建築基準法上の道路とは限らず、幅員4メートル未満の道がすべて2項道路に該当するわけでもありません。自治体の建築指導窓口で道路種別(42条1項各号の道路、2項道路等)を確認します。
  • セットバックと再建築の可否:2項道路に面している場合は道路後退(セットバック)が必要となり、敷地として利用できる有効面積が減少します。接道要件を満たしていない土地であっても、建築基準法第43条第2項に基づく認定や許可を受けられる例外規定が存在するため、安易に再建築不可と自己判断せず窓口で確認してください。

越境・占有・放置物の権利調整

  • 敷地を越えていないか(越境)の目視確認:ブロック塀や生垣、庭木、雨どい、屋根のひさしなどが、お隣から越境してきていないか、あるいは自分の敷地からお隣へはみ出していないかを目で見て確認します。また、上下水道やガスなどの配管が地中でお隣の敷地を通っていないかも、インフラ図面を取り寄せて照らし合わせます。
  • 勝手に使っている人や放置された物の取り扱い:第三者が無断で使っていないかや、誰かに貸している状態でないかを確認します。現地に放置車両や残置物(残された家具や荷物など)がある場合でも、土地の所有者だからといって勝手に処分や撤去をすることは法律上認められません。所有者が誰かを確認し、権利関係の整理や法的な手続きを進める必要があります。残置物を売主の負担で撤去するか、今の状態のままで買主が引き受けるかは、売買契約の条件として定めます。

農地と森林における個別の届出・許可要件

登記上の用途区分(地目)が宅地以外の土地や、実際の使い方が登記と異なる土地を相続した場合は、法律ごとの要件に従って手続きを行います。

  • 農地(田・畑)を相続した場合:登記簿上の地目にかかわらず、実際の様子が農地であれば農地法が適用されます。相続によって農地を取得したときは、農業委員会へその旨を届け出る義務があります(農地法第3条の3第1項の届出)。これは法務局で行う相続登記とは別の手続きです。その後、第三者へ農地のまま売却する場合は「農地法第3条の許可」、宅地などに用途を変えて売却する場合は「農地法第5条の許可」(市街化区域内にあるときは事前の届出)が必要になります。詳細は農林水産省「農地をめぐる事情について」(新しいタブで開きます)および農林水産省「農地相続ポータル」(新しいタブで開きます)を参照してください。
  • 森林(山林)を相続した場合:すべての山林が一律に対象になるわけではありませんが、都道府県が定める「地域森林計画」の対象となっている森林を取得した場合に届出の義務が生じます。登記上の地目にかかわらず、土地の所有者となった日から90日以内に、所在地の市町村長へ「森林の土地の所有者届出」を提出しなければなりません。手続きの詳細は林野庁「森林の土地の所有者届出制度」(新しいタブで開きます)で案内されています。

買い手や引き取り手が見つからない山林や原野については、売却以外の選択肢として、国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度と売却の比較も検討対象に入ります。

不要な工事を避け現状のまま机上査定と現地査定を受ける

土地の現在の状態が分かったら、不動産会社へ査定を依頼して売却見込額を把握します。査定価格がどのように計算されるかについては、相続した土地の価格査定の考え方で詳しく整理しています。

査定前に高額工事を発注しない判断基準

査定を受ける前に、自分のお金で大規模な造成工事や建物の解体、測量を発注することは避けるのが原則です。

  • 解体費用を回収できないリスク:古い家を取り壊して更地にしても、かけた解体費用の分が売却価格にそのまま上乗せできるとは限りません。建物を改修して使いたい買主や、古家が残っている状態を好む不動産事業者に対しては、建物が残っている方が有利に働くこともあります。
  • 固定資産税の負担が増えるリスク:建物を壊して更地にすると、住宅が建つ土地に適用されていた固定資産税の減額特例(小規模住宅用地は課税基準が6分の1、一般住宅用地は3分の1になる特例)が受けられなくなります。負担調整措置などの計算があるため、実際の納税額がどれくらい上がるかは土地ごとに異なりますが、買い手が見つかるまでの維持コストが跳ね上がるリスクがあります。解体する時期や税額への影響は、自治体の資産税課へ確認してください。

売却方針が固まるまでは、危険防止に必要な最低限の管理を除き、現況のままで査定を受けることが合理的です。

机上査定と現地査定の特徴

  • 机上査定:書類データや周辺の取引実績をもとに、おおよその概算価格を計算します。数日程度で回答を得られます。
  • 現地査定:不動産会社の担当者が現地を訪れ、道路との接し方や日当たり、敷地の高低差、お隣との越境がないか、水道やガスなどの配管状況を確認して、精度の高い査定価格を出します。確認項目は土地査定で見られるチェックポイントを参考にしてください。

まずは複数の不動産会社に机上査定を依頼して価格帯の目安を把握し、対応が丁寧で金額の根拠が明確な2〜3社に絞って現地査定を依頼します。周辺相場を自分で調べる際には、国土交通省の国土交通省「不動産情報ライブラリ」(新しいタブで開きます)が役立ちます。

取引慣行と平米単価から境界明示と測量条件を判断する

土地を売却する際は境界の確認が重要なポイントになりますが、すべての取引で高額な確定測量図を渡すことが必須とされているわけではありません。

公簿売買と実測売買の契約条件比較

土地の売買契約には、登記簿面積を基準とする公簿売買と、実測面積を基準とする実測売買があります。

表:項目、公簿売買、実測売買
項目公簿売買実測売買
代金計算の基準登記簿記載の地積(固定代金)実測図に基づく実際の地積
面積差異の精算実測面積と差異があっても精算しない契約後の実測差異を単価精算、または実測後に契約
境界明示の義務契約条件による(現況の境界標明示にとどめる場合あり)確定測量図の交付と全境界標の明示を約定するのが通常
測量成果物の交付地積測量図等の既存資料、または現況測量図隣地所有者の立会確認を経た確定測量図
主な取引場面郊外の広い土地、山林、農地、低廉地、中古戸建都市部住宅地、坪単価の高い土地、買主が建売業者の場合

都市部など平米単価が高い土地では、わずかな面積のズレが代金に大きく影響するため、確定測量図の交付と境界標の明示を契約条件として求められるのが通常です。一方、地価水準に対して測量費用が過大となる地域や広大な土地では、公簿売買での取引が現実的な選択肢となります。現況測量と確定測量の違いを理解し、測量の要否は土地家屋調査士や不動産会社と協議して決定します。境界が分からない場合の対策は境界不明の土地を売却する方法も確認してください。

売主の登記識別情報と必要書類をそろえて決済に備える

売買契約から決済(代金の受け取りと引き渡し)までの手続きを円滑に進めるため、法務局での相続登記の完了と、必要な書類の準備を計画的に進めます。

相続登記にかかる費用項目

  • 登録免許税:相続による所有権移転登記は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。一定の土地には免税措置があるため、適用期間と要件を確認してください(国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(新しいタブで開きます))。
  • 司法書士報酬:依頼する司法書士や、対象となる土地(筆)の数、相続人の人数によって変わるため、個別に見積もりを取って確認します。
  • 公的書類の取得費用:戸籍謄本や住民票、登記事項証明書などを役所や法務局で取得するための実費(手数料)です。

売却手続きに必要な準備資料

亡くなった方の古い権利証(登記済証)は、過去の権利関係を確かめる資料として確認しますが、紛失していても相続登記自体は他の法定書類をそろえれば申請できます。土地を売却するときは、相続登記の完了後に売主へ通知される登記識別情報が必要書類の一つです。紛失した場合は事前通知や司法書士等による本人確認情報などの代替手続きがあるため、決済前に司法書士へ確認してください(法務局「相続登記・遺贈の登記手続ハンドブック」(新しいタブで開きます))。

  • 登記識別情報通知(または登記済証):売主名義への相続登記が完了したあとに交付されたもの。
  • 固定資産税評価証明書:最新年度のものを市区町村役場で取得します。
  • 売主の印鑑証明書:売買による所有権移転登記を法務局へ申請する日を基準として、発行後3か月以内のものを用意します(遺産分割協議書に添付した印鑑証明書とは別に用意してください)。
  • 売主の実印、および本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)。

手残り額と引き渡し条件で仲介と直接買取を比較する

土地の売却方法には、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社が直接買い取る「直接買取」があります。

表:比較項目、仲介(一般個人等への売却)、直接買取(不動産会社への売却)
比較項目仲介(一般個人等への売却)直接買取(不動産会社への売却)
取引相手市場の一般個人や法人不動産会社(宅建業者)
価格形成市場価格での売却を目指す不動産会社の査定提示額による
販売期間買い手が見つかるまでの期間を要する条件合意後の比較的早期な決済が可能
仲介手数料法定上限額の範囲で発生する直接取引のため発生しない
費用負担と引渡条件買主の要望に応じた測量や解体等の調整が生じやすい現況有姿や境界非明示など相談の幅が広い
契約不適合責任個人間売買のため期間や範囲を特約で限定する買主が宅建業者のため免責特約が有効に成立しやすい

提示された金額の高さだけでなく、測量費用や建物の解体費用、仲介手数料を差し引いたあとの最終的な手残り金額と引き渡し条件を並べて比較することが大切です。一定期間は仲介で買い手を募集し、売れなかった場合に事前合意した価格で買い取ってもらう「買取保証付き仲介」を利用する場合は、保証価格や適用期限、対象となる条件をあらかじめ契約書面でしっかり確認してください。

媒介契約の形態を選び販売条件と交渉経緯を書面化する

仲介で売却を進める場合は、不動産会社と「媒介契約(ばいかいけいやく)」を結びます。媒介契約のひな形は、国土交通省が「標準媒介契約約款」として定めています(出典:国土交通省「標準媒介契約約款」(新しいタブで開きます))。

媒介契約の3つの類型

  • 一般媒介契約:複数の不動産会社と同時に契約できます。自分で見つけてきた買主とも直接契約できます。指定流通機構(レインズ:不動産会社間の情報ネットワーク)への登録義務や、売主への業務処理状況の報告義務はありません。
  • 専任媒介契約:契約できる不動産会社は1社のみです。自分で見つけてきた買主とは契約できます。契約締結日の翌日から数えて休業日を除き7日以内のレインズ登録義務と、2週間に1回以上の業務処理状況の報告義務があります。契約の有効期間は最長3か月です。
  • 専属専任媒介契約:契約できる不動産会社は1社のみです。自分で買主を見つけてきても直接契約することはできません。契約締結日の翌日から数えて休業日を除き5日以内のレインズ登録義務と、1週間に1回以上の業務処理状況の報告義務があります。契約の有効期間は最長3か月です。

仲介手数料の上限規定と低廉な土地等の特例

仲介手数料は取引が成立したときに支払う成功報酬であり、法律で上限額が定められています。売買価格が400万円を超える場合の通常の速算式は「売買代金の3%+6万円+消費税等」です。なお、売買価格が800万円以下の低廉な空き家や宅地・建物の売買では、現地調査などに要する費用を考慮した報酬上限の特例が設けられています。媒介契約を結ぶ際にあらかじめ説明を受けて合意することで、売主から受領できる報酬上限を「税込33万円まで」とすることができます(出典:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(新しいタブで開きます))。なお、直接買取では不動産会社自身が買主となるため、仲介手数料は発生しません。

購入希望者から「買付証明書(購入申込書)」が届いた際は、希望金額や手付金の額、引き渡しの条件、測量が必要かどうかなどをしっかり確認します。トラブルを防ぐため、口頭だけで話を進めず、合意した内容は必ず書面やメールで記録に残してください。

売買契約書で境界明示・面積精算・責任範囲を取り決める

条件の交渉がまとまったら、宅地建物取引士から重要事項説明を受けたうえで売買契約を締結し、買主から手付金を受け取ります。

契約書で確認すべき重要条項

  • 境界の明示と測量図交付:引き渡しまでにどの境界標(杭など)を誰の費用負担で明示するのか、交付する測量図の種類を明確にします。
  • 売買代金の確定方式:登記簿の面積をもとに代金を固定するのか、それとも実測面積に基づいて単価で精算するのかを定めます。
  • 引渡し状態の取り決め:建物を解体した「更地渡し」なのか、建物や残置物を残したままの「現況有姿(げんじょうゆうし)渡し」なのかを明記します。
  • 融資利用特約(住宅ローン特約):買主の住宅ローンなどの融資審査が通らなかった場合に、利息や違約金なしで契約を解除できる期日を確認します。
  • 契約不適合責任の範囲:相続した土地では、売主自身が過去の利用状況を完全に把握していないことも少なくありません。責任を負う期間や範囲、免責の有無は契約書で明確にします。ただし、売主が知りながら買主へ告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れません(e-Gov法令検索「民法」第572条(新しいタブで開きます))。分かっている不具合や過去のトラブルは「物件状況等報告書」へ記載し、法的なリスクが心配な場合は弁護士へ相談してください。

売買代金の着金と同時に所有権移転登記と引渡しを行う

決済日は契約で定めた日程に合わせ、金融機関などに関係者が集まり、代金の受け取りと所有権移転の手続きを進めます。必要書類や申請方法は事前に司法書士へ確認してください(法務局「不動産を購入した」(新しいタブで開きます))。

決済当日の進行手順

  1. 登記に必要な書類の確認:司法書士が売主の登記識別情報通知、印鑑証明書、本人確認書類などを点検し、移転登記の申請書類に不備がないことを確認します。
  2. 残代金の着金確認:買主から売主の指定口座へ残りの代金が振り込まれ、無事に入金されたことを確認します。
  3. 税金(公租公課)の日割り精算:引き渡し日を基準として固定資産税や都市計画税を日割り計算し、売主が先払いしていた期間分の精算金を買主から受け取ります。
  4. 諸費用の支払い:仲介手数料の残金や、司法書士への報酬などの諸費用を精算します。
  5. 書類等の引き渡し:境界確認書や図面、建物がある場合はその鍵を買主へ引き渡します。
  6. 所有権移転登記の申請:司法書士がその日のうちに法務局へ行き、買主への所有権移転登記を申請します。

譲渡所得を正しく計算し適用できる税特例を選択する

土地を売却して利益(譲渡益)が出た場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日までに税務署へ確定申告を行い、所得税と復興特別所得税を納めます。一方、個人住民税は税務署へ納めるのではなく、確定申告のデータをもとに自治体が税額を計算します。そして、売却した翌年の5〜6月以降に自治体から届く納税通知書に従って納付します。利益が出なかった場合でも、税制上の特例の適用を受けるためには確定申告が必要です。税金の体系的な全体像は、相続不動産の売却にかかる税金と特例で網羅しています。

譲渡所得の計算式

税金の対象となる「課税譲渡所得金額」は、以下の計算式で算出します(出典:国税庁 No.3202「譲渡所得の計算のしかた」(新しいタブで開きます))。

課税譲渡所得金額 = 収入金額(売却代金 + 固定資産税精算金) - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額
  • 収入金額:土地の売却代金に加え、買主から受け取った固定資産税・都市計画税の精算金も収入に含めて計算します。
  • 取得費:亡くなった方がその土地を購入した代金や購入時の手数料、造成費用などです。亡くなった方の取得時期と取得費をそのまま引き継ぎます(出典:国税庁 No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」(新しいタブで開きます))。
  • 譲渡費用:売却のために直接支出した費用(仲介手数料、確定測量費用、売却のための解体費用、契約書の印紙税など)に限られます。毎年の固定資産税や維持管理費用は含まれません。

土地を所有していた期間も、亡くなった方が取得した日を引き継ぎます。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり、税率は合計で約20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)となります。

取得費が分からない場合の概算取得費

当時の売買契約書が見つからない場合は、売却代金(収入金額)の5%を取得費とみなす「概算取得費」を適用できます(出典:国税庁 No.3258「取得費が分からないとき」(新しいタブで開きます))。ただし、概算取得費を用いると、譲渡費用を差し引く前の売却収入の95%相当額が課税の基準となってしまうため、税負担が大きくなります。また、概算取得費を適用した場合は、相続登記にかかった費用などを別途取得費に加算することもできません。遺品や保管書類の中から当時の契約書や領収書、通帳の出金履歴などを徹底して捜索してください。

相続土地で検討すべき主な税制特例(選択適用)

特例は自動適用されず、要件を満たしたうえで確定申告を行う必要があります。

  • 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除(国税庁 No.3306):昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の家屋とその敷地等を相続した場合に、耐震改修または更地化して売却する等の厳格な要件を満たすと、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。売却代金が1億円以下であること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日(かつ2027年12月31日)までの売却であることが条件です。対象資産を取得した相続人の数が3人以上の場合は控除限度額が1人あたり2,000万円となります。自治体の確認書交付だけでなく税務署の法令要件を充足しているか事前確認が必要です。
  • 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(国税庁 No.3267):相続税を課税された人が、相続開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年(相続開始から概ね3年10か月が目安)以内に土地を売却した場合に、納付した相続税額のうち一定額を取得費に加算できる制度です。

同一の相続資産について空き家特例と取得費加算の特例を重複して受けられず、有利な方を選択して適用する関係にあります。特例適用の可否や有利判定については、事前に税理士へ試算を依頼してください。

まとめ:現況査定と書類特定から着手して費用倒れを防ぐ

相続した土地を売却する際の基本方針は、以下の5点です。

  1. 近隣への危険を防ぐ応急処置を除き、回収できる見込みのない高額な造成工事や解体、測量を査定の前に発注しない。
  2. 固定資産税の納税通知書と名寄帳、法務局の公図を照らし合わせ、私道の持ち分や飛び地を含むすべての土地(筆)を洗い出す。
  3. 相続登記の法律上の期限(取得を知った日から3年以内など)は売却活動とは別に管理し、話し合いが長引くときは相続人申告登記を検討する。
  4. 平米単価やその地域の取引の慣行を考え、公簿売買か実測売買か、境界をどこまで示すかを不動産会社と相談する。
  5. 過去の売買契約書を探して取得費が分からないことによる税負担の増加を防ぎ、適用できる税の特例を税理士と確認する。

参照資料

法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」参照日 2026年9月2日法務局「相続登記・遺贈の登記手続ハンドブック」参照日 2026年9月2日法務局「登記事項証明書、地図・図面証明書を取得したい方」参照日 2026年9月2日法務省「地番や家屋番号が分からない場合」参照日 2026年9月5日国土交通省「不動産情報ライブラリ」参照日 2026年9月2日国土交通省「標準媒介契約約款」参照日 2026年9月2日国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」参照日 2026年9月14日農林水産省「農地をめぐる事情について」参照日 2026年9月2日農林水産省「農地相続ポータル」参照日 2026年9月14日林野庁「森林の土地の所有者届出制度」参照日 2026年9月2日国税庁 No.3202「譲渡所得の計算のしかた」参照日 2026年9月2日国税庁 No.3258「取得費が分からないとき」参照日 2026年9月2日国税庁 No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」参照日 2026年9月14日国税庁 No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」参照日 2026年9月14日国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」参照日 2026年9月14日