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親が一人で暮らしていた古い実家を相続すると、売るか、解体するか、しばらく置いておくかで迷います。相続した空き家の3,000万円控除は、いくつもの条件が重なる特例です(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。相続した後の使い方や契約の順番しだいで、後から使えなくなることもあります。まず6問で自分の位置を確かめ、「不明」が残るなら何を止めるかを決めましょう。
相続した空き家は対象候補?まず6問で確かめる
建物の登記事項証明書(法務局で取れる不動産の記録)や、親の住民票の除票を見ながら答えます。答えは「はい」「いいえ」「不明」の3つです。判定の基準は、国税庁が示しています(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。
| 確かめること | 答え |
|---|---|
| 1. 売る本人が、親から家と敷地(家が建っている土地)の両方を相続した(遺言で受け取った場合を含む) | はい/いいえ/不明 |
| 2. 家は1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられ、区分所有建物の登記(マンションのように部屋ごとに分けた登記)がない | はい/いいえ/不明 |
| 3. 親が亡くなる直前までその家に一人で住んでいて、親以外で住んでいた人がいない(老人ホームなどに入っていた場合は別の条件) | はい/いいえ/不明 |
| 4. 相続してから売るまで、家と敷地を住まい・賃貸・事業に使っていない(取り壊した後の土地を含む) | はい/いいえ/不明 |
| 5. 売却代金の合計が1億円以下で、買主が親子・夫婦など特別な関係の人ではない | はい/いいえ/不明 |
| 6. 3つの売り方のどれかで期限内に売り、市区町村の確認書を付けて確定申告できる | はい/いいえ/不明 |
答えによって、次にすることが変わります。
- すべて「はい」:特例を使える候補です。適用が決まったわけではないので、契約の前に税務署か税理士に確かめます。
- 1〜4のどれかが「いいえ」:対象外の候補です。控除を見込まず、通常の税金の計算で売却の計画を立て直します。
- 5・6だけが「いいえ」:買主や売り方を変えて「はい」にできないかを先に確かめます。変えられなければ、対象外の候補です。
- 「不明」がある:その項目が分かるまで、関係する契約や工事を止めます。
「いいえ」のときの税金の計算は、相続した家を売ったときの税金の記事で確かめられます。迷う項目は、国税庁の条件と見比べても分からなければ、「不明」のまま残してください(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。「不明」の項目ごとに止めるものは、次のとおりです。
- 1〜3(取得した人・建てた日・親の暮らしと同居人)が不明:売買契約と解体
- 4(相続後の使い方)が不明:人に貸す、家族が住む、事業に使う
- 5(売却代金の合計・買主との関係)が不明:売買契約
- 6(売り方・期限・買主の協力)が不明:売買契約、解体、耐震工事
3,000万円の控除は、どこから差し引かれる?
この特例は、売却代金や納める税金から3,000万円を引く制度ではありません。差し引く先は、家を売って出た利益(譲渡所得)です(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。仕組みは、次の2つの式で表せます。
- 譲渡所得=売却代金-取得費(親の購入代金などから、建物の減価償却費相当額を差し引いた額)-譲渡費用(仲介手数料など)
- 税金の対象になる所得=譲渡所得-特別控除(最高3,000万円または2,000万円)
控除できるのは、控除する前の譲渡所得と上限額のうち、低いほうの金額です。譲渡所得が上限より少ないとき、使い切れなかった枠がお金で戻ることはありません。取得費が分からないときの調べ方は、取得費が分からない相続不動産の記事にまとめています。
控除によって税金の対象になる所得が0円になっても、特例を使うには確定申告が必要です。申告をしなければ、この控除は受けられません(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。
上限が2,000万円になるのは、家と敷地の両方を相続した人が3人以上のとき
2024年(令和6年)1月1日以後の売却では、上限が下がる場合があります。家と敷地の両方を相続で取得した相続人が3人以上いると、1人あたりの上限は2,000万円です(出典:国土交通省 空き家の特例。参照資料の一覧へ移ります)。
人数に数えるのは、家と敷地の両方を親から相続や遺言で受け継いだ人だけです。法定相続人(法律で決まった相続人)の総数や、売買契約書の売主の数では数えません。いまの共有者の数も使いません。
相続放棄をした人や、家と敷地を受け取らなかった人は、人数に入りません。売主の数や共有者の数は、相続後に持分を移した人がいると、相続で受け取った人の数と合いません。
家と親の暮らしに関する条件は?
家は、1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられたものが対象です。まず、建物の登記事項証明書に載っている新築の年月日で確かめます。日付が不明な場合や、建築確認との関係が問題になる場合は、税務署に確かめてください。区分所有建物の登記がある家は、対象外です(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。
区分所有建物とは、マンションのように、1棟の建物を部屋ごとに分けて登記した建物です。一戸建てに見えても、見た目や建物の名前では決めず、登記事項証明書で確かめてください。当てはまるか分からないときは、法務局の登記相談か司法書士に聞けます。
親が亡くなる直前まで、その家に一人で住んでいたことも条件です。親以外で住んでいた人がいれば、対象外です。親の居住は住民票の除票で確かめます。同居人の有無は、相続人の住民票や戸籍の附票なども使って確かめます。
売る本人が住んでいた家は別の制度で、マイホームを売るときの特別控除の記事で確かめられます。
親が病気の治療で入院し、そのまま亡くなることもあります。この場合でも、自宅が生活の拠点だったと確かめられれば、対象になる可能性があります(出典:名古屋市 空き家の特例。参照資料の一覧へ移ります)。入院したことだけで対象外と決めず、入院する前の暮らしぶりと、その間の家の使われ方を確かめてください。
詳しく:親が老人ホームなどに入っていた場合
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老人ホームなどに生活の拠点を移していた場合は、次の4つをすべて満たす必要があります(出典:国税庁 No.3307。参照資料の一覧へ移ります)。
- 自宅が住まいでなくなる直前に、要介護・要支援の認定や障害支援区分の認定など、一定の要件を満たしていた
- 入った先が、特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、法令で決まった施設だった
- 入った後の自宅は親の物の保管などに使われ、人に貸したり、事業に使ったり、他人が住んだりしていない
- 自宅を離れる直前に、親以外で住んでいた人がいない
親族の家や一般の賃貸住宅に生活の拠点を移して亡くなった場合は、この扱いを受けられません。
相続した人と、相続後の使い方の条件は?
売る本人が、親から家と敷地の両方を相続していることが条件です(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。家だけ、または敷地だけを受け継いだ人は、この特例を使えません。だれが何を受け継いだかは、遺産分割協議書(遺産の分け方を決めた書面)と登記で確かめます。
相続してから売るまでの間、家と敷地を住まい・賃貸・事業のどれにも使っていないことも条件です。家を取り壊して売るときは、取壊しから売却までの間、その土地を建物や構築物の敷地にしていないことも必要です。
たとえば、次のような場合です(想定の例)。売れるまでの間だけと考えて、親族に住んでもらうことがあります。短い期間だけ人に貸して、管理の手間を減らそうとする人もいます。こうした使い方をすると、その後で空き家に戻しても、特例が使えなくなるおそれがあります。
詳しく:母屋と離れ、登記されていない建物がある場合
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同じ敷地に、母屋と離れ、蔵、車庫などが建っていることがあります。この場合、敷地のすべてが特例の対象になるとは限りません。用途上不可分な母屋と離れなどがある場合、敷地面積に、建物全体の床面積に占める母屋の床面積の割合を掛けた部分が対象です。
建物の配置や床面積が分かる図面を用意し、敷地の分け方を税務署か税理士に確かめてください。登記されていない増築部分や離れがあるときは、未登記の建物を確かめる記事で調べ方が分かります。
売り方は3つのどれにする?
特例を使える売り方は、次の3つです。耐震基準は、地震に耐えるために建物が満たすべき基準のことです。3つ目の「買主が工事をする売り方」は、2024年1月1日以後の売却から加わりました(出典:国土交通省 空き家の特例。参照資料の一覧へ移ります)。
| 売り方 | 売るときの状態 | 契約前に確かめること |
|---|---|---|
| 1. 耐震基準に合う家を売る | 耐震基準に合う家屋、または家屋と敷地 | 売る日の前2年以内の調査による耐震基準適合証明書などを用意できるか |
| 2. 売主が全部取り壊して売る | 家を全部取り壊した後の敷地 | 取壊しの前後の写真や工事の資料など、自治体が求める資料 |
| 3. 買主が耐震改修か取壊しをする | いまの古い家屋、または家屋と敷地 | 翌年2月15日までの工事完了と、買主からの資料の受け取り |
「全部の取壊し」は、家の全体を取り壊した状態のことです。内装だけの解体や、建物の一部を減らす工事では当てはまりません。基礎が残るなど、全部の取壊しと言えるか迷うときは、解体の契約の前に税務署か税理士に確かめてください。
買主が工事をする売り方の注意
買主が工事を手配・負担する契約なら、売主が解体費を先払いせずに売れる場合があります。ただし工事をするのは買主なので、期限と資料について、契約の前に取り決めておきます。
- 工事の期限:売った年の翌年2月15日までに、耐震改修か全部の取壊しを終える
- 資料の受け取り:確認書の申請に間に合うよう、工事の資料や写真を受け取る日を決める
- 契約書の特約:買主の工事の義務と期限、資料を出す協力を売買契約書に書く
特約を書いても、期限までに工事が終わらず、資料もそろわなければ特例は使えません(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。解体費の目安や、古家付きと更地のどちらで売るかは、古家付きで売るか解体して売るかの記事で比べられます。
空き家の特例はいつまでに売ればよい?
期限は3種類あります。実際に売らなければならない期限は、1つ目と2つ目のうち早いほうです。将来の延長をあてにせず、いまの期限で計画します(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。
| 期限 | 日付 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 1人ずつの期限 | 相続開始日(親が亡くなった日)を含めて3年を経過する日が属する年の12月31日 | 亡くなった日を1日目として数える |
| 制度の期限 | 2027年(令和9年)12月31日 | 1人ずつの期限がこれより後でも、こちらが先 |
| 買主の工事の期限 | 売った年の翌年2月15日 | 3つ目の売り方だけ。年末の引渡しでは工事の期間が短い |
計算例として、親が2023年6月10日に亡くなった場合を考えます。亡くなった日を含めて3年を経過する日は、2026年6月9日です。その日が属する年の12月31日、つまり2026年12月31日が、この人の個別の期限です。制度の期限(2027年12月31日)より前なので、実際の期限も2026年12月31日です。
契約日と引渡日が年をまたぐとき
家の売買では、契約した日と、代金を受け取って引き渡した日の年が変わることがあります。税金の上で売った時期は、原則として引き渡した日です(出典:国税庁 所得税基本通達。参照資料の一覧へ移ります)。ただし、契約の効力が生じた日を売った時期として申告できる場合もあります。
どちらにするかで、特例の期限、買主の工事の期限、確定申告をする年が変わります。契約の前に、税理士か税務署に確かめてください(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。
1億円の合計、買主、ほかの特例で外れないか?
条件を満たす家でも、契約の中身しだいで特例から外れることがあります。契約書に署名する前に、次の4点を確かめます。
売却代金は合計で1億円以下か
売却代金が1億円以下かは、今回の取引だけでなく、合計で判定します。家と敷地を分けて売った分や、ほかの相続人が売った分も合計に入ります(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。合計する期間は、相続が始まってから、特例を使って売った日から3年を経過する日が属する年の12月31日までです。売却の期限は親が亡くなった日から数えますが、この期間の終わりは特例を使って売った日から数えます。
ほかの相続人と共有しているときは、売る時期と代金を互いに伝え合ってください。進め方は共有名義の相続不動産を売る記事で確かめられます。
買主が特別な関係の人ではないか
売主と特別な関係にある人に売ると、相場どおりの値段でも特例は使えません。特別な関係には、次の人や会社が含まれます(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。
- 配偶者と、直系血族(父母・祖父母・子・孫など。養子縁組による親子も含む)
- 生計を一にする(生活費を共にしている)親族
- 売った後に、その家で売主と同居する親族
- 内縁関係の人と、その人と生計を一にする親族
- 売主やその親族が経営を支配している会社など
「別居しているから大丈夫」と自分で決めないでください。続柄、家計の状況、売った後に住む予定、会社との関係を税務署か税理士に伝えて確かめます。
同じ親からの財産で、前に特例を使っていないか
申告する本人が、同じ親から受け継いだ家や敷地の売却で、すでにこの特例を使っていれば重ねて使えません。ほかの相続人が前に使っていても、本人が使っていなければ、それだけで対象外にはなりません。
取得費加算の特例とは、どちらか1つを選ぶ
相続税を納めた人は、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を使えることがあります。納めた相続税の一部を、取得費に足せる特例です。空き家の3,000万円控除は、この取得費加算の特例と一緒には使えません(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。収用(公共事業のために土地を手放すこと)などの特別控除とも、同じ物件ではどれか1つを選びます(出典:国税庁 No.3267。参照資料の一覧へ移ります)。
どちらが有利かは、納めた相続税や売却益の額で変わります。自分で決めず、税理士に両方の場合の税額を試算してもらってください。
試算した税額は、無料の不動産売却の費用・手取り計算機に入れると、手元に残る額で比べられます。
詳しく:売った後で合計が1億円を超えたとき
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最初の売却は1億円以下で、特例を使って申告したとします。その後、残りの部分を自分やほかの相続人が売り、合計が1億円を超えることがあります。この場合は、その売却の日から4か月以内に修正申告書を出します(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。特例を使わずに計算し直し、増えた分の税金を納めます。
確認書と確定申告では何を出す?
特例を使うには、家がある市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」を受け取ります。被相続人は亡くなった親のことで、ここでは「確認書」と呼びます。確認書を確定申告書に添えて、税務署に出します(出典:国土交通省 空き家の特例。参照資料の一覧へ移ります)。
申請先は、自分の住所地ではなく、売った家がある市区町村です。担当は建築指導課、住宅政策課、空き家対策の担当などで、自治体によって違います。申請書は売り方ごとに分かれていて、必要な資料や発行までの日数も自治体ごとに違います。売却や工事が終わる時期に合わせて、早めに窓口に確かめてください。
確定申告で税務署に出す主な書類は、次のとおりです。
- 確定申告書と、譲渡所得の内訳書(土地・建物用)
- 売った家と敷地の登記事項証明書(相続での取得、建てた日、区分所有でないことが分かるもの)
- 売買契約書の写し(売却代金が1億円以下と分かるもの)
- 市区町村から受け取った確認書
- 売り方に応じた資料(耐震基準適合証明書や、取壊しの資料など)
受付の期間や手続きは、売った年分の税務署の案内で確かめてください(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。書類の集め方は、相続した家を売るときの必要書類の記事にまとめています。
「不明」が残るときは、どう確かめる?
6問で「不明」になった項目は、止める・探す・聞くの順で確かめます。まず、その項目に関係する売買契約、解体の発注、親族の入居、賃貸の募集を止めます。
次に、実家の書類入れや金庫、仏壇の引き出しなどを探します。次のような書類が残っていることがあります。
- 権利証や登記識別情報通知
- 固定資産税の納税通知書と課税明細書
- 家を買ったときの売買契約書や、建築確認の書類
- 遺産分割協議書
- 電気や水道を止めた記録、領収書
見つからない資料は、法務局、家がある市区町村、税務署などに問い合わせます。聞くのは「どの資料で確かめられるか」「相続人の自分が取れるか」「申請に何が要るか」の3つです。取れる資料や手続きは窓口ごとに違うので、全国同じだと考えず、それぞれの案内に従ってください。
確認書の申請の条件は、家がある市区町村の窓口で聞けます。控除の上限や1億円の判定、取得費加算の特例と比べた税額は、税務署か税理士に確かめてください(出典:国税庁 No.3306。参照資料の一覧へ移ります)。この記事の内容は一般的な情報です。特例を使えるかは個別の事実で決まるので、相談の場では集めた資料を見せて確かめてください。
