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老人ホームに入った親の自宅売却は?住民票・税金と売る・貸す・空けておくの比べ方

親が施設に入っても、実家の持ち主は親のままです。売買や賃貸の契約には、親が内容を理解できる判断力が関わります。判断力に不安がある場合の進め方は、弁護士か司法書士に相談してください。売る場合、3,000万円特別控除には期限があります。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却が、対象になり得ます。

まだしないこと

住民票を移した日を控除の期限の起点と決めつけて、売る時期を決めないでください。

まずすべきこと
  1. 土地と建物の登記事項証明書で、親の名義と共有者の有無を確かめる
  2. 親が施設に入った日、実家に住まなくなった日、住民票を移した日をメモする
  3. 火災保険の証券を出し、保険会社に入所を伝える

このページで決めること売る・貸す・空けておくの比べ方と、住民票・固定資産税・火災保険・控除・売却代金について、どこに何を確かめるかが分かります。

明るい介護施設の部屋で穏やかに話す母と娘と、留守になった実家の外観。
公開日 2026年10月6日法令・制度確認日 2026年10月6日執筆・編集 住まいのよりみち編集部読了目安 16分
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親が老人ホームや介護施設に入り、家に戻る見込みが薄くなると、実家をどうするかが家族の話題にのぼります。老人ホームに入った後の自宅売却では、住民票、税金、親の同意の話が絡み合います。実家を売るかどうかは、親の気持ちを聞きながら考えられます。ただし、住民票の届け出と火災保険の確認は早めに済ませ、売る場合は税の特例の期限も確かめておきましょう。

親が施設に入った後の実家、選び方は3つ

実家の行き先は、大きく分けて「売る」「貸す」「空けておく」の3つです。施設に入っただけでは、家の持ち主は変わりません。売る・貸す・空けておくのどれにするかは、所有者である親の意思を確かめて決めます。

4つの点で比べると、次のようになります。金額は家の状態や地域で大きく違うため、相場は載せていません。

表:比べる点、売る、貸す、空けておく
比べる点売る貸す空けておく
費用仲介手数料など、売るための費用修繕や管理の費用固定資産税、保険、管理の費用
手間査定、契約、確定申告入居者との契約、修繕の対応見回りや換気などの管理
税利益に税金がかかる。控除の特例がある家賃の収入の扱いを確かめる固定資産税が毎年かかる
親の同意売主は親。同意と判断力が要る貸主は親。同意と判断力が要る片付けや修理も親の了解が要る

売るのが向くのは、家に戻る見込みが薄く、親が手放すことに納得している場合です。貸すのは、修繕の費用を見込めて、管理を任せられる相手がいる場合に向きます。空けておくのは、親や家族の気持ちの整理に時間が要るときの、いったんの選び方です。ただし、空けている間も固定資産税と管理の手間は続きます。

売るための費用のうち、仲介手数料や売主が負担する印紙税は「譲渡費用」として、利益の計算で差し引けます(出典:国税庁 No.3255。参照資料の一覧へ移ります)。一方で、家を保つための修繕費や固定資産税は、譲渡費用に入りません。

売りも貸しもせずに持ち続けることも、選び方の1つです(出典:国土交通省 空き家の管理。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、人が住まない家にも、見回りや修理などの管理が要ります。

売った後も家賃を払って同じ家に住み続ける「リースバック」という仕組みもあります(出典:国土交通省 リースバック。参照資料の一覧へ移ります)。親に合うかどうかは、入所の時期を含めて今後その家に住む期間と、家賃の負担を比べて考えます。国の資料には、高齢者施設への住み替えに使った例も載っています(出典:国土交通省 審議会資料。参照資料の一覧へ移ります)。

戻る見込みが薄くても、親にとっては長く暮らした家です。売るかどうかは、親の気持ちを聞きながら決めてかまいません。ただし、売るなら後で触れる控除の期限が関わるので、時期の目安だけは早めに知っておくと考えやすくなります。

売る・貸す・空けておくの数字は、無料の売る・貸す・残す判断シートで並べられます。

実家は親のもの。売るにも貸すにも親の意思が要る

親が施設に入っても、実家の持ち主が子どもに変わるわけではありません。持ち主には、自分の物を使い、そこから収入を得て、売るなどの権利があります(出典:島原市 物権一覧。参照資料の一覧へ移ります)。

まずは登記事項証明書(法務局が出す不動産の記録)で、土地と建物の名義を確かめましょう(出典:長久手市 固定資産税Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。納税通知書では、共有者の名前が省かれることがあります。親以外の名前があれば、その人とも話し合うことになります。

売主や貸主になるのは親です。契約は、親自身が内容を理解したうえで結ぶのが基本です。後見人などの代理人が、本人に代わって契約を結ぶ場合もあります(出典:那覇家庭裁判所 Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。

意思能力(契約の意味を判断できる力)がない人が結んだ契約は、無効とされます(出典:泉佐野市 民法改正。参照資料の一覧へ移ります)。この決まりは、2020年(令和2年)4月1日施行の改正民法で条文に書かれました。

家族が話し合って決めても、それだけで子どもが親の代わりに契約できるわけではありません。親の判断力に不安があるときは、成年後見制度(判断が難しい人を法律の面で支える仕組み)が関わることがあります(出典:裁判所 成年後見。参照資料の一覧へ移ります)。どの手続きが合うかは親の状態や家族の事情で違うため、個別には弁護士か司法書士にご相談ください。家族が後見人になれるかどうかは、家族が親の成年後見人になれるかの記事で説明しています。

後見人がついても、親が住んでいた家を売る・貸す・取り壊すには、家庭裁判所の許可が要ります(出典:裁判所 居住用不動産の処分許可。参照資料の一覧へ移ります)。施設に入った後の空き家も、対象になることがあります。許可のない処分は無効です。許可の申立ての流れは、認知症の人が持ち主の家を売る記事で説明しています。

親が一人で契約を決めてしまうと、家族が後から気づいても元に戻しにくいことがあります。国民生活センターは、80歳代の人がリースバックの契約を結んだ相談例を公表しました(出典:国民生活センター。参照資料の一覧へ移ります)。朝から夜遅くまで勧誘を受けて契約し、親族の指摘で解約を申し入れたところ、手付金の返還と違約金を求められたという内容です。家の売買の話が出たら、契約の前に家族も書類を見られるよう、親と決めておきましょう。

住民票は施設に移す?移すと保険はどうなる

住民票は、生活の本拠(ふだん暮らしている場所)に置くのが原則です(出典:新宿区 転入届。参照資料の一覧へ移ります)。施設に入った場合も、原則として施設の所在地に住民票を移すと、江東区は案内しています(出典:江東区 住所地特例。参照資料の一覧へ移ります)。ほかの市区町村へ移るときは、移った日から14日以内に転入届を出します。

住所を移すと、介護保険の加入先が変わるのではと心配になるかもしれません。介護保険には、介護保険法第13条(新しいタブで開きます)に基づく「住所地特例」という仕組みがあります。対象の施設に入って住所を移しても、元の市区町村が保険者(保険を運営する自治体)であり続けるものです(出典:厚生労働省 住所地特例。参照資料の一覧へ移ります)。

ただし、対象になるかどうかは施設の種類で分かれます。たとえば、地域密着型介護老人福祉施設は対象外です(出典:神戸市 住所地特例。参照資料の一覧へ移ります)。施設の名前だけで判断せず、施設と市区町村の介護保険の窓口で確かめてください。

住民票を元の住所に残したままなら、保険者は区のままで、住所地特例は使わない扱いだと江東区は示しています。ただ、これは住民票を残してよいという意味ではありません。どこに住民票を置くかは、市区町村の窓口に相談しましょう。

医療保険のうち、国民健康保険にも住所地特例があります(出典:刈谷市 国民健康保険。参照資料の一覧へ移ります)。後期高齢者医療にもあります(出典:飯島町 後期高齢者医療。参照資料の一覧へ移ります)。介護保険と窓口や対象の施設が同じとは限らないので、加入している保険ごとに元の市区町村へ確かめます。

売る予定があるなら、住民票と税の扱いを分けて考えてください。税の上で家に住んでいるかどうかは、生活の拠点としての使い方などを合わせて判断されます(出典:国税庁 通達31の3-2。参照資料の一覧へ移ります)。3,000万円特別控除でも、この判定の考え方が準用されます(出典:国税庁 通達35-6。参照資料の一覧へ移ります)。

詳しく:住所地特例は保険ごとに窓口と手続きが違う

詳しい説明を開く

介護保険の住所地特例は、届け出の方法も市区町村で違います。江東区は本人の届け出を案内し、神戸市は本人の届け出は要らないとしています。

後期高齢者医療にも、県外の対象施設へ住所を移す場合の住所地特例があります(出典:飯島町 後期高齢者医療。参照資料の一覧へ移ります)。元の広域連合(都道府県ごとの運営団体)に加入したままになる扱いです。国民健康保険でも、施設によっては対象から外れることに注意してください。

対象施設の一覧は、制度の見直しで変わることがあります。古い資料の一覧ではなく、今の市区町村の案内で確かめてください。

実家の固定資産税・火災保険・郵便はどうなる

施設に入った後も、実家にかかるお金や手続きは続きます。固定資産税、納税通知書の送り先、登記の住所、火災保険、郵便を順に見ていきます。

固定資産税は1月1日の持ち主にかかる

固定資産税は、毎年1月1日時点の土地や家の持ち主にかかります(出典:東京都主税局 Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。住民票がどこにあるかは関係しません。施設に入っても名義が親なら、税金は親にかかり続けます。

年度の途中で実家を売っても、その年度の納税義務者(税を納める人)は変わりません(出典:昭島市 納税義務者。参照資料の一覧へ移ります)。たとえば、2026年1月1日に親が持っていた家を、同じ年の10月に売ったとします(想定の例)。2026年度の固定資産税を納めるのは、親のままです。買主との間で日割りの精算をすることはありますが、それは当事者どうしの取り決めです。

住宅が建つ土地には、税を軽くする「住宅用地の特例」があります。空き家になっただけで、この特例がすべて外れるわけではありません。適切に管理されていれば空き家でも解除の対象にならない、と神戸市は案内しています(出典:神戸市 空き家の固定資産税。参照資料の一覧へ移ります)。

一方で、空家法(空き家の管理を定めた法律)の勧告を受けた場合などは、特例が外れることがあります。家を取り壊して更地にしたときも、翌年度から特例が使えなくなる場合があります(出典:岡垣町 更地の減免。参照資料の一覧へ移ります)。判定は所在地の市区町村がするため、空き家の固定資産税の記事を読んだうえで、窓口でも確かめてください。

納税通知書の送り先と、登記の住所

親が施設に移ると、納税通知書をどこへ送ってもらうかも決めておく必要があります。送り先の変え方は、自治体で違います。東京23区では、住民票を移しただけでは送り先は変わりません(出典:東京都主税局 Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。神戸市は、市内や市外への転居で住民票を変更した場合、送り先の届け出は要らないとしています(出典:神戸市 2026年版冊子。参照資料の一覧へ移ります)。

2026年(令和8年)4月1日から、持ち主の住所が変わったときの登記(住所等変更登記)が義務になりました(出典:米子市 住所等変更登記。参照資料の一覧へ移ります)。原則として、変わった日から2年以内に申請します。それより前の変更でまだ登記していないものは、2028年(令和10年)3月31日までと案内されています(出典:光市 登記の義務化。参照資料の一覧へ移ります)。施設に住民票を移したときに申請が要るかは、法務局か司法書士に確かめてください。

火災保険と郵便

人が住まなくなった家は、火災保険の扱いが変わることがあります。たとえば損保ジャパンの「THE すまいの保険」は、空き家は引き受けられないと案内しています(出典:損保ジャパン。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、今の契約を続けられるかは、商品や契約の条件で変わります。

親が入所したことと家の使い方を、保険会社か代理店に伝えて扱いを確かめましょう。空き家の保険の選び方は、空き家の火災保険の記事にまとめています。

郵便局に転居届を出すと、前の住所あての郵便物を届け出た日から1年間、無料で転送してもらえます(出典:日本郵便 転居・転送。参照資料の一覧へ移ります)。続けたいときは、もう一度転居届を出します。転送の期間の数え方は、親が施設に入るときの実家の片付けの記事で説明しています。

老人ホーム入所後の自宅売却と3,000万円の特別控除

親が住んでいた家を売って利益が出ると、その利益に税金がかかります。この利益を譲渡所得といい、売った値段から、買ったときの費用(取得費)と売るための費用(譲渡費用)を引いて計算します(出典:国税庁 No.3255。参照資料の一覧へ移ります)。売れた値段が、そのまま利益になるわけではありません。

自宅を売ったときは、要件を満たせば、この譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます(出典:国税庁 No.3302。参照資料の一覧へ移ります)。居住用財産の3,000万円特別控除と呼ばれる制度で、家を持っていた期間の長さは問いません。売った代金から3,000万円が戻ってくる制度ではない点に、気をつけてください。

計算例として、売った値段が4,000万円、取得費と譲渡費用の合計が2,500万円だったとします。譲渡所得は1,500万円なので、要件を満たす場合に差し引けるのも1,500万円までです。3,000万円の枠が余っても、そのぶんのお金が戻るわけではありません。

期限は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末

施設に入って家に住まなくなっても、すぐに控除が使えなくなるわけではありません。以前住んでいた家は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば、対象になり得ます(出典:国税庁 No.3314。参照資料の一覧へ移ります)。

たとえば、2026年10月6日に施設に入り、その日から実家に住まなくなったとします(想定の例)。3年後は2029年10月なので、期限はその年の末、2029年(令和11年)12月31日です。施設に入った日からちょうど3年ではない点に、注意しましょう。

ただし、施設に入った日と、税の上で住まなくなった日が同じとは限りません。入所の前から実家を離れていた場合などは、起点がずれることもあります。いつを起点にするかは、税務署か税理士に確かめてください。

家を取り壊して土地だけ売る場合は、別の条件が加わります。取り壊しから1年以内に契約を結ぶこと、取り壊した後に土地を貸さないことなどです(出典:国税庁 No.3320。参照資料の一覧へ移ります)。売る期限は、取り壊した日ではなく、住まなくなった日から数えます。取り壊すと固定資産税の特例が外れる場合もあるため、先に税理士と市区町村に確かめてください。

入所後に貸した家でも使える?

住まなくなった後の使い道は問わない、という案内があります(出典:国税庁 No.3302。参照資料の一覧へ移ります)。入所後に人に貸していても、それだけで対象外になるとは書かれていません。ただし、期限やほかの要件はそのまま残ります。貸していた家は、税務署か税理士に確かめてください。

控除が使えない場合もある

施設に入った親の家で気をつけたいのは、次の2点です。

  • 親子や夫婦など、特別の関係がある人への売却は対象外(生計を一にする親族なども含む)
  • 前年・前々年に使った税の特例によっては、対象外になる場合がある

利用した税の特例があれば、制度の名前と年を税務署か税理士に伝えて確かめてください。細かな要件は、国税庁のタックスアンサーで確かめられます(出典:国税庁 No.3302。参照資料の一覧へ移ります)。売る相手の細かな範囲や、使える回数の制限は、マイホームを売るときの特別控除の記事で説明しています。

親が亡くなった後に売るときは、別の制度

親が生きている間に売るか、亡くなった後に相続して売るかで、使える制度が分かれます。亡くなった後は、「相続した空き家の特例」という別の制度を考えることになります(出典:国税庁 No.3307。参照資料の一覧へ移ります)。この特例で老人ホームに入っていた場合は、入所後から亡くなる直前まで、物の保管などに使い、貸していないことなどが条件です。

この特例の現在の適用期限は、2027年(令和9年)12月31日までの売却です(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。売る時点で、期限と要件を確かめてください。生きている間の売却とは条件が違うため、混ぜずに考えてください。

3,000万円の特別控除が使えるか、税の相談先を探す

控除を受けるには、書類を添えて確定申告をする必要があります(出典:国税庁 No.3302。参照資料の一覧へ移ります)。申告するのは、家を売った親です。控除が使えるかどうかは、親の暮らし方や家の使い方で変わります。

この記事の内容は一般的な情報です。個別の判断は、税務署か税理士(税の専門家)に確認してください。売る時期が見えてきたら、契約の前に相談しておくと、期限や要件の見落としを防げます。

相談の前に、次のことを書き出しておくと話が早く進みます。

  • 親が施設に入った日と、実家に住まなくなった日
  • 住民票を施設に移した日
  • 入所後の実家の使い方(空けている、貸した、取り壊した)
  • 実家を買ったときの契約書など、取得費が分かる書類
  • 売る相手が親族か、それ以外か
  • 売る年の前年・前々年に、税の特例(家の売却や買換えなど)を使ったか

税理士に頼むときは、不動産を売ったときの申告を扱っているか、報酬はいくらかを先に聞いておくと比べやすくなります。親の判断力に不安があり、申告を誰が進めるかが決まらないときは、弁護士か司法書士への相談も合わせて進めます。

売ったお金は親のもの。子が使うときの注意

実家を売ったお金は、売主である親の財産です。親の介護や施設の費用に充てるのが基本で、子どものお金と混ぜないようにします。

子どもが親のお金を受け取ると、贈与税が関わることがあります。個人から贈与で財産を受け取ると、贈与税の対象になるからです(出典:国税庁 No.4402。参照資料の一覧へ移ります)。

一方で、扶養義務のある家族の間で、通常必要な生活費をその都度直接払う分には、贈与税はかかりません(出典:国税庁 No.4405。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、これは子どもの暮らしの支出に、親の売却代金を使ってよいという意味ではありません。また、生活費の名目でも、預金や投資に回した分は扱いが変わります。

子どもが立て替えた介護費用を、親のお金から精算することもあるでしょう。贈与になるかどうかは、お金の流れや使い道といった事実で判断が変わります。何にいくら使ったかを領収書やメモで残し、個別の扱いは税理士か税務署に確かめてください。

成年後見人がついている場合については、家庭裁判所の資料に目安があります。本人の家の売却代金を、後見人や親族の借金返済や買い物に使うのは、原則として認められない「私的流用」の例とされています(出典:那覇家庭裁判所 Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。

親の口座からの支払い方や、親の口座が使いにくくなったときの対応は、認知症の親の口座と支払いの記事で整理しています。

貸す・空けておくを選ぶときの注意

貸すなら、親が大家になる

実家を貸すと、貸主(大家)になるのは持ち主の親です。家賃は親の収入になります(出典:国税庁 No.1370。参照資料の一覧へ移ります)。入居者との契約は、親自身か、権限を持つ代理人などが進めます。

国土交通省の賃貸住宅標準契約書(任意のひな形)では、借主が使うのに必要な修繕は貸主が行う形です(出典:国土交通省 標準契約書。参照資料の一覧へ移ります)。原則として、借主に原因がある修繕の費用は借主が、それ以外は貸主が負担します。小修繕などの扱いは、契約書で確かめます。古い家を貸すなら、修繕の費用と手間も見込んでおきましょう。

貸し方には、更新がある普通の賃貸借と、更新がなく期間満了で終わる定期建物賃貸借(定期借家)があります(出典:国土交通省 定期借家Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、期間満了で終わるには、貸主からの終了の通知などの手続きも必要です。普通の賃貸借では、貸主が更新を断るのに正当な理由が要ります。いずれ売るかもしれないなら、契約の種類は管理会社や弁護士と相談して決めましょう。

親の判断力が落ちた後に、更新や解約を誰が進めるかも問題になります。契約を結んだときの判断力と、その後の手続きの権限は、別々に考えるものです。後見人がついていても、親の家を貸したり、貸した契約を解除したりするには、家庭裁判所の許可が要ります(出典:裁判所 居住用不動産の処分許可。参照資料の一覧へ移ります)。貸す前に、弁護士か司法書士に相談しておくと、手戻りを減らせます。

もう1つ、親が亡くなった後の税の特例との関係もあります。相続した空き家の特例を考える場合、入所後から亡くなる直前まで貸していないことなどが条件になります(出典:国税庁 No.3307。参照資料の一覧へ移ります)。貸すかどうかを決める前に、税理士にも確かめておくと選び直しを防げます。

しばらく空けておくなら

空けておくなら、誰がどのくらいの間隔で見に行くかを先に決めます。自分で管理するのが難しいときは、専門の業者に頼むことも考えるよう、国は案内しています(出典:国土交通省 空き家の管理。参照資料の一覧へ移ります)。固定資産税のほか、加入を続ける保険の保険料や管理の費用を見込んでおきます。

空けておく間の一年分の費用は、無料の空き家の維持費シミュレーターで計算できます。

片付けや見回りの進め方は、親が施設に入るときの実家の片付けの記事で順番にまとめています。

詳しく:定期借家の契約で気をつけること

詳しい説明を開く

定期借家では、借地借家法第38条(新しいタブで開きます)により、契約の前に、契約書とは別の書面を渡して説明する必要があります(出典:国土交通省 定期借家Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。説明するのは、更新がなく期間満了で終わることです。期間が終わった後も、貸主と借主が合意すれば、もう一度契約を結べます。

2022年(令和4年)5月18日施行の改正で、契約や事前の説明の書面を電子化できるようになりました(出典:国土交通省 定期賃貸住宅標準契約書。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、電子で提供するには、法律の要件を満たす必要があります。

よくある質問

質問と回答を開く(4件)

住民票を実家に残しておけば、控除の期限は始まらない?

そうとは限りません。税の上で住んでいるかどうかは、住民票だけでなく、生活の拠点としての使い方などを合わせて判断されます(出典:国税庁 通達31の3-2。参照資料の一覧へ移ります)。住まなくなった日の考え方は、税務署か税理士に確かめてください。

親が施設に入ったら、実家を子どもの名義に変えられる?

施設に入っただけでは、家は子どものものになりません。名義を変えるには、親から子へ売るか贈るなど、親自身が決める手続きが要ります。親子の間の売買には、3,000万円特別控除は使えません(出典:国税庁 No.3302。参照資料の一覧へ移ります)。贈与なら贈与税も関わるため、税理士や司法書士に相談してください。

親族に売っても、3,000万円特別控除は使える?

親子や夫婦に売る場合は使えません。生計を一にする(生活費を共にしている)親族や、売った後に一緒に住む親族なども対象外です。一方で、親族というだけで一律に対象外になるわけではありません。買う人が決まったら、税務署か税理士に確かめてください。

住民票を移すと、実家の固定資産税は上がる?

住民票の場所は、固定資産税の課税とは関係しません(出典:東京都主税局 Q&A。参照資料の一覧へ移ります)。住宅用地の特例も、空き家になっただけで一律に外れるわけではありません。ただし、家の状態や管理によっては外れる場合があるため、所在地の市区町村に確かめてください。

参照資料

※29国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」参照日 2026年10月6日 ↗※30国税庁「No.3314 過去に居住していたマイホームを売ったとき」参照日 2026年10月6日 ↗※31国税庁「No.3320 マイホームを取り壊した後に敷地を売ったとき」参照日 2026年10月6日 ↗※18国税庁「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて(法令解釈通達)第31条の3関係」参照日 2026年10月6日 ↗※19国税庁「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて(法令解釈通達)第35条関係」参照日 2026年10月6日 ↗※32国税庁「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」参照日 2026年10月6日 ↗※33国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」参照日 2026年10月6日 ↗※1国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」参照日 2026年10月6日 ↗※36国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」参照日 2026年10月6日 ↗※34国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」参照日 2026年10月6日 ↗※35国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」参照日 2026年10月6日 ↗※14厚生労働省「居住地特例について」(社会保障審議会障害者部会 第116回、2021年8月30日開催、資料1)参照日 2026年10月6日 ↗介護保険法(平成9年法律第123号)第13条参照日 2026年10月6日 ↗借地借家法(平成3年法律第90号)第38条参照日 2026年10月6日 ↗※7那覇家庭裁判所「成年後見人のためのQ&A」参照日 2026年10月6日 ↗※10裁判所「成年被後見人(被保佐人、被補助人)の居住用不動産の処分についての許可」参照日 2026年10月6日 ↗※9裁判所「成年後見制度の概要を知りたい方へ」参照日 2026年10月6日 ↗※3国土交通省「『住宅のリースバックに関するガイドブック』を公表しました」参照日 2026年10月6日 ↗※4国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課「不動産取引に係る新たなサービス形態について」(2025年2月、資料2。住宅のリースバックに関するガイドブックの紹介を含む)参照日 2026年10月6日 ↗※37国土交通省「賃貸住宅標準契約書(家賃債務保証業者型)」参照日 2026年10月6日 ↗※38国土交通省「定期建物賃貸借Q&A」参照日 2026年10月6日 ↗※39国土交通省「定期賃貸住宅標準契約書について」参照日 2026年10月6日 ↗※2国土交通省「所有する空き家は適切に管理を」参照日 2026年10月6日 ↗※11国民生活センター「リースバック契約は慎重に」(見守り新鮮情報 第552号)参照日 2026年10月6日 ↗※20東京都主税局「固定資産税・都市計画税Q&A」参照日 2026年10月6日 ↗※21昭島市「年度途中に不動産を売買した場合の納税義務者」参照日 2026年10月6日 ↗※22神戸市「空き家の敷地にかかる固定資産税」参照日 2026年10月6日 ↗※24神戸市「土地と家屋の固定資産税(2026年版)」参照日 2026年10月6日 ↗※6長久手市「固定資産税Q&A」参照日 2026年10月6日 ↗※23岡垣町「住宅を取り壊した後の更地の固定資産税の一部を減免します」参照日 2026年10月6日 ↗※13江東区「介護保険・住所地特例施設入退所時の届出」参照日 2026年10月6日 ↗※15神戸市「介護保険の住所地特例制度」参照日 2026年10月6日 ↗※16刈谷市「市外の介護施設等へ入所するときの届出」参照日 2026年10月6日 ↗※17飯島町「後期高齢者医療制度」参照日 2026年10月6日 ↗※12新宿区「転入届」参照日 2026年10月6日 ↗※26光市「住所等変更登記の義務化について」参照日 2026年10月6日 ↗※25米子市「住所等変更登記の義務化」参照日 2026年10月6日 ↗※8泉佐野市「民法の一部改正とそれに伴う手続きについて」参照日 2026年10月6日 ↗※5島原市「物権一覧」参照日 2026年10月6日 ↗※28日本郵便「転居・転送サービス」参照日 2026年10月6日 ↗※27損保ジャパン「空家でも『THE すまいの保険』で契約できますか」参照日 2026年10月6日 ↗